前回のあらすじ「義理の妹の独り立ち」
そろそろ夏ですね。
一段と今年は暑くなるかも知れませんね。
「まぁ、折角、命蓮寺に来たからには中に入ってみよう。そしてそのままお泊りでもしよう」
時刻は六時過ぎ。太陽が沈み暗闇で覆い尽くされるのも時間の問題だ。
なので私は原作キャラと会うのを目的にこの寺に泊まろうと思った。
まぁ、出来ればの話だけどね(お泊り)
境内に入ると時間も時間なので参拝客は数える程しか居らず関係者らしき人物も簡単に見つかった。
「あの、すいません」
「あ、はい。なんでしょう?」
その要旨は、金髪に紫のグラデーションが入ったロングウェーブに金の瞳。服装は白黒のゴスロリ風のドレス姿に表地が黒・裏地が赤のマントをはおり、黒いブーツをはいている。
(どうみても聖だね。まぁ、大体分かってだけど)
「夜分遅く申し訳ないのですが……私は旅をしている者で今日一泊こちらで泊めさせて貰っても大丈夫でしょうか?」
「ふむ……そうですね。では、一つ二つ程質問に答えて貰いますね」
「ええ、別に構いませんよ。それで質問とは?」
「一つ目、貴方は妖怪は全て悪だと言い切れますか?」
「いや、全然」
限りなく早く即答する。
私にとって妖怪が家族みたいなもんだし。妖精や人間?も居るけど。
「へぇ………」
まぁ、そりゃあ、こういう質問してくるってのは分かってた。
聖は少し驚いた様なそんな反応を示す。そして私は其処に畳み掛ける!
「そうですね。普通は無理だと思いますが両者とも襲う気が無ければ相容れると思いますよ。それに……『人も妖怪も神も仏も全て同じ』だと私は思いますよ」
ふふふ……聖の名言言っちゃった。まぁ、本当に思っている事だし別にいいよね。
「……質問に答えて下さりありがとうございます。それと貴方なら泊まっても大丈夫だと思います……」
「それはそれは、ありがとうございます」
「それでは、付いて来て下さい」
そう言われ私は聖の後に付いて行く。
「それでは、まずこの寺に住んでいる者を紹介しますね。貴方なら大丈夫だと思いますけど、あんまり驚かないで下さいね。皆!」
聖が声を出すと中から知っている顔が数人出てきた。
そしてそれに合わせて今聖があっと思い出す素振りを見せる。
「あ!私の自己紹介を忘れてました。私は聖白蓮と申します。そしてこちらが……」
「寅丸星です。一応、毘沙門天の化身です。よろしくお願いします!」
「一応じゃないだろご主人……私はご主人の監視役のナズーリンだよろしく」
「私は雲居一輪。そしてこっちが雲山だよ。よろしくね」
「私は村紗水蜜!よろしく!」
と一通りの挨拶が終わるが何故か私の後ろから気配がするのは気の性かな?
