ぐらんどおーだー 人理の天地 カルデア脇役録   作:七⭐

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かっとなってやった。反省はしていない。


カルデアライフ
オレにはガチャ運が(変に)無い


それは冷たい吹雪の日(大体普段通り)の事だった 。

人理修復のため日夜戦い続けるここカルデアにひとつの吉報が入った。

 

なんと、カルデアの外からの来客である。

 

既に滅んだはずの人類。

すわ生き残りがいたのか!と、その時はサーヴァント、マスター、スタッフ総出で寒い外からの来訪者の看護に当たった。

 

人数は"二人"

 

一人は雪山ではあり得ない軽装で、もう一人はカルデアの制服に身を包んだ"マスター候補"だった。

 

 

それから凡そ一月。

 

助けられたオレこと工藤人理(ひとり)は今日も今日とてダヴィンチちゃんから貰った三十個の聖晶石片手に召喚サークルの前にいた。

貴重な聖晶石をこうも頻繁にオレが持てるのも、たった二人となったマスター…だからではなく、オレの(本当にありがたくもない)体質故だった。

 

 

 

「今日はなにが出るんですかね?先輩」

 

とわくわく顔の片目隠しっ子ことデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライト。

 

「さぁ、でも工藤君の事だし…」

 

同じくわくわく顔の(オレにとっても)先輩ことマリア・グーダー。

その期待の目が痛い。

マジで、物理持ってるってその視線。

 

「あー、じゃあ行きますよ?」

 

「はい!(うん!)」

 

元気なのはいいことだが、出来れば祈って欲しい。

 

今度こそサーヴァントが出るように、と。

 

 

「「あっ、礼装だ!!」」(しっかりトドメ)

 

くるくる回る魔力的な何かが一つの輪になると、収束し一枚のカードとなった。

 

→カレイドスコープ

 

いや、そんなまさか…また、"繰り返す"というのか…!!

震え出す足。両手で叩こうと止まらない膝。

そして、オレはついに崩れ落ちた。

 

→カレイドスコープ×4

→月霊髄液×5

 

「やりましたよ!ひとり先輩!これで"15組"目です!」

「さっすが工藤君!」

 

心の中で泣き崩れるオレの肩をバシバシ叩きながら二人が叫ぶ。

 

あぁ、うん喜んでくれてひとり嬉しいよ。うん。

 

 

ちゃうねん。

 

 

もうお気づきだろう。

貴重な聖晶石。それをオレが回すと何故か礼装が出る。礼装が、出る。それもほぼ☆5がセットで複数。

だが、サーヴァントは出ない。サーヴァントは、出ない(ほぼ)。

 

なんだろうか、イジメであろうか。フェイト(機械の方)壊れてない?と、何度ロマンに掛け合ったことか。

 

思えば、スカウトされたのもこの体質故だった。

 

 

1年ほど前のラスベガス。

運がいい(ここまで)ことに懸賞に当たったオレはこの地に降り立った。

ラスベガスと言えばカジノ→カジノと言えば一攫千金という安直な考えのもと僅な所持金をチップに変え、オレは着なれない正装でディーラーの前にたった。

 

すると、

 

連勝に次ぐ連勝。

正直、運使いきって明日死ぬと言われても信じるほどの奇跡(フラグ)がそこにはあった。

どれ程かというと、ちょっとした国家予算に匹敵するほどだった。

 

しかし、夢のような時間はそこで終わり。

飛んだら落ちるが世の定め。

 

それもそのはず。

唯一ルールを知っていたポーカーで勝ち続けたオレの手は全て染め手(フォーカード、フラッシュ)ばかり。

流石におかしいとカジノ側が動きだし、気付けば暗い地下室に手錠&目隠しでご招待されていた。

 

「(どうやった!言え!!)」

 

「な、何!?何事?え、え?アイドンツノーアンダスタン!」

 

「(言えって!テメー何だその英語は‼なめてんのか!!)」

 

「うわー!なんか酷くなったうえ長文になった!!ごめんなさい英語分かんないのにアメリカ来てごめんなさい‼」

 

「(ゴメンナサイ?テメェ日本人か!?確かゴメンナサイは謝罪だったな?やっぱテメェ、イカサマしてやがったなぁ‼)」

 

「なんかまた悪化した!?アイキャントスピークイングリッシュ!勘弁して‼」

 

「(話してんじゃねーか!!)」

 

今落ち着いてみればさほど難しい会話ではないのだが、テンパったオレは釈明も出来ず、なぁなぁの内に窮地に立たされていた。

明日はソルベかなぁ(フラグ回収)と悲しい未来を想像していると、そこに彼女が現れたのだ。

 

オルガマリー・アニムスフィア。

 

後にヘタレかつ傲慢という誰得な属性持ちであることが判明する彼女だが、この時は救いの女神に見えたものである。

彼女はカジノで稼いだお金を放棄する事でオレの自由を約束してくれ、更にその才能を活かさないかとカルデアに勧誘してきた。

どうせ日本に帰ってもアルバイト生活が待っているだけである。

必要とされた事に感動したオレは約束の日付にカルデアへと足を向けた。

 

まさか雪山にあるとも知らずに。

 

後は遭難→出会い→やっぱり遭難→カルデアの順で到着したものの、その時には既に一つ目の人理修復が終わった後であった。

 

 

「はぁー、やっぱりダメかぁ」

 

「工藤君のお陰で私たちは大助かりだけどね」

 

語尾にハートでもつけそうなほど上機嫌でぐだ子(マリア・"グーダー"だかららしい)先輩が召喚サークルの中央に落ちた礼装を集め初める。

 

「はい。ひとり先輩のお陰でフランス以外の人理修復が出来たと言っても過言ではないと思います。」

 

そうですね(タ◯リ)。礼装で固めに固めたサーヴァントばっかりで獅子王涙目だったもんね。

何だよ六体中三体カレイドスコープ(最大解放)とか。内一人はモーさんだし、イジメか。

 

「これで種火周回がまた楽になるよ!」

 

そうですね(いいとも)。全体持ちにカレイドとか楽でしょうよ。この前きよひー「…私は常時竜の方がいいのでしょうか?」って呟いてたぞ。

 

「イベント礼装だってらくらくです!」

 

そうですね(何故終わったし)。ネロ祭なんかボックス全開けしたもんな。

「奏者!?もうないぞ!薔薇はもういらないのだぞ!!」って調子のって"まだあるだろ?出せ"なんて言うからネロ部屋に籠っちゃうし。

 

「いやー、ほんと助かるよ。役割分担してると思えば効率最高だよ!」

 

「おぅ、ちょい待てや」

 

聞き流せないフレーズに思わず人格が変わるオレ。

 

「成る程、オレが出してぐだ子先輩が使う。実にいい効率でしょうね。オレの心情無視すればですが」

 

「ぁ、いや悪気は無かったんだよ?いつも今度こそレイシフトって言ってるし」

 

分かってはいる。だが、悪気が無いからと言って流せる話題ではない。

 

「オレが、オレがどんな気持ちで…」

 

「「(…あ、スイッチ入った)」」

 

そう、どんな気持ちで

 

「イチャつくあなた達を見てきたと思ってるんですか!」

 

 

 

「え、そこ?」

 

 


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