数年前、Wiiが壊れてしまいWiiUを購入したのですが結局、遊んだソフトはWiiU専用ソフト数枚とWii専用ソフト数枚程度、前回のWiiが十枚以上だった事を考えると二つ足しても二桁言ってない事に驚きです、別にWiiUが面白くなかったという訳ではないのですがWiiにはあってWiiUにはない魅力があって言葉で表し辛いのですがあえて言葉にするならば斬新さがなかったと言えばいいのでしょうか?
ソニーがシンプルながらも高機能なハードで売り出す中、任天堂は新感覚や斬新さを生かしたハードを創ろうとしているのは分かるのですが何だか上手くいっていない印象を覚えます。
私は任天堂もソニーどちらも好きなのですがどちらかと言えば任天堂よりなので何とか任天堂スイッチには頑張って欲しい所です。
それでは第二十六録更新です。
重信の生首を抱え半日村に戻ってきた結月達。
「・・・・・っ!おお、戻ってきたか、それで重信は・・・・・」
それが・・・・と言葉を口にした鈴音、その表情と手に持った何か包まれた物を見て村人達は大体を察してしまったようだ。
重信の母親の方を見てみると青ざめた顔色を浮かべ口元に手を当てていた。
「下流を下った先で重信さんだと思われる体の一部は見つけましたが・・・・・これが重信さんか、誰か確認してもらえませんか?」
結月達は当然重信の顔を知らない、この生首が本当に重信本人かどうかは顔を知っている村人達に確認してもらわなければならなかった。
ざわつく村人達だがすぐに前に出たのは重信の母親と村長だった。
「・・・・・見せてください、やっぱり自分の目で確認しない限りは信じられねえから」
人違いであった欲しい、あるいは例え体の一部でも自分の息子が帰ってきたのか、年老いた女性の顔にはそんな思いが滲み出ていた。
「ではこちらへ・・・・・」
村人達と一旦距離を置いたのは多くの人が見て騒ぎを起こさないようにという鈴音の配慮だった。
一方で結月は集まった村人の方をじっと見つめていた。
結月はある男を探していた、村を出る前鈴音の質問に対して顔を俯かせた男だった。
(あの男は何かを隠している・・・・それも重要な事だ)
漁師二人の行方不明に逸脱者が関わっている以上、この村の村人が関わっていた可能性が高いからだ。
結月は村人一人一人確認しながら探していたがすぐに探していた男は見つかった。
特に目立った特徴のない三十代の男、あの時と同じく顔を俯かせていたがあの時とは違い体を小刻みに震わせ顔色は重信の母親よりも青ざめた顔色をしていた。
他の村人と比べても明らかにこの男だけがこの場から浮いている様に感じた。
(恐怖に苛まれているようだ・・・・・まるで次に自分が襲われるのが分かっているかのような・・・・・)
話し掛けようかどうか結月が迷っている一方で鈴音は布に包まれた重信の生首を地面にそっと置くと包みを解いて布を広げた。
「っ!・・・・・・・うっ・・・・うう、まちがいねえだ、あたしの息子に間違いねえだ」
重信の母親はその場で崩れ落ちると重信の手拭きで目元を抑えて涙を堪えていた。
「確かにこれは重信本人だ・・・・・まさかこのような姿になって戻ってこようとは・・・・・」
村長も大分動揺しているようだ、まさか本当に襲われていた事実に驚きが隠せないのだろう。
重信の母親と村長の話は集まっていた村人達の耳にも入り本当に重信の首だった事に不安と恐怖、そして言い知れぬ不気味さが村人達の心に影を差した。
「本当に重信なのか・・・・・・一体誰がこんな事を・・・・・・」
そんな言葉を誰かが呟いた、村人達はそれがまだ逸脱者の仕業だとは断定していなかった。
しかし結月が注視していたあの男はその言葉を聞いて目を泳がせ歯をガタガタ震わせ両手で頭を抑え込んだ。
「あいつだ・・・・・・・・あいつがやったんだ・・・・・」
そう言って男はその場で崩れ落ちると地面に手を付いて項垂れた。
集まった村人達も突然の男の行動に戸惑っていた。
「こ、殺される・・・・・今度は俺の番だ・・・・・・まさか、こんな事になるなんて・・・・」
男の思いもよらぬ行動に村人達は困惑するばかりであった、離れた場所にいた鈴音や村長も男の突然の行動に視線が向けられた。
村人達が男に声をかけるが男は頑なに村人達の声を無視し地面に視線を向けていた。
結月はその男に近寄り声をかける。
「・・・・・・何か心当たりがあるようだな」
そう結月が男の前でそう語り掛ける、男はゆっくりと顔をあげると後悔と絶望に満ちた目で結月を見上げる。
「あ、あいつは・・・・・・重信は人妖に殺されたのか?」
ああ、と答えた結月、男は結月の言葉に目を大きく見開くと結月の服に掴みかかろうとした。
咄嗟の判断で後ろに下がった結月、しかし男は四つん這いで結月に詰め寄る。
「逃げないでくれっ!お願いだあっ!し・・・・死にたくないんだ!」
