Fate/cross silent   作:ファルクラム

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第16話「甘く、切なく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて2人とも、言い訳があるならたっぷりと聞かせてもらいましょうか? 幸い、時間はある訳だし」

 

 教壇の上に立ったクロは、腕組みをしてそう告げる。

 

 色黒少女の額には明らかな青筋が浮かび、口元にはヒク付いた笑みを浮かべている。

 

 そして、

 

 クロの目の前には、床に正座した響と美遊が、それぞればつが悪そうな顔をして座っていた。

 

「クロ、足しびれた」

「やかましい」

 

 響の抗議を一蹴するクロ。

 

 深山町での戦いを終えた響と美遊。

 

 戦い自体は最終的にシェルドの介入でうやむやになった物の、ヴェイクと狂戦士(バーサーカー)を撃破する事に成功した。

 

 紛う事無き初勝利。

 

 こちらの世界に来て以来、連戦連敗だった事を考えれば喜ばしい事は間違いない。

 

 何より、2人ともそろって帰還できたことが大きい。

 

 エインズワースの思惑は、見事に打ち砕かれたのだ。

 

 そうして意気揚々と帰還した響と美遊を待っていたのは、

 

 クロのお説教だった。

 

 クロ達に相談することなく、勝手に拠点を出て街に言った挙句、敵と交戦までしたのだ。

 

 罪状は明らかだった。

 

 と言う訳で、帰って来た2人は問答無用で教室の床に正座。現在に至る。

 

「勝手に出て行って勝手に戦うとかさ、考え無しにも程あるでしょうが!! 何? あんたたち馬鹿なの? 死ぬの?」

 

 いささか言動がおかしくなるくらい、クロはヒートアップする。

 

 どうやら2人そろって勝手な事をしたせいで、彼女の怒りはいよいよ持って有頂天らしい。

 

「だいたいヒビキッ 今回はうまくいったからいいような物の、もしあんた、負けてたらどうするつもりだったのよ?」

「ん、だいじょぶ。結果オーライ」

「反省しろっつってんのよ!!」

 

 取りあえず、一向に反省の色を見せない弟には、ゲンコツをお見舞いしておく。

 

 叩かれた頭を涙目で押さえる響を放っておくと、クロは視線を美遊へと向けた。

 

「ミユッ あんたもあんたよ!!」

 

 これは響も驚いた事なのだが、美遊は田中から響が1人で出て行った事を聞くと、撮るものも取りあえず、ルビーを引っ掴んで学校を飛び出して来たという。

 

 無謀、と言えば確かに無謀である。

 

 だが、

 

 それだけ、響の事が心配でたまらなかったのだ。

 

「あんたが敵に捕まれば、その時点でわたし達もゲームオーバーだって事くらい、美遊にだってわかるでしょッ それなのに飛び出していくなんて、まったく。響と一緒になって何やってんのよ!!」

「その・・・・・・ごめんなさい」

 

 クロのお説教に対し、美遊はシュンとなって俯く。

 

 響と違い、流石に美遊は自分が無謀だったことは自覚しているらしい。

 

 と、

 

「クロエ、もうその辺で」

 

 説教を続けるクロを制したのは、それまで黙っていたバゼットだった。

 

 落ち着き払った態度で前に出るバゼット。

 

 流石は年長者。ここでビシッと場を締めてくれるだろう。

 

 そう思った。

 

「くどくどと言葉を重ねるよりも体に分からせるべきです。幸い、どの程度までなら相手の体を壊さずに済むか心得がありますので」

「「ヒィ!?」」

 

 ボキボキと指の骨を鳴らすバゼットに、思わず悲鳴を漏らす響と美遊。

 

 リアルバーサーカーに英霊化無しで殴られれば、痛いどころの騒ぎではないだろう。

 

「いやいやいや、死ぬ死ぬッ あんた(バゼット)がやったら、マジで2人とも死ぬから!!」

 

 流石に止めに入るクロ。

 

 こうして、響と美遊の「独断専行」は、割と高い代償を伴う羽目になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 独断専行した者への追及が行われていたのは、何も一方だけとは限らなかった。

 

 その敵対する陣営においても、同様の事が行われていたのだった。

 

 部屋の中にはアンジェリカ、シェルド、ベアトリスと言った、エインズワースのメンバーたち。

 

