人妖狩り 幻想郷逸脱審問官録   作:レア・ラスベガス

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皆さん初めまして作者のレア・ラスベガスと申します。
今回初めてハーメルンで投稿させて頂きます。
何分拙い所があるかもしれませんが温かい目で見てもらえると幸いです。
勿論、応援であれ注意であれ指摘があれば真摯に対応する覚悟です。
さて、この小説は一年三ヶ月前にある構想を抱いて書き続けた小説であり今は四話分の話が既に完成しています、余分のある内は毎週金曜日に投稿していこうと思いますが余分がなくなったらかなりの亀更新になりますので予めご了承ください。
前文が長くて遅れましたがこの小説は東方projectを原作に書いている二次創作ものですが正直に言えば東方キャラクターはあまり登場しません、何のための東方なんだと思う人もいますが自分自身は東方キャラクターを使っての二次創作ではなく幻想郷という世界観を生かしての二次創作として書いているつもりです。
小説の内容は見てもらうとしてこの小説のテーマとしては妖怪の楽園である世界で妖怪の糧として生きる人間や人妖との戦いを通して人間とは何か?人間の複雑性や不透明感を感じ取ってもらえたらいいなという思いで書いています。
アンチ・ヘイトタグをつけてありますがこれは東方キャラクターに対してではなくこの小説に出てくる人間に対しての不満や憤りの意味を込めてつけさせてもらいました。
下手な描写や分かりづらい箇所はあると思いますがこれを読んでくれる読者様の中で何かを考えさせられたり感じたりする事があれば私はとても幸せです。
前書きが長くなりましたが最後はこの人妖狩り 幻想郷逸脱審問官録の世界観を現した言葉でしめさせていただきます。
人間としての誇りを捨て外道へ堕ちた逸脱者に無情なる断罪を。


序録&第一録 逸脱審問官の始まりと人妖のなり損ない 一

序章 人間をやめるという大罪

 

強大な力を持つスキマ妖怪「八雲紫」によって創られた現世と切り離された世界「幻想郷」

そこには人間の畏怖またや人間そのものを餌とする妖怪とその妖怪に怯えて暮らす人間が暮らしており、ここで暮らす人間は妖怪達に実質支配され数少ない安全地帯で怯えながらこの世界を生きていました。

しかし人間達の中には妖怪に怯えて暮らすのが嫌になり逸脱したやり方で「人間」から「妖怪」になる人達もいます。

彼らの事を幻想郷では「人妖」と呼ばれ、人妖は幻想郷の均衡を崩壊させかねない大罪とされており幻想郷の秩序を保つ博麗神社の博麗霊夢や幻想郷の主である八雲紫は人妖になる可能性のある者を用心深く観察していました。

では何故人妖は幻想郷に置いて大罪なのか?それは幻想郷が妖怪の楽園であると同時に妖怪と人間の微妙な均衡で保たれているからです。人間が妖怪に畏怖し恐怖する思念が妖怪達の糧となりそしてそれが妖怪の力となってこの幻想郷を支えているからです。

幻想郷とはいわば博麗結界という名の強度のあるシャボン玉に作られた。現世と比較すると脆く壊れやすい世界でそれを支えるために妖怪の力が必要でありその妖怪の力の源である人間の妖怪に対する畏怖や恐怖の思念があってこの幻想郷は存在するのです。

しかし人間が逸脱した方法で妖怪になった者・・・・・・幻想郷では「人妖」と呼ばれる存在になるとその者は妖怪を畏怖しなくなるし恐怖しなくなります。

もし人間側から妖怪側に変わる人が増えた場合、人間から得られる妖怪の力の源である畏怖や恐怖の思念が減り、人妖になったものは自分達の存在を維持するために人間を襲うようになります。

結果として妖怪の源である畏怖や恐怖の思念が大幅に減り枯渇、それにより妖怪の力が弱まりそれが原因で幻想郷の均衡が崩れシャボン玉がパチンと割れるように幻想郷崩壊するという最悪の結末も起こりうる可能性があったからです。

もちろん幻想郷が崩壊すれば妖怪も人間も全員滅亡し世界が完全消滅してしまいます。

幻想郷を維持するためには妖怪も人間も必要不可欠でありその均衡が崩れないよう人妖は大罪とされたのです。

 

しかし人妖を大罪と見なしているのは妖怪や博麗だけではありません。

それは本来妖怪達から支配されているはずの人間側にも人妖を忌み嫌う組織があるのです。

人間賛歌、人間って素晴らしい、そんな考えに賛同する者達で構成された。

人間の人間による人間のために活動する組織「天道人進堂」

人間の里の近郊にある、永らく未整備だった荒れ地を開拓して作られた平地に建てられた。本部を拠点に活動する組織で表向きは人間のための慈善社会活動団体なのですが、その組織の中に異質な集団がいます。