必死に結月に縋ろうとした男であったが手を滑らせ地面に倒れ込んだ。
異様な男の行動は不安と恐怖でざわついていた村人を唖然とさせ黙らせるような気迫があった。
「う・・う・・・うう、頼む・・・・俺が悪い、俺が悪かったんだ・・・・・・俺が知っている事全てを話す・・・・・だから・・・・・助けてくれ」
男は倒れた場所でうずくまり涙声で助けを求めるその姿は絶望的な状況に立たされ迫る死に対して足掻き悶える人間らしい一面を垣間見ているようだった。
集まった村人を一瞬にして沈黙させる程の「必死」という言葉が似合いそうな命乞いは決して演技ではなく男の本心である事は誰の目から見ても分かる事だった。
「逃げて悪かった・・・・逸脱審問官の職業柄故の咄嗟の行動だった、別にお前を見捨てた訳ではない、俺達は人間の番人である逸脱審問官、例えあんたが何をしたとしても見捨てるような事はしない、あんたが人間である限りはな・・・・・・何か知っているのだろう?教えてくれないか?」
例えこの男が何か罪を犯したとしてもそれを捌くものがあるとしたらそれは法でありもしくは閻魔様である、逸脱審問官は人間である限り逸脱者から人間を守る権利があるのだ。
結月がそう宥めると男はその場に座り込みゆっくりと重い口を開いた。
「・・・・・・・俺は・・・・・いや正確には俺達か・・・・俺と与助と重信、俺達三人が・・・・小三郎を逸脱者にしてしまったんだ・・・・・小三郎は俺達に復讐しようとしているんだ」
衝撃の告白に集まっていた村人達が息を呑んだ。
男は最初に行方不明になった小三郎が人妖になったと確信していた。
その言葉に最初は耳を疑った村人だったが異様な程落ち着きを取り戻すのが早かった。
「・・・・・まさか、古正お前・・・・・・そこまで険悪な仲だったのか」
一人の村人の言葉に古正と呼ばれた男は地面に着いた両手を握りしめ土を抉った。
「ああ、そうだ・・・・・心の底から互いに憎んでいた、だが・・・・まさか人妖になってまで復讐にしにくるなんて・・・・・与助と重信は復讐の報いであんな無残な姿になったんだ」
どうやら古正と殺されたであろう与助と重信そして逸脱者になったと思われる小三郎には何かしらの因縁があったようだ。
「・・・・・・・この村の漁師は漁場を巡っての争いを避けるために漁師になった者は漁師の集まりで自分の漁場を与えられその範囲内で漁をするのがこの村のやり方だ、俺と与助と重信そして小三郎とは特別仲が良かった訳ではないがここまで険悪な仲じゃなかった、同じ漁師仲間という程度だった・・・・・・あの時までは」
あの時、その言葉には後悔の念が感じられた。
「あれは今から半年も前の事だった、その日与助は自分の漁場で漁をしていたんだがあまり収獲が良くなかったんだと思う・・・・・与助は自分の漁場を離れまだ誰の漁場でもない場所で漁をやっていたんだ、そこは如何にも魚が潜んでなさそうな場所だったんだがその時偶然与助は川魚が多く潜んでいる場所を見つけたんだ、それかというものあいつはその場所で漁をするようになった、魚の取れた量がそのまま収入源に繋がるからな・・・・・だが与助が見つけた場所の近くで漁場としていた俺と小三郎と重信はそれが気に食わなかったんだ、あいつ一人だけに川魚を独占させるわけにはいかない・・・・・そう思った俺と小三郎と重信は与助の見つけた漁場に集まって漁をするようになった、狭い漁場に四隻の船が集まって漁をする・・・・・考えただけでも周りの連中がうっとうしくなるだろ?実際俺達の場合もそうだったんだ・・・・」
そう言った後男は一息ついた、自分の罪を懺悔しているかのような消沈した様子で話を続ける。
「最初はお互い黙って漁をしていたんだが次第に小舟の上から互いを脅し罵るようになった、その時はお互い他の連中を追い出してその場所を独占しようとして脅したり罵ったりしていたんだ、俺もそのつもりだった、だが時が経つにすれ俺達は本気で憎しむになっていた・・・・・脅していた言葉が次第に傷口となって、罵っていた言葉がその傷口に塩を塗り込むような痛みへと変わったんだ、俺達の仲は急激に冷え込んでいった、漁をしない日でも口を一切聞かず顔を合わせればすぐに口喧嘩になるようになっていた、家の前に馬糞を撒かれた事もあった、俺も復讐とばかりにあいつらの家の玄関に肥溜を撒いた事も何度もあった・・・・・そのくらい俺はあいつらの事を憎んでいた、思い出すだけでも虫唾が走る程だった、多分それはあいつらも同じだろうな・・・・・だが、まだその時は憎しみあっても強い殺意はなかった・・・・・その憎しみがさらに強くなったのは丁度十二日前のあの日だった」
男の脳裏にはあの時の事が鮮烈な記憶として残っていた、あの時の事はかつてないほど大きな憎悪を抱いた日でもあったからからだ。
