人妖狩り 幻想郷逸脱審問官録   作:レア・ラスベガス

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こんばんは、レア・ラスベガスです。
インスタントラーメンとかカップの内側にここまで水を入れてくださいとラインが引いてありますが私はそのラインよりちょっと下くらいでお湯を入れるのをやめます。
どうしてかと言われると私は味が濃い方が好きだからです、お湯減らしても取る塩分量は変わらないですしね。
それでは第十五録更新です。


第十五録 月明かり覆う黒い翼 五

蝙蝠の大群を率いているのは妖怪ではない、その言葉に結月と鈴音はやはりそうかと言っているかのような顔をした。

「幻想郷にはあれ程の蝙蝠の大群を操る事が出来る妖怪はそうはいない、元々現世には蝙蝠の妖怪自体少ない、いないという訳ではないがあの規模の蝙蝠の大群を操る実力を持つ蝙蝠の妖怪はどの書籍にも記されてない、よってあの蝙蝠の大群を率いている存在は妖怪である可能性は限りなく低いだろう」

そうはいない、と風馬が口にしたのは紅い悪魔ならあの規模の蝙蝠の大群を操る事が出来ると知っているからだ。

しかし風馬は紅い悪魔も犯人ではないと思っているようだ。

「それはつまり・・・・・」

結月が結論を述べようとした時、風馬は言葉を遮る。

「いや、だが蝙蝠の大群を率いているのは妖怪である可能性は限りなく低いだけであって逸脱者であると断言する確証性のある証拠も今の所何一つない」

抑揚のない声でそう言った風馬だがその言葉には何処か悔しさが滲み出ていた。

つまり蝙蝠の大群を率いている親玉の正体はまだ分かっていないという事を指していた。

「恐らく、幻想郷の噂で流れている蝙蝠の大群の中に月を覆い隠してしまう程の翼を持った蝙蝠がいたという話やその大きな翼を持った蝙蝠が夜な夜な人間を襲っているという話は恐らく本当だろう」

情報を収集の専門である件頭がそう言ったのならその二つの話は本当なのだろう。

「私を含め多くの件頭が毎夜夜空を飛び回る蝙蝠の大群の情報を優先的に集めている、その件頭の情報によると姿や大きさに違いはあれど大きな翼を持った蝙蝠の姿を目撃した人間が何人もおり、その大きな翼を持った蝙蝠の姿を目撃した人間が多い地域で四人の行方不明者が出ている事も判明した、恐らくその大きな翼を持った蝙蝠が蝙蝠の大群の親玉で毎夜人間を襲っている可能性が高い」

襲っている所を見た目撃者はいないにしてもその大きな翼を持った蝙蝠が多数目撃された地域で行方不明者が出ているという事は大きな翼を持った蝙蝠が人間を襲っているのは間違いなかった。

しかし姿や大きさに違いがあるという事は信憑性のない噂が広がる原因になっている事を風馬も結月も鈴音も分かっていた。

「だが、恐らくその大きな翼を持った蝙蝠は妖怪ではない、ましてやあの紅い悪魔などでは絶対ない」

風馬は紅い悪魔がこの一連の騒動の犯人ではないと断言した。

風馬に限らず件頭なら吸血鬼と妖怪が結んだ契約の事や吸血鬼の事は重々知っているのでそう断言できるのかもしれない。

しかし結月にはどうしても紅い悪魔ではないと断言した事に不可解さを感じた。

(まるで紅い悪魔に何か強い思い入れがあるような・・・・・)

もちろん結月もそうは紅い悪魔が一連の騒動の犯人だとは思っていない。

だが風馬は大きな翼を持った蝙蝠は紅い悪魔ではないとわざわざ念を押すように言ったのだ。

妖怪ではないと言っている以上、別に紅い悪魔の名は出す必要などなかったはずだ。

もしかして紅い悪魔の犯行ではないかという迷信に対しての否定がしたかったのだろうか?だが紅い悪魔が犯人ではない事は逸脱審問官だって言わなくても分かっているはずなのだ。

「とはいえ、その大きな翼を持った蝙蝠が妖怪でないという決定的な証拠もないし逸脱者であるという決定的な証拠もない、大きな翼を持った蝙蝠の正体は残念ながら件頭の中でも分かってない・・・・・・正直この今の状況ではお前達を断罪に行かせる訳にはいかない」

大きな翼を持った蝙蝠は恐らく限りなく逸脱者に近いのだろう、だがそれを証明する証拠がなければ件頭として逸脱者の断罪を頼むことは出来なかった。

もし大きな翼を持った蝙蝠が妖怪であった場合、逸脱審問官を危険に晒してしまう可能性があるからだ。

逸脱審問官は人間が人間として守るべき掟を破った者を罪人・・・・・・主に逸脱者を断罪するための存在であり、逸脱審問官皆が皆逸脱者を断罪するために集まった人間である、逸脱審問官が人間である以上件頭は情報の正確性を重視し責任を持たなければならなかった。

