最近本当に寒くなりましたね、私の所ではこの冬初めての雪が降りました、それでも去年と比べると初雪が遅いような気がします、私が幼い頃は十一月や十二月になると当たり前のように振っていたのですが・・・・・・ここ最近は気象の変化を感じる年が多いですね。
世間では本当に地球温暖化は起きているのか?実は嘘ではないか?と言われていますが気象が昔と比べ変わりやすいというのは実感します。
この気象の変化は人間に原因があるにしろないにしろ、成るべくは人間の原因を取り除けると良いですね。
中国やインドなどのアジア地域は排気ガスによる環境汚染が顕著ですが日本も原発を止めてから火力発電に頼らざる得なくなり排気ガスが増えているのも事実。
だからといって原発を稼働させればいいのかと言われるとそうではなく・・・・・・まずはいかに日本の総電力を減らせるかを考えた方がこの問題の解決は速そうな気もします。
夜になっても昼間の様に明るい都市部を見ているとそんな考えが浮かびます。
それでは第九録更新です。
黙々と山道を進む二人、彼らは商人ではないし村人でもない、さらにいえば人間の里を目指している訳でもなかった。
「良い雰囲気ね・・・・・・」
鈴音はとても良い雰囲気とは思えない山道でそう言った。
「ああ・・・・・人間を襲うには絶好の時間と場所だな」
それなのに結月も鈴音の意見に賛成だった。それもそのはず鈴音と結月はこの山道の雰囲気を褒めたのではなく、逸脱者にとって都合の良い場所と言う意味で言ったのだ。
「響子ちゃんはちゃんと着いてきている?」
鈴音にそう聞かれ結月は後ろの方を見る、距離は離れているもののちゃんと着いてきていた。
「大丈夫、ちゃんと着いてきている」
それを聞いて安堵した表情を浮かべる鈴音。
しかしこれだけ離れていると響子が逸脱者に襲われてしまうのではないか?そう思ってしまうかもしれないが、意外にも逸脱者・・・・・人妖は妖怪を襲わない傾向があった。
妖怪は見た目に反して強力な力を持つ者も多く、うっかりちょっかいを加えてしまうと恐ろしい目にあう可能性があった。
人妖には強さに強弱があり例外もあるが、確かな実力を持つ妖怪の本気の前には勝ち目はないので妖怪に関わる事を極力避ける逸脱者が多かった。
自由な妖怪に憧れ妖怪になった人妖が、その妖怪と関わらないように生きるとはまさに皮肉である。
それでも関わらなければ妖怪の方から逸脱者に襲い掛かる事はあまりないので人間よりかはマシだった。
幻想郷では人間が妖怪になる事は大罪であったが妖怪側にそれを自覚している者達が少ない事や知っていても放置してしまう者が多いからである。
それに響子は幻想郷にいる多くの妖怪に備わった飛行能力を持っているため万が一猿や逸脱者に襲われても空に逃げれば安全だった。猿も空までは追って来られない。
恐怖や不安の本質である妖怪には重力に縛られるという概念が薄いのもあった。
「さて・・・・・そろそろね」
噂をしたら何とやら、鈴音の予想通り逸脱者は現れた。
「全く・・・・・運の悪い旅人もいたものだ、夜遅く出掛けなければ俺達に出会う事なんてなかっただろうに・・・・・」
鈴音と結月の足が止まる。逸脱者の妖力に敏感な守護妖獣の月見ちゃんと明王は唸り声をあげるが肝心の逸脱者の姿は見えない、声の出所は正面の大きな木の枝からだった。
そこには白い毛並みと肌色の皮膚をした日本猿にしてはけた違いの大きさをした猿の様な逸脱者の姿があった。
逸脱者との戦いはこれで二度目だがちゃんとした形を持った逸脱者との対峙は結月にとってこれが初めてだった。
「運が悪い?その逆、運がいいのよ、まさかあなたの方から来てくれるとはね、逸脱者さん」
逸脱者、その言葉を耳にした時、逸脱者の顔が歪む。
「逸脱者だと・・・・・まさか、お前ら」
そのまさかよ、と言っているかのような強気の笑みを見せる鈴音。
結月と鈴音の胸の収納袋から明王と月見ちゃんが現れ結月と鈴音の肩に乗る。
こちらを監視していたであろう猿に逸脱審問官だとばれない様に隠していたのだ。
