ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
それでは、続きをどうぞ。
※第16話のあとがきで残り5日、と書きましたが、正しくは残り6日です。申し訳ありません。
※金、土、日、と時が流れましたので、期限まで残り3日です。
「…おーい!花丸ちゃーん!ルビィちゃーん!」
ガラっ。勢いよくドアを開く千歌ちゃん。最初の時は驚いてこちらを見ていた1年生の子たちも、今では慣れたのか、ほとんどこちらを気にすることなく、各々おしゃべりなどをしている。
「ずらっ!?」「ビギッ!?」
おっと違った。思いっきり反応してくれる子たちはまだいた。
千歌ちゃんお目当ての(もちろん俺たちもだが)2人は、俺たちの登場にいまだに反応をし、おずおずとこちらにやってきた。
2人がやってくるやいなや、目をキラキラさせる千歌ちゃん。…よっぽど気に入ったんだな。
この土曜、日曜とずっと2人の話ばっかだったもんな…。と思いつつ、恐縮した感じの2人にひとまず挨拶をする。
「よっ。元気にしてた?」
「は、はい…。」「ず、ずら…。」
…それ、挨拶にも使えるのか。
花丸ちゃんの代名詞ともいえるセリフの新たな使い方に関心しながらも、いまだにおずおずとしている2人を見る。
「ん?どうした?なんかあったのか?」
「あ…、いや、その…。」「えーっと…。」
口ごもる2人。…あ、そうか。
「違う違う。別に今日返事を貰おうって訳じゃないからさ。じっくり考えてくれよ。」
俺の話を聞いた2人は、少し明るい表情になる。…やっぱそうか。
「あ、でも別に、今でもいいんだよー?入ってくれるなら、大歓迎!」
にしし、と笑う曜ちゃんにかるくチョップを入れると、2人に向き直り、本当の要件の人の所在を聞いてみる。
「なあ、2人とも。…今日、善子ちゃん来てる?」
俺の質問に、首を振る2人。ま、まさか、なぁ…?
「善子ちゃん、クラスの人たちにする自己紹介の時……。
『堕天使ヨハネと契約して、あなたも私のリトルデーモンに___なってみない?』
って言った後、いきなり教室から出ていっちゃって以来、学校に来てないずら…。」
…マジで中二病のせいで休んでたのかアイツ。
大方、ネタ半分で言ったのだろう。教室内がしん、と静まり返る様子が目に浮かぶ。
「クラスのみんなも別に気にしてないし、学校に来てほしいんですけど…。電話にも全然出ないし…。」
…うーん、そんなに重症だったとは。
昨日会った時は、そんなに気にする感じはなかったけどな…。ルシファーがなんだとか言ってたし。
「花丸ちゃん、俺に善子ちゃんのメールアドレス、教えてくんないかな?…実は昨日、善子ちゃんと会ったんだよね。俺もダメ元で連絡してみるよ。」
その瞬間、驚いた表情をする花丸ちゃん。
「え!?!?善子ちゃんと会ったずら!?ど、どこで!?」
「お、おう…。海岸でな。」
「よ、善子ちゃんはなんて!?」
「色々話してくれたぜ。自分は堕天使ヨハネだー、とか、でも中二病なのはわかっててそのせいで学校に行きずらい、とか。」
「そ、そこまで…。」
俺の話を聞いて、驚愕の表情を見せる花丸ちゃん。…と同時に横の千歌ちゃん、曜ちゃんも驚いた表情を見せる。
「え!?!?翔くん、善子ちゃんと会ったの!?」
「い、いつの間に!?」
「昨日の夕方に、ちょっとな…。詳しくは後で話してやるから。……で、花丸ちゃん?」
なにやらブツブツと呟きながら考え事をしている様子の花丸ちゃんに再度向き直る。
「…せ、先輩なら、善子ちゃんをなんとかできるかもしれないずら。普通、善子ちゃんは絶対に何を言われようとも『堕天使ヨハネ』を突き通すずら。それをそんなあっさりと…。」
…え、そうなの?なんかあっさり色々言ってくれたけど。
「…おら、何回も善子ちゃんの家に行ったけど、会ってもくれなかったずら。もしかしたら、先輩ならなんとかなるかもしれないずら。………どうぞ、これが善子ちゃんのメールアドレスずら。連絡してみてください。」
ポケットからメモとペンを取り出した花丸ちゃんは、携帯を見ないでサラサラとメモにペンを走らせ、俺に手渡してくれた。…す、すごい、覚えてるのか。
「わ、私も!教えて、花丸ちゃん!」
「ち、チカにも!」
ずずいっ、と花丸ちゃんに詰め寄る2人。彼女たちも心配なのだろう。…初めて会ったときから、大分ヤバめの印象だったしな。
しかし、ゆっくりと首を振る花丸ちゃん。
「…ごめんなさいずら。あまり大人数になってしまっても逆効果かもしれないので…。」
しゅん、と落ち込む2人。と同時に俺にのしかかる倍増したプレッシャー。…う、俺にすべてがかかってる、という訳ですか。
最初は半分冗談のように思っていた。…だって、中二病で不登校なんて半分お笑いだろ?
