ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
みなさんも、お気をつけて。
「あんたはバカなの!?」ボソッ
「す、スマン…。」ボソボソ
照りつける太陽の下、顔を近づけてボソボソと話す俺と善子。その後ろには、いつにも増して目が輝いている千歌ちゃんと曜ちゃん。
…え?なんで怒られてるのかって?
それは数分前。
「おーい!千歌ちゃん!曜ちゃん!新入部員が入ったぞ~!」
ガラり。
勢いよく教室のドアを開いた俺は、いきなりそう叫んだ。
__そう、『叫んだ』。
何事か、とざわめきと同時に視線が俺と善子に一斉に集まる。…そう、一斉に。
「あっ…、やべ。」
気付いた時には時すでに遅し。俺の隣にいる善子を見て、「誰?あの子。」「…え?超可愛くない?」「え?榮倉君…、まさか?」「まさかもう4人目!?」
などという声が教室内から一斉に漏れ始める。…というかおい、なんだ4人目って。
怒りなのか、羞恥心なのか、隣の善子がわなわなと震え始める。…や、ヤバい。一刻も早くここから脱出しなければ…!!
「あーーっ!!堕天使ちゃんだぁ!!」
「えーーっ!?新入部員!?」
とどめの追い打ち。…と言わんばかりの2人組が、俺たちの元へ大声でそう言いながらやってきた。
とどめの2人の登場により、我慢の限界を迎えた善子。俺の手をとるや否や、無言のままクルリとターン&屋上へダッシュ。
「あっ!?」
「待ってよ~!」
追いかけてくる2人の声を背中に浴びながら、意外と足が速い善子に手をひかれ続け、今の状況になる___というわけで。
戻ってきた屋上で、俺は今善子に睨まれている。
…いや、テンションが上がってしまったんですよ。
ついに人数揃ったし、まさか流れとはいえ本当に入ってくれるとは思ってなかったし。興奮しちゃうのも分かるでしょ?
「…言い訳無用よ。」
え、まだ何も言ってないんですけど。
エスパーかよ、俺そんなに分かりやすい思考回路してんのかな、と思いつつ。
「ま、まぁ!どーせすぐにスクールアイドルとして知れ渡るんだからだいじょ…はいすいませんごめんなさい反省してます。」
苦し紛れにポジティブシンキングを促すものの、冷徹な視線で一閃。
…まぁ、俺も悪かったですよ。いや、全面的に俺が悪いんですけども。
数分前に、『目立たないように!』と言われたばかりなのに、一瞬で無視しちゃったからな…。というか、目立ちたくないのに、人気者にはなりたいとか、この子よくわかんないなまったく。ぶっちゃけちょっとめんどくs「聞こえてるわよ。」はいすいません。
心の声がクリアに聞こえているらしい善子に、まさか本当に堕天使なんじゃ…、と若干あせっているところに、後ろからの声。
「ねぇねぇ翔くん!早く紹介してよぉ。もう待てないよぉ。」
振り向くと、いつもより鼻息が荒い千歌ちゃん。その隣には、見た目いつもと変わらない様子の曜ちゃん…だが、小さく小刻みにその場で足踏みをしている。…お、おう、相当楽しみなんだな。
俺は睨み続けている善子の視線から外れるため、もとい、待たせている2人に応えるため、とりあえず善子を紹介する。
「えーっと…。この子が新しくスクールアイドル部に入ってくれた、堕天使ヨハ…ゃなかった、津島善子。」
相変わらず、目が輝いている2人。太陽の光で瞳がキラキラと輝いて…、まったく、なんでこう一つ一つ可愛いのかね。…おっとしまった、また見とれてしまった。
次に、軽く視線を善子に向けて、2人のことを紹介する。…ふう、とりあえず睨まれタイムは終わったようだ。
「えーっと、善子。この2人が、今スクールアイドル部を作ろうとしてる千歌ちゃんと曜ちゃ「「善子ぉ!?!?」」おわぁ!?なんだ一体!?」
いきなり善子の名前を叫ぶ2人。…なんだ!?俺変なこと言った!?