それは本部である天道人進堂の地下にある地下総合施設を拠点に活動する「逸脱審問官」と呼ばれる者達です。

彼等は天道人進堂が掲げた人間が犯してはならない掟を破る者達を断罪する事を仕事としています。

天道人進堂には掟がありそれは人間が犯してはいけない規則なのですが、原則的に「故意に人間という存在概念から外れてはいけない」で統一されておりそれを外れる者がいた場合、逸脱者(人妖)扱いとされ多額の賞金がかけられ逸脱審問官の標的になります。

彼等にとって逸脱者は人間の尊厳や誇りを踏みにじった存在であり人間として生きている者達の尊厳や誇りを守るため大罪犯した逸脱者達を断罪するのです。

人間離れした力を持つ逸脱者に対し逸脱審問官達は優れた身体能力と守護妖獣と呼ばれる人工的に生み出された妖怪と永遠の契約を結び彼らの力を借りて逸脱者と戦うのです。

自分の命を削りながら・・・・・・・。

そして今日、天道人進堂本部の最深部、契約の間で一人の若者が逸脱審問官になるための洗礼、契約の儀が執り行われようとしていました。

 

人間としての誇りを捨て外道へ堕ちた逸脱者に無情なる断罪を

 

第一録 逸脱審問官の始まりと人妖のなり損ない 一

それはまるで闇の中に放り込まれたかのような。

辺りは静寂の無音が包み一寸先も見えない暗闇の空間が広がっている。

もし、彼が何を知らずここに放り込まれたなら、恐らく数時間程度で発狂していただろう。

そのくらいの恐怖を感じる闇と無音に支配された世界だった。

彼はこの時、ありふれた光の有難さを感じずにはいられなかった。見て認知できる恐怖よりも見えない恐怖の方が圧倒的に怖いと実感したからだ。

無論、今から彼がなろうとしている職業がこの暗闇の恐怖よりも何十倍も怖い。狂気と血で彩られた世界である事は彼も十分に知っていた。

だからこそ竦むのだ。目の前にある暗闇の恐怖よりもさらに深い恐怖に自分から飛び込んでいくと考えると・・・・・。

コツコツ・・・・・。

正面の方から足音が聞こえる。無音だった分しっかりとした地面を靴が接触する音が空間に響く。その音はこちらに近づいているようだった。

「ようこそ、新たな逸脱審問官になる者よ」

暗闇の中からスッと現れたのは、無精ひげを生やした見た目は三十代くらいの眼鏡をかけたガタイの良い男性だった。

彼はこの男性の事を良く知っていた。逸脱審問官になるための最終試験で一対一の個人面接の時、試験官として現れた男だ。

鼎玄朗、そう名乗ったこの男はこの場所の遥か上の地上にある天道人進堂の大旦那でありそれと同時に逸脱審問官の作戦司令部の司令官でもある。

「ここに来いと言ってのいたのは確かあなただったはずだが?」

彼はそんな大旦那にも敬語を使わず率直な口調で言葉を返す。

そんな彼に大旦那は怒る事なくフッと笑った。

「確かにそうだが、何・・・・・もしかしたら臆して来ないのではないか?と心配になっていた所でな」

逸脱審問官はとても危険な仕事だった、狂気と血で彩られた世界と聞いてはいても到底理解は出来ないはずだ、実際に見てないからだ、だからこそ言い知れぬ不安と恐怖が立ち込めていた。まるで何も見えない、何もわからないこの暗闇のような恐怖が煙のように、なので試験には合格しておきながら、怖気づいてここに来なかった者も過去には数人いたからだ。

「逸脱審問官になると決意してここまで頑張ってきた、臆する事なんて何もない」

嘘、実際はここに来た時この暗闇よりも深い恐怖に飛び込もうとしている事に心の隅で恐怖を抱いていた。だが逸脱審問官になると決意した以上何があっても後ろには下がらないと決めていた。だからこそ逃げずに立っている。

「良い答えだ、てっきり私は心の底では怯えているのではないかと思っていたが・・・・」

図星であった。だがこの男に微かでも表情を変えたら見抜かれてしまう。それだけの技量を持った男だと思っていた彼はなるべく平常心を装う。

「怖気ついて来なかった者達と比べ勇気があった事は誉めてやろう、だが怖気づいてこなかった者達はとても勘が鋭かったとも言えよう、逸脱審問官はどれだけ信念や理屈を並べてもこの仕事は絶対一度は後悔する、絶望に叩きのめされ、時には命を落とす、その運命である事を事前に察知し逃げ出せたのだからな」

本当にこの男は何を考えているのか分からない、逸脱審問官になろうとしている人がいる前で逸脱審問官の現実を叩きつけ皮肉にする、まるで今なら逃げられるぞと言っているかのようだ、いやこれも試験なのだろう。

