人妖狩り 幻想郷逸脱審問官録   作:レア・ラスベガス

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こんばんは、レア・ラスベガスです。
最近何となく図書館で三銃士を借りて来て読んで知ったのですが三銃士の主人公のダルタニャンは三銃士のメンバーではなくダルタニャンと深い関わりのあった三人組の銃士が三銃士と呼ばれていてその三銃士にダルタニャンを加えた四人が恋に冒険にと活躍する物語だった事に驚きました。
アニメや漫画では三銃士の部分が独り歩きしまるで三銃士自身が三銃士の主人公に置かれていたかのような作品が多い中、やっぱりどれだけ聞いた事ある作品でもちゃんと原作は読まないといけないなと思いました。
それでは三十一録更新です。


第三十一録 船底を伺う二又の復讐者 十

結月達が逸脱者の断罪した時、崖の上から見守っていた村人達は驚きからしばらく声を出ず唖然とした様子だった。

そして互いに顔を見合わせ自分が見た光景が夢や幻でない事を確認する。

「終わった・・・・・・みてえだな」

一人の静寂を打ち破るだけの勇気ある村人がそう口にするともう一人の村人も喋りはじめる。

「やった・・・・・・やりやがったぞあいつら!本当に人妖を倒しやがった!」

一人の村人の喜びの声と共に他の村人達の顔にも笑顔が浮かび喜び始めた。

「まさか本当にやっちまうなんて、やっぱり逸脱審問官と名乗るだけの事はあるな」

ある村人は断罪された逸脱者の傍にいる逸脱審問官と守護妖獣を見て感心していた。

「逸脱審問官は無事逸脱者を断罪したのね、仏様はやはりあの方々を見捨てはしなかったのね」

結月達の無事を必死に祈っていた仏教徒の女性は無事逸脱者を断罪し結月達が生きていた事を仏様に感謝していた。

「そうだな、だが仏様の力だけじゃない、あの若者達は臆することなく自らの力と勇気で逸脱者に挑んで勝利したんだ、仏様はそっと彼等に力添えをしてあげただけさ、あの若者達にも感謝しないとな・・・・・」

ええそうね、と答え仏教徒の夫婦は村の危機を救った結月達に感謝していた。

「すげえ・・・・・あんな化けもんを倒しちまうなんて・・・・・・オラはてっきりもうだめかと・・・・・・」

極度の緊張から解放され安堵の表情を浮かべる男の顔には汗が滲み出ており周りの村人はそれを軽く馬鹿にしていたが内心は皆男と同じ意見だった。

「悲しいなあ・・・・・・おぞましい姿をしていたとはいえあれは小三郎のなれの果てだと思うとな・・・・・・せめて先に逝った与助や重信と共に安らかに眠ってくれよ」

喜ぶ村人がいる一方で同じ漁師仲間の中には例え恐ろしい姿になったとしても憎しみが狂気へと変わり翻弄されそして最後は惨い死に方をした小三郎やその小三郎に殺された与助や重信を偲ぶ者もいた。

反応は様々だがとにかく村の脅威となりうる存在がいなくなり村人達は緊張と絶望から一転して緩やかな雰囲気になっていた。

しかしそんな中、未だに驚きを隠せない表情を浮かべている二人がいた。

「倒したんだよね、結月さんと鈴音さん本当に倒したんだよね?」

自分の見ている光景が信じられず友人である影狼にそう聞いたわかさぎ姫、一方の影狼も今自分の目を通して映る光景が事実である事がにわかには信じられなかった。

「倒した・・・・・のだと思うわ、逸脱者の首は全て斬られたし体は息の根が止まっている様に見えるしね」

影狼の言葉を聞いてわかさぎ姫も自分の見ている光景が決して幻ではなく事実である事を理解する、それは影狼も同じだった。

「結月さんと鈴音さん、本当に逸脱者を倒したんだね・・・・・」

うん、と聞こえるか聞こえないかの境目の様な声でそう呟いた影狼、二人の気持ちは複雑だった。

結月と鈴音が無事生還出来た事は喜ぶべき事であり緩葉川にいたであろう逸脱者が倒された事を安堵している一方でかつて多くの人間を蹂躙し死屍累々を築いてみせた化物と同等の力を持っていただろう逸脱者を倒してしまった結月と鈴音に言いようのない恐怖を覚えていた。

「あれが・・・・・・逸脱審問官なんだね」

わかさぎ姫と影狼は逸脱審問官が戦っている人妖は人を襲って食べる妖怪よりかは恐ろしくないものだと思っていた、否願っていたというのが正解だろうか、昔話に出てくる三つの首を持つ化物もきっと話が膨張されたものだったのではないか、そんな思いも心の何処かにあった。

だが実際現れた逸脱者は昔話通りの姿形をしておりその強さも昔話通りの凶暴さだった、その恐ろしい逸脱者の姿を間近に見てわかさぎ姫も影狼も村人同様人間なんかでは勝てないかもしれないと思ってしまった。

だが結月達はそんな絶望など微塵も感じずむしろ僅かに見える希望に目を向け戦いを挑み逸脱者の攻撃を守護妖獣との息の合った連携で避け続け戦術で逸脱者を罠に嵌め好機を作りここぞとばかりに攻撃に転じそして見事逸脱者を断罪して見せた。

