きまぐれ ぶらっどろーど   作:外道男

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カマキリ VS 無限増殖ワカメ

サブタイトルに意味は無いです
いつも通り中身は無いので注意


かまきり たい むげんぞうしょくわかめ

怪奇、怪物だって髪は伸びる。

 

いや、もちろん髪の生えている奴なら、と注釈は付くけども。

 

例えばダグのような人狼だってーーあれを髪の毛とするか体毛とするかで議論はあるがーー放っておけば髪の毛は伸びていく。

性別によって伸びる速さは差があるようで、女性体の方が男性体に比べて伸びやすいそうだ。

 

人間に近しい容姿の怪奇、若しくは人間をベースにした怪奇には、人間に酷似した体組織の成長が見られると言った事例は珍しい事では無い。

 

 

では、死霊(アンデッド)、グールやゾンビであればどうかと言うとーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「髪、伸びたねえ、マリーちゃん」

「うん」

 

「前髪で上半身が隠れちゃうねえ」

「もしゃもしゃ」

 

こらこら食べるな食べるな。

 

 

「そうかー。いやしかし伸びるとは予想外だったね」

「へん?」

 

「変じゃないけど、ゾンビだから伸びないと思い込んでたのさ」

 

 

基本的にゾンビやグールなどの死霊は髪が伸びない。

死んでいるから当たり前なのだが。

急激な身体の壊死と腐敗で髪の毛が落ちやすくなるくらいの変化しか無いはずだ。

 

考えてみるとマリーちゃんは食べ物を消化出来る珍しいゾンビだから、髪が伸びたとしても別におかしくは無いのか。

不思議だなぁ。

 

 

「よし。切ろうか髪の毛」

「?」

 

「ハサミでね、切るの。チョキチョキって」

「ちょきちょき」

 

「じゃあ散髪の準備しますか」

「まって」

 

 

「はいはい何かな」

「そのまえに、あさごはん」

 

 

 

 

うわー。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃあ始めるよー」

「おー」

 

手始めにマリーちゃんの髪に水を吹き付けていく。

 

念の為に彼女の体はベルトで固定してある。

そうしないと動き回るからね。

ベルトで固定したところで彼女なら引き千切れるだろうけど。

 

「いつ見ても綺麗な金髪だねマリーちゃん」

「もしゃもしゃ」

 

食べちゃダメだって。

 

「取り敢えず、出会った頃の長さまで整えるって事で良いかな?」

「うん」

 

それじゃあ、チョキチョキ。

 

「長生きの間に色々な事をしてきた僕でも散髪の経験は乏しくてね」

「うん」

 

「そもそも吸血鬼は髪が伸びないんだよ」

「そうなんだ」

 

チョキチョキ、バサリ。

 

「吸血鬼の身体操作の一つでね、伸ばそうと思えばすぐに伸びるし髪型も変えられるのさ」

「うん」

 

「散髪したいと思った時にはわざわざ髪を伸ばして町の理容師さんの所に行ったりするんだ。リリスちゃんには暇人って馬鹿にされるけどね」

「おなかすいた」

 

ハサミは食べないでね。

右手上げるから。

 

「君に(ごはん)を上げるようになってから両手が簡単に分離するようになったよ、ははは」

「ごちそうさま」

 

食べるの速いね、はい口もと拭いてー。

 

「理容師さんと言えばこの街にも居るんだよ」

「うん」

 

「シザーハンズって奴でね。怪奇専門の理容師さんなんだ。なんとそいつの手はね、ハサミなんだ」

「ちょきちょき」

「そう、チョキチョキ」

 

頭に浮かぶのは長髪を三つ編みにした右手がハサミの人物。

どんな髪も五分で整えてみせると豪語するあいつ。

 

「腕は確かだよ。良い奴だしね。…良い奴なんだけど」

「?」

 

「男性相手に妙に鼻息が荒くなるんだよねえ。ソッチのけがあると言うか」

「そっち?」

「何でもない、忘れて」

 

奴はオカマだ。

根は良い奴なので危害を加えてくる事は無いのだが、興奮した様子で接近されると生きた心地がしない。

 

「本当ならマリーちゃんの散髪も彼に頼もうと思ってたんだけど、ちょうど留守にしてるんだ。外国まで行ってるんだよ」

「がいこく」

 

「そ、外国。なんでも日本にお友達が居るらしくてね。いつも言ってたんだよ“放っておくと髪を伸ばしたままにする世話が焼ける娘が居る”ってね」

 

 

 

 

 

 

⚫️

 

 

「ちょっとー、Ms.サエキ!貴女またこんなに髪伸ばして!自分でお手入れもしないのに髪の毛伸ばすと直ぐに傷むって前にアタシ言ったでしょ!?」

 

「……あ"…あ"あ"あ"」

 

「言い訳は聞かないわよ!大人しくしなさい。切ってあげるから」

「……あ"ぁ"ぁ……」

 

 

 

⚫️

 

 

 

 

 

 

「さてこんな感じかな」

「ん」

 

刷毛でパタパタと叩いて、散髪終了。

鏡に映っているその姿は出会った頃のマリーちゃんである。

目立った失敗が無くて一安心だ。

 

「うんうん、似合ってるよ。いや、元々似合ってたのか」

「これたべていい?」

 

君の指差す方向には落ちた髪の毛しかないのだけれど、流石に汚いので止めてね。

 

 

 

マリーちゃんのベルトを外すのと僕が死ぬタイミングはコンマ1秒の差も無かった。

次からは散髪中のごはんも用意しておこう。

 

 

 

 

 




⚫️

屈強な女装男性「いい?Ms.サエキ。Ms.ヤマムラも」

目の虚ろな女性「…あ"あ"」
眼光の鋭い女性「…………(o_o)?」

屈強な女装男性「貴女達が髪を大事にしないのは良く分かったわ。だ か ら、最低限 髪のお手入れが出来るようになるまでアタシ帰らないから。しっかり覚えてもらうわよ」

目の虚ろな女性「あ"あ"あ"あ"あ"」
眼光の鋭い女性「…………(o_o)!?」

屈強な女装男性「返事はァ!?」

目の虚ろな女性「……あ"ぁ"あ"」
眼光の鋭い女性「…………(・・;)!」

怨霊達の受難は続く




⚫️



分からない方は「呪怨」「リング」で検索

有名どころは他にもあるでしょうが、
日本の怨霊といえばもう彼女達の顔が浮かんでしまいます


一度思い出すと臆病な作者は暫く眠れません

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