「そう言う意味では逸脱審問官になった者は勘が鈍い者達ばかりだ、勘の鈍い者は同時に危機能力があまりない損な体質という事でもある、狂気と血で彩られた世界を理解しているようで理解していない、信念や夢を掲げて狂気と血に立ち向かおうとするが結局は狂気と血に呑まれ後悔し絶望しそれでも逃れられない運命であるが故にそれを背負って戦い続けそして死んでいく悲しい者達ばかりだ」

今からその悲しい者達の仲間入りになる彼の心境は複雑だった。

「・・・・・・さて、逸脱審問官になるための最期の儀式、契約の義を受けてもらう事になるが・・・・・・」

思わせぶったように彼に背中を向ける鼎。

そしてチラリと顔をこちらに向ける。

「もう一度聞こう、逸脱審問官になる事に後悔はないか?」

恐らく鼎は自分を試しているのだろう。逸脱審問官として生きる事を正しく理解しているかを。

「試験に合格した日、逸脱審問官になるという規約書にちゃんとサインした、その規約書の約束を破る訳にはいかない」

果たしてそうかな?

そう言って彼の方に体を向けた鼎。

「所詮は規約書など表面上の便宜にしか過ぎない、破った所で何のリスクもないし、私はそれを追及するつもりもない」

まるで悪魔のようにそう囁く。

「今ならまだ止められるぞ、後ろに向きを変え階段を登ればいい、私はそれを止めるつもりはない、私は君の意志を尊重する、全てはお前の気持ち次第だ」

確かにこの暗闇の恐怖よりも怖い、狂気と血に彩られた世界に自らの意志で飛び込もうとしている事に心の底では怯えていた、一度飛び込めばどう足掻いても抜け出せないのも理解していた、恐らく鼎の言う通りこの先何度も後悔する事になるだろう。

だが人生は一度しかないのだ、やらなくて後悔するのよりやって後悔した方が良い。

「誰かがやらないといけないんだろう?幻想郷の秩序と人間の誇りを守るためには」

その言葉が出てくるのを待っていたかのように鼎はすぐに言葉を返した。

「ここに来た者は私の質問に対して皆一様にそう答えたものだ、だがそんな理屈など通用する程この世界は甘くないぞ、何で逸脱審問官になったのだろうと自分に問う時が何度も来る、短くなる命に絶えまなく出現する人妖、常に死と隣り合わせの人生だ、世のため人のためと言いながら最後に可愛いのは自分だ、何故自分がこんな事をしなければならないだろう、死という感覚を徐々に理解していく毎に後悔の念が強くなる、そんな運命を一生背負う事になる仕事だ、今なら逃げられるぞ、全てはお前次第だ」

彼との距離を縮めそう詰め寄った鼎。

しかし彼の一度目を瞑り、息を吐いた。

「人間としての誇りを捨て外道へ堕ちた逸脱者に無情なる断罪を」

そう彼が呟いた時、鼎の目が見開く。

それは天道人進堂が掲げた人間が生きていく故で守らなければいけない掟、九条の内の最後の言葉だった。

人間が守らなければならない掟を破り人間の道を外れてしまった逸脱者を人間の誇りと尊厳を守るために「断罪」する、逸脱審問官のために存在する掟だ。

「俺は人間の尊厳、誇りを踏みにじる逸脱者を絶対に許さない、命が燃え尽きるその日まで逸脱者を戦い続ける・・・・・・それが結果的に見も知らぬ誰かを守り幻想郷の秩序を保つためになれば人生を費やす価値がある、これが俺の決意だ」

瞼を開けそう断言した彼、鼎は後ろに下がり笑みを浮かべる。

「単純かつ素直な答えだ・・・・・・・愚か者め」

鼎の口にした愚か者という言葉はこの時はまるで褒め言葉にように聞こえた。

「いいだろう、私に着いてこい・・・・・・契約の場所まで案内する」

何も見えない暗闇の中を歩き始めた鼎を見失わないよう着いていく。

着いていく内に気づいた事だが、どうやら壁や地面は石畳で出来ており天井からは水が滴る音が聞こえる、恐らく天井は土が剥き出しの状態なのだろう。

一体誰がこんな深い所まで掘ったのだろう?恐らくは前を歩く鼎が掘ったのだろうとは見当は着くが流石に一人で掘ったとは思えない、何故なら天道人進堂の地下は何層もあり広大な地下空間が幾つも存在する、今いるここは天道人進堂の最下層だ。

もしこれを一人で掘ったのであれば、完成する頃には既に鼎は年老いた男性だっただろう。しかし目の前にいるのは見た目だけなら三十代くらいの若々しい男だ。本人は四十代後半を名乗っている。

