ぐらんどおーだー 人理の天地 カルデア脇役録   作:七⭐

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羅城門のマシュを見て

『やだ、うちの後輩、マジかわいい。』

羅城門の茨木を見て

『やだ、うちのバーサーカー、アホかわいい』

羅城門の酒呑を見て

『やだ、うちのアサシン、ただエロい』




説明回はセリフが無駄に増える

 

 

゛彼の何を恐れているのか、それが分からない。"

 

と騎士王は呟いた。

その疑問はある意味当然で、彼女を筆頭とした、所謂善性に属するサーヴァント達の疑問と置き換えてよかった。

 

だって彼は笑っていた。心底楽しそうに。

 

それが行きすぎた行動や、反応を呼び寄せることはあったが、基本彼は無害だった。

いや、むしろ"有益"ですらあったかもしれない。

聞けば、同行した第二特異点は聖杯を自身がおさえ、第五特異点では彼のサーヴァントによりエジソン陣営を味方に引き入れた。当初予定されていた行程も偶然ではあろうが、大幅に短縮出来たのも功績と言えなくもない。

 

「"何を"、だと?たわけ、"アレ"ほど危険なものも他にはないというに…」

 

問われた英雄王は僅かな思考も挟むことなく即答した。

 

「‥いや、むしろ"そう"見えている分上手くやっている事を善しとすべきか…」

 

「?話が見えないぞ、英雄王。まして仮にもぐだ子(マスター)の想い人だ、‥アレ等と物呼ばわりは止めてもらおう‥」

 

「そのぐだ子が無意識に気付いておることに気付かぬから、貴様は国を滅ぼすのだ」

 

「っな!」

 

にわかに殺気だつ空気。背後に控える円卓勢もその眼に力を込めるが、一人弓を持つ騎士だけがなにも言わずうつむいていた。

 

「"王は人の心が分からない"だったか、…はん!そちらの騎士は気づいていたようだな。…アレはもう、人としての感情で動いてはおらん。おかしいと思わんか?それだけの戦果をあげておきながら、奴はそれを理由に"制限を緩めさせよう"とはしなかった。石をねだるばかりで、それ以外の手段を取ろうとしなかった。英霊(サーヴァント)だけなら嫌というほどぐだ子が呼んでいたというのにだ!」

 

そう、方法だけなら主替えをするまでもない、指揮権だけ渡せばそれですむ話だ。

でも、それに"気づいていながら"ぐだ子も工藤もその手段を取らなかった。

 

「…奴は、ただ待っていた」

 

「待っていた?」

 

英雄王は右手に持っていた匙(黄金)を振るうと、自身の皿から一掬いして、それを

 

 

…カレーを見せた。

 

あ、シリアス終わりです。

 

「今、匙の上には何がある?」

 

「?カレーでしょう?」

 

「そう、ぐだ子とお前の飯使いが作ったカレーなる食物だ。…が、その肝となるのは複数の具材と無数の香辛料、更にはトロミの有無、白米との分量からその固さまで、奴ら(カルデアキッチンズ)は計算している。…そう正に至高の逸品よ」

 

「‥確かに。いや、待てそれがどうしたというのだ」

 

「分からぬか?どれか一つかけてもこの味にはなるまい。あむ」

 

「そ、それは…(こくこく)」

 

「奴は以前、‥ローマの前からそうだったと聞く。石をくべても呼符を撒いても出てくるのはカレスコにルビの打ちずらい水銀と滅んだと言ってるのに2030年と言い張る白衣。転輪出来ない黒色聖杯に500歳のボケ老人。‥やっとサーヴァントかと思えばまた被り。えー、宝具レベル5になるよもー。…とふて腐れること数度、爆死と礼装の狭間で奴はしかし唐突にその時を察知したらしい(もぐもぐ)」

 

もうお分かりだと思うが、ここはカルデア食堂で三点リーダー及び度々見られる間は咀嚼時間です。ご了承ください。

 

「なんと、体質については聞いていましたが…そこまでとは‥(はむはむ)」

 

 

 

「そうして赴いた先が、ローマが、あの結果だ…」

 

カチャリ…と静かに匙を置く英雄王。

その目は…以外にも悲しさを感じるものだった。

 

「おそらくは、この旅の終着付近に我の庭が、バビロニアが来るだろうと‥分かってはいた。…その時までにと、雑種共が奴にアレコレしていたのも、気付いていた。それが無駄だろうという事もな」

 

「‥英雄王」

 

「‥『デートさせてください!』だと?バカップル共めが、幸せそうに笑ってみせおって…アレは既に機械に等しい。"揃える"ということに病的なまでに傾いている。あれが『起源』と言われるものなのか、‥いや、作為的なものを感じるに飯使いと同じであろう」

 

「エミヤと、ですか‥」

 

その言葉に騎士王は思わず固唾を呑んだ。

つまり彼は…

 

「似すぎなのだ…思えば、確かにその予兆、予感はあった」

 

その後に続く言葉が、騎士王‥アルトリアにはすぐに分かった。分かってしまった。

 

それを一度は"求めた"のだから。

 

「誰だ!奴を‥クドーを…」

 

 

 

 

 

 

"聖杯"にしたてあげたのは…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………(すやー)」

 

「おい、誰かその鳥頭殴っとけ」

 

BASTARゴリラは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「幻霊?」

 

「ええ、本来はそう言われるモノですアレは」

 

逃げ出したマンションの先、タイミングを会わせたように現れたのは一台のタクシー…を運転する子ギルだった。うん意味わからん。

 

「てかギルくん運転大丈夫⁉前見えてるの⁉」

 

「いやー、こんな時でも変わらないおねーさん(ぐだ子)で安心しました(っくる」

 

「あぁ、後ろを見ないでください!前!ジャンプ台みたいにアスファルトが捲れてます!」

 

必死なマシュの声をBGMに、車は直前でドリフトをかまし、豆腐屋もビックリの軌道で新都を駆け抜ける。ハリ○ーンパワードリフト!