不正確な情報で討伐に行かせ逸脱者ではなく妖怪でありその妖怪に逸脱審問官が殺されるような事があれば全ての責任は不正確な情報を出した件頭と言う事になる。

それは最も避けるべき事態であり件頭として最も恥じるべき事だった。

それにもし蝙蝠の大群を率いて人間を襲っているのが妖怪ならそれはもう逸脱審問官の出番ではない。

妖怪が人を襲う事は幻想郷の秩序を保つために必要な行為であり天道人進堂はそれを否定しなかった。

もし妖怪が無意味に人間を殺すのが好きな妖怪だとしても、それは逸脱審問官ではなく博麗の巫女の担当だろう。

「じゃあ、件頭の方でも蝙蝠の大群に関して分かっているのは今の所それだけなんだね?」

鈴音の質問に風馬は悔しさが滲んでいるかのような顔で頷いた。

「本当に申し訳ない、蝙蝠の大群は毎日のように夜空に現れる、だが相手は幻想郷の空を飛び回る存在だ、幾ら幻想郷が現世と比べ狭いとはいえ多くの人間を養い現世中の妖怪が棲む事が出来る程の広さはある、それを地上から追いかけるのは件頭全員でも至難の業だ」

件頭は情報を集める専門の集団だが彼らは人間であるため、空を飛ぶことは出来ない、情報を集める時は地上を走り回って集めている。

それに対して蝙蝠の大群は自由に空を飛び回る存在だ、地上から追いかけるのは難しい事だろう。

「その上日に日に蝙蝠の数が増えており捜索範囲も広がっている、その上蝙蝠の大群が活動するのは日の光がない夜だ、黒色の肌の色をした蝙蝠は夜の暗闇に紛れる事が出来る、目撃された大きな翼を持った蝙蝠の大きさや姿が曖昧なのも距離と周囲の暗闇でハッキリとその風貌がよく見えないからなのだろう」

確かにそんな状況では情報を集める専門の集団である件頭であっても空から蝙蝠の大群を追いかけるのは不可能だろう。

もちろん鈴音も結月も件頭が情報収集を怠っているとは思ってないので件頭を責める事はしなかった。

「それに命を大切にしろと鼎様から命じられている、情報を得るために危険を冒して命を落とすような事があればそれこそ本末転倒だと鼎様は言っていた、俺達件頭の命も同じ人間の命だからだ、それに件頭を失うような事があれば同等の能力を持った件頭を育てるのには数年はかかる、それは幻想郷の情報収集の低下を意味する、そうなれば逸脱者が発見に遅れが生じ逸脱者の犠牲となる人間が増やしてしまう事になる、俺達が逸脱者に接近するのは生きて帰れる算段がしっかりとある時だけだ」

件頭も幻想郷に生きる人間の一人であり情報が得られる可能性があっても命を冒すような真似をして逸脱者に殺されたのなら何の意味もなかった。

鼎にしても逸脱者から人間を守るために同じ人間である件頭に犠牲になってほしくないのだろう。

「残念だが大きな翼を持った蝙蝠の正体が分からない以上、俺に出来る事はその大きな翼を持った蝙蝠から人間を守るため夜に出歩く者達に対して家に帰るよう忠告する事だけだ」

目以外の顔の部分を黒頭巾で覆い表情を伺う事は出来なかったが恐らく未だに大きな翼を持った蝙蝠の正体を突き止められず行方不明者を増やしている自分を責めている様にも感じる言動だった。

「だが情報収集を専門とする件頭として諦めるつもりはない、何としてでも蝙蝠の大群の親玉の正体を、せめて犯人が紅い悪魔ではない事を証明しなければいけない」

この時結月の疑念が確信に変わった。

(やはりこの風馬と名乗る男、紅い悪魔に何か深い思い入れがあるようだ)

鈴音と咲夜のやり取りを聞いていた手前、多くの人間から疑いの目をかけられている人間である咲夜を助けるためにそう言っているのかもしれないがそれにしても念を押しすぎているような気がした。

