紫さんの話し方が本っ当に分からなかった……
誰かこの話し方が良いよっていう人が居たら、感想で教えてくださいm(_ _)m
落ちていく様な感覚に驚いて目を覚ました。
高い所から命綱無しで落ちていく夢だ。
こんな悪夢を見たのは絶対にさっきの事が原因だ。
大丈夫とか聞いたけど、普通に危なかったし怖かった。
しばらくは夢に毎晩出てきそうだ
「しかし2日間で2回も気絶したのは初めてだよ……」
今度は布団に寝かせられていた。
この部屋は紅魔館の様な洋室ではなく、日本家屋にある様な和室だ。
きっと博麗神社の一室なのだろう。
長い間気絶していたらしく、すでに夕方になっていた。
障子を通して差し込んでくる光は暖かなオレンジ色をしている。
体を起こそうとすると全身に鈍い痛みが走る。
あれだけの高さから落ちたのだ。
死なずには済んだが、しばらくは痛むだろう。
誰かが近くに居たら良かったのだが、残念ながら話し声は遠くから聞こえてくる。
仕方なく痛みを堪えて起き上がり、障子を開けて廊下に出た。
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縁側を歩いて賽銭箱がある所へ向かうと、霊夢さんと紫さんがお茶を飲んでいた。
「あら、もう目が覚めたのね」
僕に気が付いたのか、紫さんは振り向かずに話しかけてきた。
「ええ、命綱無しで落ちる夢を見て目が覚めましたよ」
「さっきは本当にごめんなさいね」
皮肉交じりに答えると、紫さんに本当に申し訳なさそうに謝られた。
そんな風に謝られると、何だかこっちが悪い様に思えてきた。
「……いえ、大丈夫です。それに記憶も戻りましたし」
全身を強打し、トラウマになったとはいえ、記憶が戻ってきた事はそれを上回るほど嬉しい。
自分の名前が思い出せない時は、本当に落ち着かなくて辛かった。
「なら良かったじゃない。あんた、名前は?」
「名前は『
「へぇ……『
霊夢さんは「珍しい名前ね…」と独り言のように呟いた。
「そういえばこれはあなたの本なの?」
紫さんが隙間から取り出したのは、あの白紙だった本だ。
「あ、そうです。ありがとうございます」
紫さんから受け取って眺めると違和感があった。
あの高さから落ちたにも関わらず、全く損傷が見当たらないのだ。
そして本を開けると内容が増えていた。
「やはりあなたは開けることが出来るようね」
本の確認をしていると、それを見ていた紫さんはそう言った。
「どういう事ですか?」
「実はあんたが気絶している間に、その本を読もうとしたのよ。でも私と紫はその本を開けられなかったの」
「勝手に読もうとしてごめんなさい。でもあなたを外に帰すことが出来なかったことが不思議で、何か手掛かりになりそうだったから」
「別に読んでも良いんですけどね」
そういって本を開けたまま紫さんに渡した。
別に勝手に読まれても怒る事はない。
それに読まれて困ることは書いていない筈だ。
「その中身は僕の記憶ですよ。僕は外に帰れなかった理由なんて見当もつかないので、それを見ても分かることなんて無いと思います」
そう。さっき気が付いたのだが、この本の中身は「僕が記憶している事」である。
どこぞの便利な日記みたいなものだ。
幻想郷の外で読んでいた小説の中身であったり、ゲームの中身であったり、高校で習った内容だったりetc…
ただし、1つだけ僕が知らないこと事が載っていた。
それは僕の幻想郷での能力だ。
僕は幻想郷を作品の中の場所としては知っていた。
しかし幻想郷が実在することも知らなかったし、「幻想郷にもし迷い込んだらどんな能力を持つのか」なんて妄想したことも無かった。
なのに何故か僕の幻想郷での能力が書かれていた。
その能力は、『記憶から引用する能力』だ。
この名前を見たときは正直に言って、どんな力か全くわからなかった。
しかし、何故かとても詳しく分かりやすく書かれていた。
試しに5円玉を思い浮かべてみると、本当に5円玉が手に現れた。
「すごい能力じゃない!」
霊夢さんがすごく食いついてきた。
……そう言えばこの博麗神社は参拝者が少ないんだった
「さ、賽銭箱に入れときますから……」
霊夢さんはお賽銭を信仰の度合いとして見ているということだけど……凄い形相だった……
「それであんたはこれからどうするの?」
「まだ考えてませんが……どうしたら良いでしょう?」
「それなら、里で働いたらどうかしら?」
「里ですか……」
咲夜さんから、里には教師をしている妖怪がいると聞いたが……
もしかすると、その人に雇ってもらえるかもしれない。
「じゃあ、里でしばらくは生活することにします」
「わかったわ、じゃあ送っていくわね」
「そこまでしてもらわなくても大丈夫です」
「あなたを帰せなかった事への、私なりのお詫びよ」
そう言うならと送ってもらうことにした。
その方法は―――
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「……今度は本当に大丈夫ですよね?」
「……ええ、大丈夫よ」
「今の沈黙は何です!?」
紫さんの隙間で送られることになった。
また空中に放り出されることだけは勘弁願いたい。
「霊夢さん、どうもありがとうございました」
「別にどうってこと無いわ」
「それじゃあ、また今度」
そう言って隙間に足を踏み入れた。
隙間が閉じる直前、霊夢さんが「あ、そうそう」と思い出したように言った。
「今度来るときは神社の屋根を直してもらえると助かるんだけど」