Fate/cross silent   作:ファルクラム

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第8話「一進一退」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況は、変わりつつあった。

 

 戦力差はいまだに圧倒的。エインズワースがの優位は動いていない。

 

 しかし、反撃を開始した響とギル。

 

 そして、戦う力を取り戻した美遊。

 

 3人が各所において反抗を開始。不利な状況を覆しつつあった。

 

 そもそも、純正の英霊であるギルは元より、響と美遊も、既に多くの戦いを勝ち抜いて来た歴戦の魔術師たちである。

 

 いかにエインズワースが強大な力を持っていたとしても、戦う手段はいくらでも持ち合わせていた。

 

 

 

 

 

 ピンクのレオタードに、白いミニスカート。

 

 白い羽の髪飾りによってまとめられたツインテールにが衝撃に靡く。

 

 鳥の羽を模した白いマントが、恥じらうように少女の姿を覆っている。

 

 その手には五芒星のステッキが握られている。

 

 ちょうど、変身時の美遊とイリヤを足したような姿だ。

 

 カレイドルビー・アナザーフォーム。

 

 本来の担い手であるイリヤではなく、美遊が仮のマスターとしてルビーを使ったため、このような形で顕現したのだ。

 

 とは言え、主が変わったからと言って、その力が衰える訳ではない。

 

 ルビーと言う力を得て、美遊はようやく戦う力を取り戻した形だった。

 

《いやいや、助かりましたよー》

 

 やれやれと言った感じに、ルビーが嘆息する。

 

《イリヤさんが捕まってしまい、私もここに閉じ込められていましたが、美遊さんが触れてくれたおかげで、どうにか脱出できました》

「助かったのはこっちも同じ。偶然だけど、ルビーが近くにいてくれて助かった」

 

 ルビーの言葉に、美遊もまた苦笑しながら頷きを返す。

 

 実際のところ、ここでルビーと再会できたのは僥倖に近い。

 

 本来であるなら美遊にとっては、一緒に戦ってきたサファイアとの合流が望ましいのだろうが、ルビーでも問題ない。

 

 そもそも、ルビーとサファイアは姉妹。その性能には(基本的には)差が無い。

 

 マスター登録も、一時的に美遊に移せば問題無かった。

 

「田中さんは私の後ろにッ」

「は、はいです!!」

 

 促され、美遊の後ろに回る田中。

 

 どうやら突然の事態で、流石の田中も戸惑いを隠せない様子だ。

 

 とは言え、ここからの戦いは壮絶な魔術戦になる。田中には下がっていてもらった方が、美遊にとっても戦いやすかった。

 

 対して、

 

 そんな美遊をベアトリスとヴェイクは、やれやれとばかりに肩を竦めながら見据えていた。

 

「何だかこれ、余計に面倒くさくなってない?」

 

 やれやれと言うヴェイクに対し、ベアトリスは面倒くさそうにガリガリと頭を掻く。

 

「・・・・・・ったく、こっちはあんたをなるべく傷付けないようにやってるっていうのに。判れよな、そこら辺の苦労をよ」

 

 苦々しげに言いながら、ベアトリスの視線が凶悪な輝きを放ちながら美遊を睨んだ。

 

 対して、凛とした眼差しで睨み返す美遊。

 

 少女もまた、一歩も引く気は無かった。

 

「仕方がねえ」

 

 言いながら、ベアトリスは肥大化した右の拳を掲げる。

 

 同時に、ヴェイクは手にした本を開く。

 

「こっからは、お仕置きタイムだ」

 

 言い放つと同時に、2人は美遊に対して攻撃を開始する。

 

 ベアトリスは巨大な腕で殴りかかり、ヴェイクは背後から魔力弾による援護を開始する。

 

 対して、美遊もまた手にしたルビーを振り翳す。

 

 次の瞬間、

 

 両者の姿は、暗い地下室で激しく交錯した。。

 

 

 

 

 

