みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活 作:すいーと
うれしくて3日連続更新してしまう勢いです。
暖かくなってきてるとはいえこの時期の夜道は冷える。それは東京も例外ではないらしく、服を通り抜けて俺の肌を風がなめるように去っていくと身震いする。まだ春には少し早いようだ。
「真樹君寒いの?」
そんな俺の様子を心配したのか隣の斜め後ろを千歌と話しながらついてきていた曜が顔をのぞき込むようにして聞いてきた。
「まあ少しな」
「そっか。なら」
そこまで言うと曜は俺の隣に並ぶ。そこから俺の左腕に自分の右腕を絡めると距離を詰めた。
「これならあったかいでしょ?」
さらに身体をこちらに寄せる曜。言葉を証明するように温もりが強くなる。温もりとは別のやわらかい感触も増したのは秘密だが……。
「そうだな」
少しだけお互いの顔が赤くなる。昔なかった感触に俺は少し照れ、それに気づいた曜も同じように照れる。それでも離れない。
「って曜ちゃんいないし、二人とも何してるの~?」
後ろから千歌の呑気な声が聞こえたおかげで恥ずかしさはなくなる。
「真樹君が寒いって言うから温めてあげてるの」
「じゃあ私逆側」
そういって右腕に飛びつく千歌。正直歩きづらさはあるが、寒さを感じなくなったのは二人のおかげかそれとも今日はやたらがんばる心臓のおかげか。とにかくとてもやわらかかったとだけ言っておこう。
両手に花状態で歩くこと数分。ようやくスーパーへと到着する。それと同時に二人が両腕から離れ店内に駆け出していく。少し名残惜しさを感じながら、スーパーへと入っていく。
外より少し寒いぐらいの冷気が俺を襲う。入ってすぐ野菜コーナーだった。かごをもって振り返ると先に入ったはずの千歌と曜が何かをすごく品定めしているようだ。
「二人ともそんなとこで固まってなにしてるんだ?」
「「このみかんすごくいい色じゃない?」」
二人の手には確かにいい色のみかんが乗っている。よく見つけたなと感心するレベル。
「夕食の買い出しに来てるのに何でみかんだよ」
「デザートってことで買おうよ」
「一つだけな」
なんだか子どもと買い物にきたお父さんになった気分だ。なんて考えながら喜ぶ二人を見る。
「よし、ひとまず1週見て回ろう」
「「賛成ー」」
千歌たちの同意を得てスーパー内部を1週することに。
「おっ今日ひき肉が特売みたいだな」
「それならハンバーグが作れそうだね」
「そういえば曜は昔から好きだったもんな」
「うん。なんかさこういう会話してるとさ、夫婦みたいだね」
突然こっぱずかしいことを言い出す曜にちゃかすようにボケをかます。
「だったら千歌が子供か?」
「そんなこと言ったら千歌ちゃん怒っちゃうよ」
「聞こえてるよ二人とも」
「あっ」
お菓子コーナーにいたはずの千歌がいつの間にか戻ってきていて後ろに立っている。怒らせた罰としてお菓子をたくさん買わされたのは言うまでもない。その後買い物が終わり、2、3日分食糧を買うことができた。手分けして荷物をもち、マンションの部屋に戻って来た。ちなみにまだ家事当番は決めてないから曜と俺の二人で作ることになった。千歌はなんと料理ができないそうだ。
「では早速調理を開始する」
「はいっ」
何となく手術風に初めて見たものの、恥ずかしくなって普通に始める俺。ちなみに本日のメニューはハンバーグだ。
「それじゃあまず玉ねぎをきざむか」
「先生、包丁がありません」
「え?」
「ほら」
そういってキッチンの戸棚を開けては閉めるを繰り返す曜。俺も同じようにすべての戸棚を確認していく。
「ないな」
戸棚には調理器具はおろか皿の一枚すら見当たらない。引っ越したばかりの家だから当たり前なのだが……。
「そうだね」
「一応聞いておくけど荷物にあったりしない?」
「着替えとかしか持ってきてないよ」
「だよな」
はてどうしたものか。
「さっきのスーパー調理器具売ってたよな?」
「あったね」
「急いで買ってくるわ」
「私も行く」
「いや曜はできるとこまで調理進めてくれ」
キッチンから戻り、リビングに置いてある財布とスマホと鍵を手に取るとさっきの反省を踏まえ上着を着る。
と、そこに荷ほどきをしていた千歌がタイミングよく現れた。
「どこか出かけるの?」
「調理器具を買いにな」
「一人だと大変でしょ? 千歌も行くよ」
「そうだな。さすがの俺一人だと辛いからな行くか」
俺たち二人は空腹の腹をさすりながらマンションを出た。