人妖という人間よりも凌駕した力を持つ存在を彼らは知恵と力と勇気で上回って見せたのだ。

その姿は人間の可能性の証明であり人間の道を外れてしまった彼等に対しての否定でありそれは逸脱審問官の掲げている理想だった。

守護妖獣という妖怪の助けもあったのは確かだがそれを踏まえても結月と鈴音の活躍は人間の本来の強さの表れだった。

そんな人間の可能性を証明してみせた結月と鈴音を見て影狼とわかさぎ姫は込み上げてくる様々な感情を一つの言葉にする。

「「人間って怖いわ~・・・・・」」

それは先程逸脱者に向けて言った時とは違い人間の可能性に感心する一方で人間の底知れなさに不安を抱く様な感情が込められていた。

 

村人達が崖下から降り逸脱者を取り囲むように見つめる頃には太陽が川向こうの山に沈みかけ日陰が村のすぐそこまで迫っていた。

この村の夜は早い、だが逸脱者を断罪して今、彼らは安心して夜を眠る事が出来るだろう、息の根が止まっている逸脱者が隣にいる事を許容できればの話だが。

「逸脱審問官の皆さん、我らの村を救っていただきありがとうございます、おかげで村は安全となり漁師達も不安なく漁に出掛ける事が出来ます」

半日村の村長のその言葉に結月達は誇る事もなく謙虚に答える。

「人として当然の事をしただけですよ、逸脱審問官は逸脱者を断罪し幻想郷の秩序を守るのが目的ですから、私達は光に照らされた人間の道を歩む人間の番人でありその責務を果たしただけです」

地位や名誉が欲しい訳でもない、幸福や金銭が欲しい訳でもない、逸脱審問官にとって人間の道を外れた逸脱者を断罪するのは人間としての義務なのだ。

「そうだ、逸脱者を断罪する事は俺達の仕事だ、感謝される程でもない」

とはいえ、それで納得できる人はいないだろう、納得できなくとも良い、感謝したいなら感謝すればいい、自分達にとっては感謝されてもされなくても逸脱者を断罪するのだから。

そんな結月達の姿を影狼とわかさぎ姫は遠くから見つめていた。

「人間って怖い存在なんだと思っていたけど、結月さんと鈴音さんを見ていると人間ってそれだけじゃないと思えるんだ・・・・・・・怖いのは今でも変わらないけど」

わかさぎ姫にとっての結月達との出会いは人間の魅力を少しだけ惹かれたのと同時に人間の怖さを再確認する出来事だった。

「そうね・・・・・・人間は怖い生き物だという認識は変わらないわ、だけど怖い人だけじゃなく優しい人や厳しい人、信念の強い人や弱い人、素直な人や疑り深い人、色んな人がいる事を教えて貰ったわ」

考え方、価値観、性格まで違う人がいるからこそすれ違いが起き恨みは生まれ争いが起きてしまうのだろう。

だがそれは同時に人間とは一言で表せるような単純なものではなく複雑であり一概に人間とは何かと言えるものではないという事であり影狼の中にあった人間への考え方にも変化をもたらしていた。

「そうだね・・・・・・もしかしたら人間と仲良くなる事も出来るのかもしれないね」

勿論、今すぐにそれが出来るとは思っていないし人間の怖さを再確認した今、わかさぎ姫も影狼も素直に人間を信じる事はできなかった、しかしもし結月や鈴音の様に妖怪だからと警戒せず受け入れてくれる心優しい人間が現れたとしたらもし自分達に一歩踏み出す勇気があるならば人間と友達になる事も出来るかもしれない思いはあった。

以前の彼女達では考えられない事だっただろう。

「妖怪も色々いるなら人間も色々いるのね・・・・・・」

今日という日は自分達にとって忘れられない出来事になるだろう、もしかしたらこれがきっかけで何か変わるかもしれない、そんな思いが彼女達にはあった。

だが、これで全て終わった訳ではない、結月達にはまだやらなくてはいけない事があった。

「逸脱者は断罪された、だが逸脱者の脅威が去った訳ではない、当分の危機は去っただけだ、逸脱者を生み出した元凶を倒さなければ終わった事にはならない」

結月のその言葉に村長はどういう事だと問い詰める。

「実は小三郎は逸脱者になるためにここから上流にある悲願の滝と呼ばれる滝から身を投げてその滝壺に棲んでいるとされる滝壺様と呼ばれる化物から力を貰って逸脱者になった可能性が極めて高いわ」

滝壺様、その言葉を聞いた村長は驚きの表情を浮かべ額からは冷や汗が出ていた。

「滝壺様だと・・・・・・・・確かにあの滝壺には化物が棲んでいると噂されていたがまさか本当にいるとでもいうのか・・・・・・」

どうやら村長も滝壺様の話は知っているようだった、しかし驚いていた村長はすぐに落ち着きを見せる、その様子は何かを察し理解したようにも見えた。

「だが・・・・・恐らく本当なのだろう、お主達が嘘を着く訳もない、それに冗談やまやかしでそんな事を口にする訳がない、確かな自信があるのだろう、実際わしの若い頃も同じ村人の何人かが悲願の滝で不可解な経験をした者もいたし実際わしも悲願の滝で滝壺から背筋が冷えるような視線を向けられた経験がある・・・・・・わし自身は気のせいだとは思っていたのだが私が村長になって初めにやった事は悲願の滝に近づく事を禁止した事だ、化物が潜んでいるかどうかは知らんが何かあっては遅いからな・・・・・・」