誰かが手伝ったには違いないが一体誰が手伝ったのか?何百名もの作業員が関わったのは理解できたが人間の里にもこの天道人進堂の地下を掘る作業をしていたと言う者は一人もいない。

「ここを掘るのはとても骨が折れたよ、毎日疲れ果てて泥のように眠ったものだ」

まるでこちらの考えを看破しているかのように鼎は独り言を呟いた。

その言葉が本当なのか嘘なのか、彼には判断が着かなかった。

ある意味ではこの暗闇よりも鼎の方が怖いのかもしれない。

それから随分歩いていると正面の方から光が差し込む場所があった、長く遠かった通路を抜けるとそこはぼんやりと明るい開けた場所に出た、そこで鼎の足が止まる。

どうやら目的の場所に到着したようだ。

「ここが逸脱審問官になるための最後の儀式を行う所だ、通称血の交わる場所と呼ばれている」

彼はこのぼんやりと照らされた空間の全容を見て息を呑んだ。

大きくくり貫かれた縦長な空間は天井がとても高く、杉木が一本入ってしまう程高かった。

一体どうやって掘ったのだろう?それも気になったがそれよりも彼の目を釘付けにしたのは入って正面の壁にはめ込まれた大きな二対のステンドグラス、様々な模様が施され幾多の色ガラスで色彩豊かに作られた大きなステンドグラスが二対並ぶようにはめ込まれその窓から淡い赤の光が差し込んでいた、恐らくこの空間を照らす唯一の光源であろう。

そして石畳にとても年季の入った西洋の気品のある椅子が二対ステンドグラスに照らされるように安置されていた。

その光景はとても神秘的で儀式を行う場所として十分に納得がいくような迫力あった。

しかし一つ疑問があった、それはステンドグラスから差し込む光だ。

確かここは地下深くの光など届かぬ場所であったはずだ。

それだけじゃない、この空間に繋がる通路は今自分が通ってきた狭くて暗い通路しかない。

どう頭を捻ってもこの大きなステンドグラスを運べるような通路ではなかった。

一体どういうことなのだろうか?

「この空間の矛盾に気づいたようだな・・・・・・だが、椅子やステンドグラスをここまでどうやって運んだか?何故ステンドグラスから光が差し込んでいるのか?その理由はあえて教えないでおこう、謎なのもまた神秘的で儀式の行う場所として最適ではないか?」

またも彼の心を看破したかのような発言をする鼎。

この空間の謎は恐らく今は分からないが、どうして鼎が彼の心を看破できているのかだけは理解できた。

恐らく鼎が彼の心を看破出来ているのは、現在逸脱審問官として活躍している者達が過去に逸脱審問官になるためにここを通った時、自分と同じ感想を口にしたからだろう。

恐らくその時もこうやって道案内をしていた鼎は相手が何を考えているのか手に取るようにわかったのだろう。

「さて・・・・・・・これから儀式を始めるが心の準備はいいかな?」

頷く彼を見て鼎は右側の椅子の方に手を差し向けた。

「ではあそこの椅子に座るがよい」

彼は何も言わず何の躊躇もなく椅子に座った、何が起きようと絶対に退かないそんな決意を秘めていた。

「ではこれより契約の儀を始める」

高らかにそう宣言した鼎、その声はこの空間に木霊して響くほどだった。

すると先程通ってきた通路から人間と獣の一組がやってきた。

人間は頭に水玉模様の布を巻き付けた半袖短パンに袖のない前が開いた上着を羽織った褐色肌をした少女獣の方は見た目こそ狐のようだが背中には大きな翼が生えていた。

獣はただの狐ではなく妖怪、妖狐の一種である事は見て取れた。

一体いつ頃から後ろを着けていたのだろう?暗闇なので振り返っても後ろに誰かついてきているか分からないのは当然だが、それにしても足音すら聞こえなかったのは不思議で仕方なかった。

(あれが・・・・・・俺の相棒になる守護妖獣)

彼は知っていた、この儀式は何のために行われるか?

ただの儀礼的なものではない、この儀式はこれから人生を共に歩む事になる人工妖怪「守護妖獣」と契約するための儀式なのだ。

守護妖獣とは逸脱審問官になるための厳しい試験を合格した者から規約書に乗っ取り血を採取し鷹の無精卵に犬、狐、猫のいずれかの精子を共に特殊な注射器で入れられ「子宮炉」と呼ばれる特別な卵を温める窯で生まれる人工妖怪で逸脱審問官のお供として幻想郷の秩序と弱者を守るために生み出された妖怪である。

