神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「鬼と人間」

いや~前回は良い戦いでしたね………多分。


宵闇の妖怪,輝夜姫

 

鬼退治をした帰り、私は宴会に参加せず鬼を退治したとの報告をしに京に帰っていた。

 

「ああ、もう真っ暗だね。山登りに時間いっぱい使っちゃったからかな」

 

現在、太陽が見えず確実に夜を指していると分かるが月は出ていない。新月だと察する。

夜だけあってか少し肌寒く感じる。京の町に急ぐ芽衣だが、

 

「っと、その前に…………其処に居るんでしょ?紫」

 

芽衣は飛んでいる最中、声を出す。

すると何もない所に隙間が開き紫が出てきた。

 

「………何で分かったのかしら?」

「微弱だけど妖力を感じたからね。相手に気づかれない様にするならもっと気配を隠さないと」

「はぁ………本当に貴方には敵わないわ」

「それよりも、あの妖怪の山に交渉でも仕掛けに行くの?」

「ええ、そうよ」

「じゃあ、ついでに良い人材を紹介するよ」

「誰かしら?」

「鬼の四天王、それに鬼子母神と……………紫の後ろに居る子だよ」

 

そう言われ紫は自分の後ろに目をやる。

すると其処には金髪の長髪に深紅の瞳。

身長は高めで、白黒の洋服を身につけ、スカートはロングの女性がいた。

紫は気付かなかった様で顔が驚いている。紫とは違い完全に気配を殺していた。

 

「…………貴方、名前は?私はスキマ妖怪の八雲紫よ」

「私は宵闇の妖怪、ルーミア。何で貴方みたいな大妖怪が人間?と喋っているのか気になって少し見に来ただけよ」

「あら、貴方も大妖怪と呼べるほど生きてる様に見えるけど?(………芽衣の言うとおり中々良い人材だわ。私がギリギリ勝てる程度ね。でもこっちには芽衣が居るわ、楽勝ね)」

「じゃあ、私は先に帰ってるね」

「え?………ちょ、ちょっと待って!芽衣!」

「どしたの?」

「貴方も手伝ってくれるんじゃないの!?」

「私は一言も手伝うなんて言ってないよ~」

「くぅ………」

「頑張ってね~あ、そうだ。終わったら私の所に来てね、話したい事があるから。じゃ、交渉頑張って!」

「ええ、分かったわ」

 

私は紫を置いて京に急いで帰る。朝廷の人がまだ起きてればいいけど。

 

「逃がしていいの?あの人間?なら私が食べようかしら……」

「待ちなさい。貴方の相手は私よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「EXルーミアなら勝てるだろうと思ったけど大丈夫かな?紫」

 

まぁ、そもそもEXかどうか分かんないけど。

そんな事を言いながら私は証拠品を朝廷の使い人に提出して家に向けて帰っていた。

 

(証拠品を提出した時の使い人の顔が生きている人間に対して見せる顔をしていなかったけど……まぁ、気にしない。それと良い情報が聞けたし)

 

その情報とは輝夜姫への求婚が此処、明日に行われる事。

 

「今日は早く寝て明日に備えよう」

 

そうして、私が自分の家に着くと中で人が居る様な物音が聞こえた。

戸締りはしてないけど泥棒は入らない筈だ。芽衣の事は近隣でも有名だからだ。

どんな風に有名かと言うと妖怪を素手で倒したとか何もしていないのに妖怪が倒れていく等。まぁ、殆どが事実だから否定しないんだけど。そういう事だから私の家に泥棒は入らない。

だとすると、残るは紫が侵入してるぐらいだけど………何で私の家を知ってるんだろう。

まぁ、家の前でごちゃごちゃ考えても何も進歩しないので普通に扉を開けて入る。

 

「ただいま~」

「お帰りなさい、芽衣お姉ちゃん」

「え?」

 

其処には完全に幼女と化している妹紅ちゃんが待っていた。

 

「え~っと………………妹紅ちゃん。どうして此処にいるの?」

「お父さんに追い出された」

「………どういう事?」

「私ね、お父さんにお茶を持って行ってあげたの。いっぱい考え事してるみたいだったからお茶でも飲んで一息ついて欲しかったの。でも私ね。お父さんにお茶を持っていこうとして転んでお父さんにかけちゃったの………ぐすっ………そしたら……お父さんね……こう言ったの」

 

『~っ!!何をするんだっ!この馬鹿娘!!私がこんなに必死に考え事をしているのにお前はっ!!ええいっ!出てけ!考え事の邪魔だ!!ああ、お前みたいな奴!本当に生まなければ良かった!!』

 

(………うわ……まさに外道。妹紅ちゃんが頑張って気遣ったっていうのに………あの馬鹿)