「よし……呼びすて…」
「私たち……ちゃ……付け……のに。」
なにやらブツブツとつぶやき始める2人。…なんだ?よく聞こえな__
「「翔くん!!」」
「!?な、なんだよ急に。」
いきなり俺の元へと急接近してきた2人。かなり深刻そうなのか、真面目な顔でツカツカとこちらへやってくる。え!?なに!?なんかやった!?!?
「「翔くん!!!」」
「は、はい!!すいませ 「「私も名前で呼んで!!!」」 」
……はい?
まったく想定していない状況に、思わず目をパチクリさせる俺。は?名前?
困惑している俺。…大体、要望の意味がわからない。え?だって…
「呼んでるじゃん。」
「「呼んでない!!」」
え!?呼んでるよね!?
「呼んでんじゃん!千歌ちゃん、曜ちゃんって!」
俺のその言葉に、2人が思いっっっ切り深いため息をつく。
「「なんでわかんないかなぁ…。」」
いや、こっちのセリフだよ。呼んでんじゃん。…はっ!?実は、二人の名前が、実は本当の名前じゃないとk「「違うからね?」」はいすいません。
ねぇ、なんでこの子たちはみんな俺の心が読めるの?てかなんで俺謝ってんの?
「そうじゃなくてさぁ…///」
手を後ろに組み、もじもじとしながらそう言う曜ちゃん。心なしか、頬が桜色になっている。…あれ、千歌ちゃんもだ。何?なんなの?
「あの…、私の『ちゃん』付け、無くしてくれると嬉しいなぁって…///」
「ち、チカも!…そーしてほしいなぁっ///」
「……え???」
そんなこと?とぽかん、とする俺に、2人からのジト目。…あれ、いつにも増してジトジトしてない(何言ってんだ俺)?
「どーせ、『そんなこと?』とか思ってるんだろーなぁ…。ハァ…。」
「ほんと、どんかんだよねー…。」
相変わらず俺の心を読む2人。…え?どこが鈍感なの?
「「そーいうところだよ…。」」
怖いよ。俺、まだ「え?」しか言ってないよ?俺もそのスキル欲しい。どうやったら手に入るんだ?
「…まぁ、わかったよ。じゃあ…、『千歌』、『曜』。」
「うん!」
「なに?翔くん♪」
俺が『ちゃん』抜きで名前を呼ぶと、いきなりぱあっ、と表情が明るくなる2人。曜ちゃ…、おっと、曜にいたっては「えへ、えへへへ…。」と不敵な笑みをこぼしている。わ、訳がわからん…。
「アンタ…。ほんとに鈍感なのね…。」
横から、マリアナ海溝レベルのため息の善子。…だから、どこが鈍感なんだ?
「この2人も大変ね…。もうちょっと翔の感覚が鋭けりゃいいのに…。」
呆れた表情で俺を見てくる善子。え?なんなの?もしかして、理解してないの俺だけ?
呆れる善子と、不敵に笑う2人を見ながら、昼休みは過ぎていくのだった。
………
「花丸ちゃん…。ちょっと、話があるんだけど…。」
時は同じく昼休み。善子が翔に連れて行かれたのを見て、何かを決心したらしい赤毛の少女は、自分の一番の親友を呼ぶ。
「なあに?ルビィちゃん。」
自分の前の席で本を読んでいた少女は、呼んでいた本にしおりを挟みながら振り向いて、笑顔で応える。
「ここじゃちょっと…。図書室、行こう?」
「?? いいよ?」
少し不思議がる親友。
…しかし、二人きりで話したいことなのだ。花丸ちゃんには悪いかもしれないが、図書室に本を借りにくる人を見たことがない。話し合いにはうってつけの場所なのだ。
「ありがとっ。じゃあ、行こっ。」
そう言って席から立ち上がると、図書室に向かって歩きだす。そのエメラルドの瞳には、小さいけれど、しかし確かに決意の炎が燃えているのであった。
翔クンの鈍感さには、書いててイラッと来る時があります。←自分で書いてるのに笑
次回、ルビィと花丸の決断です。
スクールアイドル部に加入するのか?
お楽しみに。