 そして、

 

 彼らが冷ややかな視線を集中させる先には、ばつが悪そうにそっぽを向いているヴェイクの姿があった。

 

 その姿は痛々しく、全身には包帯が巻かれ、今も血がにじみ出ている。

 

 響、美遊両名と交戦し、辛うじて生還したヴェイク。

 

 一歩間違えば命を落としていたとしてもおかしくない状況だったのだが、そんな少年に対し、アンジェリカ達は手加減する気は無かった。

 

「どういう事なのか、説明してもらおうか?」

 

 詰問口調で、アンジェリカは尋ねる。

 

 その鋭い眼差しには、敵意とも言える凄惨な眼光が満たされていた。

 

「我々に諮らず勝手な出撃。それも、狂戦士(バーサーカー)まで、許可なく勝手に連れて行くとは、気が触れたとしか思えん」

「しかも負けてすごすご帰ってくるとか、救いがないにも程があんだろ」

 

 追及するアンジェリカの横から、ベアトリスが侮蔑交じりに口を挟む。

 

 対して、ヴェイクはギリッと歯を噛み鳴らす。

 

 勝手に出撃したのが事実なら、勝手に狂戦士(バーサーカー)を持ち出したのも事実。ついでに言うと負けたのも事実だった。

 

 独断専行が黙認されるのは、あくまで成功した場合のみ。

 

 失敗した時、敗北者には嘲笑と侮蔑しか残らないのだ。

 

「大方、手柄でも欲しかったんだろ。馬鹿じゃねえの」

「クッ」

 

 いつも仲の悪いベアトリスにまでさんざん言われ、唇を噛み占めるヴェイク。

 

 だが、図星であるだけに、言い返す事も出来ない。

 

 その時だった。

 

 突如、室内の空気が急激に低下するのを感じた。

 

「グッ!?」

 

 背筋に寒い物を感じ、思わず身を震わせるヴェイク。

 

 同時に、それまでヴェイクを追及していたアンジェリカ、シェルド、ベアトリスが、恭しく頭を下げた。

 

 と、

 

「やあ、ヴェイク。調子はどうだい? うん、いつもより少し、顔色が悪いかな?」

「ッ!?」

 

 突如、背後から話しかけられ、身を震わせるヴェイク。

 

 その肩に手が置かれる。

 

 軽く触れられた程度。

 

 しかし、

 

 たったそれだけでヴェイクは、まるで肩を万力で締め付けられたような痛みを覚えていた。

 

「あ、ダ、ダリウス・・・・・・様・・・・・・」

 

 震える声で告げるヴェイク。

 

 彼の背後では、突然現れたダリウスが、おどろおどろしい声を上げながらヴェイクに顔を近づけていた。

 

「私は常々、君達に言っている事があるね。覚えているかい?」

「え・・・・・・あ・・・・・・ウゥ・・・・・・」

 

 恐怖のあまり言葉も出ないヴェイク。

 

 対してダリウスは、口元に不気味な笑みを浮かべて続ける。

 

「私は基本的に、君たちがどこで何をしようが構わないと思っている。どこに行こうが、どんな風に遊ぼうが、ね。ただし・・・・・・・・・・・・」

 

 凄みを増すダリウス。

 

「私の計画を邪魔する事だけは許さない。絶対にね!!」

 

 次の瞬間、

 

 ダリウスの手は、ヴェイクの首に掴みかかった。

 

「グッ・・・・・・は、放し、て・・・・・・・・・・・・」

 

 苦しそうに息を吐くヴェイク。

 

 少年の体は、そのまま宙に持ち上げられる。

 

 片手一本で少年を持ち上げたダリウスは、濁った瞳で見据える。

 

 対して、宙づりにされたヴェイクは、目からは涙がこぼれ、口からはだらしなくよだれが垂れ流される。

 

 恐怖と苦痛の二重の責め苦が、ヴェイクを恐怖の奈落へと引きずり込んでいくのが分かる。

 

「フム・・・・・・」

 

 そんなヴェイクを眺めながら、ダリウスは顎に手を当てて言った。

 

「ヴェイク、どうも最近、君は働きづめで疲れているようだね。良い機会だから少し休むと言い。後の事は、何も心配しなくて良いからね」

 

