神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「岩笠と愉快な兵士達」

大分遅れて申し訳ありませんでした。
その代わりにゆっくりしていってね!


独り立ち

 

私と妹紅ちゃんが旅を初めて百年程経ち、その頃には日本一周を終えていた。

私は旅の間、妹紅ちゃんの心の精神をケアし続けた。

でももう変わった自分に対して物心を付けて妹紅ちゃんは自力で立ち直った。

それだけじゃない。私に力が欲しいと言って来たのでそれなりに妖術等を教えた。

今ではすっかり一人前の退治屋になっている。まだまだ危なっかしい所もあるけれど。

 

「さてと………これからどうしようかね~」

「そうですね~」

 

そう答える人物は癖っ毛のあるショートの髪型。服装はラフな格好をしている。

旅の人数は二人と一匹から三人へと変わった。

ピィが人間へと変わったからだ。いわゆる擬人化という奴。

能力もあるそうだから二倍の驚き。『天を操る程度の能力』だそうだ。カッコいいね。

 

「……芽衣姉が前に言っていた妖怪の山だっけか?其処に行ってみたいな私は」

 

妹紅ちゃんは薬の所為である一定の年齢で成長が止まっている。

それと私の呼び方もちょっと変わった。

 

「ん~?そうだね、妹紅ちゃんが行きたいなら行ってみようか」

「ちゃんはそろそろ止めてくれないか………?」

「う~ん、じゃあ妹紅」

「う……急に呼び捨てで呼ばれると恥ずかしいなぁ……」

 

そんな事を言っている妹紅ちゃん………いや、妹紅を見て私は妖怪の山行きのスキマを開く。

 

「さ、入って入って♪」

「………前にも入った事があるけどさ、何というか……この空間、不思議だよな」

「私は別に~明るくて綺麗だと思いますけどね~」

 

私のスキマの中は紫のとは違い、中で音符が飛び交っている。

その音符同士が当たると音が出る。私がカスタマイズした。

妹紅がスキマに入りそれに芽衣とピィも続く。

数歩スキマの中を歩き別のスキマから妖怪の山の山頂の洞窟前に出る。

 

「此処が妖怪の山だよ。八割方は天狗で占めてて……他にも色々居るよ」

「何だ此処、妖力が半端ないな………伊達に妖怪の山と呼ばれてる訳じゃないのな」

「何ですか此処~私は怖いので隠れてますね~というか妖怪多すぎです~天狗達だけじゃないんですか~?やだ~」

 

ピィはそう言うと鳥の姿に戻り私の髪の中に隠れた。

普通にくすぐったい。

 

「何か鬼でも出そうな雰囲気だな……」      

「あ、大当たり。そうだよ、鬼が居るよ」

「………え?本当か?」

「本当本当。なので折角の機会だから鬼に会いに行こうか」

「でも鬼って確か昔に誰かが退治したって……」

「それ私だよ。退治と云うより懲らしめたの間違いかな?」

「本当に強いのな芽衣姉は」

「何を今更」

 

そんな雑談をしながら洞窟の中に入っていく私達。

此処に来るのも久しぶり!まぁ、今日は用事も有るしね。

 

「あれ?芽衣姉、あそこで酒飲んでるのって……」

「おや?人間………と妖怪かね?こんな所に珍しい」

 

そう言いながら酒を飲んでいるのは鬼の四天王こと星熊勇儀だ。

まだ今はお昼過ぎた辺りなんだけどなぁ……。いつも通りって感じだね。

 

「久しぶり勇儀。元気にしてた?」

「ん?誰かと思えば……芽衣じゃないか!どうしたんだい?」

「いや~、家の妹紅が妖怪の山にいる鬼と戦いたいって言うからさ」

 

当然ながら妹紅はそんな事は言っていない。

勇義も当然ながら嘘だと分かるが私が連れてきた人物。戦わずには居られないだろう……!。

 

「え!?ちょ、芽衣姉!?」

「ほう?それは面白い話じゃないか。なんなら私がその相手をしてあげるよ」

「あ!手加減は勿論必要無いからね」

「ふ、分かってるよ。あんたの連れだしね。私も本気でやらないとな」

 

そう言って盃を置き、準備運動を始める。

 

「ああ!もう!やってやる!」

 

計画通り、後は妹紅がどれだけ実践に対応出来るかだね。

この百年間、普通の妖怪退治(懲らしめてるだけ)で戦えはするけどこれと言って強い相手は居らず本気で戦えてはいない。今回は鬼相手なので妹紅も本気を出すでしょ。

 