白髭を触りながらそう語った村長。

「・・・・・小三郎が一体何処で滝壺の化物の力を貰える話を知ったかはどうでもよい、復讐は大きな原動力だ、恐らく復讐する方法を血眼になって探した結果なのだろう、問題は滝壺の化物だ、滝壺の化物は人妖と違って真正の妖怪、それも只の人間だった小三郎をあそこまでの化物にした所から考えてみても実力は逸脱者よりも上である事は確か・・・・・・お主達はそんな化物にも挑むつもりか?」

大分力の入った声でそう尋ねた村長、結月達は無傷で済んだとはいえ逸脱者の力は相当なものであり断罪できる確率は六~七割程度だっただろう、もし妖怪がそれ以上の力があるなら倒せる勝率は逸脱者よりも低いだろう、勝率が五割切っている戦いは余程の事がない限り避けるべき戦いであり兵書に置いても勝率が八~九割の戦いをするのが基本であるからだ、しかし意外にも鈴音は首を横に振る。

「逸脱者が幻想郷に置いて断罪されるべき存在ならそれを意図的に生み出してしまった妖怪もそれ相当の大罪を背負っているのは確かよ、ただ私達、逸脱審問官はあくまでも道を外れた人間を断罪するのが仕事・・・・・妖怪退治は妖怪退治の専門家に任せる事になっているわ」

妖怪の楽園とされる幻想郷に置いても妖怪が守らなければ規則は幾つか存在する、その中でも重罪に値する規則に意図的に幻想郷に置いて大罪とされる逸脱者を生み出してはいけないというものがある、もしそれを破ろうものなら例え幻想郷に指折りの妖怪だとしても罪を免れる事が出来ず、妖怪としての存在定義を消される・・・・・・つまり妖怪に対して決定的に『死』が与えられるとされている。

「そうでしたか・・・・・・・確かに妖怪の事なら妖怪退治の専門家の方が利はある、だがあれ程の逸脱者を生み出す妖怪となればそれこそ貴方達同等の妖怪退治の手馴れでなければ返り討ちにあうだろうて・・・・・・」

流石は村の村長を務めている事だけのある洞察力だ、勿論結月達もそれは分かっていた。

「とりあえず一度天道人進堂に戻って鼎様と相談して逸脱者を断罪した事や妖怪が関わっている事を報告しないと・・・・・、後は鼎様が滝壺様を断罪出来そうな信頼できる妖怪退治の専門家を後日悲願の滝に派遣する事になると思うわ」

逸脱者を生み出した元凶がいる限りこの案件は終わった事にならないだろう、だがここから先は自分達の仕事ではなく妖怪退治の専門家の仕事だった。

件頭が逸脱審問官に願いを託すように今度は逸脱審問官が妖怪退治の専門家にその願いを託す番なのだ。

とりあえず自分達の仕事はこれで終わりか、そう結月が思っていた時だった。

「あら珍しい、私よりも先に鈴音が人妖狩りを終わらせているなんてね、やっぱり部下が出来ると上司としての期待に応えなくちゃいけない緊張感から人一倍頑張る様になるからなのかしらね」

聞き覚えのある声、もしやと思って声が聞こえた方の空を見上げるとそこにはゆっくりと降りてくる博麗神社の巫女である霊夢の姿があった。

「霊夢?なんでここに?」

何度も顔を合わせているせいか鈴音の顔に驚きこそないが何故霊夢がここにいるのか分からない鈴音。

半日村の村人達も突如空から降りてきた可憐な少女に姿に気づいてざわついた。

何故可憐な人間の少女が空から降ってきたのか理解できていない様子だった。

村人達にしてみれば逸脱者は現れるわ逸脱審問官はやって来るわ妖怪も関わって来るわ博麗の巫女が空から降って来るわで心が休まらないだろう。

「何で?特に理由なんてないわよ、何となく空を飛んでいたら白い大きな肉の塊を見つけたから近づいたら貴方達がいたから何となく察しただけよ、理由なんて絶対に必要なものじゃないでしょ、理由を求めたがるのは人間の悪い癖よ」

そう語りながら地面にふわりと着地した霊夢、手にはお祓い棒が握られておりそれを肩に担ぐ様に乗せる。

突如現れた博麗の巫女に村人達は彼女が何者なのかざわつくなか、わかさぎ姫と影狼は霊夢の姿を見て顔を青くする。

「影狼ちゃん・・・・・・・もしかしてあの姿、博麗の巫女じゃない?」

人間達にとってはあまり知られていない博麗の巫女だが妖怪達にとっては知らぬ者がいるのかと思われるくらい有名な人だった、特に幻想郷に置いて下位に甘んじる妖怪にとっては彼女と会った事が無くても彼女の一目見るだけで分かる程の話を聞かされていた。

