神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「外道な不比等」

富士の山の所では記述と色々と違いますが芽衣が居るからと言う事でご了承下さい。


蓬莱の薬と富士の山

 

輝夜に会ってから数年が経った………。

その間、事件等も起きず平和な数年間を私は過ごした。

 

 

 

 

 

妹紅ちゃんの場合は一人前に自立出来る様に色々な事を教えてあげた。

 

「料理を作りたい?」

「うん!芽衣姉ちゃんみたいに美味しい料理を作りたいんだ!」

「う~ん……まぁ、そろそろいい歳だし。良いよ、教えてあげる」

「やっt「ただし!」………ただし?」

「やるからには、徹底的にやるからね」

「分かりました!」

 

微笑ましいな~。

 

 

 

「芽衣姉ちゃん!出来た!」

「……ふむ、見た目、匂い、味、まぁまぁ良く出来てるね。これなら文句なしだね」

「やったー!20回目でようやく完成した!」

「良く頑張ったね、今日は一緒に夕飯でも作ろうか」

「うん!」

 

 

 

 

 

 

輝夜の場合は遊びに行ったりが殆どだった。

 

「………………」

「………………」

 

芽衣と輝夜は二人とも見詰め合い引けをとらない。二人の間に緊張が走る。

そして数分の沈黙が経ち、その時、芽衣が動いた。

 

 

 

「王手」

「待った!」

「いや駄目でしょ。それはもうこの勝負で四回聞いたから」

「……負けた……これで47敗…」

 

芽衣と輝夜は、将棋をしていた。勝敗は、芽衣が47戦47勝。圧倒的に輝夜を打ち負かしていた。

将棋は芽衣が木を『操り』作った。

 

「本当に強いわね……芽衣……」

「いやいや、輝夜も惜しい所だったよ。あそこをこうしてこうやれば、ほらね」

「………もう、芽衣に勝てる気がしない……」

「さて………まだやる?」

「くぅ………負けました」

 

 

 

 

 

回想終了。

そんなこんなで普通の日常を送っていたぐらいかな。

まぁ、それはさておき今日の夜、輝夜に月から迎えが来る。

輝夜によると迎えに来るのは兵士数人と永琳だそうだ。

だけど輝夜は帰りたくないって言うから助ける事にしたんだけど、逃げる手伝いは紫に任せることにしたよ。これで幻想郷の住民が増えるね!やったね紫!

それと私は、やらないといけない事があるからね。主に不比等の事とか不比等の事とか………。

 

現在、私は輝夜の部屋にいる。妹紅ちゃんとピィは勿論、お留守番。

ちゃんと私が此処にいる事も知っている。その時輝夜の事を少し話したけど大丈夫だよね?

 

「芽衣……来たわよ」

「そう、分かった…作戦通りに動いてね」

「分かったわ」

 

そう言うと輝夜は庭へ私は部屋で待機。

今回、帝から数百人の兵が送られてきた。けど月人には勝てる訳がない。

実際、戦闘になったら一瞬で消し去られる事だろう。

 

そして夜空に映る満月の真ん中から小さい点、それがどんどん大きくなり月人達の乗った乗り物だと分かる。

そして、空中で止まったと思ったら中から兵士が数十人出てきた。それに続いて永琳も出てきた。

 

(あれ~?意外に人数が多いんだけど……まぁ、いいか)

 

それとは関係なしに輝夜と永琳は抱き合い感動の再開をしている。

 

「永琳……会いたかったわ……」

「ええ、私もですよ、姫様……」

「私は月に帰りたくないわ、一緒に逃げましょう……」

「はい、姫がそう仰るなら……。ですがあの月人の数だと……」

「大丈夫よ、飛びっきりの助っ人……芽衣がいるから。私たちはすぐ其処の森の中に逃げ込めば芽衣の知り合いが安全な所へ送ってくれるわ」

「芽衣が!?……分かりました……」

 

さてと、私も仕事するかな……っていっても終わってるけど。兵士の視角、聴覚を操ってあの月人達がみている屋敷を無くして本物の屋敷は別の方向にあると見せておく。そして屋敷が壊れていくと同時に兵士達の叫び声とかを聞かせておけば勘違いするかな?少し時間が掛ったけど……

 

「それでは、私達を見た地上人を抹殺、及び重罪人、蓬莱山輝夜を確保を開始」

 

