ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
俺「いや…、あの…。」
果南「『1週間に1本は出します!』とか言ってたのに、どうしたのかなん?」
俺「いや…、結構忙しくて…。年度末でしたし…。」
~無言の沈黙~
果南「…で?本当は?」
俺「SAOのゲームが面白くてずっとやってました。」
果南「……よし、ハグしよ?」
俺「……え?待って待ってまtギャァァァァ!!!!」
…本当に遅れて申し訳ないです。
約束の日曜日当日。
普段愛用している鞄に財布や携帯を入れた俺は、少しわくわくした気分で自分の部屋を出、隣の部屋の千歌と(準備がすでに終わっていたのには少々驚いた)隣りである梨子ちゃんの家に赴く。
「おっ、梨子ちゃん。」
「あ、榮倉君、千歌ちゃん。おはよう。」
玄関先で待っていた梨子ちゃん。俺たちの存在に気付くと、輝く笑顔で俺たちに挨拶をしてくる。
「梨子ちゃーん!おっはよーっ!…うーん、今日もかわいいね!いますぐ、このままアイドルになれるよっ♪」
出会うや否や、いきなり抱きつく千歌。全く…羨まし、じゃない、節操のない…。まあ、かわいいのは本当なんだけどな。
と、朝っぱらから美少女に鼻を伸ばしつつ、千歌を梨子ちゃんから引き剥がす。
「あ、あはは…。」
「ったく…。いきなりなにすんだお前は。梨子ちゃんの顔が引きつってたぞ。」
「えーっ?いつもの事じゃん。…あ、翔くん、梨子ちゃんにチカが抱きついてるの見て、やきもち焼いたのかなぁ?」
「んなわけあるかい!梨子ちゃんに迷惑だろーが!全く…バカチカめ。」
「なんだとーっ!?」
「ま、まぁまぁ…、2人とも…。」
言い合う俺と千歌とそれをなだめる梨子ちゃん。いつも通りのやり取りをしながら、バスに乗り、淡島へ行くための桟橋へと移動する。
20分ほどバスに揺られ、下車すると、目の前にはこれから乗るであろう小柄な連絡船が桟橋に接岸していた。
「おっ!?あれだな?淡島に行く船ってやつは!早く乗ろうz「おっはヨーソロー!!」うおおおおびっくりしたぁぁぁぁ!?!?」
人生初の船を目の前にして、若干テンションが上がった俺が、早速船に近ずこうとした瞬間。
後ろから、体当たりのような(というか完全に体当たりなのだが)勢いで俺の背中にどついてきやがったヤロウが、聞いたことあるフレーズとともに、俺たちの眼前に姿を現した。
「ふっふっふっ…。船と言えば私を忘れちゃダメでしょう!…渡辺曜、参上!」
敬礼のポーズとともに、晴れやかな笑顔で登場した曜。…どついたろか、と思っていた俺の怒りは、その笑顔で浄化されてしまった。
「……おは曜。」
ダメージを負った背中を優しくさすりながら、引きつった笑顔で挨拶をする。…最近、千歌とか曜とか、俺に笑顔見せときゃ許されるとか思ってんじゃないだろうか。……いや、まぁ、かわいいんだけどさ。だから許しちゃうんだけどさ。
「おはよーちゃん!今日も元気だねっ!」
俺の肩からひょこっと顔を出す千歌。どうやら曜が来ることは事前に解っていたらしい。…いや、だから連絡しようぜ?部屋隣だろ?
