中学の時にサイタマは我慢できずに担任を思いっくそブン殴った。
壁を砕いて校庭に吹っ飛ぶ担任教師。
彼はこの時に力に目覚めた――――同時に周囲から危険視されるようになった。
『ぐわぁぁぁぁぁ――――――――――っっっ!!!?』
一人のヒーローが自分よりも遥かに巨大な怪人をさして力を込めていない
出来の悪い映画でも見ているかのように大量の肉片を辺りに撒き散らして怪人は絶命した。
怪人が弱いわけではない。寧ろ強かった。
現に彼の怪人が倒される前に一つの都市を壊滅させ、討伐しに来た数名のヒーローを返り討ちにした。
災害レベル:竜。ワクチンマン。
ヒーローの最高峰の称号として与えられる「S級ヒーロー」
そのS級ヒーローが束になって倒すのが「災害レベル:竜」という存在なのだ。
今回現れた怪人もそういった存在なのである。
…にも関わらずそれを一人で成してしまう規格外のヒーロー。
それが彼=サイタマである。
そのサイタマを取り囲むようにして数名のヒーローが現れた。
老若男女を問わず身長も体重もバラバラではあるが、一つだけ共通点がある。
「ようS級ヒーローども。あんまり遅かったから代わりに倒しておいたぜ」
自分に対して睨んでくるS級ヒーローたちにそう言い放った。
ヒーローの最高峰であるS級。それが彼らの共通点であり、サイタマを目の敵にしている者たちの集団である。
「前に会った時よりは少しは強くなっただろうな?」
顔をニヤニヤさせて問うサイタマに一部のS級ヒーローが憤怒の形相を作り、次にサイタマの足下の地面が爆発する。
同時にそれぞれが持つ武器を片手に爆煙が未だ止まない中、突っ込んでいく。
彼らは知っているサイタマがこの程度のことで死ぬどころか、キズ一つ付けられないことを…
人類最初のS級賞金首
それがこの世界におけるサイタマの二つ名である。
そしてヒーローたちとサイタマとの戦闘はこれが初めてではなく、何度も行われており、その都度ヒーローたちは敗北している。
しかもただの敗北ではなく、かなり手加減された状態での敗北を味わされ、なおかつ死者は出していない。
怪人には容赦がないが、ヒーローに関しては手心を加えるサイタマに、過去に犯した罪を無くす代わりにヒーローとして迎え入れては? …という意見も出始めた。
無論、それが面白くないと思っている連中もおり、ヒーロー協会に属している人間の殆どは否定的である。
「おいチビ。少しは背が伸びたか?」
「ムキ―――――っ!」
特にS級第2位のタツマキはその筆頭である。
しかし彼女の超能力を持ってしてもサイタマは倒せない。
ありとあらゆる方法が通じない。
「スーパーの特売が始まるから、そろそろ終わりにするぞ―」
そう口にした瞬間、サイタマの姿が掻き消えて――次々とヒーローたちが目で捉えられない高速の攻撃を受けてやられ、地面に伏した。
やがて最後の一人であるタツマキが倒れると…
「こんだけ派手にやっても『ブラスト』って奴が来ねぇな―。テレビのコメンテーターじゃねぇけど、本当にいるのか疑わしくなるな…」
もはや用はないとばかりに、無防備に背中を向けるサイタマ。
そのサイタマの背に地面に伏したままのタツマキが否定する。
「いるわよブラストは! 今に見てなさいアンタみたいな奴なんてケチョンケチョンにするわよ!」
「あー、はいはい。もう何度も聞いてるぜ。このやり取り」
じゃあな。片手を振りながら、去っていく。
背後から少女の金切り声を聞きながらサイタマは考えた。
何で俺は賞金首になったんだろう…。俺はヒーローになりたかったんだけどなぁ…と。
「やっぱり、中学の時の担任をぶちのめしたのが原因か…」
ああ、くそっ! あの時、我慢していれば…とその場で頭を抱えてしまう。
実力を認められないヒーローと実力を認められが危険視される賞金首。
サイタマにとって、どちらが幸せなのかは、誰にも分からない。
(´・ω・)にゃもし。
久々のワンパンマンの短編を出荷よ~。
中学の担任が気に入らないから殴らせてもらったわ~。
後はバタフライ・エフェクトってやつよ。たぶん。