そして兵士たちは、屋敷とは別の方向に光線銃の様な物を発射し始めた。

帝からの兵士は何が起こっているか分からないみたいで慌てふためいている。

まぁ、いきなり隣の山が燃えたら驚くよね。

それとは別に輝夜を連れて行こうと兵士が輝夜に近寄る。

 

「おい、早くし……ろ……?」

 

兵士は気づくと弓で腹を撃ち抜かれて落ちて行った。

永琳が弓を放ったのだろう。というかそれ死んじゃう。

 

「貴様!何をしている!絶対に逃がすな!!」

「姫様!今の内に………」

「分かったわ」

 

輝夜と永琳は森の方に行ったみたいだね、それじゃ、私の出番かな!

 

「お前らっ!あいつらが逃げた所に攻撃を加えろっ!」

 

兵士たちは輝夜が逃げた森に銃を発射した。

だが、意味は無かった。なぜなら光線は森に向かわなかったからだ。

そして、光線銃を撃った兵士たちは全員、地上に落ちていった。

 

「お前ら!どうしたんだ!」

「無駄だよ」

「!?誰だお前は!」

「永琳の友人かな?」

「くそっ、誰だか知らんがこれでも喰らえ!」

 

兵士の中の隊長らしき人物は芽衣に向けて光線銃を撃った。

 

「だから、無駄だって。光線を操り貴方に返すよ」

 

芽衣が光線銃を操り最後の月人は地に堕ちた。

まぁ、全員月送りにするけどね。致命傷は避けといたし。

永琳に撃ち抜かれた兵士はっと……居た居た、死んでは……居ないみたいだね。

傷を治して……月に送り返しっと…。スキマは便利だね。ホント。

 

「さて、最後の仕事をしないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜が消えたその夜……

 

「くそっ!儂の輝夜が……」

 

輝夜の屋敷の一室で黄昏る不比等。其処に一人の女性が、

 

「大丈夫ですか?」

「まぁ、大丈夫だ。それよりもお主、中々美しいな……どうじゃ儂の嫁にならんか?」

「それは、それは、とても光栄です……」

 

女性は、不比等に近寄り頭を触った、

 

「む?なんz……ああああああああああああああああああああああああ」

「ちょっと、動かないで下さいね~」

 

その女性……いや芽衣は、不比等の頭に触り絶望などの感情を操り最大にした。

 

(これだと、自殺しちゃうかな?だったら自殺出来ない様に操っておまけで寿命を操って少し長く生きる様にしとこう)

 

「あ、あああ、ああ、あ、あ、あ、死に死、あああああああああああああああああ」

「……まぁ、これ位で許してあげるよ♪じゃあね」

 

そして芽衣は夜の暗闇に消えた。

 

 

翌日、京の町に月人を見た性で不比等は不治の病にかかったと知らされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妹紅が町で噂を聞き、頭を抱える。

 

「なんで……なんで、なんで………なんで!!」

 

妹紅は京の町で知らされた不比等が月人の性で不治の病に掛った事を聞いた。

妹紅からすれば全て、輝夜の所為だと思い込むのは明らかだ。

 

「……そうだ……皆あの輝夜とかいう奴がいけないんだ…あの輝夜って奴が居なかったらお父様は……」

 

一人、欲望……いや復讐を果たそうと決意する……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの満月の日から二週間が経った某日。

一昨日、輝夜から渡された不老不死の薬を焼く為に登山隊が富士の山に向かった。

私の所に知らせを受けたのは一週間程前。何故、私に知らせが来たのかと言うと私に途中までの護衛を頼みに来ていたからだ。まぁ、念の為という事の様だが。

帝は輝夜が居なければ生きてる意味など無いと言い蓬莱の薬を燃やす決断をしたみたいだけど。

まぁ、暇もあってか私は護衛を承諾した。富士の山の現地集合と言う私の勝手な条件のうえで。

そういう事で私は登山隊より遅く出発する事にしていた。

何故ならこの都から富士の山の麓まで普通の人間ならそれで数日だからだ。

それと偶然に妹紅ちゃんが一昨日、家に帰ると急に言い出して朝早くに出て行った。

そんな偶然があるかな?いや、ないだろう(原作的に考えて)。

私が止める理由もないのでそのまま見送った。

十中八九、登山隊の後を追ったんだろうと思うけどね。

 

「まぁ、妹紅ちゃんがしたい事に私が何かを言う理由は無いんだけど。私はお姉ちゃんだしね」

 

