ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
なんとか、3日に1度は最低でも更新をしたいと思ってますので、お待ちくださいませ。
それではどうぞ。
「私のおねえちゃん…、黒澤ダイヤ。生徒会長です。」
………マジか。
おずおずとそう告げたルビィちゃんの言葉に、俺たちは口をあんぐりあける勢いで驚く。
こ、ここでも会長が絡んでくるとは…。もはや、神が妨害工作に走っているとしか思えないレベルの偶然だ。
「そ、そんなぁ…。」
思いがけない一言に、がっくりとうなだれる千歌ちゃん。…や、ヤバい。これはピンチだ。
つまり、ルビィちゃんをスクールアイドル部に入れるには、会長の理解を得ないといけない事になる。だが、俺たちは会長に毛嫌いされているわけで…。
「つ、詰んだ…。」
打つ手なし。巨大すぎる敵の前に、絶望感に打ちひしがれる。
そんな俺と千歌ちゃんを見ていた曜ちゃんは、「だからどうしたの?」という表情で、ルビィちゃんに語りかける。
「でも、ルビィちゃんはどうしたいの?」
その一言に、うつむいていたルビィちゃんが顔を上げて反応する。…と同時に俺と千歌ちゃんも。
「ルビィちゃんのお姉さんがなんであれ、大事なのは自分の気持ちでしょ?…そりゃあ、反対されるとは思うけど。私たちだって、今会長にすっごく反対されてるけど、『やりたい』って気持ちがあるから、こうやって勧誘してるんだよ?」
「ルビィちゃんは、どうしたいの?」
その言葉に、ルビィちゃんはまた俯く。…その後、「…少し、考えさせてください。」と小さな声で返ってきた。
「…そっか。じゃあ、待ってるね?」
曜ちゃんはにっこりと笑い、「教室もどろ!」と俺たちの背中を押す。
「ルビィちゃん。…待ってるね?もちろん、花丸ちゃんも!」
と最後に二人に呼び掛け、教室へと戻るのだった。
………
「…さっきはごめんね?勝手に勧誘切り上げちゃって。」
放課後のバスの中。「…今日、家まで送ってくれないかな。」と言う曜ちゃんのリクエストに応じるべく、十千万前で先に降りた千歌ちゃん、梨子ちゃんと別れ、さらにバスに揺られ続けている。
「いやいや、そんなこと。…それより、曜ちゃんがあんなこと言うなんて、正直ちょっとびっくりした。」
苦笑する俺に、少し頬を膨らませた曜ちゃんが「私、そんなにバカじゃないよ!」と俺のわき腹をつつきながら言う。
「…せっかくチャンスがあるのに、周りの事ばかり考えて、自分は遠慮する。なんて、もったいないじゃん?自分が『やりたい』って思うなら、周りが何て言おうとやればいいって思ったから。」
窓際に肘をかけて、外の景色を見ながら、そう、曜ちゃんは呟いた。
「…内心、少しだけ不安だったんだ。翔くんが励ましてくれたあとも。私は千歌ちゃんとスクールアイドル『やりたい』って思ってたけど、千歌ちゃんは、私と『やりたい』って思っててくれてるのかな、ってさ。」
そこでいったん区切った曜ちゃんは、「ちょっと、良く分かんないよね?」と少し笑ってから、続ける。
「うまく言えないけど…。私ね、なんかルビィちゃんに同じ雰囲気を感じたんだ。ほら、『会長がスクールアイドル部を毛嫌いしてるから、私は…。』っていうとこ。私も、『千歌ちゃんが誘ってくれないから、私なんて…。』って感じだったでしょ?千歌ちゃんと同じことをしたい、っていう『やりたいこと』はあったのに。」
曜ちゃんはくるっ、と俺の方へ体を向ける。
「だからね…。結果的には千歌ちゃんに誘ってもらえたけど、ちょっと後悔するところもあるんだ。『やりたい』って自分から千歌ちゃんに言えばよかったかもな、って。」
「だから…、ルビィちゃんには後悔してほしくないんだ。『自分のやりたいこと』に、ちゃんと自分で『やりたい』って言ってもらいたいな…、ってさ。」
えへへ、と笑う曜ちゃん。そこに、次のバス停を知らせるアナウンスが流れる。
「…だから、必要とあらば、もう一回生徒会長に立ち向かってもらわないとね?翔くん?」
「げっ…。お、おう、まかせとけぇ…。」
にしっ、とやらしく笑うとバスが停留所に止まったとたん、小走りで出て行ってしまう。俺は新たな一面を見た少女を追いかけるべく、ゆっくりと座席から立ち上がるのだった…。
………
「…スクールアイドル、かぁ。」
自室に戻った赤毛の少女は、お気に入りのスクールアイドル雑誌をパラパラとめくり、一番好きなスクールアイドル______『μ's』の特集ページを開く。
『スクールアイドル』___それは、自分の昔からの憧れ。何度、スクールアイドルを夢見て、そして、なりたいと思っただろうか。
「おねえちゃんも、昔は…。」
自分と同じく、スクールアイドルが大好き『だった』姉のことを思い浮かべる。…昔は、よく一緒に雑誌を見ながら語り合ったものなのに。
…いつから、こうなっちゃったんだっけ。
いつからか、変わってしまった姉の姿に思いを馳せながら、夜は更けていくのであった…。
………
「…ルビィちゃん。」
読み終えた本をパタン、と閉じると、中学からの親友___黒澤ルビィの名前を呟く。
中学の頃から3年間、ずっと一緒に居たのだ。今のあの子が本当はスクールアイドルをやりたい、ということは解っている。
「ルビィちゃん、いつも他の人の事ばかりだから…。今回は本当にやりたいこと、させてあげなくちゃ。」
薄茶色の髪の少女は、改めて自分の親友のために手伝おう、と決意する。…しかし同時に、昨日出会った3人組___こんなに地味な自分を勧誘してくれた人たちを思い出して、違う感情がじわじわと湧き上がってくる。
『本当は…自分もやってみたい__?』
と、そこまで考えてはっ、とした少女は首を横に振り、こんなに地味なんだから。と思い直す。
…そんなことより、どうやってルビィちゃんをやる気にさせよう。
今日はもう一冊読もう、と新たな本を取り出し、ぱらりとページをめくり始めるのだった…。
さて、どうやら2人の気持ちは揺らいでいるようです。
次回は、ついに堕天使降臨です。
後5日
お楽しみに。