逸脱者はそのほとんどが人妖であり体内に妖力を含み人間離れした身体能力と妖術を使う者達が多かった。

そのため逸脱審問官は必ず契約した守護妖獣と常に行動を共にし、人妖を探す時は互いに協力して人妖と戦う時は契約者の命令の下連携して戦うのだ。

契約の義とは守護妖獣との間に絶対的な主従関係を作るための大事な儀式で、逸脱審問官の命令には絶対服従で反抗しないという、またそれだけじゃなく守護妖獣が持つ妖怪的能力を借りたり強力な妖力攻撃を放つ事も出来たりするようになるのだ。

しかしリスクもある、一度契約をすると二度と解約は出来ず、死ぬまで付き合わなければいけなくなり、さらに守護妖獣が妖力のない状態で守護妖獣の妖怪的能力を借りたり守護妖獣の妖力攻撃を行うと自分が本来生きられるはずの寿命が縮むのだ。

そのような危険性があっため試験に合格しておきながら、儀式直前で逃げてしまう者達もいたのだ。

妖狐は褐色肌の十代前半のまだ幼さ残る少女に連れられ左側の椅子に座らされる。

妖狐は随分と褐色肌の少女に懐いているらしく彼女が手を差し出すと進んで頬を擦りつけていた。

(俺もあれくらい仲良くなれるといいが・・・・・)

最後の精神的試験に合格し規約書に署名した後、鼎は彼に守護妖獣の説明と契約の義の説明を受けていた、その話の終わりの際、鼎が最後に口にした言葉を思い出す。

「これで話は終わりだが・・・・・・これは私鼎玄朗の個人的な願いである、もし暇な時があれば相棒と遊んであげなさい、頑張った時はご褒美をあげなさい、失敗をしてもなるべく責めないように心掛けなさい、君とこれからの一生を歩む事になる守護妖獣は相棒でもあり戦友でもあり君自身でもある、しっかりとした友好関係を築けるよう努力しなさい」

これから一生を歩んでいく事になる隣にいる妖狐。

彼は自分があまり社交的ではなく人と接するのが得意でない事は理解していた。

だがこれからはあの妖狐と一生を共にするのだ、得意下手ではないのだ、頑張って接しなければいけない。

まじまじと妖狐の方を見ていたら妖狐もこちらを気づき見つめてきた。

視線を逸らさず互いに見つめていたが無垢な瞳に見つめられるうちに恥ずかしくなり目を背ける。

「ほら、あの人があなたと一生を送るご主人様よ、ふふ・・・・あなたに見つめられて恥ずかしそうにしているわ・・・・・きっと素直で優しいご主人様よ」

褐色肌の少女が妖狐にそう言い聞かせているのを聞いた時、顔を赤くなる感覚を覚えた。

別の意味でここから逃げ出したい、穴があるなら奈落の底まで繋がっていても勢い良く飛び込んでいた所だ。

・・・・・もちろん今のは例えであり別に穴に本気で飛び込むつもりはない。

ここで彼は大事な儀式の最中である事を思い出す。

忘れていた訳ではないが、褐色肌の少女の無邪気な発言に緊張感が薄れていた。

大事な儀式だというのにこんな感じではいかんと気分を落ち着かせようとする。

しかし、そんな彼に思いもよらぬ事態が起こる。

大きな椅子の後ろから回り込むようにして鍛冶屋のような厚手の服を着た男達が現れたのだ。

(椅子の後ろから!?いつからそこにいたんだ?)

椅子は細部に装飾が施されとても大きかったため(恐らく異国の位の高い者が座っていたのだろう)二~三人程度なら人が隠れる場所はあったが、人が潜んでいる事に気づかない程気配がなかった。

余程、息を殺すのが上手いのだろうか?それともあの自分が通ってきた通路以外にも隠し通路があったのだろうか。

本来の彼だったら人が潜んでいた事に気づかなかった自分を責めていただろう。

しかしそんな事よりも彼はある事が気になって仕方がなかった。

それはもし自分がここに来た時からいたとすれば、今の少女の話を聞かれていたという事になる。

もしそうだとしたら彼に取って物凄く恥ずかしい事だった。

自分が妖狐に見つめられて恥ずかしそうにしていた話をこんなにも多くの人に聞かれていたなんて思いもしなかったからだ。

(穴があったら入りたい・・・・)

今度こそ彼は穴に入りたい気分になった。

そんなどんより気分になっていると彼の目の前に三十代のまだまだ若気があるガテン系という言葉が似合いそうなお兄さんが立っていた。

「おい、お前顔色悪そうだが大丈夫か?」

心配そうにこちらの様子を伺っているようだった。

重要な儀式の際中なのに随分と気軽だな、と思ったが心配してくれる辺り悪い人ではないのだろう。

ここで彼も儀式の最中である事を再び思いだし、気持ち切り替え首を振る。

「すまない、色々と考え事をしていただけだ」

嘘をつくのは好きではなかったがこんなくだらない事で落ち込んでいた事を悟られぬようため息をつきながらそう答えた。

「まあ、いろいろ考えるよな・・・・・・なんたって逸脱審問官だもんな、あれだけ過酷な仕事じゃ始める前から不安で色々と考えこんじゃうよな」

頷きながら話しかけてくる男、儀式の最中だというのに随分と態度が軽いように思えた。

同じように評した少女の方は見た感じ妖狐の世話係なのだろう、妖狐が警戒しないよういつもと変わらないように接しているのだろう、それに見た感じまだ幼い女の子なのだろう。多少の緊張感のなさは仕方がない。