ピー

 

私の言葉に反応したのかピィが不安気に鳴く。

 

「ピィはお留守番。大丈夫、妹紅ちゃんと一緒に必ず帰って来るから」

 

ピィ……

 

そうピィに言い町を出てから富士の山に向かい飛んで行く。

妹紅ちゃんは蓬莱の薬……というか壺目当てに向かったに違いない。

なら富士の山を登っている人達……登山隊が居ればその近くに妹紅ちゃんが居るに違いない。

なので私は富士の山の麓辺りで登山隊を待つ。

そうそう、一応退魔師という事なのでそれっぽい服を着て狐のお面を付けてる何となく。

 

 

 

 

 

数十分後、富士の山を登ろうとする登山隊が来た。

私はその登山隊のリーダー的人物、一応護衛の依頼なので確認を取る。

 

「おお、あんたが山に登る護衛をしてくれる退魔師の人だな。俺はこの登山隊のまとめ役の岩笠って奴だ。他の奴の紹介は頂上にでも」

「ええ、宜しく。依頼は護衛、貴方達に『危害』を加える者から守るという事で合ってますよね?」

 

私は『危害』という部分を強調してリーダーの岩笠さんに確認する。

それとこの登山隊の少し離れた後ろの方に人の気配がする。

今は隠れているけれど間違いなく妹紅ちゃんだ。私の事には気づいて居ない様子。

そして岩笠さんはこちらの方を向きながら眼だけを後ろに動かし、

 

「ああ、『危害』を加える奴から護衛してくれ」

「確認しました」

 

どうやら、この岩笠さんも妹紅ちゃんの事に気がついて居るみたいだ。他の人達も同様に。

岩笠さんも強調して言ったという事は『危害』を加えないなら放っておいて良いって事かな。

普通に優しい人達みたいだね。それに……人付き合いが良さそうに見える。

それに「いざとなったら俺とこいつらが……」何かも言っている。

 

 

そうして私との自己紹介を終えると富士の山へと登って行く。

私もそれに続いて登る。殿、一番後ろは私。

私と登山隊が山へと登り始めるとその後ろでもこっそりと一定の距離を保ちながら追ってくる人物が居る確かに妹紅ちゃんだった。私の事を少し警戒している感じだったがそれでも追って付いて来る。

 

登りも後半になり八合目に差し掛かった所で後ろで誰かが倒れるというより座り込む音がした。

先程も言った通り、私が殿を勤めているので私の後ろで倒れる人は登山隊の人では無い。

倒れたのは妹紅ちゃんだ。無理もない。この年で富士の山を何の準備も無しに登れる筈がない。

それに岩笠さんも気づき妹紅ちゃんの所まで引き返し疲れ果てて座り込む妹紅ちゃんに水を渡す。

そうして妹紅ちゃんも加わり登山を再会した。

最後は殆どの兵士が他の兵士や妹紅ちゃんにも励ましの言葉を掛け合いながら山頂まで一気に登った。丁度、日も落ちかけて来ていた。夜までもう少しだろう。

そうして頂上に付き岩笠さんが皆を集めて休憩をした。

その時に妹紅ちゃんが岩笠さんに質問をした。

 

「何でこの山に登っていたの?」

 

どうやら妹紅ちゃんは何でこの山に私達が登っていたのかを知らない様だった。

それで此処まで頑張れる妹紅ちゃんはある意味凄いと思う。

 

「勅命だ。意味は……そうだなぁ……凄い偉い人が直接お願いをしたんだ。分かるか?嬢ちゃんは?」

「私は……山賊。それで貴方達を追っていたけど、とんだ失態をしてしまった」

 

そう妹紅ちゃんは答える。壺を奪おうとしているならあながち間違ってはない。

 

「山賊?………あっはっはっはっはっは!!」

 

岩笠さんが笑い始めるとそれに釣られて他の兵士達も一斉に笑い出す。

 

「いやぁ、お嬢ちゃんみたいな子が山賊なら俺は極悪人だな!!」

「違いねぇ!」

「お嬢ちゃんが山賊かぁ……それなら襲われても良かったかもな!」

「それはお前だけだ、この変態が!」

『あっはははっははは!!』

 