 

ここ最近、藤原家には噂があった。

藤原家で息子は長男・次男・三男・四男。娘は、長女・次女・三女・四女・五女。

妹紅の存在は世間的には居ない事にされており伏せられていた。

理由は単純。才能が無いからだと、他の息子達はそれなりに才能が有った様で才能が無い妹紅の事を忌み嫌っていた。噂というのは、もう一人子供がいるんじゃないかと言う噂だ。

 

「……だから、家を追い出されたの……」

「そう………辛かったね……もう安心して良いよ。私は妹紅ちゃんの事を嫌いになったりしないし追い出しもしない。此処に居ても良いよ」

「うう……ぐすっ……芽衣お姉ちゃぁぁん!!」

「よしよし」

 

妹紅ちゃんは泣きながら私の胸に飛び込んで来る。

その事から相当、辛かったんだろうと予想が付く。

そして私は妹紅ちゃんが泣き止むまでずっと頭を撫でて上げた。

 

(その考え事ってのは明日にある輝夜姫への求婚の事かな。子供を大事に出来ない親は親失格だね。そんな人が求婚をする権利すらないでしょ……)

 

数十分後、泣き疲れたのか妹紅ちゃんは眠ってしまった。

そして妹紅ちゃんを布団に寝かせて玄関に向かうと、其処にはボロボロになった紫が座っていた。

 

「大丈夫?紫」

「ええ、軽傷よ。服が少しボロボロになっただけ」

 

紫はそう言うが頭から血も出ている。軽傷どころか重症だ。

そんな紫を能力を使い傷と服を回復させる。

 

「服と傷が……!!」

「これで大体は治ったよ。痛い所ある?」

「いえ、大丈夫よ。ありがとう、芽衣。処で話って?」

「あ、話は私の神社と近くの村を幻想郷が出来たら入れといてって事」

「分かったわ……………そういえば芽衣……幻想郷って私、言ったかしら?」

 

紫が当然の事を指摘してくる。でも、

 

「忘れたの?私の能力は『真似る程度の能力』だよ?色んな妖怪にも会ってる」

「………(さとり妖怪の能力ね……本当に力が知れないわね芽衣は)ええ、理解したわ。それとあの宵闇の妖怪、力が強すぎるから弱体化させたわ」

「まぁ、仕方ないね」

「それじゃ、私はこれから妖怪の山に行ってくるわ」

「あ、妖怪の山に行くならキシがいるから神社と村の事を話しておいて」

「あの執事ね。分かったわ、またね、芽衣」

 

そう言って、紫はスキマを使い妖怪の山へ行った。

私ももう寝ようかな。

私は妹紅ちゃんの横に新しい毛布を敷いて寝た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、眩しい太陽の光が部屋に入り込む。

隣にはいつの間にか自分の布団から抜け出し私の腕を掴んで寝てる子。妹紅ちゃんが居る。

 

「こら、妹紅ちゃん。私の腕を掴んでいると起きれないでしょう?」

「う、う~ん………」

 

私が声をかけると分かってくれたのか手を放してくれた。

 

(さてと、顔を洗ってご飯を作ろうかな)

 

久しぶりに人にご飯を作るので私は楽しみでしょうがなかった。

というか妹紅ちゃん……苦手な物とかあるのかな?アレルギーとか。

好き嫌いはしなさそうだし……アレルギーも……大丈夫かな。

 

 

 

 

 

~少女料理中~

 

 

 

 

 

「完成!さてと妹紅ちゃんを起こさないとね」

 

そうして、妹紅ちゃんを起こしに寝室に行くが誰も居ない。

すると居間の方から物音が聞こえる。

きっと起きたのだろう。私は居間へと向かう。

 

「あれ?妹紅ちゃん?」

「あ!芽衣お姉ちゃん!この鳥さんの名前って何々?」

 

妹紅は既に起きていて私に懐いている鳥と遊んでいた。

 

「この鳥の名前?………ごめんね、まだ決まってないんだ……折角だから妹紅ちゃんが付けてあげてよ」

 

随分と鳥と楽しく遊んでいるみたいだし妹紅ちゃんに名づけて貰う。

 

「私が……いいの?」

「良いよ良いよ。私が飼っている訳でも無いし。あ!今お料理持ってくるからね。その間に顔洗ってくれば?」

「うん!」

 

芽衣は台所に料理を取りに行き妹紅は顔を洗いに行く。

 

 

 

 

 

「お待たせ~!どう?美味しそうでしょ?それと名前は決まった?」

「うん!とっても美味しそう!それと名前はピイにしたよ!だってピーって鳴いてるし!」

「ピイ……良い名前なんじゃないかな」

「えへへ」

「さて、早く食べちゃおうか。ピイのご飯もあるからね」

 

