学戦都市アスタリスク 黒白の剣と凛姫   作:Aike

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皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
ついに第2章に入りまして、本編とリンクしていきます。まぁ、性懲りもなく悠は悠で厄介事に巻き込まれる訳ですが。
基本的に本編の内容にリンクして進みますが、最終的な完全リンクまでは、悠サイドは綾斗サイドの出来事に陰ながら関わっていく感じで描いていくつもりでいます。
相も変わらず最初はプロローグ的な話になりますが、早速どうぞ。





第2章 新たな日々と集合する者たち
第30話 再会と平穏・・・とはいかない学園生活


 

 

 

 「やっと来た。遅いわよ、悠。何で早起きのあんたが今日に限って私達より遅い訳?」

 

 「まぁまぁ・・・悠君だって疲れる日もあるよ。ね?」

 

 寮のエントランスを出ると、既に実里とシルヴィアが待っていた。如何にも不機嫌な声を出す実里を、シルヴィアが宥める。

 

 「仕方ないだろ。昨日遅くまで鍛練やってて朝飯作るのに時間かかったんだよ。しかも朝っぱらから姉さんが電話してきて、要件聞いたら卵焼きが上手く作れないから教えてくれだぞ。意味不明だろ。何で普通の料理が出来るのに卵焼きなんて初歩が出来ないんだよ。」

 

 悠の姉ーーー光の顔が浮かんでくる。必死にフライパンと向き合っている姿を見ると、可愛らしくて笑いが込み上げてきた。

 

 「・・・ま、まぁ、そういう事なら仕方ない・・・けど!少しは時間守る努力をしなさいって言ってるの!」

 

 「頑張って努力してこれなんだよ、仕方ないだろ。てか遅くまで起きてても早起きしてるだけお前よりマシだろうが、この寝坊助。」

 

 「何よ!私だってシルヴィアのスケジュール管理とか色々忙しいんだから仕方ないじゃない!あんたよりよっぽど仕事してるわよ!」

 

 「ならこっちだって連日買い出しに出る度マスコミの取材に捕まってんだよ知ってるだろ!序列1位だって大変なんだよ自分だけだと思うな!」

 

 「何よ!」

 

 「何だよ!」

 

 と、相変わらず仲が良いのか悪いのかよく分からないやり取りをする悠と実里に、シルヴィアは今まで何度ついてきたか分からない溜め息をつく。

 

 「はぁ・・・全くもう。ほら、いつまでもくだらない言い争いしてないで早く行こう!本当に遅れちゃうよ!」

 

 「あ、ちょ、悪かったって!制服引っ張るな!伸びるから!」

 

 「あ、ちょっと・・・あぅ・・・。」

 

 シルヴィアが寮の玄関から繋がる大歩道を学園に向けて歩いていく学生達が、そんな3人をしげしげと見ている。恥ずかしいからかどんどん顔を真っ赤にしていく実里は、耐えきれなくなったのか二人の後を追いかけて走り出した。

 

 ーーーまーたやってる。

 

 ーーー羨ましいなぁ、双月。シルヴィアさんとあんな仲良く・・・。

 

 ーーーちくしょー、なんでよりにもよって双月なんだ・・・。

 

 ・・・と、中にはそんな羨望と嫉妬剥き出しの視線もあったが。少なくとも、それの原因となった悠に責任は無いのは事実だった。

 そもそも、シルヴィアが変装しないで済んでいるのは星導館学園への転入にあたって銀河と星導館学園生徒会が悠・シルヴィア・実里の3人を交えた協議の上で新たに迷惑防止を名目とした校則を設定し、他の学生達に無断の写真・動画撮影やストーカーなどの行為に対する厳正な対応を通知しその行動の加熱を抑え込む事で、彼女達の学生生活に支障が出ないようにしたためだ。それ故にシルヴィアはわざわざ変装せずとも気楽に学園内で過ごせるし、何より名目上の身辺警護も兼ねて悠が大体側にいるので盗撮や付きまといなぞしようものなら普通に処分を受けるより怖い目に合うのが明白だった事もある。

 

 「いやホント離してくれ制服千切れるから!あと実里置いてきぼりになってるぞいいのか!?」

 

 「実里も早くする!遅刻しても知らないよ!」

 

 「嫌だよ置いてかないでよ!!ていうか待ってぇ!!」

 

 「構ってモード」を発動しながら涙目で必死に追いかけてくる実里と相変わらず頼り甲斐があるのか無いのか分からない悠に、纏めて呆れるしかないシルヴィアだった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「・・・うん?何だろうね、あの騒ぎ。」