 ある意味、死刑宣告とも取れるダリウスの言葉。

 

 対して、ヴェイクはただ、涙目で震えている事しかできないでいる。

 

 それらを見つめる、アンジェリカ達。

 

 そんな彼らのやり取りを、物陰から見つめる影があった事には、最後まで気づく事は無かった。。

 

 

 

 

 

 城の中を歩きながら、イリヤはため息をついた。

 

 今日もエリカの遊び相手をした後、行ける範囲で一通り、城の中を歩き回って情報を探ってみたイリヤ。

 

 結果は、語るまでもない。

 

 めぼしい情報は何も見つからず、イリヤの努力は徒労に終わったのだった。

 

「うう、何だか無駄に時間ばっかり浪費している気がするよ」

 

 ガックリと肩を落とすイリヤ。

 

 そもそも、エインズワース側も分かりやすい場所に情報を置いているはずもない。

 

 イリヤのやっている事は、殆ど無駄としか思えなかった。

 

「早くここから出て、響達と合流しないといけないのに・・・・・・」

 

 このまま、救助が来るのを待っていなくてはならないとなると、情けなくて仕方が無かった。

 

 とは言え、これだけ探しても手掛かりが見つからない辺り、イリヤが自力でこの城を脱出する手段は皆無に等しかった。

 

 素直に助けを待った方が賢明とさえ思えてくる。

 

 とは言え、待っていても助けが来るとは限らないのも事実な訳で。

 

 イリヤとしても、ひどいジレンマに悩まされるのだった。

 

 と、

 

「あれ?」

 

 廊下の向こうから、見覚えのある少年が歩いてくるのが見えた。

 

 比較的小柄なその少年は、最近になって知り合った人物。

 

「シフォン君?」

「ああ、イリヤさん。ただいま戻りました」

 

 イリヤの呼びかけに対し、少年の方も笑顔で応じる。

 

 比較的温厚なこの少年は、囚われのイリヤに対しても友好に接してくれていた。エリカと並んで、囚われのイリヤにとっては、心の癒しとでも言うべき存在である。

 

「お使いに行ってたって、エリカちゃんに聞いてたけど」

「あ、はい。先ほど、戻ってきたところです」

 

 どうやら、これからエリカのところに行くところだったらしい。彼女のために用意したのか、手にはおいしそうなお菓子の袋が握られていた。

 

 その様子に、イリヤはクスッと笑う。

 

 お使いに行って疲れているはずなのに、休む間もなくエリカのところに駆けつける。

 

 単なる主従としての立場だけとは思えない。もっと深いところで、エリカとシフォンは繋がっているように思えた。

 

「エリカちゃん、退屈そうにしてたから、早く行ってあげなよ」

「はい、ありがとうございます。そうします」

 

 そう言って、イリヤの横をすれ違おうとするシフォン。

 

 と、

 

「あの、イリヤさん」

「ほえ?」

 

 呼ばれて振り返るイリヤ。

 

 すると、シフォンは何を思ったのか、深刻な眼差しでイリヤの方を見ていた。

 

「どうか、エリカの事、よろしくお願いしますね」

「え・・・・・・・・・・・・?」

 

 首をかしげるイリヤ。

 

 それは、どういいう意味なのだろうか?

 

 囚われの身であるイリヤに、主の事を託す、などと。

 

 だが、シフォンはそれ以上何も語る事無く、イリヤに背を向けて立ち去っていく。

 

 その背中を、イリヤは不思議そうなまなざしで見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心地よい水音が耳を打つ。

 

 浸した足から全身に温もりが巡り、幸せな気分が湧き上がっていく。

 

「ふう・・・・・・・・・・・・」

 

 湯に肩まで浸かった響は、力を抜いて全身を弛緩させた。

 

 ここは学校の屋上。

 

 この場所に、なぜか今、巨大な温泉施設が出現していた。

 

 驚いた事に、この温泉自体、一個の宝具であるのだとか。

 

 提供者は言うまでもなくバビロニアの英雄王。ギルガメッシュ事、ギル君である。

 

 発端は、女性陣が風呂に入りたいと言い出した事だった。

 