「ばぁっ!!」
「?」
やっぱり気の性ではなく後ろから声が聞えたので後ろを向く。
其処には室内なのに傘を持っている少女が驚かそうとしていた。
「ねぇねぇ!驚いた?驚いた?」
「あー……うん。驚いた驚いた。」
「やった~。ドッキリ大成功!」
「こらっ!小傘。ちゃんと挨拶しなさい」
「は~い。多々良小傘!よろしく!」
「私は星羅芽衣。旅人だよ。皆よろしくね」
私が普通に自己紹介をすると不思議そうにナズーリンが質問を問いかける。
「……おや、全然動じないんだね。此処に居るのは殆どが妖怪だって分かっているだろう?」
「いや、いつもの光景だから……」
「いつも通り?という事は、君は妖怪と一緒に居たという事なのか?」
「う~ん。まぁ大体合ってる」
「それは中々興味深いな。じっくり聞かせてくれないか?」
「あ!私も聞きたい!」
「それより、まず皆でご飯ですよ。聞くのはその後ですよ、私も聞きたいので……」
「「「「「は~い」」」」」
その後、何処を旅をしたのか。どんな妖怪と一緒にいたのか。どうしてそうなったのか。と色々聞かれた。正直話し疲れた……。もう日にちが変わる時間私は縁側で涼んでた。
「あぁ……涼しい……」
私が縁側で涼みながら座っていると、奥から聖が歩いてきた。
「あら?まだ眠っていなかったのですか?」
「いや、少し涼んでただけだよ」
「ふふふ、あの子達。凄く面白そうで話に釘漬けでしたからね」
「私もあんなに熱中して聞いてくれて嬉しいよ」
「……今宵は月が綺麗ですね」
「そうだね」
「………」
「………」
「明日……」
「?」
「明日……私は封印されるかもしれません」
何てタイミングっ!どっかの吸血鬼が私の運命を操っているんじゃないかと疑うぐらいに…!
どっちかって言うと操ってるのは星月の方だと思うけど。
「……逃げる気はないの?」
「はい、此処で逃げたらあの子達に示しが付かないので」
「……明日……どうするつもりなの?」
「……話し合いたいと思います。それで駄目でも私は………抵抗しません」
「本気なんだね」
「はい、その時。多分ですが寅丸達は封印されないと思います。あれでも毘沙門天の化身ですから。だから私が封印された時。寅丸達を頼みます」
「それが聖の願い?」
「はい、一見した所。貴方は普通の旅人とは少し違うみたいですから」
「あはは、ばれてたか~」
「それでは、よろしくお願いします」
「うん、任せておいて」
……翌日、聖・一輪・村紗が封印された。私はただの旅人だと思われ何も無し。
寅丸とナズーリンは聖の言った通り毘沙門天の化身という事で無事。
ただ……寅丸が聖が封印されて自分がのうのうと寺に居られないと言い出し大変だった。
小傘はただの傘になってたから見つからずに退魔士から逃れたみたい。
それから数十年。寅丸には、寺として機能する様に色々と教えナズーリンは、寅丸が毎回無くす宝塔の早く見つける方法も教えて。小傘も手伝い。もう芽衣が居なくても寺として機能する事だろう。
聖達が封印されて一番に心が折れたのは寅丸だ。その心を能力で治すとその心に負担が多く出ると思い自力で治させた。ナズーリンが手伝ってくれたのが一番大きいだろう。
小傘も自分も本当は封印されるかもしれなかったからと言い寅丸達の手伝いを文句一つ言わず手伝った。
そしてある日………
「これなら、もう私が居なくても大丈夫かな」
「ぐすっ……本当に……お世話になりました……」
おいおい、泣かないでよ寅丸ちゃん。別に一生の別れって訳じゃないんだから。
「私からもお礼を言わせてもらうよ。君が居なかったら今頃どうなっていた事か……」
「いいって、聖からの頼みだったし」
「わ、私からもありがとうございました!もっと頑張って人を驚かせます!」
別にそれは頑張らなくても良いんじゃないかな?いや、小傘ちゃんだからそれが生きがいか。
「じゃあ、皆頑張ってね」
「「「本当にありがとうございました!!」」」