 

 「ん?あぁ・・・あれか。見た感じ決闘っぽいけど・・・。」

 

 大歩道の先、学園の正門をくぐった先の、少し開けた広場。そこに、大量の学生が集まっていた。よく見れば円を描くように集まっているようで、その中心では時折爆発が起きている。それを見て、悠は決闘をしている人物が誰かを察していた。同時に、微かに見えた姿からその相手も確認する。

 

 「・・・悠君?どうかした?」

 

 「何、急にどうしたのあんた。頭痛い?」

 

 不意にこめかみを揉み出した悠に、シルヴィアと実里が怪訝な顔をする。悠は内心で困惑を隠せずにいた。

 

 (いやいや・・・ちょっと待て。何であいつがこんなとこにいるんだ?てかそれ以前に何で決闘なんてしてるんだ?どうしてそうなった?え、何転入してきたの?だとしたら何でだ?あいつそんな特別待遇受けるほど成績とか良かったの?もう何かよく分かんねぇなおい。)

 

 と、内心で色々言っていると。不意に、視界の端に光るものを見た。刹那、悠の思考は一気に切り替わる。

 

 「・・・悪い、シルヴィ。少し荷物持っててくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言うが早いか、リュックを押し付けるようにシルヴィアに預けると悠は肩から提げていた長袋から得物を引き出す。それは、帰省した際に縁から渡された太刀だった。その鞘には、小さく文字が彫られている。

 

 "人護照世"ーーー「人を護り、世を照らす者であれ」。双月流の理念が、そこにはあった。

 

 その太刀を腰のベルトに素早く通し、抜刀姿勢を取る。そして、光が放たれる瞬間ーーー瞬時に身体強化をかけ、悠は跳んだ。

 

 円を囲む観衆の頭上をコンマレベルで駆け抜け、太刀を抜き放つ。ガキン、と。確かに何かを弾き飛ばす感覚があった。さっきまで決闘をしていた二人が、片方が片方を押し倒す形で今にも倒れこみそうな姿勢のまま驚いたように顔をあげる。

 

 「頭下げてろ・・・!」

 

 視線が交差する瞬間、それだけ言うと悠は二人の頭上を飛び越えて一瞬着地し、再び跳ぶ。その先には、広場のシンボルになっている噴水ーーーその中から今にも飛び出そうとしている、黒い影。

 その影が出てくるより速く、目標(ターゲット)と数センチの距離まで迫った悠は横薙ぎに太刀を振り抜いた。胸部へもろに刃を受け、影は激しく吹き飛んでから派手な音をたてて真っ二つに分かれ、地面に転がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーと、同時に。噴水が、派手な音をたてて崩壊した。

 

 「ふんっ・・・!」

 

 空中で体勢を立て直し、地埃を上げながら勢いを殺して着地する。顔を上げて1つ深呼吸をすると、念のため太刀は抜いたまま、倒れ付しているそれへ近づいていく。

 

 「汎用人型擬形体(パペット)・・・にしては作りが複雑だな。あくまで汎用型をベースに改造したタイプってとこか。アルルカントで運用試験してるっつう汎用作業型のやつだな・・・で。問題は誰が、何の目的でこれをユリスに仕向けたかだが・・・。」

 

 そう思考に耽りながら、背後へと振り返って・・・悠はようやく周りの視線に気づく。そして、派手に崩壊した噴水を見て。

 

 「・・・あー・・・やべ。もしかしなくても、やっちゃった感じかこれ。」

 

 そんな悠に歩み寄りながら、シルヴィアは困ったものを見る表情を浮かべ、実里は実里で呆れ果てた顔をするのであった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「はぁ・・・怪我人はでませんでしたし、行動理由が理由ですから今回は不問とはいえ・・・。」

 

 「いやもうホントすまん。割りとマジで反省してるから。頼むからそのジト目やめてくれ。」

 

 生徒会長室でそう言ってくる悠に、クローディアは深く溜め息をついた。目の前にいる序列1位のはずの少年の情けなさに泣けてくる。

 

 「・・・最近の事とはいえ、自分の立場を忘れてませんよね?貴方、この星導館の序列1位なんですよ?」

 

 「いやぁ・・・分かってるんだけどさ。どうも昔の一般学生だった頃の感覚が抜けないと言うか・・・。」

 

 「・・・はぁ。まぁ、いいでしょう。もう過ぎてしまった事ですし。それより、肝心のあの擬形体(パペット)ですが・・・。」

 