一方のこの男の方は三十代くらいの男なのにこの態度の軽さだ。

大事な儀式の最中である事を忘れているのではないかと思う程の接し方だった。

彼自身は男の行為を別に迷惑だと思ってなかったが本当に大事な儀式なのか?と思えてくる。

「こらあ!基一!人生で大事な儀式をやっとる人に何気軽に話しかけているんだ!さっさとこっち来て準備せんかい!」

案の定、上司であろう筋肉質の白髭の生えた男が怒鳴った。

基一と呼ばれた男はすいません親方と口にしつつ持ち場に戻っていく。

それにしても何のこの集団は一体は一体何者だろう?

厚手の服装をしている辺り鍛冶屋の関係の仕事をしている人達かもしれない。

確か天道人進堂の地下施設の中には逸脱審問官の武器や防具等を扱う鍛冶場があったはずだ、そこで働く人達なのだろうか?

すると床に鉄で出来た縦に長い箱が置いてある事に気づく、恐らく後ろから出てくる時に持ってきたのだろう。

親方と思われる人物がその鉄製の箱の蓋を開けると中には溶岩のような真っ赤に煮えたぎる液体が入っていた、湯気がぶわぶわと出ている事を考えると相当熱いのだろう。

一気に心臓の心拍が早くなる、それはこれから起きる事への危機を事前に察知していたのかもしれない。

大型のトングの様なもの持った二人の男がその煮えたぎる液体にトングを入れた。

すると煮えたぎる液体の中から真っ赤になるまで熱された鎖で繋がれた二つの手枷が現れた。

それを見た時、今から何が行われるのか何となく理解し息を呑むと同時に背筋に冷や汗が流れる。

基一と親方は厚手の手袋をはめるとその鎖で繋がれた左右にある手枷の部分を持った。

「ぐ・・・・・・」

基一の顔が歪む、恐らく厚手の手袋を着けていても熱いのだろう。

親方も顔を歪ませはしないものの、額からは汗が出ている。

もっとも今から彼は基一以上の熱さを経験しなければならないので他人事ではない。

鎖で繋がれた手枷を持って親方は妖狐の方、基一は自分の方に近づいてくる。

妖狐の方は不安そうにキョロキョロとしている、それを褐色肌の少女が一生懸命なだめていた。

「ではこれより逸脱審問官を志す者とその相棒となる者に一生の繋がりを刻み込め」

鼎のその宣言と共に基一が手枷を一旦外す。

「悪いな、兄ちゃん・・・・・・・熱いやろうけど一生懸命耐えてくれや」

ごくりと唾を飲む彼、妖狐の方は褐色肌の少女が危機を察知し逃げようとする妖狐を抱きつく。

基一は彼の右手に真っ赤に熱された手枷をはめた。

ガチャリ、もう逃げる事が出来ないと理解させる非情な千錠音が耳元でしっかりと聞こえた。

肉を焼いたような音が聞こえたと思うと凄まじい熱さが皮膚に伝わり、それと同時に皮膚が焼ける猛烈な痛みが襲った。

「!!・・・・っ!」

叫ばないよう我慢していたが、あまりの熱さと痛みで小さく嗚咽が出た。

手枷からは皮膚が焼けているのか煙をあげていて自分の皮膚が焼けた匂いが漂っていた。

いや、当たり前といえば当たり前で、そんな嗅いでいる余裕などないのだがこの痛みから逃げようと何か別の事を逸らそうとしている。

しかしこの痛みを逸らすにはあまりにも熱すぎて別の事を考える余裕はなかった。

「!!!・・・・・・か・・・・・・あ・・・・」

あまりの熱さと痛みで閉じていた口から声が漏れる。

妖狐の方も首の辺りに真っ赤に熱された枷がはめられ悶え苦しんでいた。

暴れる体を必死に褐色肌の少女が抱きしめて抑えつけている。

きっと少女も苦しいのだろう、暴れているのを必死で抑えつけている事と自分が世話した妖狐が苦しいめにあっているのを助ける事が出来ないという二重の意味で、ぼやけてよく分からないが泣いているようにも見えた。

あまりの熱さと痛みで意識が朦朧としてくる。

もしかしたら右腕がこのまま使えなくなるのではと思ってしまう程の激痛だった。

しかしそんな事も深く考えられないような程意識が朦朧してくる。

視界が不鮮明になり音が遠のき体から力が抜けていく。

顔が天井を見上げ視界が一層不鮮明になった。

代わりに遠くから聞き覚えのある音が体に響く。

ドクンドクン・・・・・・

規律良く一定の間隔で脈打つ心臓の音、こんな事態でも何も乱す事なくしっかりと鼓動していた。

ドクドクンドクドクン

しかし徐々に異変が生じる、自分の心拍音とは異なる誰かの心拍音が聞こえ始めたのだ。

(・・・・・妖狐?)