私は寅丸達に見送られて次の場所に向かった。
と言っても行く宛も無いし自分の家にこの前帰りそびれちゃったし……
「そろそろ自分の家にも顔を出して見ようかな」
次の目的地は自分の家。私はスキマを開き向かった。
其処で凄い事(あんまり意味は無い)が起こっているとも知らずに………
「前に来た時は妹紅のあれこれで神社に寄れなかったけど今回は真っ直ぐ家に帰るとしよう」
そう言いつつも隙間から既に抜けており何処となく懐かしい神社の前に着いた。
私の神社。この神社には鳥居が無い。その代わりに境内の中に入ると両脇には春には桜が夏には百日紅が秋には紅葉が冬には柊が咲き乱れる木がある。
そして神社の裏庭には、花壇と西行妖にも負けない大樹がある。
大樹は殆どがパウの住居として使われている。妖精は木の中や土の中に住んでいるんだそうだ。
後今は丁度、夏なので百日紅が両脇に咲いている。
(そういえば、キシに任せたままの花があったっけ。今なら彼処も向日葵がさいている頃かな)
私は神社の中に入らずに神社の裏庭に向かった。其処には芽衣の育てていた花達が咲く花壇がある。其処には予想通り向日葵が咲き乱れていて。其処には懐かしい人物がいた。
「あ!キシ!久ぶ………り?」
そしてもう一人は見慣れない人物がいた。
「お嬢様、お帰りなさいませ。突然で申し訳ありませんがこの方に見覚えはございますか?」
そう言いキシはもう一人の人物の方に向く。
其処には癖のある緑の髪に、真紅の瞳。白のカッターシャツとチェックが入った赤のロングスカートを着用し、その上から同じくチェック柄のベストを羽織っている。
どう考えてもゆうかりんです。本当に(yr
「………まぁ、一応知ってるよ」
「なら話が早いですね。この方がこの花を育て始めた人は何処に……と言うので……」
「そう、分かった。キシは中に入ってて」
「畏まりました」
私に言われキシは家の中に入って行った。
「それで……季節事に花を求めて歩くと言われている風見幽香さんは何の用でしょうか?」
「私の事を…知っているのね……何て事は無いわ…この花達がさっきの男の人の事や貴方の事をとても良く言っているから少し気になっただけよ。それに……」
「それに?」
「この神社にいる。最強の人間に会いに来たのよ」
ざわっ……
その言動を放って幽香は妖力を放出する。
それに伴い先程まで穏やかだった空気が一変し殺気溢れる空間に早変わりした(主にゆうかりんの所為で)
「貴方がそうなんでしょ?一つ手合せ願えないかしら?私は風見幽香……普通の花妖怪よ」
幽香が笑顔で戦闘態勢を取っている。これ断ってもそのまま戦う事になるよね。
「まぁ別にいいよ、どうせ暇だし。私は星羅芽衣。何処にでもいるしがない人間だよ」
私もやる気は無いが一応戦う感じで。
場所を裏庭から移し神社前
「さぁ、いきなりで悪いけど終わらせるわ!喰らいなさいっ!!」
ゴオオオオオオオオオッッ!!!
芽衣に向かって幽香が放った二本の太い光線が襲い掛かる。
「え!?いきなり!?でもね!そんなんじゃ、私は倒せないよ!!」
「なっ!……私の攻撃を操っている!?」
幽香は攻撃を避けるとは思ってはいたけれど『操る』なんて思いもしなかった。
だが芽衣は光線を『操った』。操られた光線は軌道を変え幽香に向かい当たる。
幽香も当たらぬ様に避けたが避けた場所に追尾されては避けようがない。だが、
「ぁああああああっ!!」
幽香は光線をとっさに傘でガードしてなんとか直撃を免れた。
そのビームの威力で傘はボロボロになり使い物にならなくなる。
「くっ……はぁ、はぁ…遠距離が駄目なら近距離で倒すのみっ!」
幽香は芽衣に近づき殴りかかる。
それを芽衣は………
「よっ、ほっ、やっ」
「なんでっ!なんで当たらないの!!」
「いや、私に言われてもね。普通に当たったら痛いから受け流してるの」
「貴方もっ!本気を出して攻撃してきなさいよ!!」
