Harry Potter Ultimatemode EXシナリオ   作:純白の翼

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EX12 メンフクロウはどんな決意を以って戦いに挑むか

 1993年7月7日。ブライトンのロイヤル・レインボー財団本部。ビルの一室には、ハリー・ポッターのプライベートルームが存在している。ここでは、1羽のメンフクロウが飼育されていた。

 

 ナイロック。2年前に、イーロップのフクロウ専門店でハリーが購入したフクロウである。知能は、フクロウにしては異常に高い。人間に換算して、18歳ほどの知能を持っている。

 

 彼は、フクロウの中でも一際自己主張が激しかった。酒、女、金、快楽に対する欲望があり過ぎたのだ。シロフクロウのヘドウィグが好きだったけど、手痛い一撃を与えられて以来、メスのフクロウには一切興味を持つ事は無くなった。代わりに、人間に興味を持った。

 

 そして1991年。自分と心を通わせる人間と出会った。それが今の自分の主人たるハリー・ポッターだ。彼は約束通り、快楽と酒と高級な餌を提供してくれた。だからこそ、ナイロックはハリーの役に立ちたかった。

 

『ダンナ。』

 

『どうしたんだ?金と女はともかく、それ以外はキチンと提供してるぜ?』

 

『そういう事じゃないんよ。俺っち、ダンナの役に立ちてえんだ。何か仕事くれよ。』

 

『う~ん。そうだなあ……あ。1つ頼もうかな?』

 

『俺っちが出来る範囲で頼むぜ。』

 

『俺さ。いつか、ホグワーツの地図を作りたいと思ってるんだ。フレッドとジョージが似たようなものを持ってるけど、完全じゃないんだよ。人間じゃ入れないような隠し通路もあるだろうしね。』

 

『ほほう。それで?』

 

『ネズミを支配下に治めて、ホグワーツの完全な地図を作る。』

 

『ダンナのやりたい事は分かったんよ。良いぜ。俺っちも協力する。食物連鎖の最上位の力で、ネズミをダンナの臣下にするから。1年以内に。』

 

『別に期間はも受けなくて良い。』

 

『こうでもしなきゃ、目標は達成出来ないんだ。やらせてくれ。』

 

 1991年から約1年間は、ホグワーツに住むネズミとの死闘であった。最初の2週間で、70%は制圧完了した。ナイロックにしてみれば、そいつらが弱過ぎなだけというのもあるが。そして今、徹底抗戦をしている最後の30%を攻略しているのだ。

 

『齧歯類舐めんじゃねえぞ!メンフクロウが!!!』

 

ネズミの一団がナイロックの襲い掛かる。

 

『うるせえ!自然界最強種の底力見せてやる!!翼で撃つ!!』

 

 翼で攻撃するナイロック。殺しはしていないが、ネズミの30%程を一気に戦闘不能に追い込んだのだ。

 

『コイツ。我々の数の差をものともせずに……』

 

 ネズミのリーダーが狼狽える。

 

『食いやしねえよ。俺の飼い主は、城の地図の完全版を作りたいんだ。その為に、お前らの力が要る。』

 

『何故、その人間はそんな思考を持ってる?』

 

『ダンナは、そこら辺変わった人間でさ。別に差別意識なんざ持ってねえよ。本当に憎んでいるのは、純血主義者の様な、現状や実力を弁えずに血だけで自分の優位性を誇示する連中だ。闇の陣営や死喰い人は特に。』

 

『敗者に選択権は無い。煮るなり焼くなり、好きにしろ。』

 

『分かった。今から、城内の調査をして貰うぜ。』

 

 僅か半年で、ホグワーツ内部に住んでいるネズミの制圧が完了した。ハリーは結果的に、ナイロックを通じてネズミ達を傘下に加えたのだった。後に、彼らの働きは冒険者の地図という形で成果を残した。

 

*

 

 時は進み、1992年。高級なフクロウナッツを堪能した。地図の製作作業が飛躍的に進んでいるからである。その報酬だ。そして、赤ワインも貰った。

 

『ダンナ。俺っち、タバコが吸いてえ。』

 

『お前、本当にフクロウか?』

 

『酒、女、金、快楽が欲しいんよ。』

 

『そんなもんかねえ?ほらよ。ピース・インフィニティだ。』

 

『そんなもんよ。俺っちはな。お、タバコ持ってんじゃん。ありがとよ、ダンナ。』

 

ナイロックは、ハリーからタバコを受け取り、嘴で咥えた。

 

『そもそも、人間ですら下手すりゃ病気になるんだ。程々にな。尤も、吸わないに越した事は無いんだけどな。』

 

 タバコを喫煙するナイロック。翼を器用に使い、その味を堪能したのだ。後に、フィルチもタバコの虜になったのは言うまでもない。

 

*

 

 今年のホグワーツは危険だ。故にナイロックは、常に外にいた。ハリーの指示に従っているものの、彼はナイロックを大事な存在と認識しているからだ。

 

『ダンナの力になれねえのは悔しいが……』

 

 禁じられた森の入り口にいるナイロック。

 

『この森も調査しようじゃねえか!』

 

 案の定、特攻をかました。これにより、禁じられた森でのナイロックの戦いが始まったのだ。従えたネズミと共に。

 

*

 

 1993年7月。ブライトンのロイヤル・レインボー財団本部。ハリーの部屋。ここで、平和な日々を謳歌しているナイロック。

 

『禁じられた森での戦いが遠い昔の記憶みたいだ。』

 

 結果は、ボロ負けだった。上には上がいる事を突きつけられた。もっと強くならないと。だから夜は、外に出て森などの野性が生きる場所で己を鍛えていた。

 

 そういった場所でどう生き抜くか、そしてどんな行動を取るべきか、いわゆる「生への執念」を習得する為にだ。人に飼われた事で、平穏と代償に薄れていった本能を取り戻す。それが、ナイロックなりに考えた修行方法だ。

 

『どんなに疲れていようが、最終的に生きていればそこで勝利は確定しているんだ。』

 

 ハリー曰く、ここ数年以内にヴォルデモートは復活し、闇の陣営は再び活動を始めるという。その為に、彼はホグワーツ生徒の中でも頂点の実力を持ちながらも、そこで終わりにしなかった。更なる力を身に付けるべく、時間を見つけて勉強や遊びをしながらも修業をしている。

 

『俺っちも、少しでもダンナの力にならないとな。』

 

 主人たるハリーの力となる為に、そして彼に恩を返す為に。だから考えた。文字通り、ホグワーツの動物界の中で頂点に君臨し、来るべき闇の陣営との戦いに備えて行こうと。その為には、全ての動物の力が要ると。

 

 だからナイロックは、この厳しい自然の世界に入り込み、今を耐え忍んでいるのだ。これが後々、ハリー達の助けになる大きなカギになる事を知らずに。

 


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