神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「花妖怪は火(500℃)に弱い」

500℃には誰だって弱いよね相性関係無しに。例外(人外)除いて。



妖怪の山

 

妖怪の山。其処はその名の通り妖怪の住んでいる山。

鬼の鬼神を筆頭に社会が成り立っている。

強さで表せば、鬼神>鬼の四天王>天魔>その他鬼>天狗の幹部>その他天狗という風になる。

そして最近、天狗に鴉天狗で生意気な新参が入って来たらしい。ソースは詩音。

私は鬼と酒を飲む約束のついでに確かめに行く。

 

「という訳でキシ。妖怪の山に行こうよ」

「何がという訳なのか分かりませんが。お付き合いさせて頂きます」

 

私はこの地を少しでも理解する為スキマを使わず歩きで行く事になった。

私が居ない間に大分、変わったというのが大きな理由。

 

「それでは此処から妖怪の山に行くには人里を通って行く事になりますが宜しいですか?」

「別に大丈夫だよ。距離とかは流石に変わってないでしょ」

「ええ、歩いて数十分ぐらいですね。昔と変わりません」

「それじゃ、妖怪の山に行く途中に寄ってみたい所があるからそっちも案内お願いね」

「畏まりました」

 

私とキシは人里に向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

「そういやキシってさ。人型の時と蜘蛛型の時があるけどどっちが強いの?」

「人型の方が確かに動きやすいですが蜘蛛の時の方が力が強いですね。体格の問題でしょうけど。ですが力が強いだけですから純粋に強いのは人間の姿をしている時でしょう」

「へ~………あ、そう言えばキシにアレ渡してなかったっけ」

「アレとは?」

「これだよ」

 

芽衣がスキマからイヤホンの様な物を取り出した。

 

「これは何ですか?」

「遠隔通信装置。まぁはっきり言うと遠くの人と会話が出来る様になるんだよ。使い方はこれに、キシだったら妖力を流し込めば私が何処にいても会話が出来る様になるよ。詩音にも渡して置いて」

「分かりました。それとお嬢様。見えてきましたよ人里が」

「本当だ~前来た時より幾分発達してるね」

「年月の積み重ねというやつです。そういえばお嬢様。寄りたい所があると仰っていましたが…」

「そうそう、それでさ。寺小屋って言う所知ってる?」

「ええ、知っております。其処でよろしいのですか?」

「うん。多分だけど其処にあの子がいると思うから」

「?……それではこちらの道へ」

「はいは~い」

 

キシに案内されて寺小屋に無事辿り着けた。

途中、八百屋の様な店の主人に『お、キシさん。今回は何をお探しで?』みたいな事を言われていた。その他の店でも同じ感じだ。随分、顔馴染みが多いな~と思ったけどそりゃ数百年も此処に通い続けてるから嫌でも顔馴染みになるよね、そりゃ。

 

「お嬢様、此処が寺小屋です」

「へー………子供達が外で遊んでいるって事は休み時間なのかな?」

「恐らくそうでしょう」

「おや?誰かと思えばキシさんじゃないか」

 

私達が寺小屋の前で立っていると長身の女性が中から出てきた。

容姿は腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪。頭には頂に赤いリボンをつけ、六面体と三角錐の間に板を挟んだような形の青い帽子を乗せている。

 

「こんにちは、慧音さん。調子はどうですか?」

「毎日大変だけど良い事もありますから、調子はいい方ですね」

「そうですか、それなら良かったです」

「それで、そちらさんは?見かけない顔だが………」

 

覚えてないのは無理ないよね。出会って数分で消えたしね。

 

「お~い、慧音。遊びにきたぞ~って芽衣姉!!」

「あ、妹紅。久しぶり」

「ん?妹紅かこの方を知っているのか?」

「知ってるも何も、私達が出会った時いたでしょ!」

「?…………って、あの時の人か!!」

 

今更だね~というか妹紅…タイミング良すぎだね。

 

「お嬢様?知り合いでしたか?」

「まぁ、一人は義理の妹だからね~血縁関係は無いけど。もう一人は妖怪に襲われてたから助けただけだよ。」

「本当にお人好しですね」

「言われなくても分かってるよ~」

「え?貴方は私の昔の命の恩人でそして妹紅の姉でもありキシさんの上の立場??あ、頭がついていけん………」

「諦めろ慧音。この人には何もかも勝てない」

 

妹紅は当然の如く察して慧音を助ける。

けど何もかも勝てないは言い過ぎじゃ……いや、言い過ぎじゃない?