「あの日小三郎は新しい網を持って来たんだ・・・・・それはとても大きく頑丈で編み目も細かい漁師網だった、俺から見てもかなりの値段がする物だ、恐らくは里か他の村で買ってきたものだろう、あいつはその網を俺達が取り合っていた場所の大部分を覆うように川に投げ入れたんだ、ここは俺の場所だ、お前達は出ていけ、まるでそう言っているかのように・・・・・だが俺達にはこのまま退き下がる事なんて出来なかった、あの場所を取られる事よりもあいつの一人勝ちにしてはいけない、そっちの思いの方が強くなっていたんだ」
彼の話を聞く限り恐らく彼らの中では既に漁場の事などさほど重要ではなくなっており恨み染みた執念で張り合っていたようだ。
こいつらより先に退く訳にはいかない、彼ら全員にその感情があったのではないだろうかと結月は思った。
「それで俺と与助と重信はまずは小三郎をあの場所から追い出すという共通の目的で協力する事になったんだ・・・・・不思議な事だよな、あれだけ憎み合っていた仲なのに共通の敵が出来た事で互いに嫌いながらもあの時の俺達は協力し合っていた・・・・・・そして俺達はその日の夜の内に顔を会わせ小三郎をあの場所から追い出す方法を考えたんだ、そして十日前の深夜それを実行したんだ・・・・・」
十日の夜、その言葉を聞いて集まっていた村人の多くがまさか・・・・という顔をしていた。
「・・・・・・ああ、そうだ、小三郎の船と漁師網を壊したのは俺と与助と重信なんだ、与助と重信が持って来た木槌で船を叩き壊して俺が網を鉄鋏で切り刻んだんだ・・・・・・船と網がなくなってしまえば漁に出ることは出来ないし最悪漁師を廃業せざる得なくなる・・・・・それが村の漁師の掟を破るという事が分かっていても俺達は構わずやった、それだけ小三郎のやり方が気に入らなかったんだ・・・・・・それがまさか・・・・こんな事になるなんて・・・・」
古正はがっくりと肩を落とし地面に両腕をつく。
第三者の漁師舟や漁師道具を壊してはいけない或いは妨害してはいけないというのがこの村の漁師の掟の一つだったようだがその掟を破ってでも小三郎の事が許せなかったのだろう。
だが恨まれた方は例外あれど反発しそれ以上に恨むのが人間の特徴である。
当然漁師舟と網を壊された小三郎の恨みは恐らく並大抵のものではなかっただろう。
「あの時・・・・・俺達が船を壊した翌日の朝、小三郎は壊された船の前で茫然と立ち尽くしていた、俺は村人達に紛れて小三郎の悔しがる様子を見ようと思っていたんだが・・・・・小三郎は悔しがる事も怒り狂う事もなくただ無表情でこちらを睨みつけていたんだ・・・・・それはもう心底ゾッとする様な目でな・・・・・多分船と網を壊したのは俺達だって分かっていたんだろうな・・・・・・あれは殺意が芽生えた人間の目だった」
あの時見た小三郎の顔を思い出し体が震える古正、地面につけていた手で顔を覆った。
「・・・・・・それから次の日の事だ、漁が終わって家に帰ったら家の前に山菜が入った笊が置いてあったんだ、山菜を恵んでくれるような事をした覚えがないから不審に思って山菜を一つ一つ手に取って確認したんだ・・・・・・そしたら食べられる山菜に混じって毒草が入っていたんだ、俺はすぐに小三郎の仕業だと確信したよ、俺はまさかと思って重信や与助の所を尋ねたら重信や与助の家にも山菜が置いてあったんだ、与助に至っては調理の途中だった・・・・・もし俺が声をかけに行かなければ恐らく与助は中毒死していただろうな」
どうやら小三郎は人妖になる前に三人の殺害を企てたようだった。
「小三郎が俺達を殺そうとした、あいつを殺さなければ俺達が殺される、そう思った俺達は密かに小三郎の殺害計画をその日の夜から考え始め小三郎に殺されないよう注意深く生活していたんだ・・・・・・だが一週間前のあの日、小三郎は突如姿を消した、殺害警戒実行を前日に控えた行方知らずとあって俺達は小三郎が殺されるのを恐れて逃げ出したと思ったんだ・・・・・・・・まさか、人間をやめてまで復讐しようとするなんて・・・・・」
小三郎は三人の殺害に失敗し三人に警戒心を抱かせてしまった、その上復讐に失敗した以上、報復が待ち構えている事も分かっていた筈だ、追い詰められた小三郎は奥の手を使わざる得なくなったのだろう。
「・・・・・与助と重信を殺したのは小三郎だ、間違いない、与助も重信を殺す動機があるとしたらあいつ以外いない・・・・・そして今、人妖になってしまった小三郎は最後に残った俺を血眼になって探しているはずだ・・・・・・あいつの殺意は水辺でじっとしているようなものじゃない、もし俺が水辺に近寄らないと分かったら何れこの村にやってくるはずだ・・・・・・」
その言葉に村人達は戸惑いの色が隠せない、この村に与助と重信を殺した小三郎だった化物がやってくる、それに恐怖や不安を抱かない人間などいるのだろうか?
