学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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まずは主人公の過去から片付けていく流れなので、まずはフラグから立てていきますかね。
というわけで(どういうわけか作者にも分からない\(^o^)/)、第3話です。


第3話 怪しい陰

 

 

 夢を、見た。もう6年も前、両親が死んだ後、孤児院に来たばかりの頃の夢。

 

 「・・・ねぇ、君は皆と遊ばないの?」

 

 紫陽花色の髪の、自分と同い年だろう女の子がそう話しかけてきた。悠が話す相手といったら孤児院長くらいだったので、話しかけられた時はある意味で驚いた。

 

 「・・・僕は、一人でいい。」

 

 「どうして?」

 

 そういうと、女の子は自分の隣に腰を下ろして座る。そうして、じっと自分の方を見つめてくる。

 「・・・僕がいると、皆に迷惑がかかるから。」

 

 悠がそう言うと、女の子は少しだけ驚いた顔をした。が、すぐに表情を戻す。

 

 「良かったら、話して欲しいな。気のせいかもだけど、私と君、似てる気がするんだ。」

 

 そう言って、またじっと自分を見つめてくる。悠自身にもよく分からなかったけれど、何故かこの時はすらすらと言葉が出た。

 

 「・・・父さんと母さんが、死んだんだ。怖い人達に、殺されたんだって。叔母さんが言ってた。怖い人達は自分がやっつけたけど、もしかしたらその人達が僕を狙ってくるかもしれないって。だから、此処に入れられたんだ。」

 

 「・・・そっか。大変だったんだね、君も。」

 女の子は、そう言って、少しだけ悲しそうにした。

 

 「私もね、お父さんとお母さんがいないんだ。君と同じで、悪い人に殺されたの。院長先生がお母さんの友達でね、私が此処にいるのも、私を拾ってくれた人が院長先生の所に連れてきてくれたからなんだよ。」

 

 「そうなんだ・・・何か、ごめんね。」

 悠が謝ると、女の子の表情が少し和らいだ。

 

 「いいよ、謝らなくて。もう自分の中で、納得はつけたから。」

 

 そう言うと、女の子は自分に向き直る。

 「でも、やっぱり似てるね。私達。」

 

 「・・・そう、だね。」

 

 そう自分が返すと、女の子は何かを考え込むようにした後、小さく手を打ち合わせた。

 

 「ならさ。私達、友達にならない?せっかくこうやって話もしたんだし。」

 

 意外な提案に、悠はまたしても驚かされた。過去が過去だけに、あまり人に近寄らなかったからか、孤児院の他の子も悠には近付きたがらなくなっていた。

 

 「・・・まぁ、いいけど。」

 悠がそう言うと、女の子は嬉しそうにはにかんだ。そして、自分の手をとり、外へと歩き出す。

 

 それが女の子ーーーシルヴィアとの出会いだった。それからはトントン拍子で色々と自分の周りの風景が変わっていった。

 シルヴィアのもう一人の友人である実里とも友達になり、毎日のように3人で遊んだ。それからしばらくした頃に院長先生に話しかけられて、自分に友人が出来た事を言うと、「安心した」といって頭を撫でてくれた。

 11歳になる頃には悠もシルヴィアと実里といる事が当たり前になり、院長先生や実里の計らいもあってシルヴィアとはお互いに意識するくらいには関係も進展していった。

 

 「・・・あぁ、またあの頃の夢か。最近よく見るなぁ・・・。」

 

 ガリガリと頭を書きながら、誰に聞かせるでもなくそう呟くと悠は体を起こした。何とはなしに横を見ると、夜吹が何故かニヤニヤしながらこっちを見ていた。

 

 「・・・何だよ、夜吹。」

 

 「いやぁ、お前さんが何か面白い寝言を言ってたから起きちまってさ。・・・でだ。」

 

 「あー、はいはい。好きなの持ってけよ。どうせあれだろ、聞いてたんだろ。」

 

 「話が早くて助かる。いやぁ、最近金欠でさ。ちょうど困ってたんだよなぁ。」

 

 「調子のいいやつだよ、ほんと。」

 

 「誉め言葉と受け取っておく。」

 

 「・・・はぁ。」

 

 ちゃっかりしている友人に、呆れた溜め息を漏らす悠であった。

 

 

ー■■■ー

 

 「あ、そうだ。お前、今日の放課後中庭に集合な。」

 

