のんのんびより 輝く星   作:クロバット一世

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好きな話の1つです


32話 姉の料理を見守った

世の中には、こんなことわざがある。

 

『天災は忘れた頃にやってくる』

 

要するに「油断大敵、危機はいつくるかわからないから用心せよ」とのことだ。そう、俺たちの危機は突然やって来たのだ。

 

「・・・あのさぁ」

 

冬も終わり春になって間もない頃、俺たち4兄弟が居間でくつろいでると突然コマ姉が『それ』を・・・おぞましい言葉を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の晩御飯、私が作ろうかなって思うんだけど」

 

「「「・・・・・・っ!!!!」」」

 

瞬間、俺たち3人に戦慄が走った。

 

「えっ!!今日晩御飯抜き!!?」

 

「ナツ姉ぇぇぇぇえ!!!急いで駄菓子屋いくぞ!!今日の夕飯のパンを買うんだァァァァ!!」

 

ナツ姉が驚愕し俺は慌てて財布片手に外に出ようとした。

 

「なんで最初から食べないつもりなの!!」

 

俺たちの態度にコマ姉が怒る。だがこれは至極当たり前の判断なのだ。なぜなら前にも言ったと思うがコマ姉の料理は壊滅的にヤバい・・・何よりコマ姉自身が自覚を持ってないのだからなおタチが悪い

 

「だってさぁコマ姉!!数日前にグラタン作って失敗したばっかりじゃん!!」

 

「そうだよ姉ちゃん!!味付け忘れてコゲの味しかしないあの味無しコゲタン!!あれを忘れたか!!」

 

あれはひどかった・・・まさかチーズすら入れるのを忘れていたとは思ってもいなかった。

 

「ま・・・まぁ覚えてるけどさ・・・アレはちょっと味付けるの忘れただけだし・・・それに焦げだほうが香ばしい感じがするかなーと思って・・・」

 

「炭化と香ばしさは似て非なるものだから!!」

 

まずい・・・なんとかコマ姉の暴挙を止めなければ・・・

「そ・・・そうだ!!それなら俺かスグ兄が手伝うよ!!良いよねナツ姉!?」

 

「い・・・良いじゃん!!それなら安全だし!!」

 

手伝いと言いつつ俺かスグ兄が中心に料理をすれば・・・

 

「ダメーお兄ちゃんや一輝が手伝うと全部1人でやっちゃうんだもん、それじゃ面白くないじゃん」

 

くそ・・・バレたか・・・

 

「面白さで俺たちの一食を奪うような真似はやめてくれよ!!」

 

これはマズイ・・・俺たちじゃ説得しきれない・・・

 

ガラッ

 

「あんたたちどうしたの、ガヤガヤさわいで?」

 

すると、騒ぎを聞きつけたのか母さんが入って来た

 

「あっ!!母さん良いところに!!コマ姉が俺たちに毒盛ろうとしてるんだよ!!なんとか説得して!!」

 

母さんならうまく諭してくれるはず・・・

 

「ああ小鞠が料理するってのね?別にいいじゃない」

 

しかし現実は残酷である。

 

「ええ!?ちょっと母ちゃん!?」

 

「娘が息子に毒盛ろうとしてんだよ!?いくら俺やナツ姉が育ち盛りでも毒は食べられないから!!」

 

あまりの衝撃発言に俺たちは驚愕した。

 

「あ、お母さん絶対に手伝いに来ないでね!!1人でやるんだから!!」

 

「はいはい手伝わないよ、それより一輝か夏海、この回覧板隣に届けてくれない?」

 

回覧板より今日の夕飯の危機でしょ!!

 

「えーウチこれから宿題が・・・」

 

「俺も・・・問題集があと1ページだけ残ってるから・・・」

 

それに回覧板届けるのめんどくさい

 

「まったく・・・一輝はともかく夏海はいつも自分から宿題やるなんて言わないくせに・・・しゃあないね、兄ちゃんお願い、それじゃ母さん洗濯してくるから」

 

「・・・・・・・・・・・・(えぇ〜)」

 

スグ兄は嫌そうな顔をして母さんを見た。そして母さんはそのまませんたくをしに居間を後にした。俺とナツ姉はそれを見つめると

 

「・・・一家の食の危機というのになんたる無責任・・・あんなので母が務まるとお思いですか一輝くん・・・」

 

「まったくですね・・・母さんは尊敬してるけどこれはいくらなんでも無責任ですね・・・」

 