「嘘!でもあの姿・・・・・・間違いないわ、博麗の巫女よ、出会ったら最後、妖怪でも神でも仙人でも完膚なきまで叩きのめされると言われている恐ろしい人間よ」

わかさぎ姫と影狼は全身に寒気を感じていた。

何故なら彼女は機嫌が悪い時、外に出掛け出会った妖怪を手あたり次第退治して鬱憤を晴らしているとされ例えそれが何も悪い事をしていない妖怪でも大人しい妖怪だとしても容赦なく叩きのめす恐ろしい巫女として妖怪達の中ではまことしやかに語られていたからだ。

「でも何でここに博麗の巫女がいるのよ・・・・・・もしかして機嫌が悪くて憂さ晴らし出来る妖怪を探してここに・・・・・・?」

もしそうだとしたらもし自分達がいる事が霊夢に知られたら拙い事になるのではないか?自分達がその標的にされるのではないか?そんな不安が込み上げてくる。

「わかさぎ姫、まだ霊夢はこっちに気づいていないわ・・・・・今のうちに退散するわよ」

わかさぎ姫は村の人々が逸脱者と博麗の巫女に気をとられている内にこっそりと誰にも気づかれない様にその場を後にした。

「確かに霊夢の言う通りだけどそれを言ったら霊夢も同じ人間じゃない・・・・・まあ、私が言える事じゃないけどさ、それにしても何の理由もなしに外に出掛けるなんて事はないと思うんだけど・・・・・もしかして博麗神社にいても暇だから暇つぶしに外にでも出掛けたとか?そんな事は流石に・・・・・・」

軽い冗談のつもりでそう言った鈴音だったが霊夢は少し不機嫌な顔をする。

(・・・・・・もしかして図星なのか?)

霊夢の顔を見てそう思った結月、鈴音も少しひきつった様な笑いを浮かべる。

「しょうがないでしょ、今日は誰も尋ねに来ないし神社の掃除はもう終わったし休憩だって一時間も長くとっていたのよ、他に何かする事あるの?」

仕事しろよ、結月と鈴音の脳裏にその言葉が浮かぶがあえてそれは口にしなかった。

本来なら霊夢に課せられた使命を考えるならば人間の里や村や集落を周り妖怪に困っている人を助けたり御札を売ったりお清めをしたりして村人から得られる報酬で生活を送るのが本来の仕事である。

だが霊夢はめんどくさがりやであり気分屋でもあるためそのような地道な仕事はしないので当然時間に空きが出来てしまうのだ。

異変の解決は遅かれ早かれちゃんとやる所を見ても使命自体を放棄している訳ではないが、やはり霊夢は地味な仕事はあまりやりたくないのだろう。

そのせいでいつも生活は困窮気味だとも言われている。

「そう言う貴方達も今日やる事がなかったからこそ件頭に情報を貰ってここに来て人妖を倒しに来たのよね?暇していたのは同じじゃない?」

そう反論する霊夢だが用事があったとしても人妖が出たら人妖の断罪を最優先すべきなのが逸脱審問官でありその時点で差異があった、しかも逸脱審問官にとって逸脱者がいない時は鍛練こそ仕事なので神社でゴロゴロしている霊夢とは大違いである。

勿論霊夢も屁理屈を承知でそんな事を言っているのは確かだがそれにしても失礼な話ではある。

「まあ、実際はもっと複雑なんだけどね・・・・・・件頭から逸脱者が現れた可能性があるから現地で調査してくれと頼まれたからこの村にやって来て守護妖獣の力を借りて現地調査をしていたんだけど、その道中、二人組の妖怪と出会ってその二人が持っていた物に逸脱者の妖力が付着していてこの村で起きていた行方不明事件が逸脱者の仕業だと分かり逸脱者を河原に誘き寄せて激闘の末断罪したのよ」

鈴音の説明を興味無さそうな感じで聞く霊夢、霊夢にとって済んでしまった事など大して興味ないのかもしれない。

「激闘ねえ・・・・・・自分で激闘と言ってしまう戦いなんて実際は大した事なかったり膨張してあったりするものよ」

別に霊夢は煽っている訳でも見下している訳でもない、自分の考えを率直に述べているだけのだ。

「何だと!この人達は俺達の村のために命懸けで戦ってくれたんだぞ!何も見てないお前が何を偉そうな事を言っているんだ!」

意外にも霊夢の言葉に反論したのは村人達であった、彼らは影上から結月達の戦いを見届けており村人にとって結月達は村の危機を救ってくれた存在だった、だからこそ後からやって来た癖に結月達の戦いに疑問符を投げかける霊夢の態度に反発したのだ。

そうだ!そうだ!誰がどう見ても激闘だったぞ!お前の様な礼儀知らずは出ていけ!

