「先輩?あのそろそろ出てきてください」
マシュは出来るだけ優しく、そして穏やかに目の前の"それ"に声をかけた。
「…すんすん。やだもん。もう今日は特異点が現れても何もしないもん。…めそめそ。」
「あぁ、先輩が恥ずかしさのあまりストライキを…!!」
こんもりと膨れたベット上のシーツ。
その中で輝く涙目の相貌。
幻の宴会芸オームでない以上そこにいるのは拗ねたぐだ子だった。
と言うか、マジピンチである。
このアマ言うに事欠いて、人類史の救済をサボる(サボタージュ 意味・破壊工作)気である。
或いは本来なら有給的な何かが適応されるのだろうが、このブラック企業カルデアにそのような甘いことは許されていない。
人理の為なら、味覚は崩壊し、鼓膜はハロウィンの度に吹き飛び、大陸横断を自力でやらされる。
つーか、一年の話なのに去年とか言ってるし、マシュの寿命的にいいのだろうか?
もーいーくつねーるーとーバービーローニーアー(12月)。
どっかのドラ娘による被害が多い気がするが、貴重な資源をレート有りとは言え、一定期間で用意してくれるので大きくは出れない。常連さんは大事!ノーぶぶ漬け!
イベントの悪夢再び!今度はフェニックスの尾(違)多目でお願いします!!ないしは世界樹の種を!種を!!
「…めそめそ。もぉ知らないもん。工藤君なんて遊園地で黒い人達にカプセル毒を飲まされたらいいんだ…」
「あぁ、ダメです。ひとり先輩では最初の事件から迷宮入りしてしまいます!」
メタはやめよう。
"せやかて工藤"を言わせたいが為の主人公は迷探偵ではあるが、名探偵ではないのだ。
今もファラオの忠告から、ファラオ(女)との蜜月へと意識を飛ばしている。
黒幕をあばくより、ピンクな幕を潜りたいお年頃なのだ(この作品の登場人物はたぶん全て18歳以上です)。
「しくしく、大体なんなの!?何で私の黒歴史あばくの!私嫌われてる!?」
「い、いえ、ひとり先輩曰く、"打てば響く弦楽器"のような人らしいので、たぶん好かれてます!」
「何その使用方法!?キレやすいとでも言いたいのか!?」
その工藤を沈めたのは彼女のボディブローである。
否定できる要因がない。
正しい分析である。
虎の系譜はちゃんと今も受け継がれている。
エミヤは泣いていい。
「あ、アレです。好きな子ほどイジメたい男心で…わないですね!えぇ!」
言いかけたが、赤く染まりかけた頬を見て後輩は全否定。
乙女の秘密をハートキャッチそげぶされたと言うのに、型月このパターンのヒロイン多過ぎである。と言うか秘密が多い。
(秘密を)殺した責任とってもらうからね!
それなんて殺し愛?
「と、ともかく泣き止んでください。分かってますから、先輩は皆さんが好きなんですよね?」
「…………うん。工藤君以外」
華麗にディスられる工藤。自業自得なので、後輩は気にしない。
そうやって、皆に愛嬌振り撒くから、ヤンデレが増えるのである。
くるまっているシーツも今朝の内に、きよひー、静謐ちゃん、頼光ママと三度にわたり取り替えられている。
マスターに安眠は許されないのだ。
「うぅ、大体工藤君は変なとこ見すぎなんだよぅ。この間もほっぺにご飯粒ついてるの見られたし」
「はぁ」
「その前は寝癖見つけて、直してくれたし」
「ん?」
「たまに休憩しませんか?って言って、話してもいない好物のお菓子持って突撃してくるし」
「……」
「疲れて休憩所で寝ちゃった時は自分の上着かけてくれるし…って聴いてる?マシュ?」
「…にゃろう」
「にゃ?」
マシュは激怒した。殺(や)らねばならぬと心に決めた。
かはどうか分からないが、敬愛する先輩どうしが、"友達、或いは同僚"として仲が良いことは分かった。
それ以上は認めぬ。そう霊基が叫びたがってるんだ!
「…端的に聞くのですが、先輩はひとり先輩をどう思っているのですか?」
別名"どこまでヤっていいですか?"とも言う。
「どどどどどどうって!」
瞬間湯沸し器。
一目瞭然。
一同(!?)唖然。
ギルティ。
サーチアンドデストロイ。
五段活用は完璧であった。サー、デストロイ、サー。
瞬時に武装完了するマシュ。
瞬時に腰に張り付くぐだ子。
この間僅か0,1秒ぅ!!
「ままままま待って、マシュ!そんな物騒な格好してどこ行くの!?」
「大丈夫です。峰打ちですから、えぇ、城でも峰ですから」
「全っ然!だいじょばないから!死んじゃうから!峰って、先端にでも吊るすの!?」
キャメロット困惑。
白亜の城が汚れます。
そういうのはチェイテのお家芸です。
えぇい、離せい。
いけねぇいけねぇ死んで花実が咲くものか。
十分ほど続いた小芝居はコンコンと鳴くノックによって終わりを告げた。
「は、はーい。と、とにかく落ち着いてマシュ」
「むぅ、分かりました。」
ハリセンボンのように頬を膨らます後輩に、 人間味溢れ(成長し)たなぁ、と思いつつ、応対しようとドアを開ける。
「あれ?"先生"?と、…工藤君何してるの?」
そこには、カルデア限定宴会芸メジェド様でなければシーツにくるまった工藤と、彼のサーヴァント・"バーサーカー"がいた。
「申し訳ないレディ。済まないのだがうちのマスターを暫く預かってもらえないだろうか?」
「え?何?どうしたの?工藤君?震えてる!?」
「あー、うちの"キャスター"がマスターの呟きを誇大解釈したらしくてね、目下、絶賛マスターの部屋を改築中だ。
分かりやすく言うと、隣なのを良いことに私たちの部屋とぶち抜き、『マイルームに連れて行けるのは一人だけ?そんなに狭けりゃ広げてやんよ!明日からポチポチしまくりですぞマスター!!』との事だ。」
「「何それー!?」」
口は災いの元。
思っても口に出してはならない。
工事が完工するまで家無し子へとクラスチェンジをはたした工藤は自らのサーヴァントにしがみつき泣き始めた。
「あぁぁんまりだァァァ!!もぉ、オレプライバシー無いじゃん!只の合宿所じゃん!三等客室じゃん!こんな、こんな事が許されていいのかよぅ!!」
「落ち着くのだマスター。レディたちの目の前だぞ。私とて追い出された身。ベット下の資料は残念だったが、なーに、住めば都とはマスターの母国の言葉だろう?きっとやっていけるさ」
バーサーカーとは思えぬ温かな言葉。厳しくも優しい顔立ち。"軍服"を着用し煤けたビーバー毛皮の帽子を被った紳士。
「そういうことじゃねーんだよー。"ノートン"…」
ノートン一世のフォローはバーサーカーらしく少しずれていた。
氷室タグ「何時からアップしているのがオリ鯖タグだけと錯覚していた?」