「蝙蝠の大群の親玉の正体は件頭の誇りにかけて絶対に突き止めてみせる、鈴音も結月もいつでも断罪に行けるよう万全を期して待機しておいてほしい」

もちろん結月も鈴音も言われなくともいつでも断罪に行けるよう鍛練は怠っていなかった。

「私達は大丈夫、風馬も情報収集頑張ってね、件頭の事、頼りにしているよ」

だが蝙蝠の大群の親玉の正体を分からなければ動く事が出来なかった。

今はとにかく件頭の情報に頼るしかなかった。

「期待に応えられるよう努力する、ではこれで失礼する、御免」

風馬はそう言うと高く飛び上がり木の枝に飛び乗ると木々を飛び移りながら森の中へと消えていった。

「風馬さんなら紅い悪魔にかけられた疑いを晴らしてくれるだろう、そんな予感がする」

確信などないが、そう思わせてくれるほど風馬から並々ならぬ実力と覚悟を結月は感じ取っていた。

そうだね、と風馬が消えていった森の方を見ながら小さくそう呟いた鈴音。

鈴音も風馬の事をとても信頼しているのだろう、だからこそ頼りにしていると言葉をかけたのだ。

今は風馬と件頭を信じよう、彼等なら必ず蝙蝠の大群の親玉の正体を突き止めてくれると結月は信じていた。

「そういえばさ・・・・・・さっきお茶をしていた時、私の方を見て結月、何か言おうとしていたよね?」

森の向こうを見ながら鈴音はそう聞いていた。

聞いてほしくなかった話題を振られ結月に一瞬動揺の色が出る。

「あれって、私に元気になって良かったって言おうとしたんだよね・・・・・それって昨日のあの事を言っているんだよね?」

やっぱり気づかれてしまったかと苦虫を噛み潰したような顔をする結月。

昨日のあの事を忘れてほしくてお茶に誘ったのに自分が思い出させてしまってしまった事に結月はとても悔いていた。

「すまない・・・・・辛い記憶を思い出させてしまって・・・・・」

謝る結月だったが鈴音は首を横に振って否定する。

「結月は何も悪くないよ、謝らないといけないのは結月に気を遣わせちゃった私の方だよ」

いつも通りのように聞こえていつもとは元気が感じられない声でそう言った鈴音。

ああ、やっぱり落ち込ませてしまったと結月は悔やんだ。

「ごめんね結月、気を遣わせちゃって・・・・・・過去はどうやっても変えられないから気にしても仕方がない事は私も分かっているんだよ」

逆を言えば過去は変えられないからこそどうしても悔やんでしまうものだった。

こうして見てみると鈴音も人間離れした逸脱者を何体も断罪してきた逸脱審問官ではあるがやはり一人の人間である事を教えてくれる。

「でもね、あの時の事を・・・・私が狙撃手をやめるきっかけになったあの時の事を思い出すとどうしても胸が苦しくなるし自分に強く当たりたくなる」

鈴音は自分の胸元をギュッと強く掴んだ。

「結月、勘違いしないで欲しいんだけど、私は智子に対して全然怒ってないし恨んでもいないよ、智子は狙撃手として私の狙撃手としての腕前を評価してくれている、でも私があの事を未だに引きずって狙撃銃を握る事を避けているのが同じ狙撃手として勿体無いと思っていてつい言葉に出ちゃったんだと思う・・・・・・確かに智子の言い分は間違ってないし私も狙撃銃を握ろうと避けるのはあの時の事から逃げているからかもしれないと思っている」

だが過去を過去の事だと割り切るのはとても難しい事だ。

辛い思い出から目を逸らしてしまうのはむしろ人間らしい感情と言える。

「不思議だよね、過去の事なんて振り返ったって仕方ないのに私はあの時以来、狙撃銃を握るのが怖くなってあの時の事を思い出すのが嫌でずっと避けてきた」

あれほどの狙撃手の素質を持つ鈴音が狙撃手をやめてしまう程の辛い思い出なのだろう。

鈴音の話を聞いていた結月は口を開いた。

「それは・・・・・・やっぱり俺に話せない事なのか?」

無理に知ろうとはもう思わない、だが何が起きたのか知りたい気持ちはまだある。

鈴音が自分の意志で語ってくれるならそれに越した事はなかった。

「・・・・・話してあげてもいい、いえいずれ話さなければいけない、あの時の事は上司としてそして私自身として結月にはちゃんと話したいと思う、他の逸脱審問官はあの時の事を知っているし鼎様も知っている、知らないのは結月だけだしね」

やっぱり鼎も知った上であんな事を言ったのかと思う結月。

鼎が鈴音の過去を知っていた上で口止めをさせたという事は余程の事なのだろう。

「でもね、私怖くて仕方がないの・・・・・別に私の事を上司と思わなくても良い、それは大して怖い事ではないんだ」

鈴音はそう言うと結月に背中を向ける、今の自分の顔を見て欲しくないからだろうか?

「あの時の事を話して結月が私の事を受け入れなかったら・・・・・それがとてつもなく怖いの、逸脱審問官をやっていて嫌な事言われたり侮辱されたりした事もあったけど結月に軽蔑されるのが今は何より怖く感じるの」

鈴音の体にぐっと力が入ったのが結月には分かり今の鈴音が恐怖で押し潰されそうになっているような気がした。

お前が受け入れる覚悟があっても触れてほしくない過去を知ったお前を相手は受け入れてくれるか?

鼎が自分に対して言った言葉、それは鈴音の方を同じなんだと結月は思った。

自分が話しても良い覚悟があっても相手が受け入れてくれると信じていても、相手が本当にちゃんと受け止めてくれるか?それでも何も変わらない笑顔を向けてくれるか?

