ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~   作:syogo

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さて、梨子ちゃんにすごい勢いで勧誘する千歌ちゃん。
梨子ちゃんは入ってくれるのか…?
そして、曜ちゃんは…?

それではどうぞ。


第14話 ~勧誘と嫉妬とヨーソロー~

 

 

 

「あーあ…。梨子ちゃんに逃げられちゃったなぁ…。」

「いや、そりゃ1日にそんな回数詰め寄ったら、さすがに逃げるだろ。」

 

ピアノの稽古があるから、とそそくさと家に帰ってしまった梨子ちゃんを見送った後。俺たちはまた、千歌ちゃんの部屋に上がっていた。

…梨子ちゃん、多分ピアノの稽古を口実に逃げたかったんだろうなぁ。と思いつつ、ちゃぶ台にだら~っとしている千歌ちゃんを見る。

 

「…よし!明日こそ、梨子ちゃんに入ってもらうように頑張ろう! 翔くんと、曜ちゃんも手伝ってね!」

「おいおい、マジかよ…。」

 

少しは自重、という言葉を学んだらどうなんだい?

梨子ちゃんもご愁傷さまです、と軽く桜内家の方に心の中で手を合わせる。

 

「あはは……。」

 

曜ちゃんは、相変わらずの苦笑い。…きっと、小さいころから一緒にいて千歌ちゃんの性格を熟知しているのだろう。どことなく、「千歌ちゃんだもんね~。」感が表情から出ている。

 

「よーし!そうときまれば作戦会議だ!明日は、1年生のあの子達のところにも行かなきゃだしね!」

「う、うん。 そうだね…。」

 

相変わらず明るい感じの千歌ちゃん。曜ちゃんも、それにつられて笑う。

…だが、俺はその曜ちゃんの笑顔が、いつもと違う感じがしてならなかった。

 

(…なんだ?気のせいか…?)

 

ついこの前知り合ったばかりで、気のせいかな。と思いつつも、俺はその曜ちゃんの笑顔が、無理に笑っていたような気がして気になったまま、千歌ちゃん主催『スクールアイドル部結成のための会議(仮)』に、耳を傾けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ。もうこんな時間。今日は帰るね。」

 

時計を見上げた曜ちゃんがそう俺たちに告げる。時刻は6時半。…ああそうか、この辺は終バスが超早いんだっけ。

 

「うん!また明日ね!よーちゃん!」

「うん、ばいばいっ!」

 

手をブンブン振る千歌ちゃんに苦笑しながら、曜ちゃんは部屋を出て行った。一瞬静まり返る部屋。…俺はさっきから気になってた事を千歌ちゃんに聞いてみることにした。

 

「なぁ、千歌ちゃん…。今日の曜ちゃん、なんか変じゃなかったか?」

「ふぇ?そう?そんな感じはしなかったけど…?」

 

きょとん、と首をかしげる千歌ちゃん。…うーん、千歌ちゃんがそう言うなら、やっぱり気のせいか?

…否、やっぱり気になる。

 

「すまん千歌ちゃん、俺、曜ちゃんの事ちょっと送ってくるわ。後片付け頼んだ!」

「…えっ!?ちょ、ちょっと!翔くーん!!」

 

そう言うと、すぐさまブレザーを羽織り、部屋から抜け出す。

玄関を出て、すぐ目の前にあるバス停へ。…曜ちゃんはちょうどバスに乗り込むところだった。

 

「す、すいませーん!俺も乗ります!」

 

ドアが閉まる寸前、なんとか滑り込みセーフ。一息つくと、目の前には少し驚いた顔の曜ちゃん。

 

「か、翔くん?どうしたの?」

「あ、いや…。辺りも暗いし、送って行こうかな~って思って。女の子一人じゃ危ないかもだし。」

 

俺グッジョブ。とっさに出した言葉としては100点じゃないだろうか。

 

「あ、ありがと…///」

 

俺への視線を外し、少しうつむく曜ちゃん。ほのかに頬が赤らめている。照れているのだろうか。…か、かわいい。

俺たちは、いつものごとく一番後ろの座席へ。…やっぱり、今日も他に乗客はいない。乗ってる人、ホントにいるのかね。

 

