い、一色さん?いつからそこに?」
慌てたせいか、敬語になってしまった……
「んー、ある俺の知り合いの、らへんからですかね。」
最初からじゃねーか、
「そ、そうか」
「はい、てかあれわたしですよね、まず先輩の知り合いなんて、ほとんどいませんもんね。」
は、反論できん……
「にしても何ですか、あの話……は!もしかして、なんだかんだ俺はお前のこと見てるんだからなアピールですか!嬉しいですが、ふたりきりの時にしてください、ごめんなさい。」
「俺は、何故また振られた……」
「あ、あの、」
いかん、前川を放置していた。
「比企谷くんのさっきの話ってこの子……と言うか生徒会長!?」
「どーもです!」
「え、比企谷君って何者……」
「先輩は自称ボッチですね」
「自称ってなんだよ、正真正銘のボッチだろ、」
たはは、と笑う前川と、大きくため息をつく一色。
「この先輩は……」
「なんとなく、お察しします。」
それから残りの時間は、前川と一色がずっと喋ってた。
俺は、気を使って隅っこで、音楽を聴きながらぼけーっとしてる。
だって、そうでもしてないと、
何聞き耳を立ててるんですか、は!もしかしてストーカーですか!?とか言われそう。何もしてないのに……
side~みく
「にしても、比企谷君の知り合いが、あの、一色さんだとはね……」
「あ、別に敬語じゃなくていいですよ!先輩なんですし!」
「そっか、ありがと、」
「にしても、先輩が相談を聞くんですねー」
「ん?どういうこと?」
「いや、前川先輩は、知らないかもしれないんですけど、先輩は人を避けるんですよ、割と」
どういうこと?と思っていると、そのまま語り出す。
「去年の文化祭、そして修学旅行、この二つで思いつくことといえば?」
んー、なんかあったっけな…………あ、
「なんか、目の腐った男子が……っていう噂のこと?」
「そうですね、その張本人が、先輩なんですよ。」
「え、」
その時私は疑問しか浮かばなかった。
この前の事といい、今回の話を聞いてくれた事といい、そして、一色さんといい、彼は本当にそんなことするだろうか……
「驚きますよね、」
何か理由があったのだろうか……
「えっとですよね……先輩は聞いてないか、よし、」
なにか決心の付いた様子の一色さん
「前川先輩、これは、わたしの調べた結論、いわば推理になりますが、聞きますか?」
「う、うん、」
ここで聞かなきゃ、後悔する気がする……
もし、もしも、隠された真実があるなら。
「まず、文化祭からですかね。
わたし、先輩を知ってから、その噂のことを思い出して、過去の書類を引っ張り出したわけなんですよ。
何があったのかわかるんじゃないかなーって、
そしたらですよ?中身を見る以前に一つ気づいたんです。
見る書類、見る書類、半分位が似たような筆跡なんですよ、誰だと思います?」
「普通に考えたら、あの、えっと、相模さんだっけ?あの、委員長さんじゃないの?」
「ところがですね、先輩なんですよ、それ」
「なんで、そんなこと分かるの?」
「そりゃあ、先輩に生徒会長の仕事を押し…手伝ってもらってるからです。」
今この子明らかに押し付けるって言いかけたよね……
「とにかく、約半分もの書類、その上先輩の担当だった記録雑務以外の書類も、先輩の筆跡だったんですよ。」
なに、それ……
「さぁ、前川さん、ここから分かることは何でしょう」
「んー、比企谷くんは、わりと文化祭を楽しみにしてたとか?」
「あ、それは無いです。」
即答されちゃった……
「先輩が部活に入ってるのは知ってますか?」
「相談を受けることは慣れてるらしいね」
「まぁ、そんな所で、奉仕部って言うんですけどね?まぁ、詳しくは省きますが、恐らく、相模委員長から、多分依頼があったんでしょうね。じゃなきゃ、あの先輩は動きません、むしろ当日をバックれるまであります。」
良く理解されてるんだな比企谷くん…
「んでもって、何らかのトラブルがあり、その最低な解決策のため相模さんを泣かせた。ですかね。」
でも、なぜ言いきれるのだろう。
「?なんで信じて疑わないか?って感じの顔ですね。」
「う、うん」
「先輩ってぼっちだの云々言ってるじゃないですか?」
さっきも言ってた気がする。
「その、信憑性はともかく、先輩は目立つことを、嫌がるタイプなんです。
なんなら空気を読みすぎて、空気になってるまでもある!って言いそうなくらいにね。」
凄い自虐……
「だからですね?先輩にとって相模委員長を泣かせるメリットは何一つないんですよ。目立つことを本来避ける人が、葉山先輩という目撃者がいる状況で、女の子を泣かせる、そんなことすると思います?」
確に、それはおかしい。
「もし、もし仮にですけど、もしあそこで先輩が泣かせてなかったら、仕事を上手くこなせない上、エンディングに来ていなかったら。彼女はどうなってたんでしょうね……」
そこで、はっ、となる、
比企谷君が受けていたそれは、本来は……
「まぁ、つまり、あそこの自称ぼっちな、アホぽんたんは、助けられた本人さえ気づかない程、鮮やかに、自分を犠牲にすると言う、最悪な手段を用いて。救い出してしまう、悲しいヒーローなんです。」
「そ、そんなのってないよ……」
「あ、でも、本人に言わないであげてください。どうせ、同情はいらないとか、俺が言いたかっただけだー、犠牲になってない、とかいうに決まってます。」
「き、決まってるんだね」
「はい、今はちゃんと先輩を知ってますからね。」
きっと、修学旅行も何かあったのだろう、話を聞いてもらった時から、彼が優しいことは分かってる。
だから、私もそんな風にはさせたくない。
「ねぇ、一色さん」
「何ですか?」
「終わったことはしょうがないからさ」
そう、もう終わってしまったことなら
「次、比企谷君がもし、そういうことをする時が来たら……」
彼を否定しきらないためには。
「一緒に止めてくれる?」
そんな決意を一色さんは、生徒会長としてではなく、先輩を心から好き、そんなことが伝わるような満面の笑みで
「もちろんです!」
気づいたら、前回の2倍は文字ありますね……
一色、喋りすぎだぜ…既に量産型傾向が出てますが
最後のヒロインは前川になる予定です、知らんけど