それは実際にやって見ないと分からず、自分にとって最悪の結果を招く可能性もあった。

「俺は例えどんな過去であっても鈴音を受け入れる、どんな過ちだって受け入れてみせる、それに俺が受け入れられないような過去ならば他の逸脱審問官だって受け入れないはずだ」

結月のその言葉に鈴音は振り返り結月の方を見る。

鈴音の目は今にも涙が零れそうだった。

「結月・・・・・・」

手で今にも涙が流れそうな目を擦る鈴音。

口を噤んで曇った表情で地面を見つめる鈴音は話すか話さないか迷っているようだった。

そしてどちらにするのか決め噤んでいた口をゆっくりと開いた。

「ごめん結月・・・・・・やっぱり今はまだ話したくない」

鈴音のその言葉を聞き、少し残念な気もするが仕方ないと思う結月。

鈴音を責めることは出来ない、やはりあの時の事は鈴音にとって躊躇する程辛い思い出なのだからだ。

「そうか・・・・・なら無理して言わなくていい、俺も無理して聞きたいとは思ってない、鈴音が話さなくても俺は鈴音を今まで通りに受け入れるつもりだ、話せないのは何も恥ずかしい事ではない、辛い思い出を誰かに話すのはとても勇気がいる事は俺もよく分かっているつもりだ」

結月の言葉に鈴音は顔をあげて静かに頷き微笑んだ。

「ありがとう結月・・・・・」

小さくけれどもしっかりとした声でそう言った一呼吸した後、結月に笑顔を見せた。

「いつかちゃんとあの時の事を結月に話せるよう、私もっと強くなるよ」

そう言って笑顔を見せる鈴音だがその目は今にも涙が零れそうな目をしていた。

その顔を見ていると胸が締め付けられるような気持ちになった。

「さっ!結月私達も早く本拠に帰ろう!蝙蝠の大群が出てこない内にさ」

ニコッと笑ってそう言ってきた道を戻り始めた鈴音。

そんな鈴音の後を追って本拠に向かって足を進める結月。

だが結論が決まったのに結月は蝙蝠の大群よりも鈴音の方が心配でならなかった。

 

日が沈み、太陽の代わりに月が空に浮かぶ頃、霧の湖の湖畔に建つ吸血鬼の洋館「紅魔館」その紅魔館の奥にある一室に咲夜の姿があった。

「・・・・・という事がありました」

咲夜のいる部屋、そこは他の部屋と比べても大きな空間が広がっており天井も高かった。

紅魔館は屋敷に住む魔女の手によって紅魔館内の空間が拡張されており紅魔館は見た目よりもずっと広く、部屋数が多く通路はとても複雑でまるで迷路のようだった。

これをすべて把握しているのは空間を拡張している魔女と屋敷の主である紅い悪魔、そしてメイド長である咲夜位なものである。

ここで働いている妖精メイドや小悪魔は紅魔館内部をあまり詳しくないので、妖精メイドは頻繁に紅魔館内部で迷子になり小悪魔は迷子にならないようあまり動かないようにしているなど何かと苦労しているようだ。

これは侵入者が紅魔館に入り込んだとき、目的の場所に辿り着けないよう、入ってきた侵入者を逃がさないようにするためこうなっていた。

咲夜のいる部屋も外から見た紅魔館からは紅魔館の大部分がこの部屋で占められているとしか思えない程の広さがあった。

部屋の中も外観と同じ紅色で染まっており壁には西洋文化の装飾が施されていた。

天井に近い壁には大きな窓が左右に取り付けられており月明かりが部屋に差し込んでいた。

それはつまりこの部屋は月明かりが綺麗に差し込むほど暗い事を指していた。

しかし夜の帝王である吸血鬼にとって月明かり以外の明りは好まないため来客がない日はこのようにこの部屋を照らすのは月明かりだけとなっている。

そして咲夜の前方、部屋の奥には数段の意味がなさそうな階段を挟んで一対の豪華な椅子が用意されておりかつてそれは紅い悪魔の前の紅魔館の主とその妻が座るための席だった。

しかし今は紅魔館の主である紅い悪魔とその妹の席となっておりそして今、紅い悪魔が座っていた。

その姿は斜めから入る月明かりに照らされた部分しかよく見えず顔は八重歯が見え隠れする口元しか見えなかった。

紅い悪魔は肘掛に右肘を付き顔の頬を右手の甲に乗せ左手は肘掛に乗せて指はダンスさせているかのように細かく動かしながらいつもと比べ帰りが遅かった咲夜から今日何が起きたのか報告を受けていた。

「そう、それはとんだ災難だったわね、咲夜」

咲夜から話を受けた紅い悪魔は右手の甲に顔の頬を乗せるのをやめ左手の指先ダンスをやめると不敵な笑みでそう言った。

「私が屋敷にいる間にそんな事があったのね、通りで窓から見える蝙蝠がやけに騒がしいと思ったのよ」

そう言って彼女は天井近くにある大きな窓を覗く、そこには活発に飛び回る蝙蝠の姿があった。

「それにしても失礼な話よね、蝙蝠の大群の親玉の蝙蝠と私を見間違えるなんて・・・・・」

紅い悪魔は咲夜から噂話を聞いて少し不機嫌・・・・・というか呆れていた。

「確かに背中には蝙蝠の様な大きな翼はあるわ、でもそれ以外は蝙蝠とは似ても似つかないじゃない」

咲夜も正直に言えば紅い悪魔の姿は背中に蝙蝠の様な大きな翼がある以外蝙蝠にはあまり似てなかった。

むしろ人間の幼女に蝙蝠の様な大きな翼がついているような感じでありどう見ても大きな翼を持った蝙蝠には見えなかった。

「人間の前に付いている二つの目は節穴なのかしら?同じ人間として咲夜はどう思っているの?」

間違えられた紅い悪魔にとってはそう思いたくなるのも理解できた。

少し苦笑気味の咲夜はそうですねえ、と呟いた。

「人間は自分の目で見た事にはあまり疑おうとしません、自分で見た事は聞くよりも実感があるからです、恐らく目撃者は見通しが悪い暗闇の中で大きな翼を持った蝙蝠を見て姿はよく見えなかったでしょうけど大きな翼を持った蝙蝠がいたと認知します、ですがその割に人間の記憶はとても曖昧なものですわ、時間が経つうちにその姿はよりぼんやりとしてきます」