しかし、笑いごとでは済まなくなってきた状況に強く心を引き締める。
「善子ちゃんの家の住所も教えるずら。…頼んだずら、先輩。」
花丸ちゃんの真剣な表情に、また一段と気を引き締める俺なのだった。
………
「…感じます。」
カーテンを完全に閉め、明かりが消された部屋。その中心に、蝋燭が一本、蜀台に立てられ、細々と炎を揺らめかせている。その前に立つ、真っ黒なドレスを着た少女。背中には、自分で作ったのか黒い羽根まで生やしている。
「____聖霊結界の損壊により、魔力抗争が変化していくのが。」
ジーッ。
それを映す一台のビデオカメラ。その動画はリアルタイムでサイトに配信されている。
「_____世界の趨勢が、天界議決により、決していくのが。」
サイトの動画には、「ヨハネ様ー」「堕天使w」「一緒に堕天(意味深)したい」「アイタタタタwww」などというコメントが流れ続けている。
「____かの約束の地に降臨した、堕天使ヨハネが、そのすべてを見通すのです!」
だが、少女はコメントなど気にするそぶりも見せず、延々と意味不明な言葉の羅列を並べ続ける。
「___すべてのリトルデーモンに授ける。…堕天の力を!!!」
フッ。
蝋燭を吹き消すと同時に、ライブ配信が終了する。静まり返る部屋の中、一人たたずむ少女。
「フフ……。」
不意に、不気味な笑い声を上げると___
「やってしまったぁーーーーー!!!!」
カーテンを思いっきり空け、窓から乗り出し叫びだす。
「なによ堕天使って!ヨハネってなにぃ!?」
「リトルデーモン!?さたぁん!?いるわけないでしょ!?」
「そんなもーん!!!!!」
「…もう高校生でしょ津島善子!いい加減卒業するの!…そう、この世界はもっとリアル。リアルこそが正義!!」
「リア充にぃ~~~、私はなる!!」
鏡の前でガッツポーズ。…恰好からまったく説得力のない言葉である。
「な、なんであんなこと言っちゃったんだろ…。学校行けないじゃない…。」
『あなたも私と契約して……。』
自己紹介の時にやらかしてしまった自分を盛大に悔みながら、ゴロゴロと床に転がる堕天使なのであった。
………
「…ここ、か?」
目の前には『津島』と書かれた表札。
十千万前で千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんと別れた俺は、さらにバスに揺られ、花丸ちゃんに教えてもらった住所の場所にやってきた。
とりあえずはメールでもいいと思ったのだが、それだと逃げられる可能性もある。こういう時は先手必勝、といきなり津島宅にやってきたわけだが…。
ど、どうしたものか。
いきなり、男一人やってきて『浦女の生徒なんですけどー』何て言ったところで、100%アウトだろう。親御さんが出てきたらそれこそ1発で。
「い、いや。だけど、折角来たんだし…!」
ぶるぶると首を振り、思い直す。一瞬善子ちゃんに連絡する、ということも思い浮かんだが、それでは結局部屋に籠られてしまうかもしれない。
その時はその時だ。とインターホンを祈りを込めて押す。
ピンポーン。
…。
……。
………。
両手を重ね、祈りながら待つこと十数秒。玄関のドアを開け、中から出てきたのは__
「リ、リトルデーモン!?」
た、助かった。
出てきたのは、当初の目的人物、堕天使ヨハネこと善子ちゃんだった。
「…どうぞ。入って。」
「お、おじゃまします。」
俺が来た理由を察し、観念したのか家に上げてくれた善子ちゃん。案内されたのは奥の1室。
入った瞬間、ああ、ここは善子ちゃんの部屋だな、と1瞬で感じた。
紫色のカーテン、紫色のカーペット、紫色のベッド。禍々しい形の化粧棚に、鏡。
とどめに、ハンガーにこの前着ていた黒いドレスがかかっている(そのほかにも怪しい服が色々あったが、触れないでおこう)。
「適当に座って。」
そう言いつつ、ベッドの上に座る善子ちゃん。おもむろに、ベッドの上に乗っていたお化けのぬいぐるみを抱える。