 「・・・あぁ、今日はユリスの決闘だっけ?夜吹が斡旋したってやつ。」

 

 通学路を並んで歩きながら、夜吹と悠はそんな事を話していた。

 「そ。ちなみに相手は序列17位の高等部3年生。ちなみに魔女(ストレガ)で、能力は気流操作だな。お姫様にとっちゃ、可もなく不可もなくって位か。」

 

 寄越されたホロウィンドウを見ながら、夜吹の解説を聞く。こうして見ると、魔女(ストレガ)魔術師(ダンテ)は本当に色々とやってのけるものだと感心するばかりだ。

 

 「そういや、何でわざわざこの人なのさ?名前を上げるのが目的なら冒頭の十二人(ページ・ワン)に頼めばいいだろ?」

 

 「分かってないな。冒頭の十二人(ページ・ワン)がそう簡単に決闘を受けてくれると思うか?」

 

 「いや、受けてくれるでしょ、何人かは。相手が序列外なら負けはないって自惚れるような人達とか。」

 

 悠がそう言うと、夜吹はまた何かのリストが表示されているホロウィンドウを寄越してくる。そのリストには数十人の名前とその横に○、或いは×と印が書いてある。

 「斡旋のために当たってみた学生のリスト。冒頭の十二人(ページ・ワン)はおろか、序列20位くらいの人達すら受けてもらえなかったんだよ。唯一受けてくれたのがその序列17位さんだったわけさ。」

 

 「へぇ・・・。」

 

 「ま、そんな訳だから、忘れずに来いよ。」

 

 じゃあな、と言いながら夜吹は自分の教室へと戻っていく。それを見送ってから、悠も自分の教室に向かった。そこからはいつも通り、ホームルームまで端末を弄り、授業を受け、ランチタイムの後また授業を受けて終わりだったので割愛。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「お、来た来た!おーい、悠、こっち!」

 

 放課後、朝言われた通り中庭に行くと、すでに円を描いて人だかりが出来ていた。その中央にはユリスと決闘相手の17位さんがいる。

 夜吹に引っ張られるようにして人だかりの最前列に出ると、ユリスが少しだけこちらを見、すぐに相手へと向き直る。

 

 「我、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトは決闘を申し込む!」

 

 ユリスがそう高らかに告げると同時に、観衆のざわめきが静まる。そして、

 

 「我、決闘を受諾する!」

 

 と、17位さんがそう告げ、決闘の成立を示すように制服につけられている校章が光った。

 同時にカウントダウンが始まり、互いに武器を構える。そして、カウントが0になり、文字が弾け・・・先にユリスが動く。

 

 「咲き誇れ、六弁の爆焔花(アマリリス)!」

 

 そう唱えると同じに巨大な火球が現れ、相手へと向かっていく。だが、相手も黙っていない。

 

 「収斂風陣(ゲイン・ブロウ)!」

 

 相手の眼前に、ちょうど横に向けた形で竜巻が発生し、ユリスが放った火球を受けとめ、飲み込む。周りが興奮を押さえきれずにざわめく中、今度は相手が仕掛けてくる。

 

 「強襲烈風(ゲイル・ドライブ)!」

 

 先程火球を飲み込み、球形になった熱風が一転、唸りながら渦を巻いてユリスへと直進してくる。対してユリスも負けじと動く。

 

 「咲き誇れ、隔絶の赤傘花(レッドクラウン)!」

 

 そう唱え、自身の前に炎の障壁を発生させてその竜巻を防ぐ。そこへ、すかさず相手の追撃が飛んでくる。

 

 「穿て、暴風槍(ストーム・レイド)!」

 

 相手の手元から、強烈な渦を巻いた風の槍が飛んでくる。直感的に、隔絶の赤傘花(レッドクラウン)でそれを受けとめた瞬間に自分は横へ待避してから障壁を暴発させ、相殺する。驚きに目を見開く相手へ、今度はユリスがやり返す。

 

 「咲き誇れ、赤熱の灼斬花(リビングストンデイジー)!」

 

 そうして現れるのは、炎で形作られたチャクラム。しかもそれが計10個。

 

 「いけ!」

 

 アスペラ・スピーナを振るい、それら全てをバラバラの軌道で相手へと飛ばす。動体視力だけでどうこうできるものではない攻撃に流石に相手の表情にも焦りが見えた。

 

 「くっ・・・風神の聖なる加護(ウィンドミル・ディアスラス)!」

 