 ギルもまた、状況を押し返しつつあった。

 

 戦力差は相変わらず圧倒的。アンジェリカの優位は動かない。

 

 しかしいくつかの武装。そして何より、自身が最も信頼を置く宝具「天の鎖(エルキドゥ)」をその手に取り戻した事で、金髪の少年は積極的な反攻に転じていた。

 

「そぉれッ!!」

 

 勢いに任せて天の鎖(エルキドゥ)を振るうギル。

 

 四方八方から殺到する銀の鎖が、立ち尽くすアンジェリカを拘束する。

 

 無限とも言える長さを誇る天の鎖(エルキドゥ)は、アンジェリカの姿を完全に包み込む。

 

 更にギルは追撃を掛ける。

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を開き、奪い返した宝具を一斉開放する。

 

 手持ちの12本全てを、ギルは惜しげもなく解き放つ。

 

 射出される宝具。

 

 対して、アンジェリカはそれを再度、自らの倉に収める事は出来ない。

 

 そもそも、アーチャー(ギルガメッシュ)のカードも、その能力も、本来なら全てオリジナル英霊であるギルの物である。

 

 対してアンジェリカは、カードを使う事によって、いわば一時的に「借りている」に過ぎない。

 

 互いに争えば、最終的な所有権がいずれに帰すかは考えるまでもない事だった。

 

 射出された宝具が、拘束されたアンジェリカに殺到。一斉に突き刺さる。

 

 対して、アンジェリカも抵抗する。

 

 自身の王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から数本の刃を取り出すと、鎖と鎖の隙間にねじ込み、強引に押し広げて引きはがす。

 

 その様子を、ギルは不敵な笑みと共に見つめていた。

 

「やれやれ、置換しただけの偽物とは言え、僕相手だから手加減してしまうのかな? まったく融通の利かない(やつ)だよ」

 

 まるで手のかかる友人を揶揄するように、ギルは鎖を手の中であやしながら言う。

 

 そんなギルを、敵意の籠った視線で睨みつけるアンジェリカ。

 

「・・・・・・・・・・・・鎖の所有権を奪い返した程度で驕るなよ。そんな物で大勢は覆らない」

 

 攻撃用宝具の大半は、未だにアンジェリカが有している。それは事実である。

 

 確かに、まともなぶつかり合いでは、未だにアンジェリカの方に分があるだろう。

 

 だが、

 

「足りないな。もっと吠えなよ」

 

 そんなアンジェリカをあざ笑うかのように、ギルは挑発する。まるで、アンジェリカの存在など、そこらの野犬にも劣る、とでも言いたげな態度である。

 

 対して、アンジェリカも引き下がらない。

 

「財力も門の口径も、貴様は私の足元にも及ばない」

「ああ、それで?」

 

 だからどうした? やれるものならやってみろ。

 

 続くギルの挑発に対し、とうとうアンジェリカは動いた。

 

「全門・・・・・・開放!!」

 

 一斉に開く「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」の砲門。

 

 その口から、宝具の刃が出てくる。

 

 全ての刃が、ギル目がけて殺到する。

 

 そう思った。

 

 次の瞬間、

 

 ギルが動いた。

 

 「天の鎖(エルキドゥ)」を一斉に伸ばすギル。

 

 その先端が、アンジェリカの開いた門の中に次々と飛び込む。

 

「これはッ」

 

 絶句するアンジェリカ。

 

 ここまで来てようやく、アンジェリカはギルの狙いに気付いたのだ。

 

 彼女が今にも射出しようとしていた宝具は、全てギルが放った「天の鎖(エルキドゥ)」によって絡め取られていた。

 

 ギルが執拗にアンジェリカを挑発したのは、全てこの状況を作り出す為だったのだ。

 

「知ってるかいアンジェリカ? この国には『宝の持ち腐れ』ってことばがあるそうだ。まったく、哀しいくらい、君の為にある言葉だね!!」

 