と他の兵士達が雑談交じりに会話を盛り上げる。

やっぱり感じた通りノリが良さそうな人達だ。

そして少し落ち着くと岩笠さんが壺を担いでいた兵士に命令して壺を地面に置く。

岩笠さんは壺に紐を結びつけ始めた。

それを妹紅ちゃんは興味深そうに見ている。いや、不思議そうに見ている。

 

「何しようとしているの?」

「ん?紐を付けて遠くまで投げ飛ばし、壺を火口に入れて焼くんだ」

 

岩笠さんと数人の兵士達が火口に近づいた時、火口から如何にも此処の神様ですよーな感じの女性が現れた。突然の出来事に兵士達は驚いた。中には「ふつくしい……」と声を出す人も。

 

「私は咲耶姫。木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)、この山の噴火を鎮める女神である」

 

それに相対して、岩笠さんが一段と畏まり馴れない口調で事情を説明する。

 

「私は壺をこの霊力のある神の火で焼かなければならない。これは帝の勅命である」

 

そう言うと、咲耶姫は軽蔑する様な何処か殺気を含ませた目で岩笠さんを見るとこう言った。

 

「その壺をこの山で焼かれてしまうと、火山はますます活動を活発にし、私の力では手に負えなくなってしまうでしょう。その壺は神である私の力をも上回る力を持っています。貴方達はその壺に入っている物がどのような物なのか理解しているでしょうか?」

 

兵士達は沈黙する。がそれもひと時。沈黙を破るのは岩笠さん。

もう限界なのかいつもの感じで喋った。

 

「ああ、大体は分かる」

「ほう?それは何ですか?」

「蓬莱の薬。恐らく不老不死の薬だ」

「ええ、そうです。不老不死の薬です。ですが……他のお仲間達は知っているのでしょうか?」

 

咲耶姫は兵士達をぐるっと見渡す。

そして何人かが言葉を発する。

 

「不老不死の薬………噂で流れてたな。他にも成功の薬だとか天才の薬だとか」

「はっきり言って胡散臭すぎるだろ!」

「仮に本物だとしよう………それだけ凄い薬なんだ。きっと苦いだろうなぁ………」

「お前は薬が苦手な永遠の餓鬼だもんな!一生口に出来ねぇな!」

「馬鹿にすんじゃねぇ!な、舐めるぐらいは………やっぱ無理!!」

『あっはっはっははははっは!!』

 

シリアスな雰囲気が消えて相も変わらずノリが良い会話続く。

岩笠さんは予想通りな反応に満足したのか。咲耶姫に向き直る。

 

「でだ、この薬を燃やしたいんだが「なりません」………仕方ない。今日は此処で一晩越すとしよう」

 

そして焚き火をして岩笠さんはその火で壺を燃やそうとするが何故か火が付かないらしいので諦めた。いけると思ったのかがっくりと本気で項垂れる岩笠さんが其処には居た。

それを見てまた兵士達が会話を盛り上げ笑い転がる。

それと私に対して一通りの自己紹介をしてくれた。私は

妹紅ちゃんはそれを心底不思議そうに見つめていた。

 

 

 

 

夜、皆が寝静まった頃。月が雲に隠れたと同時に兵士達に近寄る者が居た。

そして何処からか出した炎を一人の兵士に当て………様として外した。

いや、外れた。

 

「危ない危ない。皆が寝静まった頃に暗殺ですか。怖い怖い」

「……………」

 

その人物は何も喋らない。

そして雲に隠れていた月が見え辺りを照らし出す。

夜襲を掛けたのは女性。木花咲耶姫だった。

 

「神様が人間に対して夜襲ねぇ。面白い世の中になったもんだね」

 

兵士を助けたのは退魔師、依頼で雇われていた芽衣だ。

 

「退きなさい。貴方程度の人間が私、神に勝てるとでもお思いですか?」

「さぁ?やってみないと分からないよ~?」

「戯言を……」

 

そうして私は咲耶姫と朝までデスマッチをしていた。

隙さえあれば兵士達を狙う咲耶姫。本当に神なのかどうか疑うレベルで酷い。

私は基本、逃げと守りに専念して攻撃を一切行っていない。

咲耶姫はそれに苛立ちか怒りか朝になる時には無作為に攻撃を放っているだけだった。

そんな事が起こればそう、周りの地面が抉れてまるで無作為に耕した畑だった。

朝になり周りの異常事態に驚いた岩笠さんと兵士達と妹紅ちゃん。

というかあれほど寝てる体を動かしたりしたのに起きなかったのが凄いよね。

それほど疲れていたのかな?それとも咲耶姫が何かをしたかだね。

 