「曜ちゃんの家って、どの辺にあるんだ?」

「えーっと、沼津の方だよ。」

 

お、そうだったのか。てっきり、もっと近いもんだと勝手に思ってたぜ。

 

「今日も千歌ちゃん、凄かったな。マイペースというか…、突っ走ってたな。」

「そうだねぇ。私、幼馴染だから、あの感じにはすっかり慣れちゃったよ。」

 

顔を合わせて軽く笑いあう。転入生にいきなり、「スクールアイドルやろうよ!」なんて、普通言わないだろう。と、いうか普通考えもしない。

 

「まぁ、それが千歌ちゃんらしさというか…。見ていて楽しいし。」

 

ぐ~、っと背筋を伸ばしながら、曜ちゃんは少し遠い目でそう言う。その姿からは、少し…。寂しさを感じた。

 

「なぁ…、曜ちゃん。なんか、今日元気無くないか? …悩み事、とか?」

 

それに少しギクリ、としたのか、大げさに手を横に振りながら、

 

「え~?そ、そんなことないよっ。悩みなんて、別に…。」

 

わかりやすいなぁ、と内心苦笑しつつ、原因がなんとなく解った俺は、それとなく聞いてみる。

 

「千歌ちゃんのこと…、とか?」

 

ピクッ、と曜ちゃんの体が動く。…この子、多分嘘つくの下手だな。

 

「俺だと頼りないかもしれないけどさ。…もし良かったら、話してみてくれないか?話すだけでも、少しは気が楽になるぜ。」

 

その言葉のおかげなのか、ぽつり、ぽつりと曜ちゃんが話しを始めた。

 

「…私ね。小さいときから、千歌ちゃんといつも一緒にいたの。

私、高飛び込みやってるのは知ってるでしょ?あれ、小さいときから、ずっとやってるんだ。…そのせいかな。中学校に上がった時くらいから、なんとなくだけど、千歌ちゃんとの距離が少し遠くなった感じがしてたんだ。もちろん、千歌ちゃんとは仲良しだし、親友だと思ってる。

でもね…、私、不安になっちゃうんだ。千歌ちゃんのフレンドリーな性格は昔からだし、それは解ってるんだけど。千歌ちゃんがほかの子と楽しそうにおしゃべりしてるのを見ると、胸がチクッ、てするんだ。…なんでだろうね?」

 

曜ちゃんは話を続ける。…心なしか、少し、涙をこらえているように見える。

 

「それでね、高校に上がって、千歌ちゃんが「スクールアイドルやりたい!」って言った時、私、嬉しかったんだ。「これで、千歌ちゃんと、もっと一緒にいれる。」ってね。 でも…、でもね…?」

 

不意に、曜ちゃんの瞳からポタッ、と雫が一粒、床に落ちていった。

 

「私ね…?グスッ。まだ、千歌ちゃんに、「スクールアイドルやろう?」って、言ってもらってないんだよ?ヒック…。一番最初に言ってもらえると思ってたのにね…?」

「最初に言われたの…。翔くんも、知ってるでしょ…? 一年生の子たち。次に、梨子ちゃん。すごいよね。…だって、一日に10何回も勧誘されてるんだもんねぇ!うっ、うう…。」

 

目を真っ赤に腫らしながら、溜めていたことを吐き出した曜ちゃん。制服の袖口で何度も目をこすっているが、涙は止まらない。

俺は、どう答えればいいのかと固まっていると、車内に次の停留所を告げるアナウンスが流れた。

 

「…私、ここで降りるから。…じゃあね。」

 

そう言って座席から立ち上がると、走ってバスから降りて行ってしまう。

 

「ま、待って!曜ちゃん!」

 

急いで俺も後を追い、なんとか停留所付近で曜ちゃんの腕を掴む。…まだ泣いているのだろう、鼻をすする音が時々聞こえる。

 