…というか。そんなことよりだな。
「…よ、曜ちゃん?一体その格好は…?」
おお。流石梨子ちゃん。俺の言いたかった事を言ってくれたよ。
そう、問題は曜の格好である。
休みの日なのだから普通は私服だ。現にこの中にいる全員が私服で来ているし、曜の格好も…まぁ、学校の制服ではない。しかし…、ある種の制服というか、なんというか…。
結論から言うと、曜は汚れ一つない真っ白な水兵服、しかも水兵帽までを着ているのだ。
「………」
正直、曜の意図が理解できない。
今日は、淡島にダイビングに行くのだ。まだ、水着で来ているんだったら「着替えがめんどくさいから」という理由が思い浮かぶ。しかし、着ているのは水兵服だ。ドラマとか漫画とかでしか見た事ないぞそんなもん。どこで買ったんだよ。
「え?この格好?水兵さんだよ!だって、船に乗るんだよ!?船と言ったら船員、船員と言ったらこの制服しかないであります!」
キリリ、とした顔で再度敬礼をする曜を見て、さらに「???」が浮かんでくる。後ろを見ると、梨子ちゃんも同じ症状のよう。…うん、俺は正常だ。
「そ、そうか。……じゃあ船に乗り込むとするか。」
恐らく曜には何かがあるんだろう。…なんとなくだが、その格好を否定してはいけないような気がする。うん。
小さな疑問を残しつつ、淡島に向けての初めての船旅に向けて、桟橋へと歩を進めるのだった。
………
「果南ちゃーん!来たよーっ!」
船から降りてすぐ。目的の場所であるのだろう木造の建物に入った俺たちが辺りを見回していると、一番に入って行った千歌がいきなり店に響き渡る声で叫んだ。
一応店の中、お客さんは他にはいないのだが、そんな大声で叫んでいいのかよとツッコミたくなるが、知り合いの店なのだし、全く知らない土地だというのもあり、少し心にビビりも重なるものがあったので、大人しく待っていると。
「はーい。ちょっと待ってね。」
という声が聞こえてから数秒、店の奥から、掛けてあるダイビングスーツやら水着やらを掻きわけて、女の人が顔を出した。
青みがかった髪を束ねて、ポニーテール。身長は…、女の人的には、結構高い感じがする。160センチは超えてる感じだろうか。どことなく…、高校生には見えないというか。大人っぽい。そんな感じがする。というか、高校生ではないのかもな。別に千歌は何も言ってなかったし。大人の人の可能性もある。
それに………。俺はゴクリと喉を鳴らして女性の双丘…、胸の部分をちらり、と見る。
ダイビングショップなのだからだろうか、ダイビングスーツを着ている彼女は、体のラインが完全に浮き出ている。その胸部から出る豊満な胸は、とても高校生のサイズとは思えないというか…。初めて見たときの千歌や曜も、かなり大きいとは内心思っていたが、恐らくそれ以上だろう。そしてその胸部を強調するかのようなウエストの細さ。さらに下へと視線をやると、これまた豊満で形のよさそうなヒップが……。
「榮倉くん……?」
どことなく不信感があり若干低い声を放つ梨子ちゃん。はっ、として振り向くと声のトーンと同じ顔をしている。…どうやら少々見すぎたらしい。
梨子ちゃんの冷やかな視線をくらい、冷や汗を流していると、その女の人を視界にとらえた千歌がその人の方へ駆け寄って行った。
「会いたかったよ~!果南ちゃ~ん!!」
「お…っと。…ふふ、よしよし。」
そしていきなりハグをしだす2人。しかも外国であるような軽い挨拶のやつみたいなのではなく。結構強めに。
「「……!?」」
唖然とする俺。とさっきまで俺に向けていた視線はどこへやら、ぽかーんと口を空けて2人の方を向いている梨子ちゃん。そりゃそうだ。ここは日本で、俺は今まで挨拶でハグなんぞしたこともないし、第一ハグなんぞ未経験。おまけにそんなに強めのを当たり前のようにしている2人の関係はなんなのか、衝撃だらけだ……。
「あーっ!!いいないいな!果南ちゃん!私もー!」
さらに、斜め後ろに立っていた水兵さんまでもがとんでもない事を言い出したから驚きだ。そして2人を羨ましがるやいなや、2人に向かって飛びつく勢いで接近、ぎゅー、っとハグを開始している。なんというか…、凄い光景だ。
「な、なななな…!?何が起きてるの…!?」
開いた口が塞がらない(物理的に)とはこの事か、あんぐりと口が開いてしまっている梨子ちゃん。さらに、体が小刻みに揺れている。よっぽど衝撃だったのだろう。…ん?俺?確かにさっきまでは驚いてたが…、なんというか、美少女達が笑顔でぎゅうぎゅうやってる絵を見ていると、驚きというよりお得感が凄いというかなんというか……。……俺も流れで入って行っても受け入れてもらえたりするんじゃないかこれは?