「どういう事だ……?退魔師の人……何が起こったか詳しく…」

「う~んと……敵襲?」

 

岩笠は敵襲の事についてかそれが起きても寝ていた自分にか汗がだらだらと流していた。

 

「もしかして……俺達が寝ている間、ずうっと?」

「大体は」

 

そう告げるとまた汗を流し、

 

「……助かった」

「いやいや、これが私の依頼だし?お礼を言われる理由は無いって」

「そう言われてもな俺には今、これしか出来ねぇ。本当に助かった。お前らも!」

『ありがとう!!姉ちゃん!!愛してる!!』

「………」

 

兵士達が私に向けてお礼とかその他を言っているその中で妹紅ちゃんが私の事をじっと見つめる。

 

「…………もしかして……芽衣……お姉ちゃん?」

「あれ?ばれちゃった?」

 

妹紅ちゃんに正体がバレたので狐のお面を外していつもの服に戻る。着替え時間、僅か0.2秒。

それを不思議そうに見る岩笠さん。まぁ、そりゃそうだ。

 

「何で……此処に……?」

「知り合いか?」

「まぁね。義理の妹ってぐらい。それよりもどうします?岩笠さん?」

「………こんな所で襲撃が出来るのはアレぐらいだしな。そんなに嫌なのか……此処でこの薬を燃やされるのが」

 

ってそう言えばさっきまで攻撃を出鱈目に打ちまくって居たのに何処行ったんだろ。

 

「ええ、嫌ですよ」

 

………いきなり現れた。さっきよりも落ち着いた様子で。

 

「じゃあ、どうすれば良い?こいつは?俺は月に最も近い所で、この薬を燃やして来いと言われたんだ。ここより高い山があるなら是非教えて貰いたいものだね」

「ならば、良い場所があります。この山より北西へ向かうと八ヶ丘と呼ばれる醜い山があります。そこに私の姉が住んでいます。姉は不死、不変を扱う神ですから、供養して貰うには丁度良いでしょう」

 

此処から北西……八ヶ丘………あれ?妖怪の山だね。

 

「はぁ?八ヶ丘?あそこじゃあ高さが足りないんだろう。この山に比べたら小さい」

 

岩笠さんは呆れた様な表情を見せて落胆する。

 

「いいえ。実は昔は私の山より高かったのです」

「初耳だな、お前らは聞いた事あるか?」

「う~ん………ああ、確かぁ……『富士山と八ヶ岳の背くらべ』って言う民話があったと思います」

 

兵士達の一人が思い出したかの様に答える。

 

「まじかよ……」

「………話を知っているなら話は早いです。山の格としては十分ですし、月までの距離はもしかしたらこの山よりも近いのかも知れません」

「ああ、分かった。じゃあ、さっさと下山して八ヶ丘に向かう計画でも立てよう。お前らー下山の準備だぁー!」

『うーす』

 

格兵士達はテキパキと下山の準備を済ませて支度する。

妹紅ちゃんは何が何だか良く分かって居ないみたいだ。

咲耶姫は何時の間にか消えている。

そして岩笠を先頭に下山していく。

 

「しっかしまぁ、面倒な事になったもんだ。富士の山登るだけで報酬が貰えると思ったら次は八ヶ丘だぁ?あそこは有名な妖怪の山じゃねぇか!!」

 

どうやら岩笠さんも知っていた様だ。

 

「あ~あ、どうにかコレをなんとかしねぇとなぁ……」

「あの………」

「ん?」

 

壺をじっと見ていた岩笠さんに妹紅ちゃんが話しかける。

 

「それ……良かったら私にくれませんか?」

「はぁ!?嬢ちゃん、これは遊びとかそんなんじゃあ「本気です」………」

 

兵士達がざわめき出す。妹紅ちゃんの目は本気と言っている。

 

「良いんじゃねぇすか?岩笠さん。此処で渡しちまえば楽になるっすよ」

「そうっすよ、娘さんの為にも此処は……」

「ぐぐぐ………」

「お願いします」

「んんん…………ああっ!!分かった!ほれやるよ!俺達はしっかりとこの富士の山で薬を燃やした!!その後は何もしらねぇ!!良いな!!」

『うっす!』

 

そう言うと早足でさっさと下山をする岩笠さんと後の兵士達。その姿はもう豆粒程度だ。

妹紅ちゃんの本気さに精一杯答えた結果がアレなんだろう。

やっぱり優しい人だなぁと再認識させられる。

 

