ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~ 作:syogo
できるだけ2~3日毎に上げられるように頑張ります。
「………くん!……けるくん!」
意識の外から、若干焦り気味のような千歌ちゃんの声が聞こえる。…なんだよ千歌ちゃん、まだ起きるには早いぞ。大体千歌ちゃんが起きているのなんて珍し……。
「違う!!!!」
そこまでの思考に達した俺は、トビウオの勢いでベットから跳ね起きた。
「うわっ!!び、びっくりしたぁ…!」
跳ね起きた俺の隣には、すでに制服に着替えている千歌ちゃん。…千歌ちゃんが俺より先に起きているなんて、まずあり得ない。
瞬間的に横の目ざまし時計を見る。……時刻は8時。
「し、しまったぁぁぁぁぁ!!!!!」
榮倉翔、転入してからわずか3日目。
遅刻、確定です………。
………
「……で?遅刻の言い訳でもありますの?」
時刻は昼休み。俺と千歌ちゃんは生徒会室に呼ばれ、二人揃って生徒会長様に睨まれている。後ろのドアの向こうには、心配そうに俺たちを見ている曜ちゃん。
飛び起きた後、ダッシュで学校に急いだ俺たち。…着いたのは9時過ぎ。担任の先生は苦笑いで許してくれたが(マジで天使だ先生)、目の前にいるこの方はオーラからして怒りが見えてくる。こ、怖い…。
「い、いや…。昨日の沼津からの長距離マラソンのせいというk「はぁ?」いえなんでもないですすいません。」
もごもごと話している俺に冷たく放たれるお声。言い訳聞いてくれるんじゃなかったんですか。
「…ハァ。新学期三日目にしていきなり遅刻なんてする生徒、今まで見たことありませんわよ?たるんでるんじゃありません事? …高海さん?あなたもなにかおっしゃったらどうですの?」
俺の隣で縮こまっていた千歌ちゃんの肩が、びくっと震える。おびえた様子で、ウルウルとした瞳をしながら「助けて!」といった表情で俺を見つめる。(この表情にかわいいと思ってしまった俺がいるのはおいておこう。)
「…会長。千歌ちゃんは俺が寝ていたのを起こしていて、そのせいで遅刻したんです。悪いのは俺です、なので千歌ちゃんは許してやってくれませんか。」
頭を下げて頼む俺。を冷やかな目で見る会長様と焦る千歌ちゃん。
「ちょ…、翔くん!? …かいちょう!チカだって、いつもは翔くんに起こしてもらってるんです!今日はたまたま早く起きれただけで…!翔くんがいなかったらチカ、今日どころか3日間ずっと遅刻でした!だから…、どうか翔くんは見逃してください!」
と俺の横で同じく頭を下げる千歌ちゃん。…そんな風に思っててくれたのか。胸の奥がじーんとなる。
…が、そんな俺の感動を打ち消すが如くの会長様の冷やかな言葉が刺さる。
「…高校生にもなって、起こしてもらえないと起きれない? ぶっぶーですわ!!大体、何を言おうと遅刻は遅刻。関係ありませんわ!」
机をバン!と叩き立ち上がる会長様。声を張り上げながら続ける。
「大体、貴方達。スクールアイドル部を立ち上げようとするんじゃなかったんですの?昨日はあんなに早くから学校にいたのに…。所詮、口だけだったのでしょうね。」
「そ、そんなこと…。」
「ありますわよね?立ち上げようとする人間がそのような人では、だれも付いてくるはずがありませんわ!では高海さん、部員は集まってんですの?」
口ごもる千歌ちゃん。
「そ、それは…。まだ、私だけですけど…。」
「ほら見なさい!」
「そんな中途半端の行動なんかで、人が寄ってくるものですか。…そのようでは、いつまでも部員なんか集まりませんわ!」
落ち込む千歌ちゃんの横で、俺はだんだんと怒りを覚えてきた。…確かに、遅刻をしたのは悪かったが、そこまで言うのはおかしいだろう…?まだ一日しか勧誘はしていないのだ。それに、勧誘のための準備だって千歌ちゃんは頑張ってきたんだ。千歌ちゃんは口だけなんかじゃねぇ…!
