「一条 蛍って言います。東京から来ました。」
朝、いつもと何か違う気がしたあと先生が入って来ると知らない少女が入って来た。どうやら転校生のようだ。
よく教室を見たら隣に今までなかった席があった。
しかし…
「東京!?」
「都会っ子じゃん。何年?」
「小学5年です」
「下!?私より下!?」
コマ姉が驚愕していた。確かに彼女は背も高くどこか大人っぽいのでナツ姉やコマ姉よりも年上に見える。でも俺より年下とは思わなかった。同級生かと思ってた。
「小5には見えんな〜。んで?前の学校でなんかやらかしたん?」
「えっ?いえ、両親の仕事の都合で…」
なるほど、ありがちな理由だな。しかし東京か…確かひかねぇが通ってる高校があるところだ…東京タワーとかってやつがある場所だ
そんなことを考えていると、れんげが突然立ち上がり
「にゃんぱすー」
毎度お馴染みのあの謎の挨拶をした。
「えっ…あの…にゃん…」
いきなりの謎の挨拶に蛍は少し困ってしまった。
「とりあえず座ったら?」
どうすればいいか困っている蛍に一穂先生が優しくそう言った。蛍は少し恥ずかしそうに一輝の隣の空いている席へと向かった。
「はじめましてなのん、ほたるん」
どうやらさっそくれんげが蛍のあだ名を考えたようだ。
「……ほたるん…」
どうやらあだ名をつけてもらえたのが嬉しかったのか蛍は嬉しそうに微笑んだ。
「あっ………」
その微笑みに思わず一輝はどきりとしてしまった。
1つ年下なのにどこか大人っぽい容姿の彼女の微笑みはそれだけ綺麗だった。
ピーンポーンパーンポーン
こうして授業が始まった。
「一時間目の授業ってなんだっけ?」
「国語だよ」
そう言いながら問題集を鞄から取り出した。
「あ…学年バラバラ」
問題集の学年はバラバラなことに蛍は少し驚いた。
「うちは小一」
「俺は小六でナツ姉が中一、コマ姉が中二、そんでもってあそこにいるスグ兄が中三だよ。学年がみんな違うから基本自習形式だしね。」
「どのクラスもですか?」
「どのクラスっていうか…クラスはここだけだし」
「えっ…全校生徒5人なんですか」
「ほたるん入れて6人なのん」
れんげも蛍の問いに答えた。
「そうだよ、まぁ最初は驚くよね。あっ俺の名前な一輝、『一番』の一に『輝く』って字でそう読むよ」
「あっ…よろしくお願いします。一輝先輩」
「自然体でいいよ、これから仲良くしようね。」
そう言って一輝は微笑んだ。
「わっ…わかりました。よろしくお願いします…」
少し緊張しながらも蛍は再び一輝に挨拶をした。
ピーンポーンパーンポーン
授業が終わり休み時間
「よっしゃー何して遊ぶかー」
ボールを持ちながらナツ姉はドアを開けた。
「うちなー、中当てが熱いと思いますのん」
「中当てかー確かに良いねー」
「面白そうだな、ゼッテー負けねーぞ」
中当ては一輝も得意だ。一輝は運動神経がとても良いのでそういった競技が大好きなのである。
「あの〜教室に来た時も思ったんですが…あのバケツはなんですか?」
蛍の視線の先にはバケツがたくさん並んであった。
「あぁアレ?雨漏り防止用のバケツ、あんまり近づかないようにね」
「えっ?あぁそうですよね、バケツがズレたら雨漏りの位置分かんなくなっちゃいますもんね」
「そうじゃなくて、雨漏りで床腐ってるから床が抜けたりしないようにってこと」
「……えっ?」
予想斜め上の答えに蛍は一瞬固まった。
「うそうそ、今までそんな間に合ったお間抜けさんはいないよ。」
そんなことを言いながら彼らは校庭に向かっていったがその後ろで兄の卓がしっかりと落ちていたのはまた別の話。