やあ、諸君。ぼくは不死身の吸血鬼さんだ。
不死身である事に特に理由は無いし、何か特別な使命を背負っている訳でも無いけれど、ぼくはいつもの孤独ライフを満喫しています。
と思ったけれど、今はマリーちゃんが居るじゃないか。
最近はリリスちゃんも防腐魔法の効果が切れていないか定期的に来てくれますしね。(と言っても、リリスちゃんに限って魔法に不備がある訳が無いので、暇潰しの為の方便となっているのだが)
話は変わるけれど、ぼくの不死身について話そうか。
不死身については今までにも何回も考察をして来たのだが、これと言って確かな結論は出ていない。
だが、再生・蘇生の方法に関してはどの様な物であるか最近になって掴めてきた。
何故、最近かと言うと、長生きをしていても実際の所、ぼくが死ぬ事はあまり無かったからだ。
つまり、極端に死ぬ事が増えたから。
併せて、死ぬ瞬間を冷静に見ているから、である。
そう、マリーちゃんのお蔭なのだ。
さて、本題の再生又は蘇生についてだが。
マリーちゃんの
これは吸血鬼が持つ再生能力とは全くの別物だ。
吸血鬼の再生は人間で言う自然治癒のような物。
受けたダメージを自身のエネルギーを消費して回復するのだ。
吸血鬼は身体を自在に操る事が出来るので、千切れたパーツは直ぐに元の身体に戻る。
しかしぼくの場合、ダメージを受けた事や部位が欠損した事など関係なく、ぼくと言う【完全な肉体】で上書きしている、という状態なのだ。
と、分かっているのは此処まで。
後の事はいくら考えても答えが見つからなかった。
それに、いくら不死身とは言え弱点に近い物は存在する。
先日もマリーちゃんに説明した、血液摂取だ。
これを定期的に・・・まあ、一月に一度くらいだろうか・・・行なわないと目に見えて体が弱る。
分かりやすい所で、栄養失調若しくは高熱と言った症状で動けなくなるのである。実際は動けるのだが、動きたくなくなるのだ。
「と言うことでね?マリーちゃん。ぼくは今朝起きて自分が血液不足だと確信したんだ。背伸びした瞬間に身体中から悲鳴が上がってこれはマズいと思ったね」
「うん」
「だからぼくは急いで、と言っても緩慢な動きだったけど、部屋の隠し金庫の中にある輸血袋を探したのさ」
「うん」
「日頃から懇意にしている友人に調達してもらってる物なんだけどね?金庫を開けて直ぐに気付いたんだ。もう在庫が無いってね」
「おなかすいた」
容赦無いねキミ。
そりゃあ目の前に床に臥せっている無防備な
そして弱点その2。
血液不足の状態で死んでも再生はするが体調不良は治らないのだ。
「がぶり」
「うわー」
うーん。体が動かないので抵抗も出来ない。
しょうがない。マリーちゃんの気が済むまでは大人しくしていよう。
「もぐ・・」
おや?いつもの勢いが無いですね。
今日に限って食欲が無いとか?
「むぅ・・・」
なんと!
マリーちゃんが食べるのを止めた。
本当にどうしちゃったんでしょう。
「おいしくない」
「え?」
「おいしくない」
「ええ?痛っ、何で叩くの」
マリーちゃんが不満気にぼくをぺちぺち叩いてきます。
これは一体、どういう事なんだろう。
考えられる事としてはーーー
「まさか、
恐らく、血液不足が影響しているのだろう。
そしてマリーちゃん、ゾンビ的にはその味がお気に召さないと言うことか。
「どうにかして」
マリーちゃんに理不尽な理由で叩かれています。
まあ、ぼくとしても今の状況は良くないので早く解決したい。
それならマリーちゃんにも手伝って貰おうか。
「良いかいマリーちゃん。君に頼みたい事があるんだ。そしたらきっと、ぼくの調子も良くなると思う」
「おいしくなる?」
「もちろん」
「なら、やる」
OKOK。やる気を出してくれたようで何よりだ。
やる気を出した理由が「今のぼくが美味しくないから」と言うのはいかにもマリーちゃんらしいが。
「それじゃあマリーちゃんにして貰うのは、まず隣の部屋に行ってもらう事だ」
「となり」
「入口のすぐ右手にドアがあるでしょ?その部屋に入ったら、目立つ所に水晶玉が置いてあると思うから、それに触れて欲しい」
「すいしょう?」
「あー、えっと・・この前のビーチボールみたいな丸い玉だよ。それに触れるとリリスちゃんに連絡が取れるから、ぼくが動けない事を伝えて欲しい。後は彼女が何とかしてくれる筈だから」
「う、ん。わかった」
「頼んだよ」
マリーちゃんは隣の部屋に入っていく。
だんだんと、身体の怠さに眠気が伴って来た。
・・・駄目だ、瞼が落ちる。
マリーちゃん、リリスちゃん、後は任せた。
おやすみ。
何部かに分けてみました
マリーちゃんは【彼】を美味しく食べる事が出来るのか
中篇に続く