逸脱審問官だと分かってしまった場合、逸脱者が逃走してしまう可能性があったからだ。
「そう、私達は逸脱審問官よ、人間の誇りと尊厳を踏みにじる逸脱者よ、その大罪命を持って償ってもらうわよ!覚悟しなさい!」
そう宣言した鈴音に対して逸脱者は高らかに笑う。
「人間の誇りや尊厳だと?笑わせてくれる・・・・・・幻想郷に置いて人間は常に搾取される存在、妖怪から見ても動物から見てもだ、真面目に人間をやっているのが馬鹿らしいじゃないか」
逸脱者の言葉に鈴音は反論する。
「でもそれは人間に限った事ではないわよ、人間だって何の罪を無い動物から植物から搾取するじゃない、他の動植物は良くて人間が搾取されるのは可哀相なんて不公平じゃない?自然の摂理は人間も例外じゃないのよ」
そう言った鈴音に対し逸脱者は自らの考えを述べた。
「だが俺は搾取される側から搾取する側に回りたかった、妖怪に支配される側から人間を支配する側になりたかった、だから人間をやめて猿の人妖になったんだ、そしてこの森周辺の猿を配下にした、猿は手先が器用で森の中を素早く移動でき頭も良いし数もいる、この森周辺にある村に住む人間を支配し搾取するには十分な奴らだった、俺は猿のいや、この森の支配者になったのだ」
しかし鈴音はそんな逸脱者の意見など受け入れる気などない。
「支配される側の気持ちを知っていながら支配者になりたいなんてとんでもない人間ね、そんな考え方が多くの関係のない人達を不幸にするのよ、なによりも何故あなたはここを通った二人の人間の命を奪ったの!」
鈴音がそう聞くと逸脱者はフン!と鼻で笑った。
「畑に生える農作物だけじゃ満足できねえ、人間の財産も全て自分の物にしたくなったのさ、支配者と言うのは財があってこそだろう?だから俺は人間を襲う事にした、村から奪う事も考えたが、それよりも効率の良い奴らを見つけたんだよ、村や集落を歩き回る商人だ、奴らは村や集落を周って人間の里で加工した品物を村や集落で売買しそこでしか作られない特産品や装飾品と買い込んで人間の里で高値で売りさばいている、この山道は人間の里に最も直進で行ける道だ、村や集落を周りたんまりと特産品や装飾品を貯め込んだ彼らは急いで帰ろうとこの道を選ぶ、だから俺はここに猿達を配置しここを通ったあの二人の商人を襲ったのさ」
逸脱者の話を聞いた、鈴音は怒りで手を強く握る。
「そんなあなた自身の我儘な理由で二人は命を・・・・・許さない!人間をやめて逸脱者になった罪、罪のない人間の命を奪った罪、その二つの大罪の重さ!死を持って分からせてあげるわ!」
そう言うとニヤリと笑う逸脱者。
「威勢は良いようだな・・・・・・だが・・・・」
逸脱者が指を鳴らすと周りの木々が大きく揺れる。
その直後、無数の視線が結月と鈴音に向けられた。
木々を見上げればそこには数百匹・・・・・二百や三百匹くらいいるのではないかという猿の無数の目がこちらに向けられていた。
「逸脱審問官と言えどこれだけの猿の前にはどうしようもないだろう、数こそ戦いだ、どうだ?足がすくんで仕方ないだろう?幾ら気丈に振る舞っても心の奥では震えているのだろう?」
そう煽る逸脱者だったが、鈴音は強気の笑みを見せる。
「数だけは揃えているようね・・・・・・でも二百匹いようと三百匹いようと五百匹いたとしても私達の敵ではないわね」
あまりの強気発言にたじろいだ様子を見せる逸脱者。鈴音は逸脱者の戸惑いを逃さない。
「そう言えば人間は霊長類と呼ばれる猿から進化してこの姿になったらしいわね、知っていたかしら逸脱者?」
何が言いたい?と言う顔をする逸脱者。
「人間は猿から進化した姿なのに、あなたは猿に逆戻りした、つまり退化したのよ、そのせいで悪かった頭がさらに悪くなったようね、まああなたには退化した猿の姿がお似合いね」
鈴音の煽りに完璧に乗せられ頭に来た逸脱者。
「!!てめえら!こいつらを八つ裂きにしちまえ!肉も骨もバラバラにしろ!」
逸脱者の命令で猿達は結月と鈴音に襲い掛かる。
木をつたい、地面に降りて八方から何百匹の猿が飛びかかろうとした。
その時だった。
ババババババババババーン!!
