ラブライブ!サンシャイン!! ~平凡な高校生に訪れた奇跡~   作:syogo

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いきなりダイヤ様(生徒会長)にエンカウント。
果たして、部の申請は通るのでしょうか。

それではどうぞ。


第13話 ~平凡な高校生と申請書と転入生~

 

 

 

 

「…で?設立の許可どころか、申請書も出さないまま勧誘活動をしていたんですの?」

 

 

生徒会長に強制連行され、生徒会室まで連れてこられた俺たち三人。目の前では、椅子に座りながら大きな机に頬杖をついて、こちらをジッ、と見つめる生徒会長。その机の上には、千歌ちゃんの名前一人が書かれた申請書が。

 

「いや~、悪気はなかったんです。ただ、部活動の勧誘期間だし、いいかな~って。」

 

えへへ、と笑いながらごまかす千歌ちゃん。

…確かに、入学式から一週間は勧誘期間らしいのだが。 さすがに、まだ部活として申請もしてないのにやってるのはまずいだろう。

俺と同じ事を思ったのか、小さくため息をつく生徒会長。…机の申請書に目を落とし、千歌ちゃんに問いかける。

 

「…部員は何人いるんですの? …見たところ、ここには一人しか書かれていませんが。」

「今のところ…。一人です。」

 

後頭部を掻きながら、言いづらそうにそう答える千歌ちゃん。 …ホントに他にアテがなかったんだな。

それを聞いて、生徒会長がワナワナし始める。手に持っている申請書が、軽くクシャクシャになる。  …ヤバい、怒り始めたぞ。

 

「……部の申請には『最低五人以上』必要なのは知っていますわよね?」

 

それを聞いた千歌ちゃん。ヘラヘラっ、と笑いながら、

 

「だ~から勧誘してたんじゃないですかぁ~!」

 

バンッ!!

申請書を机に叩きつける生徒会長。 …ヤバい、相当御立腹だ。

それでも、怒りを爆発させることはなく、(それでも相当ギリギリっぽいが)静かに立ち上がった生徒会長は、千歌ちゃんを指さし、

 

「……とにかく。こんな不備だらけの申請書、受け取れませんわ。」

 

冷静を装って静かにそう告げる。

 

「ええ~~!!!」

 

思いっきり不満を言う千歌ちゃん。 おい、やめろ!火にガソリンをぶちまけるような事するんじゃない!

 

(千歌ちゃん、一回戻ろう?)

(そうそう、一回戻って態勢を立て直そうぜ。)

 

左右からコソコソっと耳打ちする。

 

「…わかりました。じゃあ、五人集めてまた持ってきます!」

 

俺たちの説得に納得したのか、千歌ちゃんはそう言うと、

 

「しつれいしました!」

 

少し強い口調でそう言って、生徒会室から出て行ってしまった。

…っておい!!俺たちを置いてくなよ!!

 

「「し、失礼しました~。」」

 

俺と曜ちゃんも、冷やかな目の生徒会長の視線を浴びながら、そそくさと生徒会室から退出するのであった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ~ぁ……。五人かぁ…。」

 

教室に向かって歩いている途中、千歌ちゃんがため息交じりに呟く。

 

「もうおおっぴらな勧誘はできないしね…。」

 

と、隣を歩く曜ちゃん。…確かに、少なくとも校門の前であんな風に勧誘するのは不可能だろう。100%生徒会長にまたなにか言われるに決まってる。

 

「あの生徒会長も、なんか怖そうな感じだったしな。」

 

仮に、五人揃えたとしても、本当に承認されるかどうか怪しいもんだ。

…と、不安な雲行きのまま、教室に到着。

 

「あっ!!梨子ちゃん!おっはよー!」

 

教室に居た梨子ちゃんの姿を捉えた瞬間、一気に表情が明るくなる千歌ちゃん。…おいおい。

 

「まぁ、千歌ちゃんだしね…。  …梨子ちゃん、おっはヨーソロー!」

 