 相手がそう唱えると、周囲に発生した風が土煙を巻き上げながら彼女へと集まり、すっぽりと覆うように包み隠す。しかも周りに気流を発生させているらしく、炎のチャクラムの軌道が無理矢理変えられ、しまいには土煙に飲まれて打ち消される。

 ・・・だが、この技が地面を覆っていた砂埃を巻き上げたために相手自身の視界も消してしまう。相手は、焦ったが故にそれを失念していた。

 

 「いけ、呑竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)!」

 

 相手が風の障壁を霧散させる。その瞬間、ユリスの足元に発生していた魔方陣から現れた火炎の竜が相手へと襲いかかる。防御障壁は解除したばかり、かつ、特性上どうしても発動までにラグがある気流操作能力。咄嗟の防御すら間に合わず、相手は火炎の竜の体当たりを受けて吹き飛ばされた。その体が地面に倒れ込み、直後にパキリ、と何かが割れるような音が響く。

 

 『決闘終了。勝者、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト!』

 

 機械音声がそう告げる。同時に、観戦していた学生達から喝采が沸き起こった。

 

 

ー■■■ー

 

 

 「へぇ・・・凄いじゃん、お姫様。」

 

 思わず、夜吹はそう呟いていた。偶然ではあろうが、咄嗟に相手の防御が無くなった瞬間を狙うなど、簡単に出来る芸当ではないからだ。

 

 「なぁ、お前もそう思うよな?・・・って、あれ?」

 

 夜吹が隣で観戦していた悠へと声をかける・・・が。いつの間にか、友人の姿は消えていた。

 

 

ー■■■ー

 

 

 一方。肝心の悠は、ユリスが勝つと確信した時点で観客の輪から離脱し、近くの人工林の中の開けた場所に立っていた。何かを探すように周囲に目を光らせる。

 

 「出てきなよ。いるのは分かってる。」

 

 悠が周囲に聞こえるようにそう言うと、ガサリと、近くの草むらを踏みながら一人の男が現れる。

 

 「いやはや、まさかあの観客の中にいて私を見つけてしまうとは。感服の極みですよ。」

 

 山高帽にコートを来た男がそう恭しく言う。悠は表情こそいつもの通りだったが、押さえきれない怒りが星振力(プラーナ)を沸き上がらせていた。

 

 「御託はいいよ。・・・で、何しに来たのさ?」

 

 「いえいえ、只の挨拶ですよ。()()()。」

 

 男がそう言った瞬間、悠の視線が鋭くなる。その男はその視線を受けながらも飄々として、

 

 「()()大切なものを作ったみたいですねぇ。あの決闘をしていたユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトさんに・・・後は孤児院で出会ったという彼の歌姫ーーーシルヴィア・リューネハイムさんと、高原実里さんでしたかな?」

 

 「・・・彼らをどうするつもりかな。」

 

 悠の視線が一層鋭くなり、声音は低く、怒気を孕んだものへと変わる。

 

 「いえいえ、何もしないと言ったでしょう?我々とて、出来る限りは無関係の人間を巻き込みたくないのですよ。まぁ、ですから彼らの事は、これから私がする質問に対するあなたの返答次第で」

 

 男は身ぶり手振り、そう言葉を紡ぐが、それは最後まで続かなかった。

 

 「・・・ふざけるなよ。」

 

 そう、背後から声がする。男がゆっくりと顔だけを向けると、そこにはいつの間にか、押さえきれない怒りで般若の如き顔をしている悠がいた。その手にはブレード型の煌式武装が握られ、その刃は男の心臓を貫いている。

 

 「彼らに少しでも手を出してみなよ。・・・君ら全員、消す。」

 

 そう言って煌式武装を引き抜く。同時に、男の体がゆっくりと地面に倒れこんだ。

 

 「・・・はぁ。」

 

 怒りを落ち着けるために、深く息を吐く。そしてその場から立ち去ろうとして、悠は最悪な人物と会うはめになった。

 

 「あらあら・・・何をしているかと思えば。これは、面白いものを見てしまいましたね。」

 

 星導館学園、生徒会長ーーークローディア・エンフィールドが嫌な笑顔と共に佇んでいた。

 




皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。さて、悠とシルヴィアとの出会い、あとユリスの決闘など、まぁ色々盛り込みましたが、どうでしたかね。
とりあえず、悠関連に関しては今後、若干シリアス要素が入ると思います。

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