「それは言いすぎだ、会長さんよ。…確かに、遅刻はしたけど。それ一つで千歌ちゃんの事を全否定なんて間違ってる!千歌ちゃんだって、色々頑張ってるんだ。絶対に部員は集まる!!」
怒りのせいで半分我を忘れ、敬語もままならないまままくし立てる俺。すると会長は対抗して、
「…絶対に集まるわけありませんわ!いえ、集まってなるものですか!」
「なんだと!?!?」
「「ぐぬぬぬ……!」」
にらみ合う俺と会長。それを、「ま、まぁまぁ落ち着いて…。」となだめる千歌ちゃん。…だが俺と会長は止まらない。
「そこまで言うなら、行動で示してもらいますわよ。 …そうですね、1週間以内。それ以内に集められなかったら…。」
「集められなかったら?」
「今後スクールアイドル部は何があっても承認しません。さらに、榮倉さん?あなたは生徒会の奴隷として雑務だらけの高校生活ですわぁ!!」
「…結構だ!!集められなかったら煮るなり焼くなり好きにしろ!!1週間以内で、5人どころか、6人連れてきてやるからな!!」
そう言って始まった俺と会長のスクールアイドル部と俺の高校生活を賭けた勝負。
話が終った頃には、すっかり午後の授業が始まっていたのだった…。
………
「……もう!翔くんのばか!」
「すまん千歌ちゃんこのとおり。」
時間は流れて放課後。俺は千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんに囲まれながら土下座をしていた。
「…でも、あれは会長もちょっと言いすぎだったよ。翔くんもだけど。」
そう言って苦笑いの曜ちゃん。
「す、すまん…。つい売り言葉に買い言葉で…。」
頭を上げる俺に、気持嬉しそうな表情の千歌ちゃん。
「でも、私のために言ってくれたんでしょ?チカ、嬉しかったよ! …1週間以内、って期限はついちゃったけど、5人集めるのは変わらないしね!」
ニッコリほほ笑む天使に、思わず涙が出そうになる。なんだろうね。最近、すっごい涙もろい気がするよ俺。
「あ、ありがてぇ…。そう言ってもらえるとうれしいぜ千歌ちゃん…。 てな訳で千歌ちゃん。ちょっと申請書貸してもらえる?」
急な俺の要望に「?」の千歌ちゃん。が、すぐにバッグの中を漁って、いまだ一人の名前しか書いてない申請書を俺に手渡してくれる。
「お、ありがと。…じゃあちょっと失礼して、、、はい。返す。」
シャーペンで書き込む俺。申請書を千歌ちゃんに返すと、俺の書き込んだ部分を見てとても驚いた表情をしている。
「えっ…!?か、翔くん…?ホントに…?」
「ああ、言いだしっぺだからな。アイドルにはなれないけど、裏方とか、全力でサポートさせてもらうな。」
部員の欄には、『榮倉 翔』の文字。そう、俺はスクールアイドル部に入ることを決めたのだ。俺のした事でこんな事態になってしまったのだ、男ならしっかりと責任を取るべきだろう。…それに、俺は見てみたくなったのだ。千歌ちゃんが、スクールアイドルが、輝いていく様子を。近くから。
すると、急に持っている申請書放り捨てた千歌ちゃん。俺の方に向かってきて…
「……ありがとぉぉぉ翔くぅぅんんん!!!!」
「うぉぉぉぉぉ!!!??」
いきなり抱きついてきた。俺の胸のあたりに二つの柔らかい感触が…って待て待て!!
「わかった!わかったから!千歌ちゃん、ちょっと離れて!!!」
「だってぇ~!嬉しいよぉぉぉ!!」
ぎゅぅぅぅぅ。さらに締め付ける千歌ちゃん。さらに柔らかいモノが強く押し付けられてくる。こ、これ以上はまずい…!
俺は千歌ちゃんを半強引に引き剥がすと、落ち着くべく深呼吸。やばいさっきの感触は確実におpp…はいごめんなさい考えません記憶から消します。
両サイドから軽く睨んでくる二人の視線を浴び、話を戻すべく軽く咳払いをする。
「…てな訳でだ。あとは3人集まれば一応申請はできるな。」
俺がそう言った瞬間、落ち込む様子の曜ちゃん。…大丈夫だって。
「そうだね…!!あと1週間!頑張ろう!」
と気合を入れる千歌ちゃん。そして次に、もじもじしながら曜ちゃんの方を見る。…ほぅらキタ。
「あのね…。曜ちゃん。お願いがあるんだけど…。」
「スクールアイドル部に、入ってくれない…?」
ほらな、やっぱり誘ってくれた。 …その瞬間、曜ちゃんの涙が頬を伝って地面に落ちた。
「え、えええええ!?曜ちゃん!?なんで泣くの!?」
「え……、ちが、これは……。グスッ。な、なんでもな…ヒック。」
「も、もしかして、泣くほど嫌だったり…?」
「グスッ。…ううん。嬉しくて。千歌ちゃんが誘ってくれて…!」
「な…泣くほど!? …曜ちゃん、水泳部やってるから、掛け持ちになっちゃうし、大変そうだな、って思ってたんだけど…。」
やっぱりか。大方そんな理由だとは思っていた。軽く息を吐いて曜ちゃんの方を見ると、泣きながら笑っている。うんうん、よかったよかった。
「…グスッ。私の事、考えててくれたんだ。優しいね…千歌ちゃん。…でもね、私は全然大丈夫だから。掛け持ちにはなっちゃうけど…。申請書……貸して?」
そう言って涙をぬぐいながら申請書に名前を書き込む曜ちゃん。千歌ちゃんの元に返された申請書には、3人の名前が。
「これで、あと二人だね…!」
「グスッ。そうだね…!!」
申請書を眺めながら笑う千歌ちゃんと曜ちゃんを尻目に、俺は、何かを察したのか急いで帰ろうとする梨子ちゃんの肩を軽くつかんで止める。
「…さて、後は梨子ちゃん、君だけだ。」
「………ご、ごめんなさーい!!!!」
「あっ…!ちょっ!」
俺の手を振り払って逃げる梨子ちゃん。
「お、おーい!梨子ちゃん!…追うぞ!千歌ちゃん!曜ちゃん!」
「うん!…まてー!梨子ちゃん!」
「ヨーソロー!!」
おお、久しぶりに出たな、ヨーソロー。これで曜ちゃん完全復活だな。
「って、待ってくれ二人とも!おいてくなよ!」
しみじみとする俺を置いていく二人と逃げる梨子ちゃんを追いかけ、教室からスタートダッシュを切るのだった…。
曜ちゃん完全復活です。
さて、生徒会長様が出した『1週間以内に5人以上』まであと2人です。
なんとか達成できるのか…?
次回もお楽しみに。