人間は極めて高い知能も持つ生物であるがその知能は完璧ではない、時間が経つ毎に記憶は欠けていき欠けた部分を徐々に想像で補填していく事になる。

「一方お嬢様はその御姿を見た事ある人間はとても少なく僅かな情報を頼りに作られた噂話だけが幻想郷で独り歩きしています、私も蝙蝠の大群を操るとか、平然と人間を襲って血を吸うとか、大きな翼を持った蝙蝠のような姿をしているという噂も聞いた事があります、ぼんやりとしか見えず時間が経つ毎にさらに曖昧になっていく大きな翼を持った蝙蝠の姿と目撃者が少なく御姿や人物像が噂でしか語られていないお嬢様、その二つがちぐはぐに縫い合わされ、あの大きな翼を持った蝙蝠は紅い悪魔だと思い込んでしまった人達がその話を広めてしまっているのではないかと思われます」

そしてそれが連日の蝙蝠の大群に不安になっていた人間達の耳に入り藁にも縋るような感じで信じられるようになり爆発的に広がっているというのが恐らく真相であろう。

「人間は本当に単純ものね、不安にかりたてられるとその不安に理由をつけようとするわ、そこに如何にもそれらしい話が現れると証拠もないのにその話を藁にも縋る気持ちでまるで真実のように信じてしまう・・・・・・・そこに人間の脆さがあるとも知らずに」

不安な時にその不安を解消する根拠のない話が入ってくるとその話を鵜呑みにしてしまう、

不安を取り除きたいという気持ちは分かるがそれはとても危険な事だった。

かつて歴史に登場した宗教の多くはまさに今幻想郷で起きている状況そのままに産まれる。

そしてその話に縋る人々を悪意持つ教祖や幹部が悪用してお金を搾取したりはたまた争いの道具にしたりするのだ。

悪意を持つ人間に利用されて尚、その話に縋る人々は自分達は正しいと思い込んでいるから尚更厄介だった。

「この噂が広まる原因にはお嬢様の御姿を見た事がないという人間が多いからですわ、一度人間の里に行ってその御姿を大勢の人々にお見せすれば噂も収まるかもしれませんわ」

もちろん、それは無理な話だという事は咲夜もよく分かっていた。

噂の歯止めがかからない今、こうやって叶いもしない冗談を口にする事しか出来なかった。

「咲夜、それは私に人間の見世物になれって言っているのかしら?冗談はやめなさい、そんな下らない噂のために人間の見世物になるつもりはないわ、何よりそれは吸血鬼である私が許さないわよ、それにそんな事をしたって火に油を注ぐような物よ」

ですよね、といっているかのような顔をする咲夜。

紅い悪魔は別に噂話など大して気にしてなかった、その気になれば人間なんて簡単に黙らせる事が出来るからだ。

だからこそ紅い悪魔には自分が在らぬ疑いをかけられて尚余裕があった。

「それに咲夜は私の能力を忘れた訳じゃないでしょ、もし人間の里なんかに行ったらどうなるか・・・・・・それをよく分かっているのはあなた自身のはずよ」

紅い悪魔の能力、それはとても数奇で奇妙なものであり紅い悪魔の姿を一目見ただけで能力を発動してしまうものだった。

「・・・・・確かに私もお嬢様のせいで随分と狂わされてしまいしたわ、もう人並みの幸せを得られない程には」

しかしそこに紅い悪魔への怒りはない、もう過ぎてしまった事を振り返らず今の状況を受け入れて楽しむ、咲夜はそんな人間だった。

「それにしてもまさか逸脱審問官に助けてもらうなんてね、それもよりによって鈴音にね」

紅い悪魔も鈴音とは顔見知りだった。

紅い悪魔にとって鈴音の印象はそれほど強い者ではない、いつもだったら忘れていたかもしれない人間の一人、それを記憶に留めていたのは彼女と一緒にいたあの人物と一緒に記憶に残ったからだ。

「随分顔を合わせてないけどあれからどれだけ成長したのかしら?一年、吸血鬼の私にとっては瞬きくらいの年月だけど随分と成長したのは確かのようね、それでなければ今日まで生きてこられなかったし私が知っている頃の鈴音に部下なんて出来るはずがないわ」