多くの村人が霊夢に向かって野次を飛ばしていたが、一方の霊夢は怯える事はなくしかめっ面をするだけだった。

「観客の多い事ね、激闘だったは確かようね、言葉は撤回するわ、私の事を悪く思いたいのであるなら好きにしなさい・・・・・・そういえば逸脱者の証拠を持っていた二人組の妖怪って一体何者なの?」

反省しているのか、反省してないのか、曖昧な態度を取りながらそう聞いてきた霊夢。

「ああ、その二人組ならあそこに・・・・いる・・・・・はず」

結月はわかさぎ姫と影狼が先程いたと思われる場所を見るがそこには誰もいなかった。

「おかしい・・・・・・さっきまであそこにいたはずなのに」

村人達は辺りを見回すが何処にも彼女達の姿はなさそうだった。

「もしかして霊夢は機嫌が悪い時、妖怪退治で憂さ晴らしをしているってもっぱらの噂だから貴方の姿を見て逃げたんじゃないかな・・・・・?」

もしかして、とつけた鈴音だったが恐らくはそれが真相ではないかと結月も思っていた。

「困ったものね、誰がそんな噂を広めたのかしら、機嫌が悪い時は強く当たっていただけなのに」

つまり霊夢の話を聞く限りでは機嫌が悪いから手あたり次第妖怪を退治しているのではなくそうでない時も手あたり次第妖怪退治をしているようだ。

(末恐ろしい女だ・・・・・・)

霊夢は見た目こそ可憐で清純そうな乙女なのに性格は優しさの欠片も感じられなかった。

とはいえ人間の脅威である妖怪を退治する仕事柄、妖怪に舐められているよりかは恐れられている方が頼りがいはありそうな気もするが・・・・・・。

「まあいいわ、白い肉の塊が見えたから何かと思って見に来たけどもう終わっている様ならここに用はないわね、退散させてもらうわ」

そう言って霊夢は飛び立とうとするが結月達は霊夢を呼び止めた。

「待ってくれ霊夢、話がある、逸脱者は断罪したがまだ終わってはいないんだ」

その言葉にふわりと浮かせた足をもう一度地面につけた霊夢、一体何事かと思っているかのような顔をしていたが結月達の真剣な表情を見て大体の事を察した。

「説明しなくていいわ、どうせ人妖になった原因に妖怪が深く関与しているからその妖怪を消して欲しいのでしょ?」

霊夢はニヤリと笑みを浮かべながらそう言った。

「察しが良いな、流石は博麗の巫女と言った所か、ここから緩葉川を上った先、悲願の滝に逸脱者になったであろう人間に力を与えた妖怪がいる可能性がある、意図的に人妖を生み出してはならない、その規則破りし妖怪は大罪を償わなければならない、それが妖怪の規則だったはずだ・・・・・・・霊夢、暇をしているなら博麗の使命を果てしてくれないか?」

霊夢は思慮しながら結月達に背中を向ける、そして肩に担いでいたお祓い棒で肩を軽く叩く。

「不公平」

ぽつりとそんな事を口にした霊夢。

「あんた達は人妖を倒したらお金が貰えるのに私は妖怪を退治しても何も貰えないなんて不公平だとは思わない?」

何処か回りくどく聞こえる言い方は霊夢が結月達の口から自分が言いたい事を言って欲しいからだ。

「・・・・・・・手伝ってあげるから自分にも分け前を寄越せ、そう言いたいのだな?」

何とも素直ではない、正直に言えばいい事なのに自分が言えば欲張りな人間だと思われたくないから相手に言わせたかったのだろう、既に分け前を欲しがる辺り欲張りなのだが・・・・。

「あら、察しが良いのね、流石は逸脱審問官ね、魔理沙だったら分かっていてもわざとはぐらかそうとするのに」

何だか霊夢と魔理沙がいつも一緒にいる理由が分かったような気がする結月。

鈴音は苦笑いを浮かべていた。

「それで、この人妖でどれくらい出るのよ?大きさからしても結構な額が出るんじゃないの?」

ニヤニヤと悪い顔をしながらそう聞く霊夢、恐らくこの様子ではさっきの激闘に関しての話も分かっていた上で話していたに違いない。

「そうだな・・・・・・・どのくらい出るんだ?鈴音?」

逸脱者はその強さに比例して金額が変わり未熟種などの妖怪のなり損ないは十万、中型猿人種は15万など強い逸脱者程金額は高値になる傾向があった。

「そうね・・・・・・私が今まで戦ってきた逸脱者を比較すると大体・・・・・・・五十万はいかないかな?」

五十万、話を村人達は驚愕していた、人間の里と村や集落とでは金銭感覚が大きく特に稼ぎが少ない村や集落では五十万でも一年は遊んで暮らせる程の大金だった。

だが、それを高すぎると思う者はいない、あれだけの生死をかけた戦いならむしろそれ相応の対価と言えるだろう。

さて、分け前と言っても恐らく霊夢の性格上、三等分十六万では恐らく納得しないだろう、もっとふっかけてくるはずだ。

霊夢はお金にがめついという話は天道人進堂の職員の中では周知の事実だった。

「う~ん・・・・・・じゃあ、霊夢三十万で私達は二十万で良いよ」

逸脱審問官は別に金が欲しくて仕事している訳ではない、勿論タダ働きする程御人好しでもないが逸脱審問官にとって逸脱者を断罪し幻想郷の秩序を守り人間の誇りや尊厳を守る事こそ至福と考えておりお金は二の次だった。