 言い放つと同時に、鎖を引くギル。

 

 次の瞬間、

 

 アンジェリカが放とうとしてた数百に及ぶ宝具は、他ならぬ彼女自身に切っ先を向けて襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駆け抜ける響。

 

 その小柄な体が霞むほどの速力を前に、さしものシェルドも後手に回らざるを得ない。

 

 突き込まれる刃。

 

 その一閃がシェルドを捉える。

 

「チッ!?」

 

 舌打ちしながら、響の攻撃を大剣で受け止めるシェルド。

 

 だが、

 

「ッ!?」

 

 重い。

 

 想像以上に重みを伴った響の一撃を前に、思わずシェルドは膝をたわませる。

 

 響の本来のクラスは暗殺者(アサシン)だが、宝具「誓いの羽織」を使用すれば、実質的な戦闘力は「剣士(セイバー)に匹敵する。

 

 現状、響とシェルドの間で、戦闘力の差は皆無と言ってよかった。

 

「クッ!!」

 

 舌打ち交じりに、大剣を横なぎに振るう響。

 

 轟風を巻く、銀の月牙。

 

 だが、

 

 刃の薙いだ空間には、既に響の姿は無い。

 

 空中に跳び上がってシェルドの斬撃を回避した響。そのまま、手にした刀を横なぎに振るう。

 

 一閃。

 

 しかし、

 

「無駄だ」

 

 低い声と共に、シェルドは左腕を無造作に振るう。

 

 それだけで、響の斬撃は弾かれてしまった。

 

「んッ!?」

 

 舌打ちする響。

 

 そのまま空中で宙返りをしながら着地。眦を上げてシェルドを見やる。

 

 対して、シェルドは静かな瞳のまま、響を見据えていた。

 

 膂力はほぼ互角。

 

 防御力ではシェルドが勝っている。

 

 対して、機動力では響が勝っている。

 

 その為、戦況は完全に拮抗していた。

 

 睨み合う両者。

 

「・・・・・・・・・・・・成程な」

 

 ややあって、シェルドが口を開いた。

 

「何が『成程』?」

 

 問いかける響。

 

 対してシェルドは、大剣を構えながら告げる。

 

「たった4人で、我らエインズワースに挑もうとする奴等だ。それなりの勝算があっての事だろう」

 

 シェルドの言葉に、響は思わず苦笑する。

 

 勝算など、全く考えていなかった。ただ闇雲に突っ込んで来ただけである。

 

 だが、そんな事はシェルドには関係なかった。

 

「こちらも、相応の手段で迎え撃たねばならんな」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 張り詰める空気。

 

 その様子に、響は息を呑む。

 

 シェルドは何か、切り札を使おうとしている。

 

 切り札。

 

 すなわち宝具。

 

 響の奮戦に業を煮やし、シェルドは宝具を使用する気なのだ。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 迷う響。

 

 どうする?

 

 こちらももう一つの宝具を使うか?

 

 だが固有結界を張るだけの魔力が、流石に残っているとは思えない。戦闘前には多少補充できたとは言え、満タンには程遠い状態だったのだから。

 

「行くぞ」

 

 迷う響に、シェルドは低い声で告げた。

 

 刀身に充填される魔力。

 

 轟風のような衝撃波が襲い掛かってくる。

 

 対して、

 

 響もまた、刀の切っ先をシェルドに向けて構える。

 

 もし、あの宝具を開放されれば、響の敗北は免れないだろう。

 

 そうなる前に、こちらから仕掛けるしかない。

 

 足に力を籠める響。

 

 そのまま斬り込もうとした。

 

 次の瞬間、

 

 轟音と共に、足元の地面は崩落した。

 

 

 

 

 

 降り注ぐ無数の刃。

 

 それらが一斉にアンジェリカへと降り注いだ。

 

 圧倒的な光景。

 

 アンジェリカは、この一撃で勝負を決するべく、最大出力で攻撃を仕掛けようとしていた。

 

 その判断が、仇となった形である。

 

 ギルが散々アンジェリカを挑発したのは、彼女の自滅を狙ったが故だった。

 

 いかに最強の英霊をその身に宿したアンジェリカと言えど、これほどの数の宝具を一斉に叩きつけられて、無傷でいられるはずが無い。

 

 その黄金の鎧は、次々と引き裂かれていく。

 

 このまま勝負は決するか?

