ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
俺「いや…、あの…。」
果南「一応言い訳は聞いてあげるよ。」
俺「ちょっと…、アイデアが纏まらなかったというか…。」
果南「で?本当は?」
俺「ゼルダやってました。」
果南「よっぽどハグされたいらしいね?」
俺「ごめんなさいごめんなさいちゃんと書きますから!」
果南「次…、遅れたら。わかってるね?」
…本当に間があいてしまい申し訳ありません。
いや、ゼルダもやってましたが。ホントにこの1ヶ月忙しかったんです…。重ね重ね、お詫び申し上げます。
それでは、本編をどうぞ。
「ハーイ♪カケル?いる?」
曲作り騒動から一夜明け、いつも通りの朝を教室で千歌たち(若干彼女たちの様子がおかしい気がするのは気のせいだろうか)と過ごしていると。
バーン、といきなり教室のドアが開け放たれ、緑色のタイをした制服の金髪美少女__もとい、鞠莉さんが俺たちのもとにやってきた。
「ま、鞠莉さん?朝からいったいどうしました…?」
気のせいだろうか、いつもより若干ニヤケ具合が上がっている気がする鞠莉さんを見て、またよからぬことを考えているのでは…、と不安になる。
「まぁまぁ、カケル。そんなに身構えなくても大丈夫よ?別によからぬことではないから?」
その語尾についてる「?」のせいですべてが怪しく見えるんですよ。…そういえば、俺の呼び方が変わって、「クン」がなくなってるな。
「要件はネ…、ライブの日時のことよ♪来月末に決まったから、それを伝えに来たってわけ。…じゃ、それだけだから?」
そう言い残すと、結局最後までニヤニヤを崩さないまま、教室からスキップで出て行った。…あのニヤニヤは一体何だったんだ。
しかし、俺はすぐにその意味を知ることになる。
「「「…カケル?」」」
…鞠莉さんとの会話に夢中になっていた俺は、背後からの視線に気づいていなかった。さっきみんなで談笑していた時のトーンとはまるで対極な、刺々しい声×3。
特にやましいことなどしていないのに、冷や汗がダラダラ流れる。恐る恐る、ゆっくり3人の方を向くと…。
そこには、ニッコリ笑顔の……しかし目が笑っていない3人の姿があった。
「「「…説明してね?」」」
「……な、なにをですか?」
その後、俺は放課後まで、休み時間ごとに鞠莉さんとの関係を事細かに話す羽目になるのだった…。
………
「ひ、ひどい目にあった…。鞠莉さんのニヤニヤはこの事だったのか…。」
なんでこんな尋問されたのかは解らないけどね。
今日も千歌の部屋で話し合おう、という話だったのだが、連日使うのは悪い、ということで放課後はどの部活も使っていない、という屋上へと歩を進めていた。
…それにしても、鞠莉さんのSっぷりにはため息しかでない。
「ん?なんか言った?翔くん?」
「いえ、何も言っておりません千歌様。」
ボソッ、と言った俺の独り言を聞き取ったらしい千歌。…なんて聴覚してんだか。あ、それともあれか?ぴょこんと跳ねたアホ毛からセンサーでも出てんのか?ああそうか、だから年中そこだけ跳ねて__
「今チカのことバカにしたよね翔くん。」
「いえ滅相もございません」
むっ、と俺を軽く睨んでくる千歌を見て、絶対センサーだろ…、とぴょこぴょこ揺れているアホ毛に視線を移す。
「あはは…。ほら、着いたよ!今日はいい天気だから、絶好の話し合い日和だよ!」
と、俺たちの会話を区切らせた曜が、屋上へのドアを開く。
「あっ!先輩!こ、こんにちはっ!」
「こんにちはずら。」
照りつける太陽の元、屋上の隅にはすでにルビィちゃん、花丸ちゃんが座っていた。俺たちを見ると、こちらに駆け寄ってくる。
「よっ、2人とも。早いなぁ。」
俺たちも、HRが終わってからすぐに来たんだが…、やっぱり学年の差か。下の学年の方が連絡事項とかも少ないのだろう。
「い、いえいえっ!1年生ですから!」
「早く来るのは当たり前ずら。」
笑顔でそう答える美少女2人に、思わず頬が緩む。
「あれ…、じゃあ、善子はどこいったんだ?いないみたいだけど…。」
「ヨハネよっ!」
…ん?