「古正・・・・・・お前、何という事をしでかしたのだ」
慌てて古正の元へと駆け寄りそう叱咤する村長に古正は頭を地面につけて謝った。
「すまねえ・・・・・本当にすまねえ・・・・・」
古正は力なく項垂れながら泣いていた、その姿を見る限り古正は嘘をついているようには見えず村人達の反応を見れば恐らく古正の話は本当なのだと確信できた。
「古正の話が本当なら全ての辻褄が合うな・・・・・だが小三郎が逸脱者になった確証性の高い証拠がない以上、断言は出来ない」
どれだけ辻褄があっても今の状況では逸脱者が小三郎である証拠は状況証拠しかない、この状況で小三郎が犯人だと決めつけようものならやり方は白鷹と同じである。
「つまり二人の漁師を襲ったのは元々人間だったっていう事だよね・・・・・人間自体が怖いのにそんな人間が化物になったら・・・・・考えるほど恐ろしい話だね」
その時、結月の後ろから聞き覚えのある女性の声が聞こえた。
しかしそれは鈴音の声ではなかった。
「復讐のために人間を辞めて人間を食べる化物になってまで復讐を成し遂げようとするなんて・・・・・・やっぱり人間は怖いわね」
結月がまさか、と思い振り返るとそこには先程別れたはずのわかさぎ姫と影狼の姿があった。
「あんた達・・・・・何故ここにいる?」
あれ程人間に警戒していた筈の彼女達が何故ここにいるのか?結月には理解できなかった。
「・・・・ん?うっ!うわあっ!よ、妖怪がいるぞ!」
狼の耳が生えた影狼と下半身が魚であるわかさぎ姫の姿は一目で妖怪だと分かる妖怪らしい姿をしており村人達も一目で彼女達が妖怪だと認識し怯えた様な驚き方をしていた。
「人妖といい、妖怪といい、おら達の村はどうしちまったんだ・・・・・」
度重なる出来事にパニックになりかけた村人達、しかしここは鈴音が冷静に対処する。
「みんな!落ち着いて!」
鈴音は村人達全員に聞こえるような大声でそう言うと村人達は一瞬にして静まり返り皆一様に鈴音の方を見ていた。
「彼女達は確かに妖怪だけど人間を襲わない大人しい心優しい妖怪なの、重信さんの遺体を見つけたのも彼女達でしかも彼女達は重信さんの遺体を手厚く葬ろうとしてくれていたのよ、彼女達の安全は私が責任を持つわ」
そして大声と呼べるような声ではないが遠くまで届く様なしっかりとした声で諭しているかのように語り掛けた鈴音。
「鈴音さん・・・・・・私達のためにそこまで・・・・」
出会って間もないのに村人の警戒を解す為にそこまで言ってのけた鈴音に対してわかさぎ姫と影狼は驚きを隠せなかった。
同時にそれはわかさぎ姫と影狼を鈴音が信頼している証だった。
「・・・・・・・うむ、皆の者、落ち着くのだ・・・・・彼女の目を見よ、あれは覚悟のある目だ、相当な自信がなければあんな目は出来ん、彼女の言葉を信じよう・・・・わしも長年生きているが見る限り彼女達は危険な妖怪ではないだろう」
村長のその言葉で村人達は落ち着きを取り戻し再び逸脱者になったであろう小三郎の話題に戻って行った。
「・・・・・貴方達、逸脱審問官って私達が知っている人間とは物凄く違うようね、確かに人間に危害を加えるつもりは一欠片もないけどあそこまで自信を持って言えるなんて・・・・」
勿論鈴音があそこまで自信を持って彼女達の安全を保障したのは心が読めたからではない、鈴音は人間の闇である逸脱者と幾度も戦ってきた熟練者だ、それだけに相手が善か偽善か見抜く能力が自然と磨かれたのだろう。
「人間は一概に名義する事は出来ないという事だ、それは妖怪も同じだ・・・・・・それよりも何故ついてきた?人間が怖いのではなかったのか?」
自信なさげにう、うんと頷いわかさぎ姫。
「怖いわよ・・・・・怖いけどさ、私達もその・・・・・首を拾ったからには私たちもこの事件の関係者よね?・・・・・・気になったのよ、この緩葉川で一体何が起きているのか、恐怖心よりも好奇心が勝ったって所かな」
言葉を選ぶようにそう言った影狼に結月は小さく息をついた。
「・・・・・一応言っておく、首を突っ込んで楽しいものではないぞ」
それは逸脱者の起こした事件に何度も関わった結月だから言える事だった。
人間の暗い所や弱い所そして醜い所などの暗部を覗き込んで楽しい気分になれる人など極一部の人間だけだろう、人の不幸は蜜の味と言う言葉があるのも事実ではあるが。
「恐らくはそうでしょうね・・・・・生首を見つけた時から面倒事が起きている事には気づいていたわよ、でもここまで来たら知りたいのよ、知りたくて仕方がないのよ」
恐怖心より好奇心が勝ったという話は嘘ではなさそうだ、でなければ人間が怖くて仕方がない彼女達が人間が多く住む村にやって来る訳がない。
「・・・・・仕事の邪魔はするな、見ているだけだったら構わない」
冷たい対応のようにもみえるが、これでも追い返さない辺りまだ結月は寛大な方だった。
逸脱審問官にとって大変なのは野次馬が集まって現場が荒らされてしまう事だからだ。