ピー

 

「「いただきます!」」

 

私が今回、作ったのは特製タケノコご飯に焼き魚,それに豚汁を食らえた簡単、定食だ。

ピイには新鮮な野菜をあげた。

 

「このご飯!凄く美味しい!」

「ありがとう、いっぱい食べてね」

 

妹紅ちゃんは私が作ったご飯を美味しそうに頬張りながら食べている。

それを見ているだけで嬉しい気持ちになるのは普通の事だと思う。

私を妹紅ちゃんに続いてご飯を食べた。

 

 

 

 

そしてご飯が食べ終わった後。

 

「妹紅ちゃん。お使いに行って来てくれる?メモを渡すからさ」

「うん!妹紅、お使い出来るよ!」

「じゃあ、よろしくね。私は少し用事があるから。お金は此処に置いとくよ」

「いってらっしゃい!」

「いってきます」

 

芽衣は昨日、聞いた輝夜姫の所に向かった。いつもの平城京と比べると随分と騒がしい。

律儀にお偉いさんが多く集まっているみたいなので場所を聞くとすぐに分かった。

 

 

 

 

「おや、これは芽衣様。如何なされましたか?」

 

すると少し歳を取っている門番らしき人が話しかけてきた。

 

「輝夜姫に会いたいんだけど今、大丈夫かな?」

「はい、大丈夫で御座いますよ。ただいまいらっしゃるのは、多治比嶋様・藤原不比等様・阿部御主人様・大伴御行様・石上麻呂様がお越ししております」

 

(藤原ぁ………あの人だけは許さない………)

 

「ありがとう。早速、中に入らせてもらうよ」

「いえいえ、仕事をしたまでですよ」

 

そういうと、門番さんは見張りの仕事に戻った。

何処かの門番とはえらい違いの働きようだ。いや、これが普通なのかな。

 

 

 

 

 

 

お屋敷の中に入ると既に来ていた五人の自己紹介は済んでいた用で今まさに輝夜姫から「難題」が出される所だった。

 

「多治比嶋様は、仏の御石の鉢。藤原不比等様は、蓬莱の玉の枝。阿部御主人様は、火鼠の皮衣。大伴御行様は、龍の頸の五色の玉。石上麻呂様は、燕の子安貝を持って来てください。これらを持って来た方と求婚を認めます」

 

そう言うと、五人は、この「難題」を解くために退出していく。

私は入口近くに居ただけなので普通にスルーされる。

と此処で輝夜の方を見ると目が会う。

 

「あら?貴方はどちら様かしら?」

 

輝夜と目が合うと輝夜の方から話しかけてきた。

容姿はストレートで、腰より長い程の黒髪を持つ。前髪は眉を覆う程度の長さ。

この時代でこれ程の美しさがあれば誰だって求婚してしまうだろう。

おっと、輝夜に質問されたままだった。

 

「私はこの京で退魔士をやってる芽衣。いきなりだけど質問していい?」

「え、ええ。いいですよ」

 

私のフレンドリーさに少し驚いたのか動揺を見せながら答える。

 

「じゃ、直球に………永琳って知ってるよね?」

「!?」

 

すると、輝夜は驚きに満ちた顔で私を見る。

 

「…………側近は全員下がりなさい」

「「「はい」」」

 

輝夜の一言で周りにいた側近たちが退出した。

部屋には私と輝夜だけになった。

 

「貴方……何処まで知っているの?」

「質問は質問で返さない」

 

質問を質問で返すと救急車に顔を轢かれて死んでしまった人が怒るよ…。

 

「っ………ええ、その名前は知っているわ。なら私の質問にも答えて頂戴………貴方は月人なの?」

「いや、違うけど?」

「………じゃあ、なんで貴方は永琳の事を知っているのよ!!」

「古い、古い友人だからだよ」

 

懐かしいよ、あの頃が。数億年ぐらい前だったっけ?

 

「ていう事は…そう……貴方が永琳の言っていた命の恩人ね。今日は何の用で来たの?」

「はっきり言うね。月から迎えが来るのは何時なの?」

「っ!………何でも知っているのね。流石、永琳の友人だわ。そうね数年ぐらい先だと思うわよ?」

「そう……まぁ、今日は帰るけど今度また遊びに来るね」

「………え?遊びに?ってもう居ないし」

 

 

 

 

 

う~ん、後数年かぁ~……。

その時になったら私はまた旅に出るとしようかな。

……妹紅ちゃんは……どうしようかな。またその時になったら考えようっと。

 





ルーミアの出番が少ない?すみません。
今度、会う時はきっと!!何かしらで色々と書きますから!!

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