ガタンゴトン…ガタンゴトン…
小さな田舎の電車の中で俺と蛍は隣どうしで座っていた。
電車の車内は俺たちしかおらず、好きだと意識している女子と2人きりというシュチュエーションに思ったように口が動かずお互いに無言状態が続いていた。
(うう……気まずい……何か喋んないといけないのに……何を喋ればいいのかわかんねぇ……これじゃあ何のためにデートに誘ったんだよ俺……)
いざ2人きりになると言葉が思い浮かばず俺は自分がいかにヘタレなのかを実感してしまった。
(うわぁぁ〜〜どうしよう……せっかく先輩と2人きりになったのに何を喋れば良いのかわからない……でも失敗して先輩に嫌われるのは嫌だし……どうしたら良いんだろ……)
一方の蛍も一体何を話せば良いのか戸惑っていた、
好きな人と一緒に映画というシュチュエーションなど初めての経験であったために戸惑ってしまっているのだ。
そんなわけで2人とも会話をうまく切り出すことが出来ずに駅へと到着した。
電車で7駅越えるとそこは少し賑わった繁華街となっている。ここには喫茶店や小さなゲームセンター、本屋さんとそこそこ規模は小さいが娯楽施設などが多く存在する。
そして、そこに今回の目的地である映画館があるのだ。
事前に調べたがそこでもちゃんと今回観る映画があるので問題無い。
「上映時間までまだ結構時間あるな……どこかで軽くご飯でも食べるか?」
「あ、そうですね。そのあと上映時間までどこか見て回りましょうよ」
2人の意見が一致したので早速2人は喫茶店に寄ることにした。
喫茶店は小さいが落ち着いた感じの店でかなり空いていた。2人は空いてる席を見つけると早速座った。
席に着いた2人は簡単な軽食とコーヒーを注文するとすぐに来たので早速食事を行なった。
「……それでな、ナツ姉がテストを隠したんだけどすぐに母さんに見つかって怒られたんだよ」
「あはは…夏海先輩って相変わらずなんですね…」
「そうなんだよ……そんで決まって俺やコマ姉にとばっちりが来るんだよな……」
「ふふっ…でも話聞いてて何となく感じます…一輝先輩、夏海先輩や小鞠先輩のことが好きなんですね」
「ははっ、まあな」
食事をとりながら2人は会話を始めたが、電車の時よりも自然に会話をすることができ、かなり盛り上がった。
「さて、食事も済んだし次はどこか行きたいところある?」
「ええと…私この辺りあまり詳しく無いので…」
「それじゃあこの先にゲームセンターがあるから一緒に行かない?」
「はい!!」
蛍も少しウキウキした様子で俺に賛成した。
「ここがゲームセンターだよ。小さいけど結構たくさんゲームが揃ってるんだ」
俺たちはゲームセンターに着いた。ゲームセンターは昼間の休日ということもありそこそこ人が来ていた。
「それじゃあどれやりたい蛍?」
「ええと…じゃあ先ずは……」
それから俺たちはゲームを楽しんだ。
まずはレーシングゲームで競争し僅差で何とか俺が勝った、次のエアホッケーでは蛍がとてもうまく俺は負けた時少し悔しかった。シューティングゲームでは協力プレイで挑戦し全クリした。俺も蛍も気づいたら電車でのぎこちなさは無くなりゲームをとても楽しんでいた。
「蛍ってやっぱりゲーム強いな」
「一輝先輩もとても上手ですよ」
ゲームを一通り楽しんだ俺たちはベンチでジュースを飲んでいた。軽くやるつもりだったが気づいたらとても熱中していた。
「…………?」
ふと、蛍が何かを見ているのに気づきそこを見てみると蛍がUFOキャッチャーを見ていた。その景品の中に俺たちがみる予定の映画『白猫ミィの大冒険』のキャラの白猫ミィのぬいぐるみであった。
「蛍、あのぬいぐるみ俺がとってみるよ」
「えぇ!?そんな悪いですよ」
「良いから良いから、俺に任せて」
蛍がそのぬいぐるみを欲しそうにしてたのは確かに見ていたのだから
「あの…………それじゃあお願いします」
こうして俺はUFOキャッチャーに挑戦することにした。
俺は100円を入れるとキャッチャーを動かした。
キャッチャーはぬいぐるみの真上で止まりそのままぬいぐるみめがけて降りて来た。そして、爪でぬいぐるみをしっかりと掴むとそのまま持ち上がりファンファーレとともに景品取り出し口へぬいぐるみが落下して来た。
「ふふん、どうだ。スグ兄直伝のUFOキャッチャー術は」
「うわぁぁ、ありがとうございます先輩」
蛍はぬいぐるみを取り出すととても嬉しそうな顔をした。
ふと、 気づいたら映画の公開時間の20分前だった。
「いけないいけない、もうすぐ公開時間だ。思わず熱中しちゃったよ」
「はい、とても楽しかったですね」
俺たちは少し早歩きで映画館へと足を運んだ。
映画館に入ると俺たちはチケットを見せてそのまま目的の映画のやるシアターへと入り席に座った。
「映画、楽しみですね先輩!!」
蛍はとても映画を楽しみにしていたのかウキウキしていた。
(蛍…猫とか可愛い動物好きなのかな?)
