①やっぱり海でシュノーケリングだな
の場合
「ん…もう朝か…」
ふと目が覚めるとそこはいつもの天井ではなかった
「そっか…今俺達は沖縄にいるんだった」
そういえば昨日はトランプをやっていて途中で眠っちゃったんだった…飛行機でも色々あったし海水浴でも思いっきり遊んでたからまぁ当然っちゃ当然か…
「ん?」
そういえばさっきからうまく動けない。誰かが抱きしめているみたいだ。俺が誰かを確かめようとすると
「うみゅ…お母さん…zzzz」
「…え?//////」
蛍だった。蛍が、俺に思いっきり抱きついている。
「ほほほ蛍…!た、頼む…離れて…!」
「もうちょっと…あと5分…」
しかし蛍はさらに強く俺に抱きついてくる。その為彼女の胸が俺の体に密着した。
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ご、ごめんなさい先輩…/////」
その後、目を覚ました蛍は顔を真っ赤にして俺に謝った。
「い、良いよ…俺も気にしてないからさ…」
俺はそう言うが頭の中では先程の映像がフラッシュバックしていた。
(や、柔らかかった…!!それになんかめっちゃ良い匂いがした…!!)
「ほら2人とも〜朝ご飯行くから早くして〜」
そんな俺達にコマ姉が呼びかけてきた。
「い、行くか…」
「はい…」
「うぉ〜すげ〜!!」
「海なーん!!」
朝食を食べ終えた俺達はシュノーケリングとカヌー、それぞれが選んだ方へと向かった。今回俺はシュノーケリングを選び、カヌーを選んだ蛍とそれぞれの写真を撮る約束をした。現在は同じくシュノーケリングを選んだナツ姉、ひか姉、駄菓子屋とれんげと共に船でシュノーケリングをするスポットへと向かっている。
「蛍にもこの景色を見せてやろうっと」
「いつの間にシュノーケリングやることになってなだけど、やべーちょー楽しみ」
俺が写真を撮ってるとひか姉がそう言う。やっぱり昨日理解してなかったか…
「でしょー?運が良ければマンタ見られるらしいよ」
「マンタ!?」
マンタなら子供の時母さんに買ってもらった図鑑で見たことがある。自分よりもはるかに大きく海を羽ばたくように泳ぐその姿が幻想的だったのを覚えていた。
「いよーっし!!絶対マンタ見るぞー!!」
「おーー!!」
俺が意気込むとひか姉も賛同する。
「うわぁぁぁぁぁ〜」
ウェットスーツとライフジャケット、そしてゴーグルとシュノーケルを着けた俺達は遂に海の中へと入っていった。
「すげぇ…まるで別世界だ…」
透き通った海、色とりどりのサンゴ、そして様々な形や色をした魚が沢山いた。見惚れていると綺麗な魚が数匹俺の方へと泳いでくる。
「え?わっわっ」
俺は突然の事に驚くが魚達は俺の周りを楽しそうに泳いでいる。
「…ははっ」
俺はそれを見てると何故か楽しくなって思わず笑ってしまった。魚達はどれも美しくいつの間にかいろんな種類の魚が俺の周りを泳いでいる。まるで彼らが俺を歓迎してくれてるようだった。
「ん?うわぁっ!!」
ふと後ろに何か気配を感じ振り返ると、そこに綺麗な甲羅をしたウミガメが泳いでいた。
「まさかウミガメまでいるなんて…」
ウミガメはヒレを懸命に動かしながら泳いでおりこちらを見つめながらゆっくりと立ち去っていった。俺は今見た感動を伝えようと近くにいたナツ姉とひか姉の元へと向かった。
「ナツ姉ひか姉!!ヤバイよそこにウミガメが…」
「おぼ…やばい…波酔いやばい…」
「ひか姉しっかりしろー!!」
しかしひか姉は波に酔ったのか海面をぐったりしながら浮かんでいた。
そういえば飛行機降りた後も気圧で耳やられてたっけ…ひか姉ってもしかして三半規管弱い?まぁ俺が言えた事じゃないけど…
「大丈夫ひか姉?ダメそうならスタッフさんに…」
「こっちにマンタ出ましたよー」
「マンタ!?」
俺はスタッフの言葉に驚愕した。ウミガメが見れただけでも凄かったのにまさか本当にマンタが出るなんて…
「ひか姉マンタ出たんだって!!見にいこうよ!!」
「そう……なんだ……」
ナツ姉がマンタの存在に驚愕して慌ててひか姉を連れて行こうとするがひか姉は波酔いからまだ立ち直れずにいた。
「ナツ姉、あんまり無理強いしても…っ!!」
この瞬間、越谷一輝は危険を察知した!!
例えるなら出港後に沈没する船から一斉に逃げ出すネズミのように!!
例えるなら地震を予知し暴れるナマズのように!!
それは生物が生まれながらに持つ危険察知能力!!
その能力が…後に来る危機を越谷一輝に知らせたのだ!!