「ん~?じゃあ、新技を披露するね!」
「!?……くっ……」
芽衣は、幽香を突き飛ばすとすぐさまスキマから本を取り出す。
そして芽衣は本を開きページを二枚破った。
≪魔法発動…『停止世界LEVEL3』≫
≪魔法発動…『煉獄炎塔LEVEL3』≫
そう、芽衣の前に表示される。
そして幽香の周りに周りに魔法陣が浮かび上がりそれが幽香を高速する。
「何!?動けないっ!」
そして、下に魔法陣が展開され其処から炎が出て幽香を巻き込み塔の形をした煉獄が完成した。
≪解除≫
数秒後。芽衣は術を解除して幽香を見る。
「…………やばい、火力の調整間違ったかも」
幽香は死んではいないが見るからに重症だ。
「十段階の三段階目だったらこんなもんかな。まぁ、500℃は有ったかもしれないけど」
芽衣が持っている本…いや魔道書は芽衣の手書きだ。この本のページを破るとそれに書いてある術が発動する様になっている。念じれば簡単に解除出来る。そうして芽衣はすぐに解除した。
ページ数はざっと見て数千だ。芽衣により小型化されているので携帯している事も出来る。
それにページを破っても術が終われば元に戻る。
これを使うには芽衣自身の霊力・妖力・神力・魔力のいずれかを消費して使う事が出来る。
さっき使った技は、普通の人間が持っている霊力の二倍程度。消費量が明らかにおかしい。
「いつも通り、傷を『操って』治して。寝かせて置こうっと」
芽衣は幽香を担いで家の中に入る。
「おや、お嬢様。外が騒がしかったですがそちらの方を見る限りまた何かされていたのですか?」
「手合せをしたいって言ったから少し手合わせしただけだよ」
「そうですか。その方は私が寝室に運んでおきますね。それよりも久しぶりに帰って来たのですからゆっくりして行って下さい」
「うん。そうするよ」
私が居間で幽香の傘を修理したりついでにスキマの中を整理していると、
「ただいまです!むっ?これは……母上の感じ!母上~!」
そんな声が聞こえて居間に飛び込んで来た。
其処には相変わらず白黒の巫女服を着ている。
「久しぶりだね、詩音」
「はい!本当に久しぶりです!今度は何処に行って来たんですか!聞かせて下さい!」
「ん~そうだね。じゃあ、最初から話そうか」
「やっぱり、凄いですね。母上は」
「そうかな?」
「そうですよ!一日会っただけの人の為に数十年も費やせる事、中々出来ないですよ」
う~ん。まぁ普通の人はそうだけど私は違うからな~。感覚が麻痺してるのかな。
「お嬢様。ご夕飯が出来ましたのであのお客の方を起こして来てくれませんか?」
「分かったよ」
「それと詩音。料理を運ぶから手伝いなさい」
「は~い」
そういえば幽香はまだ寝てるのかな?
「お~い、幽香~起きてる~?」
「………起きてるわよ」
「良かった。ご飯が出来たから一緒に食べようよ」
「ええ、頂くわ」
そう言い幽香は気怠そうに立ち上がる
「それと、貴方……私の傷を治したの?」
「?…そうだよ、それがどうしたの?」
「いえ、お人よしだと思ってね」
「良く言われるよ」
「でしょうね」
「あはは」
「ふふふ」
「ほら、行こう。私の家族を紹介するよ」
「分かったわ」
芽衣と幽香はお互いに信頼し合えた様に感じる。
その後、皆で食卓を久しぶりに囲んだ芽衣は懐かしながら食べていて誰かと一緒に食べるという事を知らなかった幽香は少し嬉しそうに食べていた。
早朝、まだ4時も回らない頃
「あれ?もう行くの?」
「あら、起きていたのね。ええ、また各地の花を探して歩くわ」
「またいつでも遊びにおいでよ、それと昨日壊しちゃった傘直しておいたよ」
それも特別頑丈に。多分月が落ちてきてそれを受けても耐えられる。
「近くに来たらそうするわ、それと傘ありがとね」
「いやいや、私が壊しちゃったからね」
「それじゃまた会いましょう」
「うん、また会おうね~」
次は……気の向くままに。