紅い悪魔の口に笑みが浮かぶ。

紅い悪魔にとって顔見知りである鈴音が上司になり部下が出来た事は考え深いものだった。

「しかし何で鈴音は私の事を紅い悪魔呼ばわりしたのかしら?鈴音は私の本名を知っているはずよ」

顔見知りである以上、鈴音は自分の本当の名前を知っているはずなのだ。

しかし彼女はその名前を使わず紅い悪魔という呼び名を使ったのは不思議だった。

鈴音が紅い悪魔の事を険悪になったという説はないだろう、もしそうだとしたら咲夜を助ける訳がない。

「私も最初は何故鈴音さんがお嬢様の名前を使わなかったのか分からなかったんですけど、今考えてみると結月さんに顔見知りである事を知られたくなかったのかもしれませんわ」

もし鈴音が紅い悪魔と顔見知りである事が知られたらかなり厄介だろう、何故なら紅い悪魔と鈴音の出会いは鈴音にとって大切なあの人が深く関わっているからだ。

そういう事情は咲夜も知っていたので触れないでおいたのだ。

(流石に今の鈴音でもあの人の事はまだ触れてはいけない領域のようね・・・・・)

紅い悪魔も空気が重くなるのでこれ以上あの話は中断し話題を戻す。

「でも咲夜を助けるという事は疑いの目をかけられている私を庇ったという事よ、鈴音が所属している天道人進堂は仮にも表向きは人間側の組織・・・・彼女に抵抗はなかったのかしら?」

答えを聞く前から分かっている質問、紅い悪魔は念のために咲夜にその質問を投げかけた。

「鈴音さん曰く『天道人進堂に所属する逸脱審問官は人間としての誇りや尊厳を厳守する人間を守るためにあり、証拠もないないのに犯人が紅い悪魔だと決めつけて心無い誹謗中傷浴びせるような人間の味方ではない』とおっしゃっていましたわ」

期待通りの答えが出た事に紅い悪魔は少し上機嫌になる。

それはそう答えた鈴音の成長が手に取るように分かった事の他にもう一つ理由があった。

「流石はあの男に仕えているだけの事はあるわね、噂話や世迷言に惑わされず正しい事をするためなら世間や世俗にだって逆らう、教育がちゃんとなされているわ」

紅い悪魔が口にするあの男、それは鼎玄朗ほかならない。

紅い悪魔は鼎とも認識があり鼎の事を一目置いていた。

「咲夜も鼎を敵に回さないよう気をつけなさい、もし鼎を敵に回したらそれこそ今の噂話所じゃ済まされないわよ、私達を含め咲夜も幻想郷にいられなくなるわ、現世に居場所がなくなってここに来たのにここを追い出されたらもう行く場所はないわよ」

紅い悪魔は鼎の実力と権力を知っており、紅い悪魔にとって敵に回したくない一人だった。

もちろん鼎を含め逸脱審問官と戦う事になっても負ける事はないだろう。

しかしそれよりも紅い悪魔には恐れている事があった。

「承知しておりますわ、私も鈴音さんを含め逸脱審問官とは戦いたくありませんせんもの」

そう咲夜が述べたのは単に友人である鈴音と戦いたくないだけではない。

紅い悪魔を含め紅魔館に住んでいる者達は天道人進堂がやっている事を不快だと思っている者は一人もいない。

天道人進堂は幻想郷の規則である「人間が妖怪に怯えそれを妖怪が糧にする」を厳守しておりその規則を破る人妖を理由はどうであれ討伐してくれる組織なので幻想郷の秩序を保ちたい紅い悪魔にとってはむしろ好都合な組織だったからだ。

「そう、分かっていればいいのよ」

天道人進堂は表向き人間側の組織で紅い悪魔も御人好しではないので支援はするつもりはないが邪魔する事も一切しない、それが紅い悪魔にとって紅魔館と天道人進堂の理想的な関係だった。

それが長く続く事を紅い悪魔は望んでいた時だった。

「とても不愉快な話だねぇ」

この声の主は紅い悪魔でも咲夜でもない、紅い悪魔よりも幼い子供の様な声だった。

暗闇の中から現れたのは紅い悪魔と同じくらいの背丈で背中には七色に光るひし形の水晶のような羽が生えた幼女のような姿をした者だった。

彼女も丁度下半身だけが月明かりに照らされる位置で立ち止まっており全貌は分からなかった。

しかし紅い悪魔も咲夜も全貌が見えなくても声を聞いただけで何者なのかよく知っていた。

「妹様?いつからそこにいらしたのですか?」

咲夜から妹様と呼ばれた七色に光る翼が生えたこの幼女の様な姿をした者こそ紅い悪魔の妹であった。

「何言っているの咲夜?私はずっとこの部屋にいたよ、気づかなかったの?」

咲夜はこの部屋に入って来てから今までの間ずっとこの部屋には紅い悪魔しかいないと思っていた。

「すみません、部屋が暗いので妹様がいる事に気づきませんでしたわ」

咲夜の言葉にあからさまなため息をついた。

「人間って本当に不便だよねぇ、暗闇と明りがないと周囲に何も見えないんだから、暗闇でも見通しが効く私達とは大違いね」

まるで人間を見下したかのような発言、しかし咲夜は怒った様子も見せず紅い悪魔の妹の話を苦笑しながら聞いていた。

「あら?そこにいたのねフラン、全然気づかなかったわ」

フラン、それが紅い悪魔の妹の名前であった。

紅い悪魔が吸血鬼であるように彼女もまた吸血鬼であり幼い見た目ながら姉である紅い悪魔と同じく恐ろしい力をその幼い体に秘めていた。

ただ紅い悪魔は自身の力を制御できるのに対してフランは情緒不安定な面があり自身の力を完全に制御できていなかった、そのため姉である紅い悪魔によって紅魔館に閉じ込められていた。(軟禁が正しい表現かもしれない)