軽く笑う曜ちゃんも梨子ちゃんに挨拶。…っておい、なんだそのユニークな挨拶は。

 

 

「おっす、梨子ちゃん。」

 

と、俺も軽く挨拶し、自分の席に着席する。因みに席は梨子ちゃんの隣。後ろには曜ちゃん、右後ろには千歌ちゃん、という感じだ。窓際の席なので左には誰もいない。…うーん、日が差し込んできて気持ちいい。

 

「お、おはよう。千歌ちゃん、曜ちゃん、榮倉君。」

 

まだ慣れない環境に戸惑っているのか、しどろもどろそう答える梨子ちゃん。…って、俺も転入生なんだけどね。

 

「昨日は梨子ちゃんの周り、凄かったねぇ~。色んなこと聞かれたでしょ?」

「う、うん。まぁ…、ね。」

 

曜ちゃんの問いかけに、少し俯き加減にそう答える梨子ちゃん。…確かに昨日は凄かったな。

入学式が終わり教室に戻って早々、クラスの女子たちに囲まれていた梨子ちゃん。結構大変そうだったな。 …え?俺のところには来なかったのかって?うん。一人も来なかったよ。 …あれ、また目から汗が。

 

「そのせいで昨日は梨子ちゃんとなんにもできなかったんだから!梨子ちゃん、今日は一緒に帰ろーね!」

 

明るく笑う千歌ちゃんに、少し困ったような、でも嬉しそうな表情をする梨子ちゃん。…う、かわいいな。

 

「いや~それにしても、梨子ちゃんが高校生だなんて思わなかったよ!絶対大学生くらいだと思ってたもん!」

「そ、そんなことないよ。」

 

少し頬を赤らめ、胸の前で手を軽く振る梨子ちゃん。…うーん、大人っぽいなぁ。

美人で、かわいくて、プラスおしとやかそうで。完璧やな。

 

「やっぱり、東京の子は凄いねぇ~。 …ね、梨子ちゃんは東京の何高校に通ってたの?」

 

千歌ちゃんの明るさで緊張がほぐれたのか、少し表情が緩む梨子ちゃん。

 

「え?私が通ってた高校…? 言っても解らないと思うけど…『音ノ木坂学院』っていう所。」

 

それを聞いた瞬間、千歌ちゃんの目が思いっきり開いて……、

 

 

 

「き、奇跡だよぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 

いきなり叫ぶ千歌ちゃん。…おい!だからうるさいって!

すると千歌ちゃん、梨子ちゃんの手をガバッ!と取って、

 

「じ、じゃあ、梨子ちゃん、あの『ユーズ』と同じ学校に通ってたってこと!?」

「ゆ、『ユーズ』?」

「『ユーズ』だよ、『ユーズ』! あの、伝説のスクールアイドルの!!」

 

すると梨子ちゃん知らないのか、首をかしげて、

 

「す、スクール…アイドル……?」

 

困ったように聞き返す。

 

「えっ!?知らないの!?スクールアイドルだよ!?」

「ご、ごめんなさい。私、ピアノばっかりやってきたから…、そういうのに疎くて。」

 

おお、ここにもいたか、知らない人。…実は、スクールアイドルって、そんなにメジャーじゃないんじゃ?

 

「じゃあ、見せてあげる!  ……はい、これが『ユーズ』だよ!」

 

そう言って、スマホのフォルダから、ユーズの写真を出し、梨子ちゃんに見せる千歌ちゃん。

 

「え、えっと…。なんというか…、普通?」

 

キタ。 俺と全く同じ反応に、思わず内心ガッツポーズ。俺の感性は間違っていなかった。

 

「そ、そんなに普通かなぁ…?」

 

二回も同じ感想を聞いて、さすがに少しダメージをくらったらしい千歌ちゃんがどよーん、と落ち込む。

 

「あ、いや、そんな悪い意味じゃなくてね…?ほら、『アイドル』っていうくらいだから、もっと芸能人みたいな感じだと思って……。」

 