………おっとこんな事で四苦八苦してないで妖怪の山へ行かないと、人里は大体これでいいかな。

 

「まぁ、今日はふらっと寄っただけだから、また今度ゆっくり話し合おうね。それじゃ」

「失礼いたします」

「あ、ああ。また」

「じゃあな」

 

私とキシは寺小屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

「お嬢様は本当に顔が広いですね」

「顔と情報は多ければ多いほど良くて面白いからね」

「それもそうですね。っと着きましたよ。妖怪の山へ」

「………何か空気が重いな~」

「そうですね、侵入者を忌み嫌っている感じがとても出ていますね」

 

まぁ、そんなのは関係無しに進みますけどね~

そうして私とキシが丁度、山の半分まで進んで来た所で、

 

「おっと其処の人、待ちなさい」

 

背中の羽を見る限り天狗の様だ。だが何処か普通の天狗と違う。というかこの天狗………

 

「……誰?それと何か用なの?」

「おや、人間風情が天狗に質問ですか……まぁいいでしょう。私は清く正しい射命丸文。鴉天狗ですよ。用があるのか?とはこちらのセリフです。わざわざこの山に何の用ですか?」

「……………(人間風情が?)」

 

やっぱり噂の鴉天狗って文の事だったんだね。

鴉天狗は中々居ないからもしかしてって思ったけど……やっぱりそうだよね。

というか隣に居るキシが殺意を我慢してる。多分お怒りなんですけど……

 

「い、いや、少し鬼に会いに来ただけだけど?」

「…………は?……私の聞き間違いかも知れませんのでもう一度いいですか?」

「だから、鬼に会いに来たって言ってるんだよ」

「……あ……あややややややややっ!貴方は何をっ!」

「え?」

「鬼に会いに来たですって!?私でも普通の鬼の足元にも及ばないと言うのに…あやややっ!」

「それで、通っていいの?」

「くふふ……その度胸に免じて鬼のいる所まで送ってあげますよ」

「………まぁ、ありがと」

「……………(必ず殺すお嬢様を侮辱した事は忘れんぞ)」

 

キシが耐えた!怒りを露にせずに抑えた!

けど何か嫌な予感がするから帰ったらケアしよう、必ず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、着きましたよ。此処が鬼の居る所です」

「あ、うん。ありがと」

 

何回も見た事のある洞窟前に私達は文に案内されて着いた。

 

「それでは、ご武運を………あっ最後に写真撮らせてもらいますね!鬼に会う勇気ある(哀れな)人間として!」

 

そう言って文は写真を何枚か撮り飛び去って行った。

何か勘違いされてた様な気がめちゃくちゃする………。

 

「………それでお嬢様。此処にまた何の用が有って来たんですか?」

 

キシが喋った!文が居る時一切喋らなかったキシが!

……何でそういやここまで怒ってたんだろ、後で聞いてみよ。

 

「えーと……鬼から今度お酒を飲もうって言われたから約束を果たしに来たんだよ。鬼は約束に敏感だからね。まぁ、今回は多分、戦う事も無いし大丈夫でしょ……鬼が酔っぱらって襲って来ない限り」

「そう願いたいものですね…」

 

そんな些細な願いを口にして洞窟の中に入る芽衣とキシ。

其処は、いつもより鬼が居座っていた。

 

『あ?何だお前ら?』

『人間が何しに来た!』

『此処に何の用だ!』

 

何か感じが悪いね。嫌な予感がする。

 

「此処にいる。四天王か鬼神に会いに来たんだけど……」

「はっ、人間に会わせるなんて出来ないな。そんな事なら俺を倒してから言いなっ!!」

 

そう言い私に殴りかかる鬼1。ですよね~。

だが、

 

ドゴぉ!

 

そんな音を出しながら私に殴りかかって来た鬼は山の方へと吹っ飛んだ。

 

「何いきなり突っかかってんだいお前らっ!」

『『『『姉御っ!!』』』』

 

私に鬼1が殴りかかる直前。

見たことのある盃を持ちながら私の目の前にいた鬼を吹っ飛ばした鬼が其処に立っていた。

 

「私の客に何してんだい」

「お久しぶり、勇儀」

「ふ、今日は飲みに来たのかい?」

「うん、そうだよ。約束通りね」

「鬼は約束が好きだからねえ。もう一人は私と戦った奴じゃないかい!久しぶりだねぇ。それじゃあ!お前ら!酒をあるだけ持ってきな!!」

『『『『ういっす!!』』』』

「今日は宴だああああああっ!!」

『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』』

 

本当……騒がしいったらありゃしないな~鬼達は。

飽きなくて面白いから良いんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴が始まって数時間後

 

「……くぅ……もう…駄目だぁ…」

「もう…飲めにゃい~………」

「いや~鬼のお酒って中々美味しいね」

「全くですね」

 

え?今何をしているのかって?勇儀&萃香と飲み比べしている。

私ってある一定の所までは酔えるんだけど其処からは酔えないんだよね。

例えばほろ酔い状態で普通の人がお酒を飲むと酩酊になる。

けど私はほろ酔いのままそれ以上酔わない。

キシもそういう体質の様で鬼二人が完全敗北した。

 

 

「ほう、あの勇儀と萃香が飲み負けたか」

「あ、鬼神!久しぶり~」

「鬼神はやめよ。私の名前は叶(かない)だよ」

「へぇ~それよりも私と飲み比べをする?」

「いや、遠慮するよ。お前が飲んだ量の半分で限界だからね」

「という事は、勇儀達の三倍ぐらいしか飲めないって事じゃん」

「充分、化け物じみてると思うのじゃが…」

「まぁ、宴は長いし限界に挑戦してみれば?」

「それもそうじゃな」

 

こうして宴は一日中続いた。最後まで飲んでいたのは芽衣とキシだけだったそうだが。

 





ワインで凄く高いお酒ってありましたよね。
関係ありませんけど。

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