「…いきなり悪かったな、善子ちゃん。でも、出てきたのが親御さんじゃなくてよかったよ。下手したら通報沙汰だもんなぁ。」
「今日は、家に私一人だから。…それより、なんの用かしら?まぁ、大体読めてるけど。」
はぁ。と小さくため息をつく善子ちゃん。どうやらお見通しらしい。
「大方、ずら丸にでも頼まれたんでしょ…。私が学校来ないから、って。」
すごいな。完全正解だ。
「…ずら丸には悪いことしてるなとは思ってるわ。メールも電話も無視してるし。この前もここに来てくれたみたいだけど…。」
はぁ。と先程より少し大きめのため息をつく善子ちゃん。
「…あなたもずら丸から聞いたでしょ?私の自己紹介のこと。あんなことしちゃったのよ、どんな顔して学校行けばいいってのよ…。」
……確かに。
落ち込む善子ちゃんを見て、いやいや何納得してんだ俺。学校に連れてくんだろ、と思い直す。
「いやいや、でも、みんな気にしてないって言ってるぜ?花丸ちゃんも言ってたし。」
「…そんなわけないじゃない。どーせ、『なに、あの子?』『堕天使だって~w』『リトルデーモンって何?w』とか言ってるに違いないわ。」
ますます落ち込む善子ちゃん。…しょうがない、最終手段だ。
おもむろに携帯を取り出すと、俺は、ある番号に電話をかける。
プルルルルル…ガチャ。
『も、もしもし?』
「おっ、花丸ちゃん。今、善子ちゃんの家にいるんだけどさ。一緒に説得してくれよ。」
そう言うと、スマホのスピーカーモードをオン。
『も、もしもし?善子ちゃん?』
「ず、ずら丸っ!」
突然の幼馴染の声に、びくっと肩を震わせる善子ちゃん。
『お願いだから、学校行こうよ…。みんなも、心配してるんだよ?』
「ほ、本当?」
2人に言われることで、だんだん心が開いてきたのか、善子ちゃんが反応する。
『そうだよ。 悪いことしちゃったね、とか、早く学校来ないかなぁ、とか、みんな言ってるんだよ?』
「ほ、ほんとのほんとに?」
『本当だよ。だから早く学校に来てね、善子ちゃん。』
「…ほらな?嘘じゃないだろ?」
ありがと、花丸ちゃん。と言って電話を切ると、若干涙を浮かべている善子ちゃんがそこにはいた。
「…で、でも。またいつあんなこと言うか分かんないし…。」
「だいじょぶだって。みんな気にしないって言ってたろ?」
「それに、花丸ちゃんだって、ルビィちゃんだっているじゃん。なんも心配することなんてないって!」
ずっとうつむいていた善子ちゃん。しかし、決意したのだろう。キッ、と俺に向き直ると____
「…わかったわ。私、明日から学校、行ってみる。…ちょっと怖いけど。」
…よかった。
決心した善子ちゃんを見て、内心胸をなでおろす。よし、これで目標達成だ。
「…ありがとね。あなたのおかげかしら。」
照れくさそうに、ボソッ、と俺にそう告げる善子ちゃん。
「いえいえ、わたくし、あなた様のリトルデーモンですから。」
ニヤッ、と笑ってそう告げる。
「…そうね。リトルデーモン。あなたは特別に『1号』の名を与えるわ。永久に、私の『リトルデーモン1号』として、私の僕となりなさい!!」
「それを気をつけろ、っての。」
「あいたぁ!」
堕天使モードに切り替わった善子(ヨハネ)を、チョップで沈める。…ったく、油断も隙もないんだから。
「じゃ、明日からがんばれよ?善子ちゃん。」
「だからヨハネよ!」
完全にいつものテンションになった善子ちゃんをなだめつつ、時は過ぎていくのだった……。
一方その頃。
「おねえちゃん…。」
なにかを決心した赤毛の少女。
ゆっくりと、自分の姉の元へと歩みを進める姿があった。
自分の思いを、伝えるために。
さて、善子が学校に復帰です。
また、ルビィも動き始めるようで…。
会長との期限まで、残り僅か。間に合うのか。
残り、3日。
余談ですが、Aqoursのミニライブが当たりました。
超楽しみです♪