 

 そう思った次の瞬間、

 

「な・・・・・・め・・・・・・るなァ!!」

 

 叫ぶアンジェリカ。

 

 同時に「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」が開き、中から巨大な剣が出現した。

 

 巨大な刀身が、降り注ぐ刃を跳ねのける。

 

 その様子を見て、ギルは嘆息した。

 

「斬山剣か。こんな狭い地下水道で出すのは、流石に優雅さに欠けるなあ」

 

 見れば、その剣は「向こう側の世界」で、ギルが響やイリヤに対して使った「千山斬り拓く翠の地平(イガリマ)」だった。

 

 イリヤに叩き折られた刀身が、修復されずにそのまま残っている。

 

「付け上がるな小僧。さっきのような搦手が、そう何度も通用すると思うな」

 

 ボロボロになったアンジェリカは、それでも敵意を失わない瞳でギルを睨む。

 

 対して、ギルは余裕ぶった態度で、アンジェリカの視線を受け止める。

 

「似合わないな。怒りの真似事は良しなよ」

 

 小ばかにした口調で言いながら、自身の「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」を開くギル。

 

「さあ、諦めずに掛かってきなよ。僕の戦力は、まだたったの264本。王の財を持つ者が、こんな小兵に敗けちゃいけない」

 

 挑発を含んだギルの言葉を聞きながら、アンジェリカは確信していた。

 

 確かに「ギルガメッシュ(アーチャー)」は最強の英霊だ。そのカードを使うアンジェリカは最強の存在だろう。

 

 だが、相手はそのギルガメッシュその人である。

 

 自分の特性は、とうぜんギル自身が最も理解している。その長所も、弱点も。そして、それらを踏まえた上での「攻略法」も。

 

 いかに物量で勝ろうとも、相性が最悪ではアンジェリカにとって分が悪かった。

 

「舐めるな、小さき王よ。我らエインズワースを!!」

 

 言い放つアンジェリカ。

 

 その眼前に並べられる、複数のカード。

 

 その様子に、

 

「なッ!?」

 

 思わずギルは、余裕の態度を崩して息を呑んだ。

 

 

 

 

 

 砲火が入り乱れ、触手が大気を食い散らかしながら伸びる。

 

 一斉に殺到してくる敵の攻撃を、美遊は空中を駆けながら回避。同時に、手にしたルビーを振り被る。

 

 本来の相方であるサファイアとは違う。

 

 しかし、基本性能は同じ。

 

 ならば魔法少女として鳴らした美遊に、使いこなせないはずが無かった。

 

砲射(シュート)!!」

 

 放たれる魔力砲。

 

 一直線に飛ぶ魔力の砲弾は、

 

 しかし、ベアトリスの振るった腕の一閃によって、難なく弾かれた。

 

「ハッ しょぼい攻撃、してんじゃねえよ!!」

 

 嘲るように言いながら、美遊に殴りかかるベアトリス。

 

 その一撃を跳び上がって回避する美遊。

 

「そんな物ッ!!」

 

 手にしたルビーに魔力を込め、振り被ろうとする美遊。

 

 だが、

 

《美遊さん、後ろです!!》

「クッ!?」

 

 走るルビーの警告に、とっさに身をかわす美遊。

 

 次の瞬間、美遊を絡め取ろうと伸びてきた触手が、空中に出現する。

 

「ありゃりゃ、失敗か。残念」

 

 触手を操りながら、肩を竦めるヴェイク。

 