根拠はないが何となくそうだと思った、確信できるほどの自信があった。

今彼と妖狐は手枷をつけられ鎖で繋がっているのだ、契約による現象なのかもしれない。

ズレていた彼の心臓音と妖狐の心臓音だったが、脈打つ毎に同調し始めそしてついに共鳴した。

ドクン!ドクン!ドクン!

強く体を揺らすほど強い鼓動が体に響き、血流が早くなり体の血が一気に全身に送られていくような感覚を覚えた。

その瞬間、頭の中に様々な情報が流れ込んできた。

何処かの風景、誰かの手、柔らかな素材の感触、何かが刺さったような痛み、大好きな美味しい、大嫌いな不味い、花の香り、黴臭い香り、暖かい温度、冷たい温度、嬉しい気持ち、悲しい気持ち。

断片的に脳に流れ込んできた情報、彼はそれが妖狐の記憶の断片である事を理解した。

現実と夢があやふやになり彼のぼやけた視界が煌びやかな色で埋め尽くされた。

頭に流れ込んでくる膨大な情報と体を揺らすほどの心臓音、極限まで早くなった血流の中研ぎ澄まされた精神の先で彼は幼い少年の姿をした幻影を見た。

その少年は彼に語り掛けた。

幻影でもしっかり口の動きが見え声は聞こえないが、彼には少年が何を言っているかよく分かった。

しかし次の瞬間、彼の意識は高い所から落ちていくように逆戻りしていった。

鮮明になる視界、周囲の音がハッキリと聞こえ始め、肌や指の感覚を取り戻していく。

まるで失われた五感が急速に戻っていくかのようだった。

「・・・・・!?」

ハッ!と意識を完全に取り戻し彼は周囲の状況を確認する。

そこは先程と変わらない椅子から見た赤い光でぼんやりと照らされた地下空間、自分の傍には基一がおり、隣の椅子には自分と同じように周囲を見回す妖狐の姿があり褐色肌の少女が何とも言えない複雑な笑みを浮かべながら妖狐を撫でていた。

自分の右手の手枷を見ると既に熱は冷め鉄本来の鈍い光を放っていた。(それでも触ったら熱そうではあったが・・・・・)

「契約は無事行われた、手枷を外してやれ」

鼎の指示で基一が手枷を外す、ガシャリと手枷が外れた音、今度は地獄から解き放たれたかのような解放感だった、しかし実際は逆だ、彼はこの時から狂気と血で彩られた世界に体を縫い合わせたのだ、もう逃げられないように・・・・・。

彼は自分の右手を確認する、右手には黒く焼けた不思議な模様の火傷が刻まれており恐らくこれが妖狐との契約の証なのだろう。

まじまじと右手を見ているとコツコツと靴音を鳴らしながら鼎がこちらにやってきた。

「無事『双血の刻印』が刻み込まれたようだな、これでお前と守護妖獣との間に切れる事のない繋がりが出来た」

そう言って鼎は彼の右手の双血の刻印に触れる。

一瞬、触られて激痛が走ると思った彼は身構えるが予想していた痛みはなく火傷したのにも関わらずいつもの皮膚の感覚だった。

「双血の刻印はお前に流れる血とあの守護妖獣の体内に混血して入っているお前の血をシンクロさせるための呪い(まじない)だ、これにより契約者と守護妖獣に絶対的な主従関係を作りだしさらに契約者は守護妖獣の妖怪的能力を共有することが出来るようになり、こちらも契約者の命力を守護妖獣に注ぎ込む事で守護妖獣に強力な妖術を使わせる事が出来るようになる呪いが刻まれた、死ぬまで絶たれる事のないお前とあの守護妖獣との繋がりを視覚で見る事が出来る印だ」

視覚で?気になり聞き返すと鼎は彼の右手を触れるのをやめ背中を向ける。

「本来はそんな刻印など見えなくともお前の血にあの守護妖獣の血にしっかりと呪いが刻み込まれている、しかし人間はそれが見えなければ実感する事が出来ない、実感がなければ守護妖獣との繋がりも感じ辛くなり常に交流を深める事を怠る恐れがある、その双血の刻印の刻印は刻み込まれた血の呪いを視覚化したものなのだ、火傷のように見えるが実際は薄い血が固まって肌に張り付いているに過ぎない」