「あのさぁ・・・2人ともいくらなんでも私をバカにしすぎじゃない?」

 

すると、コマ姉が怒りながら俺たちに文句を言って来た。

 

「えー?これでも控えめに言ってるつもりなんだけど・・・」

 

「オブラートに包んで言ってるな」

 

「いや、結構私を馬鹿にしてたよね?」

 

失礼な、本当に控えめに言ってるっての。これ以上どう控えて言えと・・・

 

「よーし!!そんなに言うんなら見ててよ!!今日こそすっごい料理作って目にもの見せてあげるから!!」

 

ハイ出ましたコマ姉の料理失敗フラグ。コゲタンを作った時も同じこと言ってた気がする・・・

 

 

 

 

そして時刻は午後5時・・・

 

「もうこんな時間か・・・そろそろ晩御飯の用意しなきゃ」

 

いつも母さんはこのくらいの時間に準備をするのでコマ姉のそうするつもりのようだ・・・

 

「うーん・・・何作るかなぁ・・・こう夏海と一輝が驚くような創作料理を・・・」

・・・ささっ

 

キッチンへと入っていくコマ姉を俺はこっそり観察していた。

 

「・・・さっそく不安なワードを並べて来た・・・様子を見に来て正解だったな・・・」

 

やっぱり心配になった俺はコマ姉を見守りあわよくば手伝おうと言う算段だ。さて・・・コマ姉はどうなって・・・

 

 

 

ここから越谷 一輝のセリフ、ナレーションはほとんどツッコミになるのでご了承ください

 

「まずフランス料理のように前菜を・・・オードブルで・・・」

 

(コマ姉・・・そもそもフランス料理わかってるのか?)

 

「そしてそれを和風アレンジにしつつ餃子を・・・うーん難しいなあ・・・」

 

(なんでだよ!!なんで和風アレンジに餃子が出てくんだ!!コマ姉一体どんなアレンジ加えるつもりだ!!)

 

「その前に材料なにあったか確認しないと・・・」

 

そう言うとコマ姉は戸棚を開けて料理を確認しだした。戸棚の中には・・・

 

 

 

カレールゥがあった

 

 

「・・・カレーでいいや」

 

(よぉっしぃっ!!)

 

いい判断だコマ姉!!シンプイズベスト!!

 

「だ・・・妥協するわけじゃないけどみんなカレー好きだもんね!!カレーもいろんな種類があるし私の理想のカレー作れば大丈夫大丈夫!!よーし、じゃあ野菜から切っていこー」

 

そう言いながらコマ姉はさっそく玉ねぎを切り出した。

 

(もう普通のカレーで良い!!コマ姉の判断は正しいよ!!)

 

あとは余計なアレンジをせず凡ミスをしなければなら・・・

 

 

 

 

「フンフンフーン♪フッフンフー♪フンフー♪フッフンつああ・・・」

 

・・・あれ?

 

「っあああ・・・フンフあああ・・・ああああ」

 

ポロポロ

 

コマ姉の目からは涙が溢れたきた。あぁ・・・タマネギはよく冷やさないと・・・

 

「もー!!タマネギ嫌い!!目が痛すぎる!!鼻歌も歌えない!!」

 

コマ姉はタマネギに八つ当たりを始めた。

 

「も・・・もう具材はタマネギだけででいいや・・・結構頑張ったしみんなわかってくれるよね・・・」

 

(ちょっと待て!!タマネギだけのカレーってさすがに寂しいぞ!?煮込んで溶けちゃったらタダの具なしカレーじゃん!!そこはせめて人参かじゃがいもを入れようよ!!)

 

「あれ・・・カレー鍋もう出てる・・・」

 

よく見るとカレー鍋がすでにスタンバっていた。

あれ?あれって確か・・・

 

コマ姉が開けると、中には肉じゃがが入っていた。

 

・・・やっぱり昨日の肉じゃがの残りか・・・

 

「そうだ!!この肉じゃがを具材にしよう!!カレーに必要なものは大体入ってるしこのまま温めれば・・・イケる!!す・・・すごい発想だ!!こんな発想プロでも思いつかない!!」

 

・・・すいませんコマ姉・・・その方法すでにネットによくあります・・・

 

「肉じゃがの甘さがカレーのコクを作り出す・・・夢のコラボ・・・!!もっとコクを作るためにハチミツ・・・は無かったはずだから・・・」

 

・・・あれ?コマ姉?小鞠さーん?なんだかまたおかしな方向に・・・

 

「よしっ!!砂糖をてんこ盛り入れよう!!」

 

(アホかァァァァァァァァァァァァ!!!)