「……………」

 

妹紅ちゃんは蓬莱の薬が入った壺を見てじっとしている。

 

「いいの?妹紅ちゃん。それを飲んだら不老不死だよ?」

「…………うん。あの輝夜に復讐出来ればそれで良い……」

「………そう」

 

そして、私が見守る中、妹紅は蓬莱の薬を飲んだ。

次の瞬間、妹紅は喉を抑えてもがき苦しみだした。

髪は白く、眼は血走ったように赤く染まった。

数分間痛みを耐えていた妹紅だったがそのまま地面に崩れた。

 

「……………」

「気絶してる…………薬の影響かな?…………じゃあ、帰ろうか」

 

芽衣は妹紅をおんぶして飛んで帰った。

 

 

 

 

 

京の町に付き自分の家に歩く。ただそれだけ。だが、

 

 

ざわ…ざわ…ざわ…

ざわ…ざわ…ざわ…

 

 

(なんか変に注目を浴びちゃってるな~。妹紅ちゃんの髪が白いからだと思うけど)

 

私は妹紅ちゃんの顔を見る。まだ気絶……というか寝ている。

 

『あの子……妖怪じゃないの?』

『忌み子だ……早く始末してくれよ……気味悪いなぁ』

『あの人は退魔士じゃないのか……?』

 

(聞こえな~い聞こえな~い………)

 

芽衣が数分して家に着いて妹紅を寝かせた。

ピィはちゃんと家で大人しく留守番してくれていた。

 

「………下手に弄ると怖いし寝かせたままにしとこう」

「………う……ん……」

「あれ?起きた、妹紅ちゃん?」

「あ……芽衣姉ちゃん……此処は……」

「此処は私の家だよ。それよりも妹紅ちゃん、体、大丈夫?」

「ん?………あれ?私……髪の毛が……それに……何か分からない力も……」

「ああー……それ妖力って言って妖怪が持ってる力の事だよ」

「え……じゃあ、私は……」

「う~ん、人間……じゃなくて蓬莱人だね。だから残念な事に此処にいる訳にはいかないんだよ。バッチリ目撃されちゃったからね。だから一つ提案。私と一緒に旅する?勿論ピィも一緒に」

 

ピー

 

まぁ、嫌だと言っても姉として無理矢理連れて行くけど。

 

「………うん、行く。だけど芽衣姉ちゃんは良いの?その……私みたいな……じ、人外と一緒にいて」

「う~ん、それを私に言うか。それに……私たちは家族でしょ?血は繋がっていないけど」

「…………うん!!」

 

大きく頷く妹紅ちゃん。少しは元気付けられたかな?

 

「じゃあ、適当に旅でもしようか」

「行く当ては?」

「ん?無いよ?」

「…………」

「旅は目的が無い方が楽しいからね。じゃあ、行こうか」

「う、うん!」

 

ピィー

 

二人は町から出る時、周りの目など気にしないで手を繋いで歩いて旅に出た。

 

 

その姿はまるで…………親子…の様に見えた。

 

 





もう出てこないと思うので不比等や岩笠等について解説。

※藤原不比等
妹紅の事を出来損ないだと決めつけ忌み嫌っていた。

※岩笠
登山隊のリーダー。帝から勅命を受けて富士の山に壺を焼きに行く。
人一倍、人望と優しさ(お節介)が有り人気がある。年齢は約40歳程度。
妻が居り子供が5歳になる時に勅命を受けた。理由は育児費用の為。

※兵士達
岩笠を慕う普通の一般兵士。調子に乗るのがたまに傷。
一人一人個性が有りいつも漫才の様な会話で周りを盛り上げる。
岩笠の事を信頼し慕っている為、彼の周りにいつも居る。
今回も岩笠の為にこの勅命に同行して来た。それと色々な場面で意外に使える兵士達。
報酬は勿論、岩笠に育児費として全て渡すつもりだった。

※木花咲耶姫
性格としては単に激しい。怒ると周りが見えなくなるタイプ。
神>人と絶対的な自信を持っている。
その豪快というか激しいという性格の所為で姉は嫌気を差して八ヶ丘に移住した。

雰囲気的にはHELLSINGのベルナドット隊長とその仲間達的な者と思えば大丈夫。
咲耶姫は……大体史実通り。

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