「話はよく分かったわ、でもその話だけじゃまだ小三郎さんが逸脱者になったとは断言できないわ、もし小三郎さんが逸脱者ならもしかしたら小三郎さんの家に逸脱者の手掛かりがあるかも知れない・・・・小三郎さんの家まで案内してもらえないかしら?」
鈴音のその言葉に数名の村人が名乗りを上げ鈴音と結月の方を見ながら歩き始めた。
村人の案内のもと小三郎の家へと向かう結月達、その間結月は影狼達の方を見ると村人達の奇異な視線に怯え体を寄せ合いつつもついてきていた。
人間に恐怖感情を抱く妖怪はいなくはないがあそまで恐怖感情を露わにする妖怪も珍しい。
(あれ程怖がるならついてこなければよかったのに・・・・・)
これから先、恐らくは今以上に怖い事が待っていると分かっているからこそ尚更その結月にはその思いがあった。
(好奇心か・・・・・好奇心は時として不幸や後悔を招いてしまう・・・・・彼女達が後で後悔する様な事にならなければ良いのだが・・・・)
それが儚い希望だという事は結月が一番分かっているはずだった、とはいえそれを彼女達に説明しても理解してはくれないだろう、好奇心とは他意のない無邪気な興味なのだ。
「・・・・・ここが小三郎の家だ」
村人の案内のもと辿り着いた場所には建てられて随分時間が経ったであろう古い木造家屋が佇んでいた。
人間の里と比べると何処か古さを感じるのは人間の里が明治時代初期の西洋建築と擬洋風建築(西洋建築を見よう見まねで作った建物の事)の建物があるのに対して人間の里から遠い村や集落は江戸時代の村や集落の姿をそのまま残しているためであり、また村や集落に住む大工も江戸時代からの建築技術しか持ち合わせていないため新しく建てられた建物も自然と江戸時代の建物になるためである。
この人間の里と集落と村の格差は技術だけでなく生活環境や豊かさにまで及びこれによる弊害も幻想郷では社会問題になっている。
「小三郎さんが行方不明になってからこの家内に入った者はいるか?」
もし小三郎が逸脱者になった可能性があるならこの家の中に逸脱者になるための書物や道具があった可能性がある、もし部屋に入った者の中にその書物や道具を持ち去っていてしまった者がいればゆゆしき事態だ。
「確か・・・・・俺とこいつだ、あの時、小三郎の姿を見ていなかったもんであんな事があった後だからもしかしてと思って家の中に入ったんだ・・・・・・だが家の中には小三郎の姿はなくて小三郎が行方不明になった事を知ったんだ」
結月は鋭い目つきで二人の男の方を見る。
「・・・・・その時、何か部屋を物色したり持ち出したりしたか?」
まるで疑っているかのような目つきで見つめる結月に男達は必死に否定する。
「俺達を疑っているのか?金には余裕はねえが流石に泥棒なんてしねえよ、ましてや人妖なんかに興味何てない、あんな恐ろしい妖怪と同列なんてごめんだね、ついでに部屋は荒らしてねえ、少し入って見て回っただけだ」
男の口にした恐ろしい妖怪という言葉にムッとした表情を浮かべる影狼と少し悲しそうな顔をするわかさぎ姫、まるで自分達がそんな風に見られる事が不機嫌な様子だった。
「そうか・・・・・・疑ったつもりはない、目つきが悪いのは元々だ」
冗談を入れて否定した男には余裕があった、余裕があるという事は自分がそんな事をしていない確信があるからだ、もし物色したのなら冗談を入れる余裕などなく焦りが感じられるはずだ、結月は中に入ったこの男達の言い分は誠である事を見抜いていた。
「結月、早速小三郎さんの家にお邪魔するよ・・・・・何かしらの証拠が残っているはずよ」
鈴音のその言葉に結月は小三郎の家に向かい合う、何の変哲もないこの家に二人の人間を殺した殺意の凶器が眠っているかと思うと少し不気味な雰囲気が入り口から漂っているように感じた。
「村の皆さんはここで待っていてください、絶対に入らないでください、いいですね?」
忠告をした鈴音は結月と共に木の扉を開け中に入った、特に何の変哲もない家、特に何処か変わった所はない、しかしこの家には絶対何かがあるという確信が結月と鈴音にはあった。
「台所には特に怪しい所はないようね・・・・・居間に向かいましょう」
家内はさほど広くはなく台所と囲炉裏のある居間そして様々なものを収納する押入れだけだった。
江戸時代頃の村や集落の家屋としてはこの間取りは大して珍しくなかった。
「見た所、可笑しい所はないな・・・・・」
だがそれは当然と言えば当然だった、人妖になろうとしている人が表立って一目がつく場所に人妖に関連する書物や道具を置く訳がない、何処か人の目がつかない場所に隠してあるはずだ。
居間には囲炉裏の他に漁師道具や畳まれた布団、机と蝋燭立てなどが置かれており特に変わった所はなかった。
それでも結月と鈴音は居間を隈なく探すが逸脱者に繋がる書物や道具はなかった。
(流石に居間には隠してないか・・・・・・という事は・・・・・)