「…じゃ、じゃあ俺先行ってるよ」
俺は小さな声でそう言うとこっそりとマンタの方へと向かった。
すると、海底近くを巨大なマンタがゆっくりと泳いでいた。
「うわぁ…」
美しい海をゆっくりとヒレを動かしながら泳ぐその姿はとても壮大で心を掴んで離さなかった。まさかこんな美しいものを見ることができるとは思わなかった。これこそ沖縄に来れたからこそ見れた奇跡と言えるだろう。
「ぶおっす…飛行機の時といい波酔いといい…私の三半規管だめかもしんない…」
「早くしないとマンタどっか行っちゃうって!!マンタ見たいって言ってたじゃん!!」
「マンタ…?知らねえよ…そんなのよりビニール袋流れてこないの…?おっぷ…」
「え…ビニール袋って…ちょ…ひか姉…うわ…うわーー!!」
「…聞こえない、俺は何も聞こえない」
俺は見捨てたわけじゃない、だってしょうがないもん。あそこで俺に出来ることはなかった。巻き込まれるだけだもん。スタッフさんもおそらく間に合わなかっただろう。
「俺は絶対に振り向かない。絶対に後ろを見ない」
今後ろを見たら先程の神秘的な映像が汚されてしまう。何が悲しくてこの美しい海の映像の後にゲ○なんて見なきゃいけないんだ。
「俺は悪くない。絶対に悪くない」
だから恨まないでくださいナツ姉。どうか許してくださいひか姉。
「マンタすごかったんなーあんな大きい魚見たんはじめてなんー」
「本当だな〜まだ目に焼き付いて離れないよ」
シュノーケリングを終えた俺とれんげは海の中で見た素晴らしい光景を思い出しながらうっとりとした。地元では決して見ることができない、沖縄にきたからこそ見れたあの感動は生涯絶対に忘れることは無いだろう。
「なんでひか姉となっつんマンタ見てなかったのん?」
「とんでもない目を見てたからねー」
「とんでもないもの見ちゃったからねー」
ナツ姉とひか姉は死んだ目でそう呟きていた…ごめん、本当にごめん
「まだセンパイ達と合流するまで時間あるし…近くの灯台でも見に行くか〜時間は1秒たりとも無駄にはしない」
「貧乏性がー」
ひか姉はそう言うが個人的に灯台は見たいと思っていた。それに今は夕方、灯台から見る夕焼けの海はきっと綺麗だろう。
「ちょっと後ろ見てくれるか?」
「へいへーい」
灯台近くの駐車場に着くと駄菓子屋はナツ姉に後ろを確認するように頼みナツ姉も車から降りた。
「ばっくおーらい、ばっくおーらい」
後ろでナツ姉がそう言い駄菓子屋はその指示通りにバックする。その時、すごい衝撃が車に響いた。
「えっ…?今何があった?」
まるで何かにぶつかったようだが…俺は車から降りて後ろを見た。すると、タイヤがタイヤ止めブロックにめり込みパッ○マンみたいになっていた。
「ナツ姉〜何がバックオーライだよ全然大丈夫じゃなかったじゃん」
「バックオーライじゃないときバック何て言えばいいか分かんなかった。オーライってオールライトのこと?それとも漢字の往来?」
「そういう時はストップって言えば良いの!!それとオーライは『all right』!!大丈夫って意味だよ!!」
全く…タイヤがパンクしたら俺達は宿に帰れなくなるところだったよ。
「お、ヤドカリだ。こんな水の無いところでもヤドカリいるんだなー」
「本当だねーお、ここにもいた。」
すると、ひか姉がヤドカリを見つけて捕まえた。確かに海からだいぶ離れたところにいるなんて珍しいヤドカリがいたもんだ。そう思いながら俺も見つけたヤドカリを捕まえる。
「ん?アレ?」
すると、それを見たナツ姉が突然震える
「2人ともそれ…天然記念物のオカヤドカリじゃない?」
「え?天然記念物?」
それって確か絶滅の危険がある貴重な生物の事じゃ…
「うわー!!2人が天然記念物生け捕ってるー!!」
「え?え?なに?だめなの?」
騒ぎ立てるナツ姉にひか姉は少し心配になる。
「えっと…これって私達逮捕されちゃうのかい?」
「んなわけあるかい」
ちゃんと元いた場所に逃せば良いだろ。しかし沈黙するナツ姉にひか姉はさらに冷や汗をかく
「くそ!!こうなったら天然記念物と灯台前で記念写真撮ったらーー!!」
「ひか姉待ってー」
「ウチもいくーん」
灯台に全力疾走していくひか姉をナツ姉とれんげが追いかける
「やれやれ、待ってよみんなー」
俺もため息を吐きながらみんなを追いかけた。
美しい夕焼けと灯台をバックにしヤドカリと共に撮った記念写真に写る俺達はとても良い笑顔をしていた。
「うんうんはーい、きつく言ってやっていいよ」
記念写真を終えて車に乗るとひか姉へと電話が来る。
「どうしたのひか姉?」
「このみから電話、姉ちゃんがバテて運転したく無いって駄々こねてるってさ」
「勘弁してくれよ」
その時の駄菓子屋は本当に嫌そうだった。
前回の選択肢でシュノーケリングを選んだ回にしてみました!!
次回はカヌーを選んだ場合で書きます!!