凄まじい銃声が静かな森に響き渡る。
まるで小銃を複数人がとにかく撃ちまくっているような音だった。
森に響き渡る程の銃声の音は結月や鈴音があの時、聞いた時よりも大きく響いていた。
森が静かだった事も銃声が大きく聞こえた要因かもしれなかった。
とにかくその激しい銃声に驚いたのは猿達だった。
猿達は何処かから響き渡る激しい銃声に驚き怯むと反射的に蜘蛛の子を散らすように森の奥へと逃げ始めたのだ。
「な、何だこの・・・・・お、おい!てめえら逃げるな!戻れ!戻って来い・・・・って」
逸脱者が最後のまで言い切る前に鈴音や結月を囲むようにいた数百匹の猿達はその場から散り散りに逃げていった。
残ったのは結月と鈴音と逸脱者のみ・・・・・。
「一体これは・・・・・・どういう事なんだ」
何が起きたのか分からない逸脱者、いや猟銃を撃ったかのような銃声が森に響いたのは分かる、だが発砲したのは目の前にいる二人じゃない、彼らの後ろに仲間がいて発砲したのか?いや違う、そうであるなら見張り役の猿達が気づいているはずだし、第一銃を発砲する時に見える硝煙(弾を撃った後銃口から噴き出る火薬の燃えた煙)も火花も見えなかった。
それに弾も見る限りでは飛んでこなかった。一体どういうことなのか?
その時彼の視線に逸脱審問官二人の後方で木に隠れながらこちらの様子を伺う妖怪の姿があった。
(よう・・・・かい?)
逸脱者の脳裏に先程の猿の報告が蘇った。
二人の人間の後ろに一人の妖怪の姿あり、と・・・・・。
まさか、そんなまさか・・・・・・。
逸脱者の頭に一つの確証ある推測が打ちだされる。
「て、てめえらの後ろにいる妖怪はまさかお前らのグルだったのか」
信じられない話だった。妖怪と人間が手を組んでいるなんて思いもしなかった。
幻想郷に住む者ならなおさらだった。
「グル?人聞きが悪いわね、手伝ってもらったのよ、あなたの周りにいる猿を追い払うためにね」
そう言って鈴音はニヤリと笑った。
真相は数時間前にまで戻る。
天道人進堂の地下総合施設にある鍛練の間、そこの射撃場に多くの逸脱審問官が集まっていた。
「なるほどな、作戦の内容は分かった、だがいささか大胆だな、妖怪・・・・・しかもよりよって命蓮寺の妖怪をここに連れてくるとは・・・・・・」
蔵人はそう言って目を覆い隠された響子を見る。
「逸脱者の周りにいるであろう猿を追い払うためには、彼女の音を反射する程度の能力が必要なの、手伝ってくれるよね?」
手を合わせ軽くお願いする鈴音。
「僕は鈴音さんと結月さんに協力します、僕にとって命蓮寺云々よりも逸脱者を断罪する事が重要だから、この子が手伝ってくれるのであれば僕も協力します」
修治は一番早く鈴音と結月の作戦に賛同した。
「私も賛成よ、響子ちゃんが協力してくれるのであれば逸脱者を単独にする事が出来るわ、私は寺とか宗教とかそういうのあまり気にしないわよ、重要なのはこの子の気持ちだから」
智子も賛成だった。
「勿論、俺も断るつもりなどない、元より天道人進堂と命蓮寺の関係が良くないのは考え方の違いであって逸脱者は関係ない、そして俺達の仕事は逸脱者を断罪する事だ、逸脱者との戦いが有利になるのであれば、この子が妖怪だろうと命蓮寺の所属であろうと気にはしない」
最後に蔵人も賛成した。これで役者は揃った。
「わりいわりい、遅れちまって・・・・・・まさか射撃訓練に付き合ってくれとは思ってなかったからな」
そこへ竹左衛門がやってくる。肩にはスナイドル銃ではない見慣れない銃を担いでいた。
「竹左衛門先輩、その銃は・・・・・」
先輩と言う言葉に顔をしかめる竹左衛門。
「結月、さっき言おうと思っていたんだが先輩はつけるな、竹左衛門で良い、先輩とか呼ばれるのは柄じゃないんだ、それはそうとこれはスペンサー銃だ」