 

 

妹紅VS勇儀

 

 

 

最初の攻撃を行ったのは勇義。その自慢の腕を唸らせ妹紅の頭を物理的に飛ばしに来る。

 

「最初から全開だよ!」

 

勇儀は力の余る限り拳を振るう。

妹紅は最初の一撃こそ躱したものの、直ぐに次の攻撃が来るので中々攻勢に出れないでいる。

 

「くっ……このっ……」

 

妹紅はその拳を見て避ける事で中には避けきれず受け流したりもしている。精一杯の様だ。

 

「おいおい、どうしたんだい?避けてるだけじゃあアタシは倒せないよっ!」

「がはっ!」

 

勇儀が放った一撃は妹紅は避けきれずに腹に直撃した。

妹紅は芽衣との組手を思い出し冷静に敵の攻撃に捌こうとしていた。

だが勇義の攻撃はそんなに簡単に捌ききれる物ではない。

勇義は鬼の力に加え速さがある。

 

「くそっ……こうなったら……『火の鳥 -鳳翼天翔-!!』」

「……へぇ…何だやれば出来るじゃないかい!だけど……私を倒すには火力がちっとばかし足りないねえぇ!!」

 

妹紅は炎を身に纏い不死鳥の様に舞い勇儀に突撃する。

だがそれを勇義はそのまま受け止めて妹紅を壁に投げつける。

妹紅は何とか受身を取る。

 

「くっ!化け物めっ!」

(うん。そうだよね、キシが強すぎたんだよね。分かってた)

「どうすれば………」

 

妹紅は自分が出来る事を全て出し尽くしたと思っていた。

自分の最大の技、火の鳥 -鳳翼天翔-をぶつけて倒れなかったのだから。

そんな妹紅に私は一つのアドバイスをする。

 

「お~い、妹紅。あの技試してみなって!案外いけるかもよ?私が昨日、見せた奴」

「あ、あれを!?………わ、分かったよ!!」

「お、何だい。ま~だ出し惜しみしてたのかい。さっさと出しなよ」

 

勇義は相も変わらず余裕の表情を表している。

 

「ふぅ………」

 

それに対して妹紅は目を閉じ完全に脱力して精神を落ち着かせる。

 

 

そして……

 

「はぁあああああ!!」

「!」

 

脱力した状態から一気に攻撃へと移る。

普通の正拳突き、だが強い力を持つ正拳突き。

勇義もその正拳突きに対して拳で返す。

拳と拳がぶつかった時、その攻撃の所為で地面が沈没し土煙が舞う。

 

 

「芽衣姉って……まじスパルタ……」

「そりゃ……大変だなぁ」

 

 

土煙が晴れると其処には二人が膝を付いていた。

妹紅の傷は片腕が消し飛んでいた。

勇義はあの一発で体中に傷が出来ていた。

妹紅がやった技はその気になれば誰だって出来る物だ。

自分の拳に全力を込める。夏に鳴くセミの様に。全力に。

普通の人はその力に耐え切れず腕が吹き飛ぶ。

いや、普通の人はそもそも腕に全力を込められないだろう。

使った後は酷く疲れ体が動かなくなる。正に諸刃の拳。

 

「っ!………いってええええええええええ!!」

 

痛いで住むのが妹紅の良い所、普通の人なら確実に死ぬ。

私はあの技をやっても疲れはしないし腕も吹き飛ばない。

更に連続でやっても出来る。鍛え方が違うんだよ鍛え方が。

 

「まぁ、それはともかくお疲れさん♪良く頑張ったね」

「もう鬼とやるのは御免だ……」

「はぁ、今回は引き分けだねぇ……体中が痛くて敵わないよ……けど本当に芽衣の近くにいる奴は強者揃いだね。家の若い奴らにも見習わせてやりたいよ」

「ふふ、褒め言葉として受け取っておくよ」

「ははは、アタシは疲れたから少し寝るとするよ……また遊びに来なよ。今度は一緒に酒でも飲もう」

「そうだね、とびきりのお酒でも用意しといてよ」

「ああ」

 

勇儀はそう言い終えると洞窟の奥に消えて行った。

 

「さてと、ほら!妹紅。腕も再生した事だし帰るよ!」

「え?少し休ませ……「ほらほら頑張る」……分かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキマを使い私の神社の近くの村辺りに着く。

 

「……私が妖怪の山に行きたいとは行ったけど……いきなり鬼と戦うなんて思いもしなかったよ」

「いや~運が悪かったんだね~(棒)」

「よく言うよ………」

 

