ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~   作:syogo

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はい。HPTのソフマップ特典で5連続千歌が出た作者です。…運が無さ過ぎる。
今回は、ついに梨子ちゃんが加入です。これでライブの準備は一気に進みます!
…ということで、今回は曲作りです。それでは本編をどうぞ。


第25話 ~曲作りという名の告白タイム。~

 

 

「「ほ、ほ、ホントに!?」」

「ええ、私でよければだけど…。」

「「……やったぁぁぁ!!!」」

 

月曜日のSHR前。新しい1週間が始まる少々気が落ちるこの日の朝。浦の星女学院2年1組の一角では、気が落ちるどころか興奮で気が登ってしまうのでは、というような衝撃の声が響き渡っていた。

その声の発端は元気な幼馴染コンビの千歌と曜。まあ、喜びのあまり叫んでしまうのも無理はない。それもそのはず、経った今___桜内梨子のスクールアイドル部への入部が決まったのだから。

本当は俺だって叫びたい事この上ないが、千歌と曜が思いっきり叫んだおかげで、クラス中の注目が集まってしまっている。さらに俺が叫ぼうものなら、「スクールアイドル部は変人集団」というレッテルを貼られてしまう。もう貼られてるかもしれないが。

そういうわけで、俺は内心興奮している事を悟られない様に軽く咳払いをすると、改めて新メンバー__梨子ちゃんの方に向き直る。

 

「ほ、ホントに大丈夫か?昨日のお礼で入る、とかなら無理しなくて良いんだぞ?あれは勝手にやった事なんだから。」

 

これで「え?じゃあ…、入るのやめようかな。」なんて言われたら絶望しかないが、無理をさせて半強制的に入部させても良くない。内心ドキドキしながらそう尋ねるが…

 

「ううん。私が自分で決めた事だから。」

 

と、微笑んでそう言ってくれた。

 

「そ、そうか。…でも、だったらどうして急に?」

 

入ってくれるならそれでいいじゃないか。とそう思う自分もいたが、あんなに頑なに断っていたのだ、どういう心境の変化が起きたのか、純粋に知りたくなった。

 

「きっかけはね、昨日のダイビング。海の音…、聞く事が出来てね。それで、思ったの。雄大で、とても美しい海の音。その時、なんて言うのかな…、とても大きくて、広い海の中で悩んでた自分が、とっても小さく思えて。それで、ふっきれたっていうか…。それで、自分の気持ちに一区切りできたから、初めてみようかな、って…。」

 

なるほどなぁ。やっぱり、海の音が聞けた事が良かったんだな。……え?別に、計算とかしてたわけじゃないぞ?海の音が聞ければ梨子ちゃんが入ってくれるかも。なんて、思ってないぞ。……………うん。

 

「とにかく!梨子ちゃんが入ってくれたのなら、もう大丈夫だよ!これで曲もできるし!ね!梨子ちゃん!」

と、真面目な話に飽きたのか、俺たちの間に入ってくる千歌。えっへっへ、と笑いながら、もう勝ちを確信したような口ぶり。…どんだけ楽観的なんだよ。

 

「じゃあ…。その、曲についてなんだけど。作曲は私がやるから、まず『詩』をちょうだい?」

「『詩』?」

 

ついさっきまでヘラヘラとしていた千歌の口元が、梨子ちゃんの一言によりヘの字に曲がる。

 

「そう。『詩』。曲には必要でしょ?まさか、メロディだけの曲、とはいかないし…。第一、詩がないとどんな曲調にしたらいいかイメージも浮かばないわ。」

 

梨子ちゃんの言う事ももっともだ。ゼロから曲作りなんて、それこそイメージが固まらなくて、難しすぎるだろう。しかし、歌詞か…。そんなもん、俺は書いた事なんかもちろんないし、千歌もその反応を見る限り無いのだろう。…さあ困ったぞ。

 

「…そんなの、書いた事もないよ~。」

 

弱音を吐く曜。…まあそうだよなあ。一瞬、一年生ならもしかしたら…、と思ったけど、書いてそうなの善子ぐらいだしなぁ。詩は詩でも、善子のは絶対厨二臭いやつだろうし。それはアイドルの曲には絶対ならない…。

 

「…まあ!考えててもしかたないし!今日からみんなで考えよう!一年生トリオも一緒に!7人もいればなんとかなるよ!可能性は~、無限大!」

「…ま、そうだな。みんなで考えるか。…っと、チャイムか。とりあえず、また放課後だな。」

 

結局、放課後にまた話し合う事だけが決まったところでチャイムが。

うんうんと俺たちが考えているところに、いつも通り「なんとかなる」の千歌。チャイムと同時に教室に入ってきた先生を横目で見ながら、その楽観的思考が羨ましいよ…、と苦笑を浮かべ、自分の席に戻るのであった。