三十万・・・・・・そう小さく呟いた霊夢、少し思慮した後、言葉を続ける。

「三十万ね、悪くはないけど・・・・・・・・もう少し欲しい所ね、四十万、私が四十万で鈴音と結月が十万を分け合うならやっても良いわよ」

何て強欲な女だ!そんな野次が村人の方から聞こえる、命懸けをかけて逸脱者と戦ったのに報酬が五万だけとは酷いとは誰もが思うだろう。

「外野は黙ってなさい!・・・・・・・どうせあんた達、他の人妖を倒して結構お金貰っているんだから五万程度でも良いでしょ、私なんか妖怪退治しても異変解決してもこれっぽっちもお賽銭入れてくれないのよ、お金貰える仕事はキッチリと貰わないとただでさえ家計があの幼鬼のせいで火の車なんだから、それに人妖を生み出した妖怪は当然、人妖よりも強いはずよね?そんな相手に弾幕勝負ではなく真剣勝負をするんだからそのくらい貰ってもいいじゃない」

仕事しろよ、二度も同じ言葉が脳裏に浮かぶが決裂すると色々と面倒なので口にはしなかった。

とはいえ霊夢は一度決めた事はやり遂げる性分なので後は霊夢が出した要件を承諾すればこの事件は終わったも同然だ。

結月と鈴音は互いに目を合わせると頷き霊夢の方を見る。

「分かった、それで良い・・・・・・だが倒せなければ報酬は零だぞ?」

結月の挑発に霊夢は強気の笑みを浮かべる。

「任せなさい、真剣勝負は久しぶりだけど心配なんてする必要はないわ、博麗の力見せてあげる」

そう言って霊夢はふわりと体を空中に浮かす、いつ見ても羽がないのに力を入れる事無く浮き上がる姿は元々人間には空が飛べる能力合ったのではないかと疑ってしまうような自然さがあった。

「ほら、そうと決まったら行くわよ、ついてきなさい」

霊夢は緩葉川の上流へ目を向けると上流に向かって低空飛行で飛び始める。

結月と鈴音もおいてかれないように村長に軽く会釈すると明王と月見ちゃんの背中に乗り霊夢の後ろをついていく。

村人達の霊夢に対しての冷たい視線を横目で見ながら結月達は半日村を後にした。

 

半日村を出て数十分、川沿いを走りごつごつした岩場を守護妖獣の走破力を持って乗り越えて幾つもの支流を通り抜け川幅が狭くなる緩葉川の本流を上っていると、耳元に僅かだが水が流れ落ちる音を捉える、最初は微かだったその音は川を上る内に徐々に大きくなりしっかりとした音が聞こえた頃には正面に轟々と音をたてながら膨大な水を流れ落ちる壮大な滝が見えてきた。

「あれが悲願の滝に間違いないようね」

しっかりと聞こえる声でそう言った霊夢、一瞬垣間見えたその顔は若干緊張しているようにもはたまた妖怪との真剣勝負を楽しみにしているかのような思いが感じられる顔立ちだった。

霊夢は博麗の力があったとしても人間だ、怪我をすれば完治するのに時間はかかるし腕がもげればもうくっつく事はない、命を落とせば人間として蘇る事なんてないのだ。

そんな生死をかけた戦いを前にしても霊夢には余裕が感じられた。

「自然の力に圧倒されるようなとても立派な滝ね・・・・・・同時に化物が住処にするにはこれ程いい場所はないわね」

鈴音の視線の先には崖から水が流れ落ちる先、深い青色をした大きな滝壺があった。

「どうして妖怪はあんな目立つような所に住居を構えたがるのかしら、どう考えても滝壺なんて音が五月蝿くて眠れないじゃない、こういう所に棲む妖怪は大抵自分の強さに酔いしれている証拠なのよ」

霊夢の持論は実に面白い、確かに自分が強いと思っている妖怪は自分の強さに似合った住居を求めたがるのかもしれない、それは人間も同じだ、自分が偉いと思っている人間ほど高い所に住みたがるものだ。

流石は妖怪退治の熟練者なだけある霊夢らしい発言だった。

霊夢は滝壺から数十m離れた河原で急停止するとゆっくりと地面に降り立つ。

明王と月見ちゃんも足に力を入れて爪をたてて急停止する。

降りようとする結月と鈴音に霊夢は右手に持ったお祓い棒を自分の体と水平になるよう突き出す。

「降りなくても良いわよ、これは私の獲物だから」

ここは自分一人でも大丈夫、そう言っているかのような姿はとても頼もしい一方で金が絡むとこんなにもやる気が出る事に現金な奴だとも思ってしまう。

だがそれ以上に結月は霊夢が滝壺から既に何かを感じ取っているようにも見えた。

霊夢は突き出したお祓い棒を降ろし一息入れた後、轟々と水が流れ落ちる滝壺に向かって大声で話し掛ける。

「そこにいるのは分かっているのよ!さっさと出てきたらどうかしら?どうせ水の中から様子を伺っているんでしょ!」

返事はない、だが霊夢は滝壺に何かがいる事を感じ取っていた。

「分かっているのよ!人間に力を与えて人妖化させた事は!それが妖怪の規則に反している事も分かっているはずよね!黙っていれば気づかれないとでも思っているの?」

しかしそれでも返事はない、霊夢の顔に苛立ちが見える。

「出てこないのであれば無理矢理にでも引きずりだすわよ!」

最後通告、脅しているかのようなその声は轟音が響く滝に置いてもしっかりと反響する程大きな声だった。

結月と鈴音が滝壺を注意深く見ていた時だった。

「くくく・・・・・誰かと思えばそうか・・・・・お前が博麗の巫女か」

何処からともなく男の様な女の様な判断に難しい声が耳元に響く。

大声でもないのに滝の音に遮られずしっかりと聞こえるこの声はまるで頭の中で響いているかのような声だった。

(まさか・・・・・・囁キか)

