きまぐれ ぶらっどろーど   作:外道男

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今回はかなり短め


ふしぎにすてきな おんなのこ

やあ諸君、元気にしてたかな。

ぼくは不死身の吸血鬼さんだ。

 

ゾンビの少女、マリーちゃんを家に住まわせて早一週間が経った。

 

最初は傍若無人のはらぺこモンスターだった彼女も、言い聞かせている内に少しは意思疎通が出来るようになった。と思う。

 

 

「良いかな?マリーちゃん今朝の事についてだけど」

「うん」

 

「前にぼくは君に言ったね。ぼくを食べるにしても場所は選んで欲しいって」

「いった?」

 

「言ったの。それで多分だけど、君はその事を無意識の内に守ろうとしたんだ。マリーちゃんがぼくの言い付け通りに行動しようとしたのは凄く嬉しいんだ。ご褒美上げても良い」

「あたまたべたい」

 

ご褒美で何の躊躇(ためら)いも無くぼくを殺しに掛かるのはどうかと思います。

 

「それで君は行動を起こした。結果は君が一番良く知ってる筈だ」

「?」

 

首を傾げないの。可愛いけど。

 

「マリーちゃんは場所を選んで食べる為に寝ているぼくの腕を千切ってから自分の部屋に持ち帰ったんだよね」

「へやでたべた、いいつけできた」

 

すごい、いいつけできてる。

ちがうの、そうじゃないの。

 

 

さよなら、お布団様2号。

 

 

 

 

 

 

吸血鬼に取って、食事とはどんな物か。

 

別にこれは哲学的な問いではない。単純な問いだ。

言い換えると、「一般的に吸血鬼の食料とは何か」という事である。

 

人に聞けば殆どが「血液」と答えるだろう。

人の世に知れ渡るぼく達の象徴と言っても過言ではない。

 

実際に、その認識で間違いない。

吸血鬼の食事は血液さえ有れば十分なのだ。

 

ぼくも詳しい事は良く知らないが、血液でしか栄養を摂取する事が出来ないらしい。血液摂取を怠ると次第に力を失い吸血鬼は消滅してしまうとか。

 

不死身であるぼくであっても血液は重要で、摂取しないと消滅するような事は無いけれど人間の栄養失調に近い状態になってしまいます。

 

人間の食べるような料理を食べる必要は無く、それらは吸血鬼に嗜好品扱いされている。でも、ぼくは毎日食べています。美味しいもの。

 

 

「このように、種族によって食事と言うものは変わるけども吸血鬼には一つ特殊な体の構造がありまして」

「うん」

 

「食べた物を体の中で溶かして全部吸収するんだ。自分の体の一部にする訳だね」

「おなかすいた」

 

ブレイクファストは5分前に終了しました。ステイステイ。

 

「ところでマリーちゃん。ぼくは気になる事があってね」

「?」

 

「マリーちゃんはゾンビだけども、ゾンビって人間だろ?」

「うん」

 

「映画とかを見てて不思議に思ってたのさ。死んだ人間が蘇って本能の赴くままに人肉を喰らうでしょ。まあ死んでるから本能かどうかも怪しいんだけどね」

「おなかすいた」

 

断言しよう。君は本能で生きてる。

 

「彼らは決して満腹になる事は無いから次々と人間に襲いかかるだろ?」

「うん」

 

「でもゾンビは人間。吸血鬼と違って食物を吸収できない。そもそも死んでるから消化器官が働いている訳無いし」

「?」

 

「ああ、ごめんね難しい話で。つまり、ゾンビが食べ続けるといつかは食べ物が詰まるんだよ。強制的に満腹になると言っても良いかな」

「うん」

 

恐らくは、食べ物が詰まろうと彼ら(ゾンビ)には関係無いだろうが。

 

「でもマリーちゃんは違う。初めて遭った晩もそうだ。君は2時間に(わた)ってぼくを食べ続けた。それも骨まで噛み砕いてだよ?」

「・・・?なにか、おかしい?」

 

何がおかしいと訊かれると一番異常なのは彼女の食欲だろうけど。

とにかく、この質問はしておかないと。

 

 

「マリーちゃん、君はもしかして排泄が」

「がぶり」

 

 

この後、滅茶苦茶喰い殺された。

 





マリーちゃんはアイドル(確信)

実際、ゾンビは食い続けられるのだろうか。

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