裏側 天草くん
しくしくとすすり泣く声が機械的かつ近代的な廊下に響く。
興味があったわけではない。ただ資料室からの帰り道が食堂の前を通る道で、更にその対面がちょっとした休憩所になっていただけの話だ。
しかし、そこで
「泣いてるな…」
「泣いてますなぁ…」
「泣いてるねぇ…」
休憩所から食堂を覗き混むキャスター×2+1(バカ)を見つけただけで…
ごめんちょっと興味でた。
「ランスロット…どうか泣き止んで(裏声)」
「ですがマスター辛いのです。…あなたを思えば思うほどこの胸の高鳴りが止みそうにありません(ほぼ素)」
「でもダメ…無理よ…私にはマシュという大切な存在が…!(裏声)」
「分かっています!…分かっていながら私はそれでも、…貴女を思わずにはいられない…!(ほぼ素)」
「っふ、同性愛かつNTRかつそれがある意味近親間とは救いようがないな。(バリトン)」
「っな、エミヤ殿いつからそこに…!(ほぼ素)」
「っは、愚問だな先程の"あーん"からに決まっているだろう、更に言うなら最初からマスターの背後にいた。鷹の目は伊達ではない…!!(バリトン)」
「ち、違うのエミヤ!これには理由があって…(裏声)」
「ほう、主自ら配下に"あーん"をする程の理由か、…いったいどんなだね?(バリトン)」
「そ、それは(裏声)」
「もう、いい。もう、いいのですマスター…元より私は裏切りの騎士。信用の無い私が隠し通せる訳もない。忠義に仇なすは私の魂の色からだったのですね…。エミヤ殿!蔑むなら私を、私をこそ…マスターは何も悪くはありません…そう、全ての罪は私にあるのですから!!(満足げなほぼ素)」
「ああ、うん知ってる(なげやり)」
「「えええええ!?(困惑)」」
「だって、円卓壊したのお前じゃん?今更、今更。何?今度は息子(娘)からNTRの?うわー鬼畜。何色の血が流れてますか?(すらすら流れるバリトン)」
「ち、ちょそれをここでいれますかアンデ…じゃなかったエミヤ殿!(焦るほぼ素)」
「ど、どうしたのいつものエミヤオカンらしくないよ!(必死な裏声)」
「どうした?どうしただと?…マスター、君ともあろうものが、まだ自分の罪が分からないのかね(ウキウキバリトン)」
「わ、私?ランスロット(ゲスの極み)じゃなく て?何をいってるのエミヤ?分からないわ、ガスの元栓は閉めたし、洗い物もためてない。手だって調理場ではレンガみたいな石鹸で洗ってるし、掃除はマツ◯棒を使って、洗濯も痛みやすいものはネットにいれてるわ!何が言いたいって言うの!?変な言いがかりはヤメテ!!(ぐだ子先輩長文はヤメテと思っている裏声)」
「そ、その通りです、私(ゲスの極み)ならばともかく、マスターが何をしたと言うのですか!?(困惑のほぼ素)」
「っふ、分からないと言うなら教えてやる…(溜めるバリトン)」
「「ゴクリ…(息をのむ二人)」」
「そのカレーはこのエミヤが作ったものだ‼(子◯なバリトン)」
「「な、何ーーー⁉(今更そこ!?)」」
「そ、そんなマスターの手作りのはずでは…(語尾の震えるほぼ素)」
「ラ、ランスロットー!?(裏声)」
と、フラフラとランスロットが覚束ない足取りで此方へ歩いてくる。三人は見事な隠業で休憩所の物陰へ隠れた。
疲れきった様子で休憩所のベンチへ座るランスロット。
「…………………旨かった」
っぶほぉ!と、何処かで何かが決壊したが奇跡的にランスロットは気づかず、それを見ていた私もそそくさと部屋へと戻った。
その日外には出れなかった。二日目のカレーは美味しかったです。
天草くんをより人間味のある子にしたかった。それだけだ。