どこからか聞こえてきた善子の声。…辺りを見回すが、特に隠れられるようなところもない。
「ここよ!ここっ!」
声がする方に向かって、上を見上げると。……給水塔の上に善子がいた。
「やっと我の存在に気付いたわね?リトルデーモン。漆黒の闇を纏いし堕天使ヨハネ、降臨っ!」
俺たちが全員気づいたタイミングで、決め台詞&決めポーズをした漆黒の闇(黒いマント)を纏いし堕天使様。
「あ、あほか…。」
「あほとは何よ!あほとは!」
みんながぽかん、と口を開く中、率直な感想を突っ込みされる俺。いや、だって…。わざわざそこまで登って、小道具(マント)まで用意するなんて…。
「とにかく、はよ降りてこーい…。」
「わ、わかったわよ…。」
これ以上やっても空気が死んでいく一方だと悟ったのか、堕天使様は降りる準備を始める……っておい、なんで助走をつけてるんだ!?
「…とうっ!」
「ばかやろぉぉぉ!!」
マントを翻し、華麗にジャンプ。しかし、問題は高さだ。軽く建物1.5階分はあるであろうところから飛びやがったのだ。
俺は反射的に両腕を伸ばし、空から降ってくる善子を抱きとめる。…あ、危なかった。
「アホかお前は!?普通あんなとこから飛び降りないだろうが!怪我でもしたらどうするつもりだ!?」
「ご、ごめんなさい…。」
普段こんなことを言わない俺が注意したからだろうか、素直に謝ってくる善子。…ったく、マジで危なかった。インドアな俺はもちろん筋力なんて皆無なので、落ちてくる衝撃に耐えられるか心配だったのだが…。善子が軽くて助かった。
「…えっと、翔?」
「ん?なんだ?これにこりたらもう飛び降りなんぞするんじゃ___」
「……いや、そろそろ、おろしてくれないかな、と///」
…あ。
……会話に意識がいってて忘れていた。俺は先ほど落ちてくる善子を抱きとめた。つまり…、俺はずっと善子を抱えたままだったことになる。しかも、俗に言う『お姫様抱っこ』というやつで。
「すっ、すまん!!すぐ下すから…。」
「う、うん…///」
俺はすぐさま膝を折り、善子を足から降ろす。抱っこから解放された善子は、俯くとすぐにマントを顔まで被って屋上の隅に行ってしまった。
…若干、顔赤かったな。そりゃそうか、高校生にもなんて抱っことか、俺なら恥ずかしくてやばい。こりゃ後で謝っとかんと…。
「……って千歌!?曜!?それに梨子ちゃんまで!?なんでお前ら給水塔に上ろうとしてんの!?今の見てただろ!?早く降りてこいっつの!」
俺に見つかった3人は、すごすごとこちらに戻ってくる。
「「…ちぇっ。」」
「おい千歌!曜!今舌打ちしただろ!?なんでそんなに飛び降りたいの!?そして梨子ちゃん!?そんなに悲しそうな表情でこっち見ないで!?」
「「…やっぱり鈍感(ずら)…。」」
そんな俺たちの1連のやり取りを見て、花丸ちゃん、ルビィちゃんが小さくため息をつく。わ、訳がわからん…。
「と、とにかくだな…!今後の事を話し合うためにここに来たんだろ?ちゃちゃっと始めよう!」
睨むような怖い顔で見てくる千歌、曜と悲しそうな梨子ちゃん。おまけにさっきからジトっとした目で見てくる花丸ちゃん。それらの視線から逃れるべく、強引に話題を戻すべく声を張り上げるのだった…。
………
「つまり…、」
「あと…」
「1ヶ月、ですか…。」
なんとか強引に話題を戻し、鞠莉さんから朝言われた事を1年生にも話す。
「そう。後1ヶ月でライブの準備をしなくちゃいけない。そういうわけで、今後の具体的な計画を作って行きたいんだけども…。」
『1ヶ月』と聞いた1年生の顔を見るに、相当難しい事だというのは解っているようだ。…さっきまで顔を真っ赤にしていた善子も、今は大分顔が暗い。
「どうしたもんかな…。」
…俺は腕を組むと改めて今の状況を整理してみる。
まず、人員は十分。これは○。
次に、曲。これはまだ。×。
そしてダンス。練習もしてない。×。
さらに、宣伝、客の呼び込み。やってない。×。
…つまり、あと1ヶ月で曲を作り、練習をして、宣伝もしなくちゃいけないってことになる。
とにかく、優先度が高い順からやっていくしかないよな…。と、頭の中で結論付ける。
「…まず、とにもかくにも曲からだと思う。曲がないと、ライブは当然出来ないし、振りつけも考えられない。とりあえずは曲作りからやっていこう。」
どうだ?とみんなに意見を求めたが、全員異論はないようだ。神妙な面持ちで、首を縦に振る。
「よし。じゃあ曲なんだけど…。まずは詞だ。…千歌、ちなみに少しでも出来てたりするか?」
「うん。全部完成してるよ。」
「解った、それじゃあ少しでも早く作ってくれ………ってええええええ!?!?」
千歌の流れるように言った台詞に驚愕する俺。…さらに驚いているのは俺だけではなく、1年生も目を丸くしている。いや、ホント、文字どおりに。
「ま、ま、マジで!?」
「うん。まじまじ。」
「い、何時の間に…!?昨日の夕方時点じゃ真っ白だったじゃん!」
俺の至極もっともな言葉に、1年生もうんうん、とうなずいている。千歌の言う事が本当だとすると、あの後書きあげた事になる。ずっと出来ない出来ない言ってたのに、そんなすぐにできるものなのか…?