 

「ふぅ、すみません。屋根のお二人も大丈夫ですか?」

 

本来運転手入れて5人が限界の車内に倒れた工藤を含めて7人がぎゅうぎゅうに積めている中、

殿と迎撃の為に屋根に陣取った百貌とエミヤは溢れそうな胃酸に耐えながら手を振るう。

どうやら、言葉を返せる状態ではないらしい。

 

「うぅ!」

 

と声が聞こえたがギル以外の皆が耳を塞ぎ目を瞑る。

ゲロインの仲間入りを果たしたであろう百貌にぐだ子は静かに黙祷を捧げた。

 

「…それで幻霊って何?」

 

いい加減真面目に路線を変えて、横たわる工藤に膝枕しながら、ぐだ子は簡単なボディーチェックを済ませる。

外傷無し。意識も無し。呼吸有り。霊体は‥はっきりとは分からない。だが‥

 

「うーん、本来はもっと先の有るか無いか分からない所で出会うはずのモノ…だったんですが、おにーさんの奇縁といいますか、捻れた運命力に巻き込まれたと言いますか、兎に角アレは英霊未満の"現象"だと思ってください」

 

気がついたときには、全てが終わった後だった。

 

どさりと倒れた工藤と、ぼやけた腰ほどの高さのなにか、そしてそれが伸ばした手は虚空を握っていた。

とっさに動けたのはそれまでの旅路故だろう。

悲鳴一つなく恋人を…工藤を引きずるように離れると、同時に令呪を発動。

要となるマシュを呼び寄せ、時間を稼ぐ。

気付いた皆が各々仕掛ける中、後方で工藤を介抱しようとして、…その攻撃が『すり抜けた』のを確認。

 

すぐさま逃げの一手に出たのが一連の流れであった。

 

 

「本来は土着の染み付いた記録のようなモノなのです。おにーさんの故郷だからか何かしらのご縁があるようで、半ば実体化しつつあります。‥と、言ってもやっぱり霊基が足りなくて触れることも出来ないようですが…」

 

「だが、坊には触れた。…つまり」

 

「ええ、おにーさんが倒れたままなのは"そういう"事です。少しばかり…"抜かれた"ようですね」

 

やはりそういうことらしい。あの時彼を貫いた手は見間違いではなかったのだ。目の前に現れているロマニの立体像も『事実だ』と首を縦に振た。

 

「曖昧だから、此方の攻撃は届かず、曖昧だから、本来は無害‥でも、おにーさんにとっては違う…この街は影で聖杯戦争なんてものをしていたからか、そう言った"都市伝説"には事欠かないんです。

そこに聖杯擬きが現れたせいで逆説的に呼び出されてしまった。最も、その多くはシャドーサーヴァントにも劣る劣化品で代用品ですが、『獲られる結果』が本物というのなら、話は別だ。"ホンモノ"に為るためにアレ等は襲ってくるでしょう」

 

「そんな!只でさえ倒せない敵なのに、後六体も…!」

 

「あははは、そう悲観するものでもありませんよ、さっきも言いましたが、本来は無害なモノです。‥"僕"のように戦えない者もいる」

 

「「え?」」

 

「つまり英雄王、今お前は…」

 

「ええ、この街の都市伝説として現界しています。『深夜の乗客』だったかな?本来はシャドーサーヴァントのように理性を失ってしか現れませんが、…大人の僕が手を打ったようですね。僅かばかりですが霊基を取り戻せました」

 

だから間違ってもおにーさんに触れさせないでください。

"ホンモノ"に成ってしまいますから。

 

目線だけでそう語る子ギルはどこか彼の将来の姿を思わせる。

 

「『メリーさん』なら呪い殺せるでしょう『ベッド下の斧男』なら斬り殺せるでしょう、でも『フライングヒューマノイド』や『ジェットばばぁ』じゃ、どう"襲ってくるかも"分からないでしょ?そういう出会うだけの怪異では何も出来ないんです。僕も乗ってた車から消えるだけの存在ですから」

 

霊体化って便利ですよねー。

と笑う英雄王(小)。

あえて言わないが、無賃乗車はれっきとした犯罪である。

 

「でも、その終着は決まってます。丘の上の教会。一応安全地帯ではありますが、他の都市伝説が何かもよくはわかりませんし、何より教会に着いた時点で僕が"消えます"。起点がおにーさんである以上、彼が目覚めるのを待って解決策を講じるべきです」

 

『待ってくれ、所謂、都市伝説…フォークロアといわれる存在が工藤くんを襲ったのは分かった。その理由も、でも何故彼の中に"聖杯"なんてものがあるんだい?』

 

それは、

 

「さぁ?"僕たち"は呼ばれたから出てきたにすぎません。むしろ僕が聞きたい。彼、

 

本当に人間ですか?」

 

誰も知らない工藤の、人理/一人の物語。

 

 

 

 

 

男の話をしようーーー。

 

 

 







次回、 『その過去は既にーーーー』

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