「…明日も、あの子達の勧誘するって。いいよね、あの子達とってもかわいいもん。

…そっか。私、かわいくないもんね。スクールアイドルなんて、向いてないよね。きっと、千歌ちゃんもそう思って…。」

「そんなことない!!」

 

俺は首を大きく振り、大きな声で答える。驚いた表情で俺を見つめる曜ちゃん。だが、かまわず俺は続ける。

 

「…曜ちゃんはメッチャかわいいよ!初めてキミを見たときから、ずっとそう思ってた!「なんだこの美少女は」って!俺なんかに言われたって、嬉しくないだろうけど、絶対人気出る!俺が保証するって!」

 

大声でまくし立てる俺。曜ちゃんはというと、涙なんて吹っ飛んだような、真っ赤な顔をしている。

 

「そ、そんなこと…!あるわけないよ!じ、じゃあ、なんで千歌ちゃんは私の事誘ってくれないのさ!?一体、いつになったら誘ってくれるの!?  やっぱり、私なんてグループに入ったら、人気出なくなっちゃうからに決まってるよ…。」

 

また、だんだんと泣きだしそうな表情になる曜ちゃん。口調が弱くなっている。

俺はいったん冷静な口調になると、曜ちゃんに質問。

 

「…曜ちゃんと千歌ちゃんは小さいときからの付き合いなんだろ?」

「…うん。」

「親友なんだろ?」

「…うん。」

「そんな親友が、曜ちゃんのことそんな風に言うと思うか?」

「………ううん。」

 

ふるふるっ、と軽く首を振る曜ちゃん。また一粒、涙が地面に落ちる。

 

「じゃあ、千歌ちゃんの事信じて、待っててみようぜ?…もしかしたら、なにか考えがあるのかもしれないだろ?」

「グスッ。 …うん。わかった。」

 

ひっく、としゃくりあげながらそう答える曜ちゃん。俺は、曜ちゃんの頭に手を置いてわしゃわしゃっ、とする。

 

「じゃ、この話は終わり!…落ち着いたか?」

「……うん。」

 

にこっ、と笑う曜ちゃん。うん、やっぱり笑顔の方が良いな。

 

「そうそう、その方がかわいいかわいい。」

「そ、そんなことないよっ///」

 

顔を赤くして、照れる曜ちゃん。…かわいいのぉ。まったく。

そんな曜ちゃんを家までエスコート。辺りはすっかり真っ暗だ。

 

「…今日は、ありがとねっ。」

「いやいや、いいってことさ。…泣き虫曜ちゃんも見れたしね。」

「なっ…///」

「はは、冗談冗談。 …じゃ、また明日な!」

 

玄関先で立っている曜ちゃんも、

 

「うんっ。また明日!」

 

と手を振ってくる。俺はそのまま、停留所に向かったのだが…。

 

 

「し、しまった…。」

「バス、さっきのが終バスだったの忘れてた…。」

 

月明かり照らす住宅街の端で、一人がっくし肩を落とすのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優しかったなぁ…。」

 

自室に戻り、布団にくるまりながら、私はそうつぶやいた。

さっきは、色々と恥ずかしいところを見せてしまった。思い出して、顔が少し熱くなる。

 

「翔くん、わ、私の事…。か、かわいいって…///」

 

『曜ちゃんはかわいいよ!俺が保証する!』

 

思い出して、全身が熱くなる。…は、恥ずかしい。

 

「お世辞とはいえ、ちょ、ちょっと嬉しかったな…/// …頭なでられたのも気持ち良かったし///」

 

布団をがばっ!と全身にかぶる。なんてこと言ってんだ、わたし。ついこの前出会ったばっかの男の子なのに!

 

「でも、できればもう一回…。って!落ち着けっ!落ち着けわたしぃ!」

 

 

 

 

 

今まで感じてきた胸の痛みと違う痛みを、胸を抑えながら感じている曜なのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この話をずっと書きたかった!!!
曜ちゃん、かわいい。(泣いてる感じの表現が難しかった)

さて、曜ちゃんフラグも立ちました。

次は、誰にしようかな…。

お楽しみに。

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