みかん少女とヨーソローな幼馴染が部屋にいる生活   作:すいーと

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更新遅れてしまって申訳ございません。
スクフェスの千歌と曜のイベントがあったことで勘弁して下さい。

しばらく放置いるうちにお気に入りが90突破しました。
大台の100ももう少しですね。何かか記念話を書こうかな。


入学式

 翌朝。今日は色々あったが入学式。

ほんとの意味での大学生のスタートを迎えたこのマンションはいつになくピリッとしたような引き締まった空気が流れている。大学生活初日から失敗したい奴などいないから当然なのだが。

 外には満開のとなった桜が揺れ、春らしさを醸し出してきている。花見なんてやったら楽しそうなんて呑気なことを俺は考えながらスーツを装備する。

普段着ている服とは違うガサっとした感触肌に伝わり何となく背筋を伸ばす。気合が入った。

着替えを済ませリビングに行くと、すでに曜がスーツを着てくつろいでいた。スーツのしわがつかないためなのか背筋と足を延ばしている。

 

「着替えるの早いな」

 

「うん。スクールアイドルやってた時に身につけたんだ早着替え」

 

 俺は曜の横に腰を下ろすといつもの調子で曜に声をかける。昨日は色々あったわけだし少し気まずいさを感じるは仕方ないだろう。曜も同じことを感じているのか会話がすぐに途切れてしまう。気まずさに耐えかねて視線を彷徨わせる。スーツによって強調された豊満な胸元やシュッとしたくびれが目に入って来る。逃げるように視線を下にもっていくと、黒タイツに包まれた芸術品のような足が見えてしまう。

 

「千歌遅いなぁー」

 

 対処に困った俺はわざとらしく天井を見ながらそういった。いくら曜のスーツ姿が珍しいからと言ってじっと見るのもよくないだろう。

 

「そうだね……」

 

 しばらく無言の時を過ごしていると突然後ろの大きな音とともに何かが後ろから飛んできた。

後ろから伸びて来た腕が俺の目の前で交差する。

 

「真樹君おはよっ」

 

「痛いぞ千歌。さっきもあいさつしたし、暑苦しいから抱き着くな」

 

「えー、曜ちゃんとは仲良さそうに寄り添ってるのにー?」

 

「お前が着替える遅いからだ」

 

「それよりどう?」

 

 千歌は俺の目の前に周りこむとその場で一回転する。スーツのスカートは風に乗って舞い上がったりしないのが残念だ。

 

「まぁ変ではないな」

 

「なんかコメント微妙すぎ、ここはもっと褒めるとこだよっ」

 

「似合ってるよ」

 

「真樹君私にはそんなこと言ってくれなかったのに……」

 

「曜はすげーよく似合ってる」

 

「なんか千歌の時より感情こもってる気がする」

 

「そろそろ行かないと間に合わなくなるぞ」

 

これ以上こうしていると危険な気がしたので無理やり話題を終わらせ、入学式に向かうことにした。

 

 2駅ほど電車に揺られて出口をくぐると、一気にスーツ姿の人達の姿が増えてくる。皆少し緊張したような不安そうな顔をして、同じ方向に進んでいく。たぶん入学式に行く人たちのなのだろう。

 

「真樹君。千歌たち大丈夫かな?」

 

周りを警戒しながら俺のスーツの肩を引っ張り耳元で千歌が囁く。

 

「なにが?」

 

「ほら、前みたいに騒ぎにならないかってこと」

 

「さすがに大学だし大丈夫だろ」

 

今思えばこの言葉フラグでしかなかったと思う。

 

 広い講堂で始まった入学式は、メインイベント偉い人の長い話に差し掛かった。学長がやたら小難しい話を楽しそうに語っている。絶対あれ徹夜で考えてるだろ無駄に長いし。

今のところ千歌達が元スクールアイドルだと気づかれた様子はない。千歌は油断して俺の肩を枕代わりに幸せそうに寝ている。居眠りとは呑気なやつだ。いつの間にか曜まで俺の肩にもたれきている。

 

 両肩に重みと幸せを受けながら、入学式は特に大きなハプニングもなく終了した。

二人を起こして帰ることにした。本来ならサークルの見学などのイベントが待ち受けているのだが、二人は元とはいえスクールアイドル。そんな二人が穏便に学校生活を送るためにはできる限り目立たないことが必要だという二人の考えを尊重して、サークルには入らないことにした。人の少ない裏口から帰ろうと考えをまとめていると千歌が声をかけてきた。

 

「真樹君、曜ちゃんちょっとここで待ってて」

 

「おう」

 

どうやらトイレのようだ。

千歌に返事を返すと、曜とならんで壁にもたれる。こうしているだけでなぜか心地がいいし入学式で消耗した体力が回復するような気分だ。これが彼女と過ごす時間ってやつか?

 

「真樹君は入りたいサークルとかなかったの?」

 

「うーん。ないかな」

 

「ほんとに?」

 

「それなそっちこそどうなんだよ」

 

「ないよ。だって――」

 

曜の言葉に被せるようにかすかに地面が揺れる。

 

「地震か?」

 

だんだんと大きくなってくる揺れと共にどたどたと、複数人の足音が聞こえてくる。

 

「サークルの勧誘ってこんなに激しいんだね」

 

「そうだな俺もびっくりしている」

 

呑気に他人事ように会話する俺と曜は足音のする方を長年連れ添った老夫婦が老後のひと時を楽しむようにちらりと見た。

マラソン大会のごとく廊下を疾走する人たち。そしてそう先頭にいる見知ったオレンジ髪少女。

 

「あれ千歌じゃないか?」

 

「ほんとだね」

 

「おいこっちに来るぞ」

 

「真樹君助けてーーーーーーーー」

 

どうやら大学生活は波乱の幕開けになりそうだ。


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