そして芽衣達が村に入ろうとすると……

 

『………か…!………けて!……』

 

何処からか掠れた声で誰かを呼ぶ声が聞こえる。

それは村の方からでは無く、村の外から聞こえた。

 

「妹紅、誰かの声が聞こえない?」

「聞こえた……助けを求める様な声が……」

「じゃあ、助けに行こうか」

「ああ、っててて……」

 

妹紅は急いで助けに向かおうとはするが体が先の戦いの反動で思う様に動けない様だ。

 

「大丈夫?妹紅?手伝ってあげるよ」

「あ、ありがとう芽衣姉……って、へ?」

 

私は妹紅の首根っこを掴んで声が聞こえた方向へと投げ飛ばす。

妹紅を投げた方向に私も急いで向かう。途中で妹紅を抜かした様な気がするけど気の性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くぅ……いくら何でも妖怪が多すぎる……子供達を守りながらだと厳しいな……)

「先生!大丈夫!?」

「ああ、大丈夫だ。お前達は決して私の傍を離れるんじゃないぞ!」

 

だが、子供に気にかけた一瞬を妖怪は見逃さなかった。

 

『がああっ!』

「しまっ……」

 

バギィィン

ドゴォ!

 

「!?」

 

子供達を守ろうとする人物の目の前で私は音壁を作り妖怪の攻撃を防いだ。

そのまま横から私が投げ飛ばした妹紅が襲っていた妖怪に対してドロップキックを当てる。

おまけに完璧な着地だ!

 

「本当に無茶苦茶だな、芽衣姉」

「間に合った間に合った。さて反撃開始!妹紅はあの人達の所に行って守ってあげて。攻撃は私がするから」

「分かった」

「さて………始めようか」

 

まずは状況確認。

敵意がある妖怪の数は6匹程度。

そして妹紅に守られているのは……って、アレは……まぁ、いいか。人数は10人程度。

まぁ、楽勝だね。知恵が無いみたいだし。

なので私はスキマからトンファーを出して攻撃に移る。

 

「トンファーキック!」

 

私は妖怪の一匹にキックを当てて飛ばす。

飛ばした先にもう一匹居て巻き添えを喰らいそのまま飛ばされる。

 

「トンファーラリアットー!」

 

攻撃をしようと飛びかかってきた妖怪二匹を腕で地面に叩きつける。

残った二人にはトンファーを投げて終了。楽な戦いだった。

 

「………それってそういう武器なのか?もっとこう……」

「ノリに決まってるでしょ」

「だ、だよな」

 

もっと効果的に使えるよ、トンファー十字固とかトンファータックルとか……。

 

「何が何だか分からないが助かった……」

「礼なら芽衣姉に言いなよ、殆ど芽衣姉がやったことだし」

「いやいや、礼なら妹紅に。それより、怪我はしてない?」

「はい、お陰様で。危ない所を助けて頂きありがとうございます。ほらお前たちも……」

「ありがとう!お姉ちゃん達!」「ありがとう、お姉さん達…」

「それにしても森の中まで何しに来てたの?」

「私は人里で寺小屋の先生をやっていたんだ。それで少し課外授業を……」

「ふ~ん。それにしても怪我が無くて良かったな。私は藤原妹紅」

「私は星羅芽衣だよ」

「申し遅れた。私は、上白沢慧音。さっきも言った通り先生をやっている」

「そうだ、妹紅。この子達を護衛のついでに人里に行きなよ」

「え?芽衣姉は?」

「ん?もう妹が鬼を倒せるぐらいになったから独り立ちなら十分かなと」

「……ああ、だからその為に鬼と」

「という事で……卒業記念として私の髪の中でのんびり寝てるピィあげるね。それじゃ!」

 

そのままピィを渡して私はスキマの中に入った。

 

 

 

「……あの人は一体?」

「あ~それは、歩きながらで話すよ。それよりも早く行こう」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、適当に隙間を開いたのはいいけど……此処って……」

 

目の前には、神社などと言うよりお寺という雰囲気………。

そして太陽がもう沈んでいたからかお寺からは、妖力が微かに感じる。

寺の前にある石柱にはこう書かれている。

 

【命蓮寺】

 

「………だよねー」

 

完全に運命力を持っている私だった。

 





はい、次回は書いてある通り命蓮寺からとなります。
まぁ、そこまでは深く関わるつもりはないので大丈夫だと思います。はい。

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