 美遊は向かってくる触手を魔力砲で薙ぎ払いながら空中を駆けまわる。

 

 イリヤほどに機動性は無いものの、三次元的に動ける強みは大きい。

 

 美遊はこの機動力を存分に駆使し、1対2と言う圧倒的に不利な状況をどうにか拮抗させることに成功していた。

 

 そして、隙を見て反撃に転じる。

 

 ステッキを振り被る美遊。

 

砲射(ショット)!!」

 

 連続して砲撃を放つ美遊。

 

 イリヤの魔力砲に比べて、連射速度では劣るものの、一撃の威力に優れている。

 

 だが、

 

「むだァ!!」

 

 嘲笑と共に、無造作に振るわれるベアトリスの腕が、美遊の砲撃をまとめて薙ぎ払ってしまった。

 

「クッ!?」

「だから、そんなショボい攻撃効くかっての!! 攻撃するなら、せめてこれくらいやれっての!!」

 

 言いながら、美遊に殴りかかるベアトリス。

 

 轟風を巻いて向かってくる、巨大な腕。

 

 その腕が、空中の美遊を捕えようとした。

 

 次の瞬間、

 

 間一髪。

 

 美遊は後方に大きく跳躍する事で、ベアトリスの攻撃を回避した。

 

 着地する美遊。

 

 対して、ベアトリスとヴェイクも、距離を置いて対峙している。

 

 どうやら、美遊が反撃手段を得た事で、2人とも警戒している様子だ。

 

 しかし、

 

「このままじゃ、勝てない」

 

 美遊はその事を、強く感じずにはいられなかった。

 

 ルビーと合流できたことで、無限の魔力供給を受ける事が可能になった美遊だが、やはり火力不足は否めない。

 

 事実、美遊が放つ攻撃は、殆ど効果を上げていない。

 

 このままでは、いずれ押し切られるのは目に見えている。

 

 美遊が勝つには、もう一手何かが必要だった。

 

《美遊さん、私に考えがあります》

「ルビー?」

 

 首をかしげる美遊。いったい、ルビーは何をしようとしているのか?

 

 そんな美遊の反応に対し、ルビーはどこからともなく1枚のカードを取り出して見せた。

 

《これを使ってください。万が一の時の為に、イリヤさんから1枚だけ預かっていました》

「これって・・・・・・・・・・・・」

 

 受け取る美遊。

 

 その様子を見ていたヴェイクが動く。

 

「カードッ!? やらせないよ!!」

 

 どんなカードだろうと、使わせる前に捕まえてしまえばこっちの物。

 

 そう考えて、触手を殺到させるヴェイク。

 

 四方八方ら、美遊を捕えんと迫る触手の群れ。

 

 だが、

 

夢幻召喚(インストール)!!」

 

 触手が自身に到達するよりも一瞬早く、美遊が叫ぶ。

 

 光に包まれる少女の体。

 

 衝撃が、地下室全体を駆け巡る。

 

「なッ!?」

 

 驚愕して目を押さえるヴェイク。

 

 やがて衝撃が晴れた時、

 

 美遊の姿は一変していた。

 

 薄青のミニスカート風ドレスに身を包み、手には大ぶりな錫杖を構えている。

 

 ポニーテールも普段より伸びて、腰裏まで来ていた。

 

 まるで、絵本の中から飛び出してきた妖精のような可憐な出で立ち。

 

 ゆっくりと、瞼を開く少女。

 

「クラスカード『魔術師(キャスター)』。夢幻召喚(インストール)完了」

 

 静かな声で告げる美遊。

 

 同時に、その背後には大型の魔法陣が展開する。

 

 かつて、美遊達が総がかりでも簡単には倒しきれなかった魔術師(キャスター)

 

 その全ての能力が解放される。

 

「行きます」

 

 静かに言い放つと同時に、

 

 美遊は魔法陣に込めた魔力を解き放った。

 

 

 

 

 

第8話「一進一退」      終わり

 


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