そんな妹を前にして同じ吸血鬼である紅い悪魔は平然とした様子でそう言った。

もちろん紅い悪魔が妹の存在に気づいていない訳がない、当然であるが人間である咲夜がいる手前人間を庇った訳ではない、どちらかというと妹をからかうための冗談である。

「お姉様、それは冗談のつもりで言っているんだよね?」

フランと呼ばれた紅い悪魔の妹は少し殺気染みた声でそう聞いた。

「あ~、声をかけられるまでいないものだと思っていたわ、フランとはかくれんぼやりたくないわね、一週間かけても見つけられる自信がないわ」

お姉様!とさらに強い殺気を感じる声でそう言ったフラン。

「・・・・・・冗談よ、これで十分かしら?」

紅い悪魔が冗談だと認めるとフランの体から出ていた殺気が収まる。

「お姉様、からかうのもほどほどにしてほしいわ、次下らない冗談を言ったらお姉様の片方の翼引き千切るからね?」

実の姉に対して恐ろしい事を口にするフラン、普通の人が見たら物凄く険悪な関係に見えるかもしれない。

実際に彼女にとってお姉様という言葉に敬愛の意はない、ただの呼び名であり、フランは姉である紅い悪魔の事を血の繋がった自分より早く生まれてきた姉くらいにしか思ってない節があった。

だが実際はフランの言葉は脅しに近いようなものであり冗談を言っても本当に引き千切られる事はあまりない。

万が一本当に彼女の怒りに触れて引き千切られたとしても何も問題ない、吸血鬼は強力な再生能力を持つため片方の羽を引き千切られたって次の夜には元通りなのである。

人間で言ってみれば次そんな冗談言ったらほっぺたをつねるぞ、くらいが彼女達吸血鬼になるとこうなるのだ。

「それよりさ、さっきの咲夜の話を聞いていたんだけど、その大きな翼を持った蝙蝠はとんだ身の程知らずだと思わない?」

どうやらフランは大きな翼を持った蝙蝠の事でご立腹の様子だった。

「私達は人間達にどう思われていようとも構わないけど、私達と同じ蝙蝠を使い魔にするなんて・・・・・」

吸血鬼は使い魔として蝙蝠を操る事が出来た、幻想郷に住む多くの蝙蝠を従えている事は吸血鬼にとっても彼女達にとっても誇りであった、それをどことも知らない輩が蝙蝠を従えて我が物顔で幻想郷を飛び回っているのだ。

紅い悪魔もその事は不快に感じていたがそれでもあまり気にしてなかった。

「確かその大きな翼を持った蝙蝠は連日のように夜空を飛び回っているんだよね、だったら今日も飛んでいるはずよね、咲夜」

え、ええと戸惑いながらも答えた咲夜。

戸惑っていたのは何か嫌な予感がしたからだ。

その言葉を聞いたフランは紅い悪魔の方を向く。

「お姉様、その大きな翼を持った蝙蝠がどこの馬の骨かは知らないけどその蝙蝠にそれがどんなに愚かな事なのか身のほどを教えてあげましょう」

身のほどを教える、彼女にとってこれは弾幕勝負で決着をつけるという意味合いではなく、死をもってわからせるという意味だった。

もしその大きな翼を持った蝙蝠が妖怪であった場合、フランの言っている事は明らかに規則違反だ、とはいえ破ったとしても何か罰則が明確にあるかと言われると実の所曖昧だった。

大抵はスキマ妖怪である八雲紫が動くか幻想郷の秩序を保つ博麗の巫女が動くかのどっちかではあるがそれでも厳しい罰が下るとは考えにくかった。

並の妖怪ならそれこそ運が悪ければ討伐されてしまうだろうが紅い悪魔は幻想郷を支える勢力の一つであり、おいそれと討伐する訳にはいかない、均衡が大きく崩れ結果的には幻想郷の秩序を乱す火種になってしまうからだ。

それでは本末転倒なので恐らくだが八雲紫の『建前』としての厳重注意がされるか博麗の巫女からの弾幕勝負と言う名のお仕置きで済む程度である。

もちろん度が過ぎれば討伐対象にされてしまうが紅霧異変以前は人間から忘れられてしまう程大人しくしており紅霧異変後も特に大きな悪さはしていないので、例え紅い悪魔がその大きな翼を持った蝙蝠を殺しても討伐される事はないだろう。