だから触っても痛くなかったんだ、と彼は自分の右手を擦る。

やはり激痛などなく僅かに皮膚に触り心地が違うだけだった。

「これで契約の儀は終了した、さあお前の相棒となった守護妖獣の所に行くがいい、そして相棒を連れてここを去るが良い、道案内は相棒となったその守護妖獣が示してくれるだろう」

その言葉を聞いて、彼は相棒となった妖狐の方を見た、妖狐も彼を見つめていた。

首には自分と同じ双血の刻印が刻まれていた。

彼は立ち上がり妖狐に近づき正面に立った、褐色肌の少女は緊張した面持ちで彼を見ていた。

「・・・・・・・」

妖狐にどう接したらいいか分からず、まずは落ち着いて手を差し伸べる。

すると小さな煙の爆発が起きた。

「・・・・・・!」

一瞬驚く彼の腕に何かが登っていく感覚がした、登っていたそれは肩で止まった。

顔を向けるとそこには妖狐・・・・・・それが何だか小さくなって可愛らしくなったものがちょこんと座っていた。

「良かった・・・・・その子、あなたの事とっても興味があるみたい、その子はとっても好奇心旺盛でまるで森を駆け回る少年みたいな性格なんです」

鼎から聞かされていたが守護妖獣は人間で言う二十歳くらいまで育った所で契約の義を行うらしい。

つまり少年の様な仕草も単に幼いという事ではなくこの妖狐の立派な個性なのだ。

そう少し複雑な面持ちで話しかける褐色肌の少女。

「あの・・・・・これは私のお願いなんですど・・・・・・出来る限りその子を幸せにしてやってください、お願いします」

きっとこの褐色肌の少女は今までこの妖狐の世話係で大事に育ててきた分、その子がこれから人妖と戦い続ける運命を課せられた事に心苦しさがあったのだろう。だから少しでも幸せな一時を過ごしてほしいと思い出た言葉なのだろう。

彼も少女の気持ちがよく分かったのでしっかりと頷いた。

「ああ・・・・・・・分かった」

少女はその言葉に笑みを浮かべるとそっと彼の肩に乗る、妖狐に指を差し伸べる。

妖狐は頬を摺り寄せた。

「これからはこの人と一緒に一生懸命生きてね」

主が変わる手向けにそんな言葉をかけた、優しい言葉なのに寂しさも覚えた。

彼は相棒となった守護妖獣を連れて唯一の通路へと足を進める。

その途中手伝ってくれたここの鍛冶場の人であろう人達にも頭を下げる。

親方は腕を組んで、ん・・・・と呟き、基一は笑顔を浮かべていた。

彼は通路に入る所で肩に乗る妖狐の方を見た。

「・・・・・道案内を頼む」

妖狐は力強くコン、と答えた、彼は暗闇に足を踏み入れる。

鼎はそんな彼の後姿を見送りながらこの場を締めた。

「今日より新たな逸脱審問官となった、平塚結月に祝福と御武運を」

平塚結月、そう呼ばれた男は暗闇に閉ざされた通路を歩いて血の交わる場所を後にした。

通路は相変わらず暗闇に包まれていたが妖狐の視線を頼りに足を進める。

ここへ来た時は恐怖を感じる程の暗闇、しかし今は恐怖を感じなかった。儀式を終え一人の逸脱審問官となった結月は一段と心を引き締められ強くなったからなのかもしれない。

壁に激突することなく、鼎と出会った場所に戻ってきた結月はそのまま階段を上がり契約の間を後にした。

 




人妖狩り 幻想郷逸脱審問官録を読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか?何分一年三ヶ月も前に書いた所なので、もしかしたら忘れている設定もあるかもしれません。(自分自身は忘れていないと自負しているのですが)
しばらくは東方キャラクターは出ませんが人妖狩りの世界観を理解して貰えると嬉しいです。
一応話は一話に対して十ページから十五ページ間隔で区切ってありますが基本的には一話完結ものとして書いています。
とりあえず一話は小説の内容を理解して貰うためなるべく早めに投稿して二話以降は毎週金曜日にとの方向で考えています。
これから先の事を考えると続けていけるのか?待てせてしまわないか?飽きてしまわないか?失踪しないか?心配でなりませんがなるべくは前に見える光を見つめてとりあえず序録と一録を投稿できた事に感謝し頑張って小説を書いて行こうと思います。
これで後書きは終わりとさせていただきます。

追記
・和製英語と英語と思われる部分を世界観を鑑みて修正しました。
ただ日本語に変換できない所は英語と和製英語を使わせていただきます。
・英語と和製英語の修正、誤字脱字・表現方法を修正しました。

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