なんていう健全な男子高校生では至極純粋な感想を持ち合わせていると。…おっと残念。ハグタイムは終了したのか、3人は体を離す。
「ん~♪やっぱり果南ちゃんのハグはいいねぇ!落ち着くよ~。」
「果南ちゃん!私、もう一回やりたいであります!」
「ち、ちち千歌ちゃん…!?よ、曜ちゃん…!?」
何を言ってるのか、と衝撃が残っている梨子ちゃんに、「ほえ?」「ん?」と?マークの2人。
「あはは、コレは挨拶みたいなものだよ。ハグっ、てね。どう?あなたたちもやってみる?」
「え!?いいんですか!?」
「いいわけないでしょう!!」
さらりとそんな事を言い出した果南さん。すぐさまやって貰おうとしたものの、梨子ちゃんに睨まれ、すごすごと引き下がる。……いいじゃないですか、挨拶なんだから。
「………」
俺の考えている事を完璧に解っているのか、さらに睨みをキツくする梨子ちゃん。俺もMではないし、これ以上睨まれても怖いだけなので、素直に引き下がった。
「まったく…。……ええと、あなたが、ダイビングをさせてくれる果南……さん、ですか…?」
「うん。私は松浦果南、千歌と曜とは幼馴染で、一応浦女の3年生。今、祖父が骨折で動けなくてね…。休学してこのダイビングショップを手伝ってるんだ。ええと…、あなたが梨子で、君が翔かな?」
ハキハキと自己紹介をする果南さん……、松浦先輩。え、というかなんで俺たちの名前を知って…?
「ん?名前?梨子のことは千歌からメールで聞いてたし、翔は、この辺では有名人だからね。『浦女に来た男子』って事で。」
「そ、そうですか…。」
確かに、女子高に男が来るなんてイレギュラー、噂になって当然だし、実際学院ではかなり有名というか、知られているとは思っていたが。まさか、休学している人にまで広まっているとは…。
田舎の情報の広がりの早さに少々驚く。
「よし!じゃあ、早速だけど用意して行こうか!まずは水着とスーツね。水着は着てる?それなら、あそこにスーツが並んでるから自分のサイズのやつを取ってあそこで着替えてね。じゃ、そういう事で!」
ぱん、と両手を合わせた松浦先輩。客の扱いには慣れているようで、俺たちのスーツのサイズもそれぞれのをパパっと選び、背中を押す勢いで俺たちを個室へと移動させた。
「凄い手際だな…。流石客商売してる人は違う…。」
感心しながら、俺は衣服を脱ぎ、事前に着ておいた水着一枚になると、人生初のダイビングスーツの着用にかかる。サイズが合っているとはいえ、ピチピチのサイズ。悪戦苦闘しながら、なんとか身に纏い、先程の場所に戻る。そんなに時間は経っていない様に感じたが、俺以外のみんなはすでに用意を終えていた。
「おそいよ翔くん!」
「訓練が足りないであります!」
「いや、訓練も何もこれが初めてだっつの…。」
二人にどやされながら、俺たちは船に移動する。…3人のダイビングスーツ姿に各体の箇所に視線がいきそうになったが、これ以上そんな事をすると本気で梨子ちゃんに嫌われそうなので止めておいた。
「じゃ、ポイントまで移動するからねー。結構揺れるから、気をつけて。」
そう言い残し、操縦席に移動する松浦先輩。しばらくするとエンジンがかかり、船がゆっくりと動き出した。
「す、凄いな松浦先輩…。船まで操縦できるのか…。」
「え?そうなの?私も、少しくらいならできるよ?」
「え!?マジで言ってる…?」
「うん!パパに教えてもらった事あるんだ~。パパ、船長さんなんだよ!」
すげえな俺のまわりの人。高校生で船操縦できるって…。しかも2人も。
改めて、曜の超人っぷりを思い知り、松浦先輩の万能っぷりに関心し、潮風を浴びながら船に身を任せる事約5分。
「着いたよー。じゃあ、早速海に入ってみようか。」
操縦席から出てきた松浦先輩が、酸素ボンベとゴーグルを持ってやってくる。それを慣れた手つきで俺たちに着けると、簡単に使い方をレクチャーする。
「…と、まぁこんな感じ。耳が痛くなったら耳抜きを忘れずにね。じゃ、一人ずつ入って行こうか。入ったら船の下に手すりがあるから、そこに移動して捕まっててね。」
「う、うう…。緊張してきた…。」
「大丈夫だ、海なし県から来た俺がいるぞ、梨子ちゃん。」
不安そうな表情の梨子ちゃんに、フォローになっていないフォローをする俺。
「だいじょぶだいじょぶ!すぐ慣れるよ!」
「そりゃお前は何回もやったことあるだろうよ…。」