 

 

______

 

 

「……ううう。難しいよぉぉ。」

 

結局、放課後に十千万に集まった俺たち7人は、紙とペンを各々持ちながら、うんうんと歌詞を考えていた。

ちなみに、場所は曜の誕生会の時に使った宴会場…ではなく。今日はそこを使う客がいるということだったので、千歌の部屋にみんな集まっている。

一人用の部屋。せいぜい入れて3~4人のところに、俺たち7人が入っているため、テーブルは詰め詰め。女子に囲まれた生活を送ってしばらく経ち、慣れてきた部分もあるものの。女の子特有の良い匂いが部屋中に漂っていて、なんとなく…落ち着かない。

と、まぁ男にとっては夢のようなシチュエーションを味わうとともに、1か月前の俺に今の状況を説明しても絶対信じないよなぁ…。と苦笑しつつ、いきなり戦意喪失してテーブルに寝そべっている千歌を軽くチョップする。

 

「いて!」

「…ったく。少しは頑張らんかい!全然進んでねぇじゃねーか。」

 

頭をさすりながら起き上がった千歌。さっきまで寝そべっていた千歌に挟まれていた紙が顔を出すと、そこは真っ白。どうやら、ワンフレーズも思い浮かんでいないらしい。

 

「なぁ…。無理に『恋の歌』に縛らなくてもいいんじゃないか?他にも、色々あるだろ、アイドルっぽい感じのやつなんて。」

 

千歌が作業を始める前に俺たちに言った言葉。

『作るのは恋の歌!』

まぁ、アイドルには鉄板なイメージだと思うし、誰も異論を唱える事なく、作業へと入っていったのだが…。

みんな、思うように進んでいない。このままでは何時まで経っても先には進まない…。そう考えた俺は、千歌に曲のイメージを変えるように進言したのだが…。

 

「やだ!絶対恋の歌にするの!μ'sのスノハレみたいなのを作りたいの!」

 

と、頑として受け付けない。

 

「大体、ここにいるみんな、恋愛経験あったりするのか…?誰かと付き合ってたー。とか。そういうのないと、まず、歌詞以前の問題だと思うんだけども。」

 

はあ、と一息ついた俺は、まず、恋愛経験自体がある人がいるかどうかをみんなに問う。…しかし、反応した人はゼロ。ダメか…。

 

「じゃあ…。気になる男がいたー。とか。そんなのでもいいからさ。なんかないのか?」

 

今は同学年の男がいないから、千歌たちが気になる男がいたとすれば、大分昔。それは、幼いころだっただろうし、恋心ではない部分で気になっていたのだとは思うが…。それでもないよりはマシだろう。

…と思い、聞いてみたら。

 

「えっ!?///」

「き、き気になる?///」

「えーっと…///」

 

まさかのヒット。2年生トリオがまとめて解りやすいリアクションをとる。…しかし、なぜか俺をジト目で見てくる1年生トリオ。

 

「あんた…。狙ってるでしょ絶対…。」

「たちが悪いずら…。」

「先輩…。それはずるいですよぉ…。」

 

3人の湿度100%の視線が俺に刺さる。…え?なんでそんなみんなして『唐変木が…』みたいな顔すんの!?俺、なんか変な事した!?

 

「千歌、曜、梨子ちゃん。その反応はいるんだろ?俺たち、恋愛経験とかないからさ、気になるやつのこととか、その時の気持ちとか、しゃべってみてくれよ。」

「うわぁ…。」

「これはひどいずら。」

「ずるい…。」

 

なぜか、ますますひどくなる3人の視線。そして、反対の2年生トリオはますます顔が赤くなっていく。…なんだこの二極化現象は。

 

「ほらほら、千歌からちょっと話してみてくれよ。別に名前を出せ、とかは言わないからさ。まぁ、言っても俺は解らないし。問題ないとは思うけど。」

「…ばか///」

「へ?なんか言ったか?」

 

…まぁ、気のせいだろう。

そして、全員に視線を向けられた千歌は観念したのか、ぽつり、ぽつりと語りだした。

 

「え、えっと…///いつもは、チカとけんかばっかりで、その時はむかつくこともあるんだけど…。ホントはチカの事を気遣ってくれてて…。優しい人なの。チカのことをかばってくれた事もあって…。その時はとっても嬉しかったなぁ…。」

 

と、その時の事を思い出したのか、表情が柔らかくなる千歌。なんだよ、普通に青春してるじゃないですか。…しかし相手が恨めしいな。なんだよその紳士。美少女にこんな表情させるなんて…、ああ羨ましい。

 

「「「…気付いてないんだろうなぁ。」」」

 

ふう、とため息をつく1年生。…だから、何にだよ!千歌が言ってるやつの事を見習えってことか!?