 無理も無い。ここまで殆ど戦い詰めで、ゆっくり風呂に入る暇などなかったのだから。彼女らの欲求は、至極当然な物であると言えた。

 

 当初、バゼットが古式ゆかしいドラム缶風呂を用意すると言い出したのだが、流石に色んな意味で却下された。

 

 背に腹の変えられない状況ならともかく、進んでそんな物に入りたいと思う者はいなかった。

 

 とは言え、やっぱり風呂には入りたい訳で、

 

 そこでギルが、代わりにこの温泉の宝具を出してくれたと言う訳である。

 

 周囲を見回せば内装が目に入ってくる。

 

 何やら竹槍風に斬った竹や、忍者の手裏剣マーク、更には墨で大書された掛け軸やらが飾られている。

 

 何となく外国人が持つ、「致命的に間違った日本観」を体現したような感じである。

 

 まあ、内装は色々とアレだが、こうして風呂に入れたのはありがたい。

 

 特に戦いに後である。ゆっくりと入って疲れと傷を癒したい所だった。

 

 響は今、1人で風呂に入っている。

 

 いかにギルでも最低限の倫理観は有している。浴場はしっかり、男女別々になっていた。

 

 そのギルは先に上がったため、今は響1人と言う訳である。

 

 湯船はちょっとした大浴場並であり、ゆっくりと手足を伸ばしても充分余裕があった。

 

 湯の感触を楽しみながら、ふとこれからの事を考える。

 

 ともかく、美遊を反意させる事には成功した。

 

 もう、彼女は迷わないだろう。

 

 着々とだが、戦う準備は整いつつあった。

 

「あとはイリヤ・・・・・・・・・・・・」

 

 囚われの姉を救い出し、エインズワースを止める事が出来れば、全てに方が付くはず。

 

 まだ姿が見えないサファイアの事も気になるところである。無事でいてくれると良いのだが。

 

「・・・・・・そう言えば」

 

 すっかり忘れがちだったが、未だに消息が知れない凛とルヴィアの事もあった。

 

「まあ、あの2人だし」

 

 たぶん大丈夫だろう。と勝手に納得しておく。

 

 あの2人なら多分、異次元の彼方に飛ばされても、何とかどつき合いながら生きていけそうな気がした。

 

「何にしても、全部これから」

 

 そう言って、響は湯の中で大きく体を伸ばした。

 

 心地よい湯の感触が、戦闘の疲れを癒していってくれる。

 

 と、

 

 その時だった。

 

 チャプッ

 

 控えめな水音と共に、誰かが温泉の中に入ってくる気配があった。

 

「・・・・・・・・・・・・ん、ギル?」

 

 ここには、男は響とギルしかいない。男湯に入ってくるならばギルだろう。

 

 響はそう思って振り返る。

 

 果たして、

 

 そこにいたのは小さき英雄王ではなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 響が見ている視線の先。

 

 そこには、

 

 黒髪の少女が、恥ずかしそうに俯いて立っていた。

 

「み、みみみみみみ、美遊ッ!?」

 

 思わず、その場で座ったまま後ずさる響。

 

 困惑する響。

 

 何で?

 

 どうして?

 

 まとまりない思考が響の中で吹き荒れる。

 

 何だか、つい最近も似たような事があった気がする。

 

 もしかしたら、

 

 美遊は女湯と間違えて入って来たのかもしれない。

 

 それなら、そう教えてあげた方が良いだろう。

 

 響がそんな風に思った。

 

 と、

 

「待って」

 

 慌てまくる響を制して、美遊は控えめに声を上げた。

 

「間違えた、わけじゃない」

「・・・・・・へ?」

 

 意外すぎる美遊の言葉に、響は一瞬、呆けたような表情を見せる。

 

 間違えたのでなければ、美遊は自分で男湯に入って来た事になる。それも、響が入っているのを知っていて。

 

 いったい、なぜ?