気を使い、フォローを入れる梨子ちゃん。

 

「だからね…。衝撃だったんだぁ…。」

 

同じ説明を繰り返すことになり、少しうなだれる千歌ちゃんを、何とも言えない表情で見つめる梨子ちゃんなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っていうことでね、この人たちは凄いんだよぉ。」

 

場所は変わって帰りのバス。  あの後、すぐに始業のチャイムが鳴ってしまい、話すことができなかった千歌ちゃんは、さぞかし悶々としていたことだろう。

今日までは午前中までの授業なので、その嬉しさがあるのか、さほどダメージは残っていないように見える。良かった良かった。

 

「…へぇぇぇ。私の通ってた学校にそんな凄い人たちがいたなんて…。」

 

少し驚いた様子の梨子ちゃん。…でも、意外だな。そこに通ってたのなら、なにかユーズの人たちが残した物、とかありそうだけどなぁ。

 

「…だからね、これはもう奇跡なんだよ、運命なんだよ!  だからね…。」

「スクールアイドル、しようよぉぉ……。」

「ごめんなさい。」

 

…このやり取りも11回目か。『スクールアイドル』の存在、それを作ろうとしている、という説明を梨子ちゃんが受けてから、もう11回も千歌ちゃん、勧誘をしている。

…まぁ難しいだろう。何も知らない土地に来たばかりで、不安もいっぱいだろうに、いきなり『スクールアイドル』になる、なんて普通の人ならムリだろう。それに、梨子ちゃん、性格的にも難しそうだし。

かわいいんだけどなぁ、と内心思いつつ、もう12回目に突入している勧誘の様子を曜ちゃんと苦笑いで見つめていると。

 

『次は~、十千万旅館前~。お降りのかたは、ブザーを…。』

 

アナウンスが流れてくる。…おお、もう着いたのか。

 

「ほら、千歌ちゃん。勧誘もいいけど、次で降りるぞ。 …そういえば、梨子ちゃんは、どこで降りるんだ?」

 

同じバスを使うこと自体驚いたが、まさかここまで一緒とは…。もしかして俺たちに合わせているんじゃないかと思い、聞いてみる。

 

「あ、私もここで降りるの。」

 

マジか。凄い偶然だな…。

と、『偶然の出来事』に目を輝かせるアホ毛が一人。

 

「奇跡だy……

「言わせないぞ!?!?」

 

千歌ちゃんの口元に手を持っていき、発声をガード。…軽く不満そうな顔をしているが、キニシナイ。

なんとか言わせることなく、降車に成功。千歌ちゃんの口を解放してやると、なにか言いたげな顔をしているが、ムシムシ。バスデオオキナコエダメネ。

 

「梨子ちゃんは、どこに越してきたんだ?」

 

くるっ、と梨子ちゃんの方に振り向き、問いかける。…背中から視線を感じるが、ムシm(略

 

「えっと…。あの家なの。」

 

スッ、とある方向へ指をさす。その細くて白い指が指していた場所は…

なんと。

 

「十千万の隣じゃねぇか…。」

 

度重なる偶然に驚きを通り越して感動すら覚え始める俺。 …はっ!しまった!

 

「……奇跡だよぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

俺の背中から、すっげぇ大きな声。さっき俺が防いだ鬱憤もあるのだろう。いつもより2割増し大きく聞こえる。…うるせぇ!

 

「これはもう、神様からのお告げだよ!やろうよぉ、スクールアイドル!!」

「ご…、ごめんなさいぃ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13回目となる勧誘の様子を、ため息をつきながら眺める俺と、苦笑いの曜ちゃんなのであった……。

 




今回は少し長めに頑張って書きました。

クラスでの席は、こんな感じです。  

           
               壁


            千歌    曜   窓


            梨子    翔   窓




さて、部員は無事、五人集めるのか…? 梨子はどうなのか?
翔のトイレは大丈夫なのか?

色々と、お楽しみに。

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