みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活 作:すいーと
愚痴はさておき、お気に入り20人突破しました。ありがとうございます。
これからもよろしくです。
ここのスーパーは調理器具のコーナーがとても広く、できれば安いもので探してくれと千歌に頼んだのだが選ぶ奴選ぶ奴なぜか変わり種の奴しか選んでこない。中華包丁に始まり、パンナイフ、ようやくまともな包丁を持ってきたと思ったら今度は子供用の安全な奴。もはやアホを通り越してコントだ。
「包丁は俺が選ぶから千歌は食器類を三人分選んできてくれ」
「わかった」
ネットで調べながらこれがあれば料理には困らないと書かれている包丁をかごにいれ、ほかの調理器具を見繕う。
しばらく選んでいると、千歌が近づいてくる。
「これどうかな?」
怒られたのを気にしているのか少しだけ自信無さげに出してきたのは色違いの割れないと書かれた茶碗。オレンジ、青、黒の三色で、コップも同じように色分けされている。
「いいんじゃないか。色分けしてあれば間違うこともないし」
「ほんと?」
「千歌にしては上出来だ」
「馬鹿にしてるでしょ?」
そういってむぅっとむくれる千歌。その顔は昔と何も変わってなくてどこか安心する。
「悪かった。お菓子買ってやるから機嫌直せって」
「お菓子で釣れるほど子供じゃないもん」
「いらないなら曜にだけ買ってやろうかな」
「誰もいらないとは言ってないよっ」
千歌を軽く流しつつ、お菓子を選んでスーパーを出る。都会のスーパーマジ便利。
外はすっかり暗くなって、ここがゲームの世界なら爆発する緑色の生命体や、弓を打つ骨が出てきそうだ。
「暗くなってるね」
「そうだな。もしかして怖いとか?」
「うん。実は……」
「あれ? 昔はそんなことなかったよな?」
千歌は昔は日が暮れるまで遊ぶこともしばしばあったし、中二の時には肝試しと称してみかん山を回ったこともあったはずだから特別暗闇が苦手ではないはずなのだが。
「だって手つなぎたいだけだもん」
小声で何かを言ったようだがよく聞こえなかった。
「ん? 急にうつむいてどうしたんだよ」
「なんでもないよ。ほら帰ろ」
そういって俺の手を取って歩き出す千歌。男のごつい手とは違う少しほっそりとしている手。力加減によっては簡単に壊れそうな。弱く繊細な手に俺の手が包まれる。並んで歩く姿はきっと何も知らない人たちにはカップルにでも見えるのだろうか。証拠に今すれ違った男かなーり俺を睨んでたし。
辛い視線を何とか耐えきりマンションへと帰宅した俺達を曜が出迎えてくれた。
「真樹君、千歌ちゃんおかえりなさい」
「ただいま曜。こっちにフライパン入ってるから洗って使ってくれ」
「わかった。今日は私が作っちゃうから真樹君も休んでていいよ」
「悪いな」
曜の言葉に甘えて床に座る。フローリングの床はとても冷たく、座り心地はよくない。曜は調理、千歌は着替えに行ってしまい一人なのも余計に冷たく感じる。
「明日絨毯でも買ってくるか」
「ん? 真樹君明日出かけるの?」
「そりゃあな。フローリング冷たいし」
「じゃあ私も行っていい?」
俺の独り言に曜が反応する。
「そうだな。俺一人部屋じゃないし」
了解を出すと、曜は鼻歌交じりに料理を続ける。と、そこに着替えを終えた千歌がやってきた。
「曜ちゃんどうしたの? すごい機嫌よくない?」
「いやさっき明日買い物行くかって話しただけだが?」
「二人きりで行くつもりなの?」
なぜか千歌の機嫌が悪くなった。心なしか声のトーンが低い気がする。
「いや。部屋のものを買いに行くんだし、それはないだろ」
「そうだよね」
そんなやり取りをしているとキッチンのほうからおいしそうな匂いと共に曜がやってくる。
「二人ともお待たせー。ハンバーグの完成です」
皿に乗ってやって来たそいつはうまそうに焦げ目がついていて、店で出てくるものだと思えるほどだ。もちろん味もいい。あっという間に食べつくしてしまった。
この後発生する問題など知らずに食事を楽しんでいた。