スペンサー銃、銃床(銃の後部にある肩に当てる場所ストックとも呼ばれる)にある装填孔より弾倉へと銃弾を詰め最後に鉄製のバネを装着し銃弾を薬室へと押し上げるような形にする、まずは撃鉄を起こし引鉄の近くにあるレバーを引く事で銃弾を薬室へと送り撃鉄をさらに起こして引鉄を引き銃弾を発射した後、再び撃鉄を起こしてレバーを引く事で空薬莢を排出し新しい銃弾を薬室へと押し上げるレバーアクション式と呼ばれる機構を持つ小銃である。
この銃はスナイドル銃と違い連発銃で七発も装弾して発射できるため、スナイドル銃よりも早く銃弾も撃つことが出来るが弾薬がスナイドル銃よりも弱いうえにレバーアクション式の銃の中でも初期型に入るため装填機構に故障が多発し、撃つ度に重量が変わるため命中率も悪く、撃ち切った後の弾の装填に時間が掛かるなど、細かい欠点が多く、それが逸脱者との戦闘に影響する可能性があり、惜しくも逸脱審問官の正式装備小銃にはなれなかった。
「弾が何発も撃てた方が良いんだろう?浅野の婆さんに頼み込んだら貸してもらえたんだ、命中率が悪いとか弾の装填が大変とか言われているが今は沢山撃てた方が良いんだろ?」
確かに今回はそっちの方が都合よさそうだった。
「それでこんなにも仲間を集めておまけに子供の妖怪までいる、一体何をするつもりなんだ?」
竹左衛門の質問に結月が頷き答える。
「実は人間の里近郊にある山手村の周辺の森に逸脱者が現れた、逸脱者は夜に活動するためそれを見計らって今夜断罪に向かう、だが逸脱者は森に棲む何百匹の猿を指揮していると思われる、何百匹の猿を相手にすることは出来ない、そこで彼女の力を借りる事にした、彼女、幽谷響子は山彦の妖怪で、音を反射させる能力を持っている、その能力を最大限生かして、ここで銃を連射しその銃声を覚えさせ、襲い掛かってきた猿に記憶させた銃声を再生させ猿を驚かせて追い払い逸脱者を孤立させる、恐らくは猿達は獲物である人間を見つけるため山道を環視しているだろう、恐らく猿達は俺と鈴音先輩の二人だけだと思い込むだろう、だからこそ突如響く複数の銃声に大いに驚くはずだ、人間である俺達と妖怪である響子ちゃんが手を組んでいるとは思わないだろう、それが今回の作戦だ」
顎に手を据える竹左衛門。
「成程な・・・・・確かに良い案だ、そうと決まれば早速始めようぜ」
そう言って射撃位置に着く竹左衛門。他の逸脱審問官も射撃位置に着き始める。
「響子ちゃん、大変だと思うけどよろしくお願いね」
鈴音が響子にそう言った。
「は、はい!任せてください!大変だと思うけどちゃんと覚えてみせます!」
良い返事を貰えた鈴音と結月は射撃位置に着く。
「皆、私の合図で射撃して・・・・・三・二・一、撃て!」
撃鉄を起こして引鉄を引く、撃鉄が倒れ装填された金属薬莢に入った雷管に衝撃を与え黒色火薬を引火させ燃焼、その勢いで銃弾が放たれる。
的を狙わずにとにかく排莢、装填を繰り返し撃ちまくった。
大きな銃声が幾つも重なり合うように射撃場に響いた。
結月も訓練施設での事を思い出しながら素早く装填、発射、排莢、また装填を行った。
「撃ち方止め!」
その合図と共に皆が撃つのをやめる。銃声が鳴り響いていた時とは打って変わって静かになる。
「・・・・・響子ちゃん、ちゃんと覚えられた?」
強く確信のある頷きをした響子。
「はい!大丈夫です!」
それを聞いて鈴音は口元に笑みを浮かべた。
「頼りにしているよ、響子ちゃん」
作戦は大成功だった。
逸脱者の支配下にあった猿達は突然の銃声に驚き親玉を置いて逃走し、思惑通り逸脱者を単独にする事が出来た。
「ちっ!・・・・・・前々から単純だと思っていたが使えねえ奴らだ」
逸脱者はそう言葉を吐き捨てた。逸脱者は今、猿の人妖になった事を深く後悔しているはずだ。
「そうね、あなたを置いて逃げ出すなんて・・・・・いえ、むしろ猿達はあなたを見捨てて逃げる程、あなたの事を大して信頼してなかったのかもしれないわね」
鈴音は逃げ出した猿よりも残された逸脱者を馬鹿にしていた。
その意図を分かってなのか、頭に血が上っている様子の逸脱者。