結月は二つの引き戸を仕切られた押し入れに目をやる。
「・・・・・・・残るは押し入れね」
押し入れ、そこは家屋の中で他の人の目が付きにくい場所の一つだ。
押し入れの前に立つと一息ついた後、左側の押し入れの引き戸を開けようとする鈴音だったが・・・・。
「・・・・・っ!この引き戸!全然・・・・・開かない・・・・・やあっ!」
普通の引き戸なら既に大きく壁とぶつかって大きな音が鳴っているであろう力を込めた鈴音であったが引き戸はビクともしなかった、しかし鈴音は逸脱審問官である、日頃鍛えられた筋力を持ってして無理矢理こじ開けた。
「・・・・・!これは・・・・・」
引き戸を開けて一息つく鈴音大して結月は引き戸の前で片膝をついて引き戸の溝を見つめる、溝には粘着状の液体が付着していた。
「どうやらこの引き戸・・・・・糊のようなもので固めてあったようだ」
逸脱者を目指す者の中には逸脱者に関連する道具や書物を如何なる手を使ってでも隠そうとする者達もいた。
余程開けて欲しくなかったのだろうこの引き戸の奥には見られると都合の悪いものが隠してあるのは間違いなさそうだった。
「糊ね・・・・・・一体何を隠してあったのか見せてもらいましょうか」
そう口にする鈴音であったが何が隠されているのかはこの時点で結月も分かっていた。
押し入れの中には黴臭さと湿気が混ざり合ったような空気と漂っており上下2段の収納空間の内、下には埃を被った道具達が眠っており特に気になる点はない、問題は上段だった。
上段の押し入れの奥の壁そこにはこの村周辺の地図が描かれておりこの村を思わしき場所から幾つかの目印になりそうな場所を通って滝の絵が描かれた場所まで矢印の道が出来ていた。
「どうやら・・・・・ここ周辺の地図のようだが一体小三郎は何故こんな絵を・・・・?」
逸脱者になるための道具や書物があると思っていた結月にとってこの絵は些か奇妙だった。
しかしこの絵は小三郎が糊で引き戸を固めてでも隠したかった絵だ、何か重要な事を表しているのだろう、特に矢印の先にある滝に何か秘密があるのは間違いなさそうだった。
(だが・・・・・これだけでは小三郎が逸脱者になった証拠にはならないな)
どれだけ押し入れを糊で固めていた疑惑があったとしてもどれだけこの絵が怪しかったとしても逸脱者に直接関係してある道具や書物がなければ小三郎が逸脱者になった事を立証できないのだ。
「鈴音先輩、次は右側の引き戸を開けるとしよう、今度は俺が開ける」
左側が糊で固めてあった以上右側の引き戸も恐らくはそうなのだろう。
結月は右側の引き戸に手をかけると力を込めて引き戸を開けた。
引き戸は糊で接合された部分が引き千切れるような音を立てながら左側の壁にぶつかった。
「・・・・・結月、お疲れさま」
糊で接合された引き戸を開ける大変さを身を持って理解している鈴音は結月を労わる。
「労わる程でもない、糊で接合されている事が分かれば開ける事は造作もない事だ」
そう言って結月は開かれた右側の押し入れの中を覗き込んだ。
久々に光が差し込む押し入れの中、そこには数冊の古びた本が綺麗に積まれていた。
「半日村郷土民話集・・・・・・?」
それは一見すれば逸脱者とは関係のないこの村で起きた様々な出来事が記された本だった。
手書きであろうこの本は恐らくかつて半日村を暮らしていた人々が遺した村の大事な記録であり記憶だった。
その他の本も半日村の歴史や半日村の周辺の詳細な地理やかつて半日村に暮らしていた男の日誌など半日村やその周辺に関係する書物ばかりで逸脱者になるための方法が書かれた書物は一冊もなかった。
「一体何故こんな本をここまで隠そうとしたんだ・・・・・?」
半日村にとっては重要な資料ではあるが逸脱審問官にとってこれは隠す程の内容の代物ではなかった。
「でも小三郎さんは何か理由があってこの本を押し入れに隠してあったんだよね、だったら恐らくこの本の中に逸脱者に関連する何かが隠されている事は間違いないわ」
だが糊で固めた引き戸に隠してあった以上、この本には逸脱者に関わる情報が隠されている可能性は十分高かった。
それに手掛かりもある、小三郎が目指していたであろうこの村の上流にある滝である。
その滝についての文献を調べれば何か出てくるかもしれない。
「ああ、そうだな・・・・・」
結月は早速手に持っていた、半日村郷土民話集の表紙を開き目次を見る。
様々な民話の題名が横並びで書かれており結月は一つ一つ目で追っていた。
逸脱者もしくは滝と関連性のあるような民話を探していた時ある題名が目に留まった。
(湧き上がる滝壺・・・・・・)
もしや、と思い結月はその民話が書かれた所まで紙をめくった。
そこにはこの村の上流には悲願の滝と呼ばれる滝がありとある男がその滝壺で魚釣りをしようと釣り針を投げ入れたら何かが食いつき引っ張ってみるもビクともせずしばらく粘っていると釣り針を垂らした滝壺が突然沸騰したかのように泡が湧き上がり男は驚いて村まで逃げたという話だった。