「ほんとだよー。曜ちゃんと梨子ちゃんと一緒に作ったんだー。」
若干照れたような表情を見せつつ、えへへと笑う千歌。まだ若干疑いの心があった俺は、曜と梨子ちゃんの方へ視線を向ける。
「ほ、ほんとか…?」
「え、ええ…。あの後、SNSでメッセージを送り合って…。」
「う、うん。なんかトントン拍子で決まったんだ、よっ…?」
なんとなく歯切れの悪い曜と梨子ちゃん。…なぜか、この2人も照れたように、頬が桜色に染まっている。
「な、なんか顔赤いけど大丈夫か…?」
「「「な、なんでもないよ!なんでも…///」」」
「お、おう…。そうか…?」
心配して声を掛けるが、なんでもないと言う3人。その割には俺の方を見ないし、絶対なんかあると思うんだが…。
「「「言えるわけないじゃん…。翔(榮倉)君の事を想って書いたら出来た、なんて…///」」」
…ん?なんか言ってた気がしたけど、…小さくて聞こえなかったな。まあいいか。
「じゃあ、歌詞があるなら一歩前進だな!じゃあ、それを元に梨子ちゃん。作曲できるか?」
「え、ええ。頑張ってみるわ。」
なんとなく2年生が微妙な空気を醸し出してきたので、俺は咳払いを1つすると、話題を戻す。梨子ちゃんには作曲をしてもらえる事になったので、次はダンス…と行きたいところだが、曲が無いためにはまだできないため一旦保留。よって、残りは…。
「宣伝…、だな。」
「多分、これが1番難しいのよね…。」
はあ、とため息をつく善子。恐らくこのメンバー内で1番現実的な考えをしている彼女の言葉で、より1層難しいと思わせられる。
「この前も言ったけど、ここの全校生徒は約100人。つまり、父母共が来たとしても、300人。まあ、兄弟とかがいる家庭もあるでしょうけど…、それでも350~400人位でしょうね。」
「つまり…。浦女とは関係のない人たちを、200人は集めないといけないって事か…。」
「…そういうことね。」
解ってはいたが、改めて現実的な話になると、やはりどれだけ厳しい状況に置かれているかがはっきりと出てしまう。200人。それも、全校生徒+その家族が全員来る、という仮定での話だ。実際はもっと多くの人を集めないといけないだろう。…さらに、このグループのライブは初。いくら『スクールアイドル』という存在が有名になってきた世の中とはいえ、全く無名のグループを見に、果たして人は集まるのだろうか…?
「鞠莉さん…。マジでえげつない事してくれますね…。」
いつもニヤニヤしている鞠莉さんが脳裏に浮かんでくる。
そのニヤニヤの瞳の奥に言い表せない恐怖を覚え、背筋が冷たくなる俺だった。
………
「…こんにちは。」
淡島のダイビングショップ。夕日が傾き、日没が近ずく頃。
浦女の制服を着た、とある生徒…、いや、私の『知り合い』が入口からやってきた。
「………ダイヤ。久しぶり。」
…2年前の事もあって、かなり気まずい雰囲気。が流れたのはほんの少しで。
「…鞠莉さんが戻ってきました。浦女の理事長兼生徒として。」
「…っ!?」
いきなり、衝撃的な事をぶっ込んで来た。
「それと、高見さん、渡辺さん、桜内さんと、榮倉さん。それに1年生3人がスクールアイドルを初めたようです。」
「千歌が…!?この前は何も言ってなかったのに…。」
「今日はその事を伝えに参りました。…それでは。」
「ちょっ…!?ダイヤ!?」
休学中の私に、次々と『2年前』の事を連想させるような事を伝えると、くるりと方向を変え、本当に帰って行ってしまう。
……なんで、私に。
「………鞠莉。ダイヤ。何を考えてるの…?」
忘れようとしていた、『2年前』の出来事。
どうやら、忘れることは出来なくなりそうだった。
果南「次、遅れたら…」
俺「はい解ってます迅速に書きあげます!!!」
…次回までしばらくお待ちください。