「そうね・・・・・」

顎に手を乗せて考え込む紅い悪魔。

実の所今回ばかりはフランの提案に共感出来る節もあった、実際誇り高き優れた種族である吸血鬼に対して良からぬ噂が幻想郷で広まっているのは事実だ。

例え自分達は人間にどう思われようとも構わないが人間の里に買い出しに行く咲夜になると話は別だった。

この噂が流れている間は人間の里に買い物に行く事も出来ない、天道人進堂で必要最小限の日用品は買えるだろうが自分がお気に入りのワインやフランが好むクレヨンなどはやはり人間の里に行かないと買えないだろう。

それに積極的に天道人進堂に頼るのは控えたい紅い悪魔の思惑もあった。

そんな考えているとふと紅い悪魔はある事を思い出し結論を出した。

「もう少しだけ様子を見ないかしら?別に早急に手を打つ必要性なんてないし、もう少しだけ遊ばせてあげてもいいんじゃない?」

様子を見る、それはフランにとって納得できない言葉だった。

「え~、どうして待つのよ?お姉様はどこの馬の骨とも分からない奴が私達と同じ蝙蝠を使い魔にしている事に腹が立たないの?」

腹が立たないと言えば嘘になる、しかし紅い悪魔にはある考えがあった。

「すぐには動かずしっかりと相手の動向を伺ってから適切な対処をする、それこそ吸血鬼としての行動よ、ちゃんと相手の事を探ってからでも遅くないわ」

とは言っても探るのは紅い悪魔でもなければフランでも咲夜でもなかった。

「咲夜、これから毎日天道人進堂に足を運んでもらうわ、大きな翼を持った蝙蝠に関する情報を耳にしたら随時私に報告しなさい、いいわね?」

かしこまりました、そう返事した咲夜であったが紅い悪魔の意図が理解できず咲夜の顔に困惑の表情が浮かぶ。

「三日、とりあえず三日は様子を見る事にするわ、三日経っても大きな翼を持った蝙蝠の目立った情報がなければ私達が動くわよ」

しかし紅い悪魔には恐らく三日も待つ必要はないと理由のない確信があった。

窓を見上げ夜空を見つめる紅い悪魔、彼女の頭にはある男の姿があった。

「今日で四日目・・・・・・随分とてこずっているようね」

紅い悪魔の思い浮かべる人物、それはかつて紅霧異変の時、情報屋である鴉天狗達が諦め、博麗の巫女よりも先に紅魔館に辿り着いて見せたあの男、風馬であった。

聞いた話では件頭の実質的指導者になっているらしい。

(あれから結構経ったけど、風馬はどのくらい成長したかしらね?)

紅い悪魔はある期待事をしていた、それは風馬が大きな翼を持った蝙蝠の正体を暴いてくれるのではないか?という期待だった。

(とはいえ相手は空を自由に飛ぶ蝙蝠・・・・・・人間である件頭には少し荷が重いかしら?)

蝙蝠の大群を従えて夜空を自由に飛び回る蝙蝠の正体を暴くのは幾ら件頭でも難しい事は何となく察しはついた。

しかしかつて紅魔館に辿り着いて見せたあの男が紅い悪魔の御目に適った成長を遂げていれば例え自由に空を飛ぶ相手でも正体を掴んでくれるかもしれない。

(さあ・・・・・私の期待に応えてみせなさい、風馬)

窓から見えるほんの少しだけ欠けた月を見上げ紅い悪魔はそう思った。




第十五録読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか、さて、この東方小説は比較的原作寄りの設定(?)で書いていますが・・・・・東方キャラの口調、思っていたより癖が強くて書くのに苦労しています。
この東方キャラの口調、こんな喋り方だったんだと驚く事が多いです。
特に咲夜さんには驚かされました、二次創作ではクールでイケメンなイメージの強い(作者によってはその真逆もある)咲夜さんの喋り方がまさか『ですわ』口調だったとは・・・・・。二次創作から東方を入って興味本位で東方文花帖を買って読んだ時はとても驚きました。
東方は作り込まれた世界観とゲーム性そして二次創作フリーというやり方で同人界隈に一大勢力を築いたゲーム、咲夜さんの性格をとっても二次創作の大きさを感じました。
二次創作に対して自由過ぎるのもどうかという意見も出ますがやはり二次創作はキャラだけ借りた状態だとしても自由であるべきだと思います、これは駄目、これも駄目、と制限してしまっては東方がここまで大きくなることもなかったでしょう。
ただ一つだけ苦言が言えるのならモラルを考えて欲しいと思ってしまう時もあります。
ほぼ半裸もしくは全裸のイラストや過剰な性的描写がされたイラストを全年齢枠で投稿するのはもう少し何とかならないかな、とは思ってしまいます。
自分が描いたHなイラストを見てもらいたい、インパクトのあるイラストを描きたい等理由はありますが投稿枠をR-15かR-18で投稿して欲しいとは思います、そんなモラルを考えない人がいるからこそ規制すべきだという主張が出てきてしまうのではないかと考えてしまいます、少数の人のせいで関係にない大多数の人に影響が出てしまうのは悲しい事だなと思っている今日この頃です。
それではまた金曜日に。

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