囁キ、とは一定の妖怪が持っているとされる能力の一つでどんな状況だとしてもまるで耳元で囁くように自分の声を飛ばす事から天道人進堂ではそう呼ばれている、ある程度距離をとっていたとしても効果範囲内であればしっかりと自分の声が届くとされている、主に遭難した人間の近くで恐怖を煽る様な言葉をかけ続け狂わせるために行われるとされる。

「数々の異変を収束させあの紅い悪魔や冥界の亡霊主とも渡り合ったと聞いて一体どんな奴かと思えば・・・・・・・まだ青臭い少女ではないか、紅い悪魔も冥界の亡霊主もたいしたことないな」

紅い悪魔は当然レミリア・スカーレットの事を指しているが冥界の亡霊主は恐らく冥界の白玉楼に住んでいると言われている死を司る亡霊の事を指しているのだろう。

「あら?見た目で判断するなんてあんたも大した事ないのね、幻想郷で見た目ほど頼りにならないものはないのよ、滝壺に引き籠り過ぎてそんな事すら分からなくなったのかしら?」

囁キが使えると分かった以上、もう大声で話す必要はない、囁キが使えるという事はこちらの声もしっかりと届くだけの聴力を持っているからだ。

「馬鹿を言うな・・・・・・・我をその辺にいる妖怪と一緒にするなよ、かつては大きなため池に棲む妖怪の元締めだったのだ、それなのに人間達よってため池を追い出され今はこの滝壺で人間に復讐する機会を待っていたのだ」

その化物は人間に対して憎悪感情を抱いている、わかさぎ姫が語ってくれた昔話の一節が脳裏を過る。

(どうやらわかさぎ姫の昔話に出てくる滝壺様に間違いないようだな)

人間に対して憎悪感情を抱いているからこそかつて人間への復讐のために身投げした娘を失った父の様に身投げした小三郎にも同じ力を与えたのだろう。

「もう一度聞くわ、人間を人妖へと変えたのはあんたなのね?」

返答はすぐに帰ってこなかった、代わりに気色の悪い笑い声が頭の中に静かに響く。

「・・・・・・ああ、そうだとも、あいつらは人間へと復讐を願って我の住処に身を投げたのだ、我は人間が嫌いだ、だが人間に対して復讐する人間には大いに興味がある、私は彼等に私の力を与える事で復讐の手助けしてやったのだ、復讐する人間の魂と引き換えにな」

妖怪の中には人間の魂を食べる事で力を増す妖怪もいた、恐らくこの妖怪もその類なのだろう、復讐を願う人間を利用して魂を集めて力を貯めていたのだ。

「逸脱者に理性が感じられなかったのは復讐に対しての迷いをなくし躊躇なく復讐を実行させるためか・・・・・・」

復讐したいという気持ちを利用して魂を集めていた滝壺様に結月は怒りが込み上げてくるのを感じていた。

「その通りだ、だがもう一つは我が人妖を操りやすくするためだ、理性があると我の言う事を聞かなくなる可能性がある、だからこそ理性をなくし考える能力を失わせる事で我に忠実な人妖を作りだしたのだ、復讐を終えた人妖に役目を与えて人間を襲わせ魂を持ってこさせるためにな・・・・・・・お前達がいなければあの人妖も多くの魂を我に捧げるはずだったのにな」

結月は人間の魂を食べていた事に怒っていた訳ではない、理性を失い理由もなくし意味のない復讐に憑りつかれた逸脱者を道具の様に利用する滝壺様に言いようのない怒りを覚えたのだ。

「あんたの目的何てどうでもいいわ、でも人妖を意図的に生み出した行為を見過ごすわけにはいかないわ、妖怪の規則を破るとどうなるか分かってやったのかしら?」

一方の霊夢は常に冷静だ、お祓い棒を滝壺に向けて突き出し臨戦態勢に入る。

「何故紅い悪魔やスキマ妖怪が勝手に作った規則に従わなければならない?我はそんな規則に縛られるつもりはない、妖怪は常に自由だ、妖怪に規則など不必要だ」

だがそれでは幻想郷の秩序が乱れてしまう、残念ながら滝壺様は幻想郷に置いて不必要な存在であるのは確かだった。

「規則を守らない妖怪は幻想郷にいてはならないのよ、そうでもしないと幻想郷が幾つあっても足りないもの、残念だけどあんたにはここで消えてもらうわよ」

妖怪の楽園を維持するのは大変だった、その妖怪が楽園を壊しかねないのだから。

博麗神社の存在はまさにこのためにあると言っても過言ではなかった。

「消えて貰うだと?くくく・・・・・・笑わせる、貴様の様な青臭い少女に何が出来る?」

そう言った直後、滝壺が沸騰するかのように水面に泡が湧きだす。

その数秒後、滝壺の水面に大きな影が浮かび上がると水が大きく盛り上がり滝壺から大きな何かが現れる。

それは濁った茶色の殻を身に纏い強靭で太い槍の様な足が六本もあり左右非対称の大小二つの鋏を持ち触角の様に飛び出した黒々とした目には霊夢と結月達の姿が写り口からはブクブクと泡を吐いていた。