(悲願の滝・・・・・どうやら何か曰く付きの滝のようだ)
所詮は信憑性の薄い民話だが既に人間が二人亡くなっている事を考えると単なる作り話とは思えずもし小三郎が逸脱者ならこの民話もあながち嘘ではなかったのかもしれない。
「・・・・・!結月、こっちにも滝に関しての文献があったよ」
鈴音が見つけた資料「半日村三十語部」にはやはり上流にある悲願の滝と名付けられた滝の事が書かれておりこの文献には轟轟と水が流れ落ちる雄大な滝と共に幾つか不気味な話が乗っていた。
先程結月が見つけた湧き上がる滝壺の話の他に、滝壺の底に黒い影を見た話や、真夜中滝壺の中から大きな何かの影が水面から顔を出していた話が書かれていた。
「どうやらこの悲願の滝の滝壺には何かが潜んでいる可能性は十分にあるわね」
悲願の滝について謎が深まっていた時だった。
「悲願の滝・・・・・・・・まさか・・・・そんな事は・・・・・・」
後ろから聞こえた声に結月と鈴音が振り返るとそこには興味深そうに押し入れを見ているわかさぎ姫と影狼の姿があった。
「・・・・・・お前達、なんで家の中まで入ってきている?」
険しそうな顔をする結月に睨まれた影狼は少し怯えた様子で思案に耽るわかさぎ姫に寄り添いながら話し始めた。
「えっ?だってさっき鈴音さんは家の中に入って駄目なのはこの村の住民だけって言ったから私達は入っても良いと思って・・・・」
その言葉に鈴音はハッとして結月の方を申し訳なさそうに見る。
「・・・・・ごめん結月、確かあの時村の皆さんは入ったら駄目って言っちゃった」
恐らくはそれが原因だろう、影狼とわかさぎ姫はここの村人じゃないからだ。
そういう意味では鈴音の言葉足らずであったがそれでも村人に入るなと言って普通入ってくるだろうか?
その時、結月はかつて訓練施設時代に学んだ妖怪の基礎知識の一つを思い出した。
(妖怪は自分の好奇心に忠実・・・・・か)
基本妖怪は利己的である、我が強く何事も自分優先であり自分の意志に忠実である。
他人から指摘を受ける事を好まず、自分の考えを曲げる事もあまりしないとされている。
大人しい彼女達もその辺は他の妖怪と例外ではなかった。
恐らくは逸脱者に興味を持ち恐怖感情を抱いているはずの人間の村までやって来る程なのだから
結月はため息をついた後、影狼とわかさぎ姫に忠告をする。
「・・・・・・そこでじっとしていろ、仕事の邪魔はするな、ここで見た事は誰にも話すな」
本当は家から出すのが正しい事だとは結月も分かっている、だが人間ならまだしも相手は妖怪だ、本人達の意志が頑なであれば追い出すのは難しい事だった、それに今は彼女達に構っている余裕などあまりなかった、小三郎が本当に逸脱者になったのか?一体どのような人妖になったのか?逸脱者の情報を集める方が先決だった。
結月の忠告に影狼はすぐに頷いたのに対してわかさぎ姫の返事はなかった。
何か考え事に耽って気づいてないようなそんな様子だった。
「どうしたの?わかさぎ姫ちゃん、何だか青ざめているように見えるけど大丈夫?」
不審に思った鈴音がそう聞くとわかさぎ姫はハッとした表情で顔をあげると鈴音や結月、影狼まで心配そうにこちらを見ていた。
「あっ・・・・ごめんなさい、ちょっと考え事をしていただけだから・・・・・・」
そう笑みを浮かべながらそう語るわかさぎ姫だったが結月はその時、ある言葉を思い出した。
悲願の滝・・・・・・・・まさか・・・・そんな事は・・・・・・。
それはさっきこの家の中に入ってきたわかさぎ姫が最初に発した言葉だった。
この言葉はわかさぎ姫は悲願の滝について何かを知っている可能性を示していた。
「わかさぎ姫・・・・・・あんた悲願の滝や逸脱者について何か知っているようだな」
その言葉にわかさぎ姫は目を見開いたかと思うと何か思い詰めるように顔を俯かせた。
その様子からわかさぎ姫が悲願の滝について何か知っているのは明白だった。
「えっ!本当なの?わかさぎ姫・・・・・・あの滝について何か知っているの?」
まさか、とは思いつつも影狼もいつもとは違うわかさぎ姫の姿に何か隠し事をしている事は長年の付き合いで理解していた。
心配そうにわかさぎ姫の方を見る影狼、しかしわかさぎ姫はすぐに返事は帰って来なかった。
「うん・・・・・その滝と同じ名前の滝の昔話を思い出したんだ・・・・・でもあれは昔話だし私自身も今の今まで作り話だと思い込んでいた話なんだよね・・・・だからあまり参考にならないかも・・・・・・」
体は小刻みに震えお腹周りの着物をギュッと両手で掴むわかさぎ姫の姿は恐怖に慄いてようにも見えた、余程怖い話なのだろう、だからこそ作り話であってほしい事実であってほしくない、そんな心情が彼女の口から昔話を語る事を躊躇させていた。