俺は改めて蛍を誘って良かったなと感じた。
俺も蛍の隣に座ろうとすると、
ピトッ
俺の手と蛍の手が少し触れた
「「……………………っ//////!!」」
瞬間、俺は顔が燃えてるかのように熱くなった。
「…………っ///すまん蛍!!」
「いえ…………///私の方こそ…………」
俺の心臓はさらにバクバクと音を鳴らしていた。
そうこうしていると映画が始まり出した。
映画の内容はごく普通の一軒家に飼われている白猫ミィが外の世界で大冒険するというベタな内容だったが評判どうりでとても面白かった。蛍も白猫ミィが気に入ったらしく先ほど手に入れたぬいぐるみを抱きしめながら幸せそうに観ていた。
帰りの電車
ガタンゴトン…ガタンゴトン…
今日は楽しいことがたくさんあった。映画もなかなか面白かったし蛍もとても喜んでいたので俺も嬉しかった。
(なんにせよ…………俺も楽しかったしな…………)
俺は電車の窓から外を眺めていた。
ピトッ
ふと気付くと俺の方に蛍が頭を乗せていた。
「…………っ//////ほ…………蛍?」
「すぅ…………すぅ…………」
ふとみると蛍は寝ていた。結構たくさん遊んだので少し疲れたのだろう、そう思った俺は蛍をそのままにした。
(それに…………俺も少し嬉しいし)
「す……っ///すいませんでした!!」
駅に着くと目を覚ました蛍は自分の状況に気づき顔を真っ赤にして謝った。
「大丈夫だよ蛍、こっちが昼からかなり付き合わせちゃったんだし大丈夫だった?」
「あ…はい、大丈夫です」
蛍は顔を赤く染めそう答えた。
「そんじゃあ家まで送るよ」
「ええと…それじゃあお願いします」
俺と蛍はそのまま蛍の家まで歩いた。空は太陽が沈み始めていた。
「先輩………今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「そりゃ良かった」
俺は嬉しかった、蛍がとても喜んでくれて。やはり誘って本当に良かった。
そうこうしていると蛍の家に着いた。
「それじゃあまたな蛍」
「はい、また明日」
そうして俺は帰路に着いた。
その日の晩、俺は自分の部屋で今日のことを振り返っていた。
(へへっ…………蛍が喜んでくれた…………嬉しいな…………)
ふと思い出すのは嬉しそうな顔の蛍だった。
(〜〜♪)
一条家
「今日は楽しかったなぁ〜〜映画も面白かったし♪」
蛍も今日のことを思い出していた。
「………それに…先輩ともまたさらに仲良くなれたし……………………」
蛍は再び一輝のともことを思い出していた。
そして、自分が本当に彼のことが好きなのだと実感したのだった。
「蛍…………」
「一輝先輩…………」
こうして俺と蛍のデートはお互いに良い思い出を作ったのであった。
デート編描き終えました。
感想待ってます!!