 

 困惑する響に、美遊は続けた。

 

「・・・・・・その・・・・・・響と、一緒に入りたくて」

「ッッッ!?」

 

 予想だにしなかった恥じらいの言葉に、思わず目の前がクラッとなる響。

 

 今の美遊は、当然ながら文字通りの全裸である。

 

 細い四肢に、微かに膨らみを見せた胸。緩やかな曲線を描くくびれ、キュッと締まった小さく可愛らしいお尻。

 

 生まれたままの姿で佇む美遊。

 

 年相応の幼さこそ残るものの、未来に大いに期待できる少女の艶姿がそこにあった。

 

 流石に恥ずかしいらしく、体の前はタオルで隠しているが、それでも僅かに見えるチラリズムが、却って妖艶な雰囲気を醸し出していた。

 

「響・・・・・・・・・・・・」

 

 響のすぐ正面に座った美遊。

 

 その瞳は、真っすぐに少年を見据える。

 

 互いの顔は否が応でも上気し、赤く染まっている。

 

 そして、

 

「ごめんなさい」

 

 美遊は頭を下げた。

 

「昨日、あなたにひどい事を言ってしまった。それに、あんなことまで・・・・・・・・・・・・」

 

 カッとなって思わず響の頬をひっぱたいてしまった事を、ずっと美遊は後悔していたのだ。

 

 その後も、互いにぎくしゃくしてしまったせいで、なかなか謝る機会が無かった。

 

 だから、美遊はこんな大胆な手段に出たのだ。

 

「本当に、ごめんなさい」

「いい・・・・・・」

 

 対して、響は淡々とした口調で告げる。

 

「もう、気にしてないから」

「でも・・・・・・」

 

 それじゃあ、気が収まらない。

 

 そう言おうとした美遊。

 

 親友を傷付け、その想いを蔑ろにした自分は、罰を受けるべきなのだ。

 

 だが次の瞬間、

 

 更に続けて言おうとした美遊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その美遊の唇が、響の唇によって塞がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 驚く美遊。

 

 その目の前に、すぐ響の顔がある。

 

 互いに交わされる甘いキス。

 

 魔力供給の一環で、既に何度か唇を交わしている響と美遊だが、今回は違う。

 

 打算的要因の無い。純粋な思い出交わされる口づけだった。

 

 見つめ合う、響と美遊。

 

 互いの瞳はとろけるように、トロンとした物になる。

 

 心地よい湯加減の中、

 

 幼い二人が、裸で絡み合う。

 

 ややあって、響は美遊を放した。

 

「・・・・・・・・・・・・好きだから」

「え?」

 

 驚く美遊に、響は少し顔を背けて告げる。

 

 その頬は、湯煙以外の理由で赤く染まっていた。

 

「美遊の事、好きだから・・・・・・敵に渡したくなかった」

 

 それは、偽らざる響の本音である。

 

 好きな女の子を敵に渡したくない。

 

 その敵がいかに強大であろうとも、

 

 全ての困難は自分が打ち払い、彼女を守って見せる。

 

 それが、響が己の全存在を掛けた誓いだった。

 

 その少年の想いに、美遊は自分の中にある想いが、抑えきれないほどに膨らんでいくのを感じる。

 

 響が自分にとって、いかに大切な存在であるか、美遊は今こそはっきりと自覚していた。

 

「響・・・・・・・・・・・・」

「美遊・・・・・・・・・・・・」

 

 見つめ合う2人。

 

 やがて、

 

 今度はどちらからともなく、もう一度唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 その日の晩、

 

 響と美遊は、同じ布団で一緒に眠った。

 

 互いの手をしっかりと握り。

 

 もう、絶対に放さないという意思の元。

 

 響と美遊

 

 想いを通じ合わせた2人は、互いの温もりをしっかりと感じ合うのだった。

 

 

 

 

 

第16話「甘く、切なく」      終わり

 




3月くらいから始めたFGO。

無課金で細々プレイを進めた結果、現在マスターレベルは103。4章まで行った時点で、現在イベントに参加しつつ、レベリングと素材集めの真っ最中です。

因みにうちの主力隊は

剣:デオン、フェルグス
弓:エミヤ、エウリュアレ、子ギル
槍:クーフーリン(プロト)、ヘクトール
騎:マリー、アレキサンダー、牛若丸
術:ナーサリー、クーフーリン(術)
殺:水着師匠、小太郎、静謐
狂:フラン、アステリオス
裁:ホームズ、ジャンヌ
讐:アンリマユ

現状、最も戦力的に充実しているのがルーラー勢ってのはどうなんだ(汗
嬉しいし、運が良いのも確かなんだろうけど、如何せん火力が足んない。

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