不安がるわかさぎ姫の傍に寄り添う影狼、わかさぎ姫も自然と影狼に寄り添う姿を見て本当に気の知れた仲なのだろうと結月は思っていた。
(自分も誰かが不安な時、その支えになれるような人間になりたいものだ)
こんな状況でも結月はそんな事を考えていた、一方の鈴音は前屈みになるとわかさぎ姫と視線を同じにする。
「わかさぎ姫・・・・・貴方がその話を事実である事を認める事が辛い事は分かっている、私だってそうだった・・・・・でもそれでもそれが事実なら私はその事実を認めて理解し向き合わなければならないと思っている、曖昧なままではきっと貴方はずっとこのまま昔話を作り話だと思い込み続けなければいけないのよ?それがどんなに辛い事か私は貴方自身よく分かっているはずよ」
鈴音の言葉には妙な説得力があった、血と狂気で彩られた世界を生きてきた鈴音もまたそんな経験を何度もしてきて乗り越えてきたから言える事だからなのだろう。
「それに私は例え昔話であろうと貴方の話は私達にとって何か役に立つ事だと思っているわ、もし間違っていたとしてもその事で貴方を責める事なんてしない、昔話なんてそんなもんじゃない?だからわかさぎ姫、貴方の知っている話、私達に語ってくれないかな?」
情報を収集するという事はその中には嘘や膨張が混じってしまうのは致し方のない事である、件頭や逸脱審問官に求められる事は集めた情報の中から事実に近い情報を見出す力なのだ。
情報を集めなければ事実には近づけないのだ、そのためにはとにかく多くの情報集めなければならない、そこに信憑性云々はさほど重要な事ではない。
集めた情報を比較し共通点を探す事で初めて信憑性の高い情報が生まれるのだ。
鈴音の説得にわかさぎ姫は思案しながら話を始める。
「・・・・・・・私が幼い頃にね、風変わりな河童が教えてくれた人間の昔話・・・・・幼い私にとってその話は怖くて怖くて仕方がなかったんだ・・・・・・でもあの話は風変わりな河童が幼かった私を怖がらせるために作った話だと思っていた、同じ名前の滝が緩葉川の上流にあると知っても私はその話は作り話だと思い込んでいた・・・・・・目の前にある押し入れの絵を見るまでは・・・・・」
わかさぎ姫は幼かった自分に対してそんな昔話を語り掛けてくれた風変わりな河童を思い出しながら語り始めた。
二十六録読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか?さて、二次創作フリーという環境によって爆発的に人気が増えた東方projectですがそんな二次創作で人気が出た東方projectにも一つだけ二次創作を阻害してしまうものがあると私は考えています。
それは何か?それは本元である原作東方projectだと考えています。
それがなければ二次創作も何も、と考えてしまう読者様は多いと思います。
確かに原作である東方projectがなければ多種多様な二次創作は生まれなかったと思います、原作があるという事は例えるなら調理場と材料は既に用意されている状態ですから作りだす側はそこから材料を選んで味付けをするなり原作にはない材料を入れるだけで様々な料理、東方projectの二次創作物を作りです事が出来るという利点があります。
ですがそれは同時に原作設定に依存してしまいがちになるという諸刃の剣も兼ね備えています。
東方projectには世界観、キャラ設定、キャラ同士の関係性など様々な設定があります、多くの二次創作物はここから自分が使いたい材料を選んで調理するのですが東方projectも今年で二十一年目に入ろうとする中、作品が増える度に設定は増えていく一方で中には今までの二次創作を全否定してしまう物も・・・・・。
例えるなら文×椛の組み合わせは風神録以来人気の組み合わせでしたが文花帖での文の白狼天狗を見下すような発言をした以降、文×椛の組み合わせは実質原作としてはない、という状況になり当時の文×椛を手掛けてきた二次創作者も困惑する事態となってしまいました。
これはあくまでも一つの事例ですが結果的に原作設定が二次創作フリーな素材である東方projectの足枷になっている感も否めません。
二次創作なのだから設定を無視しても構わないのだろうと考える人もいますが元は原作東方projectがあってこそ成り立つので余りに剥離しすぎると原作とのギャップが生じてしまいどうしても違和感を覚えてしまうのも事実。
中々に折り合いをつけるのは難しい所ですが原作が存在している以上はパラレルワールドであっても原作設定に依存してしまいがち、だからこそこれ以上ややこしくなるような設定は増えて欲しくないのですが・・・・・・シリーズが続いている以上望み薄です。
ですがその原作設定を魅力的な存在にするのか足枷と化すのかは二次創作者作り方次第なのでなるべくは設定を活かしながら新しい材料入りたり味付けをしたりして良い料理が生み出せるよう頑張って欲しい所です。
それではまた再来週。