 

「じ、じゃあ、次は曜だ。いるんだろ?話してみてくれよ。」

 

話が終わり、顔が真っ赤になっている千歌にクーリングタイムを与えるとともに、流れで曜に振る。こちらも千歌が話したことで覚悟ができているのか、ぽつり、ぽつりと話しだした。

 

「私の気になってる人は…。友達を、もう一度信じさせてくれたの。きっと、私のことが嫌いなんだよ。って言ったら、絶対にそんなことない。って。その言葉がなかったら、私、今はここにいないかもしれなかった。…すごく、感謝してるんだ。そ、それに…///私の事、『かわいい』って言ってくれたんだぁ…///」

 

曜もその時の事を振りかえっているのか、えへへ、と頬が緩んでいる。なんだよ、なんだよ。曜も普通に青春してんじゃねぇか!っていうか、それを『恋』と言わずしてなんと言うんだよ…。ちくしょう、誰だよ曜の心をこんなに虜にしてるのは…。まったく、恨めしい。

 

「よし、最後は梨子ちゃんだ。さっきの反応からしているのは解っている。話してごらんなさいな。」

 

はぁ…。とため息をつく1年生達からの精神ダメージを食らいつつも、2人の話を聞いてなのか、すでに顔が真っ赤になっている梨子ちゃんに視線を移す。曜が話している間にすでに決意が固まったのか、すぐに話し出した。

 

「…私、男の人って、昔からちょっと苦手だったの。なんとなくそっけない印象で、プライドが高くて、威圧感があって…。怖い感じ。…でもね、その人は違ったの。いつも笑顔で、優しくて、自分の事より周りの事ばっかり考えてるような人。そのためなら、平気で土下座だってしちゃう。…ふふっ。あの時は驚いたなぁ。いきなり土下座しだすんだもん。…その人のおかげで、私の男の人に対する意識が変わったの。」

 

と、梨子ちゃんもその時の事を思い返しているのか、ふふっ、と微笑んでいる。…その表情は、完全に恋する少女。青春してんなぁ…。全く、羨ましい…。

と、3度目の悔しさを覚えていると。

 

「…で?翔は、誰の事が好きなのよ。」

「「「!?」」」

 

善子が、「いい加減誰か決めなさいよ。」的な口調で俺に矛先を向けてきた。善子が

そう言うやいなや、いっきに全員の視線が俺に集中する。…あれ、特に2年生の視線が強い気がするのは気のせいかな。

 

「い、いや…、俺は特にそういう人はまだいないって。」

「…あんたね。女子高に男一人で入って、周りは全員女子なのに、『気になる女子はいない』なんて、通るわけないでしょ…。」

 

…ま、まぁ。普通に考えればそうだな。周りが女子しかいないのに、それで気になる人はいない、なんて言っても説得力のかけらもない。

みんなの視線が集中する中、俺は腕を組んで考える。

確かに、転校してしばらく経った事もあり、最近はクラスの他の子たちとも会話をするようにはなってきたが…。気になるとか気にならないとかじゃなく、まだなじめない部分もあるんだよなぁ…。

…と、数十秒色々考えた結果。俺はこの答えに辿り着くのだった。

 

「うーん…。君たち6人かな。」

「「「「「「えええええええ!?!?!?」」」」」」

 

千歌の部屋に全員の驚き声がこだまする。

え?そんなに意外か?だって、スクールアイドル部の仲間だし。いつも一緒にいるし。なんというか…、落ち着く?って感じだな。うん。

 

「か、翔くん…///」

「りょ、りょうおもい…!?///」

「そ、そんな急に言われてもぉ…///」

「こ、これは予想外の不意打ちね///」

「び、びっくりしたずら…///」

「や、やっぱりずるいです先輩…///」

 

ごにょごにょと口元を動かす6人。…え?何言ってんだ?

 

「おーい…?みんな、どうしたんだよ…?俯いてちゃ、全然わかんないぞ…?」

 

「「「「「「翔(くん)(あなた)(師匠)(先輩)のせいでしょ……!////」」」」」」

 

けして顔を上げない6人と、どうしたらいいか解らない俺。

しどろもどろしているうちに、傾いていた西日は、地平線の彼方へと暮れていくのだった…。




2日連続で投稿出来て、良かったです…!ホントは毎日投稿出来ればいいのですが…。次も早く出せるように頑張ります!(ふ、フラグじゃないよ)
次回もお楽しみに。

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