「さて、お仲間の猿はみんな背を向けて逃げていったわよ、どうするつもり?私達と戦うの?それともあなたも仲間の猿同様私達に背を向けて逃げるのかしら?」
鈴音のその言葉についに逸脱者は完全に冷静さを失った。
「てめえらなんぞ俺一人でも十分だ!覚悟しろぉ!逸脱審問官!」
逸脱者は結月や鈴音に向かって飛びかかった。
結月と鈴音は素早く後ろに後退する。
そこへ逸脱者が地面を揺らし砂煙を起こす程の衝撃で着地した。
「体がバラバラになるまで切り裂いてやる!」
逸脱者は指先から鋭く長い爪が生える。
それを振り上げて逸脱者は結月と鈴音に襲い掛かった。
「は、早くここから離れなきゃ・・・・・」
響子は鈴音に自分の務めが終わったら早くその場から逃げるよう言われていた。
逸脱者に狙われないために、そして逸脱者との戦闘に巻き込まれないようにするためだ。
山道を後戻りする響子だったが突然、横から現れた手に掴まれて引きずり込まれた。
「ん!?んんうん!?」
何が起きたか分からないまま口を塞がれた響子。
とにかく逃れようと暴れた。
「静かにしなさい、響子」
静かだがしっかりと聞こえた、聞き覚えのある声に体の動きが止まる。まさかと思い上の方を見るとそこには一輪の顔があった。
(い・・・・・一輪さん?)
何故ここに一輪の姿があるのか、響子には理解できなかった。
「響子が心配でこっそり着いてきたのよ、とりあえず無事で良かったわ」
そう言って一輪は雲山の雲を周囲に展開する。
見た感じは千切れ雲が一輪と響子の周りを漂っている感じで何とも頼りなさそうだが実際は近づく敵に対して千切れ雲が拳になって襲うようになっている。
雲山は怪力自慢の妖怪なので小さな拳でもその気になれば骨折させるほどの威力があった。
「これで、万が一逸脱者や猿が襲ってきても安心ね」
そう言って一輪は木陰から逸脱者の戦いを覗く。響子も鈴音や結月の事が心配になって覗いた。
「逸脱者・・・・・可哀相だけど生まれる場所と時間、そして道を間違えたようね」
一輪も昔、人間から妖怪になった人妖なので逸脱者をあまり責める事が出来なかった。
最も人間だった者が無関係な人間を襲って殺した事はとても看過できるものではないが、それでも憐れみを感じずにはいられない。人間が妖怪に憧れを抱くのは幻想郷ではある程度は仕方のない事だった。(なりたいかどうかは別として)
だが恐らく自分も逸脱者と戦う事になったら逸脱者を殺す事になるだろう。
それは妖怪と人間の均衡を保つためでもあったし「妖怪」である自分にとっても都合の良い事だからだ。
(私達妖怪は人間の恐怖や不安が無ければ生きていけない、これは仕方のない事なのよ)
だから一輪は逸脱者に対して同情をする事しか出来なかった。
第九録読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか?最近お金に関して色々考える事があります。
多くの人間がお金の事になると無心します、もっとお金が欲しい、もっと蓄えが欲しい、お金はあるだけ良い・・・・・・確かにお金があれば様々な事が出来るし使えば幸せにもなれるかもしれません。
ですがお金自体があっても幸せではないと私は考えています、お金は使う物であり何も理由もないのにため込むのは只の宝の持ち腐れです。
老後が心配だから、家や車など高額な物を買うのに必要だから、何か目標があってため込むのは悪い事ではありません、ただ何となく特に意味もなく溜め込むのは無駄かもしれません。
お金は使わなければ腐っていく、勿論腐るのはお金ではありません、人間の心です。
特に理由はないのにお金を溜めているといつしかもっとお金があればと考え欲深くがめついなりお金がある程度溜まってもなくなったらどうしようという不安がさらに蓄えを増やそうと考えお金に執着するようになります。
お金に執着するようになった人間の周りに人は集まるでしょうか?本当の幸せはやってくるのでしょうか?お金に魅入られないよう皆様も気を付けてください。
それではまた金曜日に。