 

ふざけてるのかあんたは!?そんなもんまずいに決まってんだろ!!

 

「これはすごいものが出来そうな気がする!!砂糖砂糖・・・」

 

マズイッ!!コマ姉が砂糖を探し出した・・・こうなったら多少強引でも砂糖を隠さんと・・・

 

「あれ・・・砂糖が無い・・・」

 

よく見ると、いつも砂糖を置いてある場所には砂糖が無かった・・・一体誰が・・・

 

 

「お〜砂糖にアリいっぱいきよる」

 

すると、ふと庭からそんな声が聞こえ様子を見ると、ナツ姉が砂糖を庭の一箇所に撒いてアリを集めていた。

 

(よしっ!!でかしたナツ姉!!)

 

まさかナツ姉のイタズラに我が家の食卓が守られるとは・・・さて、それじゃあ俺はまたコマ姉の様子を見に・・・

 

「・・・ん?なにか焦げくさい?」

 

かすかだが・・・なにかが焦げてるような匂いがする・・・まさか!!

 

「わ!わ!お鍋から煙が!?」

 

キッチンからコマ姉の慌てた声が聞こえた。どうやら火をつけっぱなしにした肉じゃがの鍋が焦げ出したようだ。

 

(はぁ・・・仕方ない・・・こうなったら手伝うかな・・・)

 

コマ姉には怒られるかもしれないがもうほっとけない・・・そう思った俺がキッチンへ向かうと、母さんがコンロの火を消していた。

 

「・・・あんた何やってんの?ちょっと煙出ただけでしょう?火止めればいいじゃない」

 

慌てるコマ姉のところに心配してきたみたいだ。その後、母さんはコマ姉に簡単な指示を出した後その場を去ろうとした。どうやら「1人でやりたい」というコマ姉の今朝の意見を尊重したらいるようだ。すると、

 

「お・・・お母さん、美味しいカレー作りたいからやっぱり手伝って」

 

「・・・はいはい」

 

コマ姉の言葉に母さんは優しく答えて手伝い始めた。

 

(・・・そういえば)

 

その時、俺はふと昔のことを思い出した。

 

この村に母さんに連れてこられてしばらく経った頃のこと、母さんが夕飯の支度を始めようとしていると幼い俺が恐る恐る近づいてきた。

 

「ん?あぁ一輝?ごめんね、今から夕飯作るから」

 

俺に気づいた母さんは優しくそういうと再び準備を始めた。

 

「あの・・・かあさん」

 

「ん?」

 

俺の声に母さんは気づき再び振り向いた。

 

「あの・・・僕も・・・手伝いたい」

 

ビクビクしながらそういう俺に母さんは優しく笑うと

 

「はいはい、いいよ」

 

その言葉に俺は嬉しそうに笑うと母さんの手伝いをした。と言ってもタマネギの皮むきやお皿を並べたりと簡単なものだったが俺にとってはとてもいい思い出である。

 

「・・・もう大丈夫だな」

 

懐かしい昔を思い出した俺は安心して部屋に戻った。

 

 

 

 

 

 

「はいっ!!晩御飯出来たよ!!」

 

そして晩御飯の時間、コマ姉が自信を持ってカレーを持ってきた。

 

「まぁ見た目はカレーだけど・・・うーん」

 

ナツ姉は心配そうにカレーを見ていた。

 

「なにー?食べないのー?」

 

「まぁ食べるけどさ・・・大丈夫か?」

 

そう心配しつつナツ姉は恐る恐る口にした。

 

「・・・っ!!こ・・・これカレーだ!!姉ちゃんが作ったカレーなのにカレーっぽい!!」

 

「カレーっぽいじゃなくてカレーなの!!」

 

「・・・ははっ」

 

ナツ姉に突っ込むコマ姉を見て俺はふと笑っていた。

 

「なになにどうしたの一輝、急に笑って」

 

「いや別に?それよりおかわりもらっていい?」

 

「私まだ食べてないんだから先食べないでよー」

 

そうだな、コマ姉が作ったカレー、なんだかんだ言ったってやっぱりコマ姉の「美味しいカレーを作りたい」っていう思いがあるから美味しいよな・・・

 

 

 

 

 

 

「うん、おいしっ」

 

 




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