それはまさしく沢蟹であったが大きさは逸脱者よりも一回り程小さいものの沢蟹よりも規格外に大きく人間と比べてもその大きさは一目瞭然だった。

縦五m、横七m程あるその巨体は妖怪と言う名にふさわしい大きさをしていた。

非人間型の妖怪も幻想郷には数多く暮らしており人間でない理由は様々あるが滝壺様が人間の姿をしていないのは人間の姿になれない妖怪なのか、それとも人間に憎悪感情を抱いているのが主な原因なのだろう、恐らく理由は後者だと思われる。

「言っておくが私は弾幕勝負などという遊びに付き合うつもりはない、実力勝負だ、尻尾を巻いて逃げるのなら今の内だぞ?」

滝壺様の脅しに対して霊夢はフッと口元に笑みを浮かべる。

「安心しなさい、規則を破った妖怪に弾幕勝負で挑むつもりなんてないわ、望み通り実力勝負であんたを叩き潰してあげる、かかってきなさい」

小癪な・・・・・・その言葉を述べた後、滝壺様は鋏で口を押えた。

「・・・・・・っ!避けろ明王!」

強い殺気を感じ取った結月と鈴音は素早く指示を出した、その直後、滝壺様は口を押えていた鋏をどけた瞬間、逸脱者の口から物凄い水圧の水が放たれ地面を抉りながらこっちに近づいてきた。

霊夢は空へと飛びあがり明王と月見ちゃんは左右に避ける。

勢いよく放たれた水が霊夢のいた所を通り過ぎる、水が通り過ぎた場所には深い溝が出来ており河原の石は綺麗に斬られていた。

滝壺様は霊夢を追いかけるように空を見上げると口から放たれる水も空へと上がっていく。

「よっ!」

霊夢は真下に迫った水圧の刃をくるりと回転して避けた。

そして態勢を立て直して滝壺様を見下ろした、滝壺様も霊夢を黒々とした目玉で見つめる。

「覚悟しなさい、滝壺の中の沢蟹、私に喧嘩を売った事地獄で後悔させてあげるわ」

霊夢の煽りに対して滝壺様も煽りで答える。

「後悔するのはお前の方だ、博麗の巫女、妖怪の真の恐ろしさを冥途の土産に教えてくれるわ」

互いに動きを探り合っているかのような静寂な時間が流れた、次の瞬間、滝壺様は右手の大きな鋏を開くと大量のシャボン玉を霊夢に向かって放った。

霊夢も何処からともなく御札を取り出すと滝壺様に向かって投げた。

御札とシャボン玉がぶつかり合うと爆発するかのように弾け飛び爆音を響かせた。

霊夢と滝壺様の戦いが今幕を開けた。




三十一録読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか?この場をお借りして読者の皆様に報告があります、数か月前から仕事が多忙ながらも何とか小説を更新してきましたが来週からさらに忙しくなりとても小説を更新できるような状況ではなくなりました。
大変申し訳ないのですがお盆過ぎまで小説の投稿は控えさせていただきます。
この小説を楽しみにしていた読者の皆様には申し訳ありませんがお盆過ぎたら更新していきますので宜しくお願い致します。
さて話はガラリと変わりますが私は漫画を中心に取り扱うとあるネット掲示板をときどき見ています。
そこでは様々な漫画の批評がネットユーザーの間に行われているのですが作品の中にはネットユーザーから邪険にされる漫画があります。
新連載から国民的アニメで知られる漫画まで幅広い数の作品がネットユーザーから辛辣な評価を受けます。
結果が全てとは良く言いますが、作者が考えるに考えた末一生懸命書いた作品が詰まらないなど糞だの軽い気持ちで言われているのを見ると作者の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになります。
もし漫画を批判しているネットユーザーが何かの拍子に漫画が書ける才能に目覚め漫画を描いて連載してネットでかつて自分がしていたような邪険な扱われ方をしたらどう思うでしょうか?
自分達は何も描いてない癖に偉そうだな、そんな風に考えてしまうかもしれません、そんな風に考えてしまうという事は批判している漫画の作者も同じ気持ちになっている・・・・・かもしれません。
ですが同時に批判や非難に晒されている人間はそれだけ存在感があるという事であり非難や批判に晒されていない人間はそれだけ存在感がなく相手にされないという事であり批判や非難を受けてしまうのは漫画家としての宿命かもしれません。
存在し続けるなら非難や批判は免れない、そんな言葉もありますし多少の非難や批判を受けても自分が間違っていないと思っているなら気にしない様な強いハートが欲しい物です。
それではお盆過ぎに。

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