俺たちとは打って変わって対照的な興奮を見せる千歌が、全く希望の見えない言葉を発する。慣れるも何も、海自体がもう新鮮だからなぁ…。
「じゃ…、私が一番だヨーソロー!」
「あっ!曜ちゃん待ってー!私もー!」
といつものセリフを残し、一番に曜がジャンプで海へ。それを追いかけるように千歌も元気に海へ入る。
「元気だねぇ…、二人とも。じゃ、梨子は私と一緒に行こうか。翔は一人で頑張れる?」
「え……。…っ、はい。一人で頑張ります…。」
てっきり、俺と梨子ちゃんは松浦先輩と一緒に行けるもんだと思っていたが…、松浦先輩の体はひとつ。そりゃ物理的に不可能だ。しかも、梨子ちゃんがうるうるした目でこっちを見てくるのだ。そんな子に一人で頑張れ、なんて言えんでしょうよ。
ここは、男の見せどころだ。
「榮倉翔!…いっきまーす!」
酸素ボンベの重さよたよたとなりながら、船の端に着くと、そのまま海へダイブ。ドボン、という衝撃とともに、あぶくが広がり___、あぶくが散った視界に広がったのは、底の見えない闇だった。
「こ、怖えええ…。」
とりあえず、今は言われた通りに。俺は周囲を見回し、千歌と曜のいる場所まで移動し、手すりに掴まる。一人で来れた事に対する関心なのか、千歌と曜は俺の肩をぽんぽん、と叩く。…よし、とりあえずなんとかなった。
それにしても不思議な感覚だ。水の中で呼吸出来ているのだから。静かな海の中。シュコー、シュコーと呼吸する音だけが耳に響く。俺は普段鼻呼吸なので、口呼吸という新鮮な呼吸法になんとなく違和感を感じていると。
ドボン、という音とともに、二人の姿が海中に現れた。直前まで緊張してた梨子ちゃんも、松浦先輩と一緒にいるおかげか、大分落ち着いた感じに見られる。
そして、松浦先輩が梨子ちゃんの手を引き、こちらへと泳いで来た。千歌と曜は俺と同様に、梨子ちゃんの事を労っている。
『それじゃあ、ちょっとこの辺を泳いでみようか』
松浦先輩が、ホワイトボードにペンで文字を書き、俺たちに見せてくる。…水中でも書けるペンって地味に凄いな。
謎の部分の関心をしている俺をよそに、松浦先輩が手振りで指示を出し、水中回遊が始まる。
しかし、今日の天気が曇りとあってのことか、海に入る光の量が少なく、依然として海は暗いままだ。
『どう?海の音は?』
松浦先輩からボードを受け取った千歌がそれを書き、梨子ちゃんに問いかけるが、ふるふると梨子ちゃんは首を振る。
その後、10分程度泳いだが、梨子ちゃんの言う『海の音』は聞こえないようだった。
「…海の音、聞こえない?」
「…ええ。なんだか海も暗いし。何というか…、怖い感じがして。」
一度船に戻った俺たち。やはり水の中だからか、10分程度潜っただけなのに、疲労感が出てくる。少しは運動しないとな…。と思っていると、曜が梨子ちゃんの言葉に反応する。
「暗い?…解った。じゃあもう一回良いかな?」
曜の言葉に促され、俺たちはもう一度海へと入った。
今度は曜を先頭に、とある場所へと向かう。
『ここだよ』
ボードを俺たちに見せる曜。しかし、そこは先程まで泳いでいたところと何も変わらない、暗い海。
?マークの俺たちに気付いたのか、曜はボードに新しく文字を付け足した。
『上見て!』
ボードを見せながら指で上を指す曜に疑問を感じながら、上を向くと__
_____そこには、美しい光景があった。
光が、差し込んでいる。
真っ暗な海に一筋だけ差し込む太陽の光。辺りを見回すが、光が差し込んでいるのは俺たちがいるこの場所のみのようだ。
「…すっげー。」
神秘的な光景に、俺は瞬きを忘れる程だった。美しい。まさにその一言が似合う光景だ。
……そのとき、俺は『音』が聞こえた気がした。
上手く説明はできないが___温かく、それでいて包み込まれるような優しさ。まるでその光が音を発しているかのような、そんな感覚。
…これが、『海の音』なのだろうか___?
視線を梨子ちゃんの方に移す。…どうやら、当たりらしい。
『聞こえた!』
ボードと一緒に見せる梨子ちゃんのゴーグルの中の瞳は、キラキラと輝いていて。
梨子ちゃんの新たな表情にドキリとさせられる俺なのだった。
はい。果南姉さん登場でございます。これで全員出した…かな、一応。
皆様お気づきの通り、この連載進むのがとっても遅いです。なので、できるだけ短期間にどんどん投稿していきたいと思っているのですが…。本当に毎回毎回申し訳ないです。もっと頑張っていきます。