 1つ溜め息をついてから、一転して真剣な表情でそうクローディアが言うと、悠は疲れた表情で溜め息をついた。

 

 「いきなり話の方向急に変えんのやめろよな・・・まぁいいや。あれ、多分アルルカントで運用試験してるっていう汎用作業型のやつだよ。ほら、最近発表あっただろ?清掃作業とか、そういう細々した作業を効率化するために試験導入したって。確か、申し出があればテスターとして他の学園にも貸与するって言ってたよな。」

 

 「あぁ、そういえばありましたね・・・。では、犯人はそんなものでユリスを襲ったと?」

 

 「何て言うか・・・正直そこなんだよ、俺が嫌な感じがするのは。」

 

 あの動乱以来、久しぶりに見る険しい表情で悠は言葉を続ける。

 

 「現状この六花で運用されてる擬形体(パペット)って、基本的に街中の清掃だったり観光客の案内みたいに、1つの機能に特化してるものなんだよな。だから、逆に言うとそれ以外の行動パターンはインプットされてないはずなんだ。人に危害を加える行動パターンなんて、それこそ初めからそういう目的でパターンをインプットするか、何らかの形・・・一番現実的なのは魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)の能力だけど、とにかく何らかの方法で他の擬形体(パペット)のコントロールを自分が主導する位しかない。

 ・・・早い話、普通じゃあり得ないんだよ、今回の件は。明らかにユリスを狙った、犯行目的の行動パターンだったとしか思えないんだ。」

 

 悠が言い切ってふぅ、と息を吐くと、クローディアは考え込んでいた顔を上げた。早速何か考えがついたらしい。

 

 「・・・話は分かりました。とにかく、ユリスには極力1人にならないよう伝えていただけますか?私は私でさらに調査をしておきます。・・・恐らくですが、犯人はユリスだけが狙いではない気がするので。」

 

 「それは俺も同感だ。そんなに長い付き合いな訳じゃないが、ユリスが人に恨みを買うような奴じゃないのは俺も知ってる。可能性があるとしたら何らかの逆恨みか・・・あるいは、何か別の目的があって、ユリスがその目的のための排除対象だったからか、だな。多分、可能性として高いのは後者だろ。」

 

 「ですね。その線で調査を進めることにします。他に何か気になることはありませんでしたか?」

 

 「正直、行動目的が分からん上になんでユリスが狙われたかも定かじゃない状況だからな・・・分かってる状況や可能性から探るしかない。俺の方でも出来る限りの協力はするから、何かあったら呼んでくれ。・・・じゃ、俺は戻るから。」

 

 そう言うと、悠はさっさと出入口へ歩いていく。そしてドアノブに手をかけると、不意に振り返った。

 

 「・・・あぁ、それと。()()星導館(うち)に呼んだの、お前だろ。どうせこれから会うんだろうし、よろしく言っといてくれ。お前がどういう訳であいつを呼んだかは知らないが、あいつも俺と同じで大概トラブル体質だからな。気を付けろよ?」

 

 それだけ言うと、今度こそ扉を開けて出ていった。何か敵わないものを見る笑みでそれを見送ると、小さく溜め息をつく。

 

 「少なくとも、このアスタリスクで貴方ほどトラブル体質な人はいませんよ。・・・さて、と。私も準備をしましょうか。」

 

 そういうと、新たに学園の仲間となる少年を迎えるべく書類を準備し始めるのだった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「あのねぇ・・・あんた、ただでさえ最近注目浴びてるのにさらに注目集めてどうするのよ。そんなんじゃ、日頃あんたが言ってる『平穏な学生生活~』なんてこの先卒業まで無理でしょ。」

 

 「こっちだって好きであんな事やらかした訳じゃねぇよ・・・つうかあれはもう不可抗力だろ、どう考えても。あんなとこに隠れられて、噴水に一切傷つけずに対処しろとかアホか。」

 

 担任が休みになったために丸一日自習となり、談笑で騒がしい教室に戻ると、案の定実里からは小言が飛んできた。それに反論(になっているのか分からない反論を)しながら、若干不貞腐れた顔で席に戻ると隣に座るシルヴィアが苦笑する。

 

 「ま、まぁ、悠君が動いたお陰で怪我人はいなかったんだし・・・それにほら、悠君が人助けをするのはいつもの事でしょ?」

 

 「だとしてもそれとこれとは別問題でしょ・・・。」

 

 実里は呆れ顔でそう言うと、1つ溜め息をつく。人助けのためとはいえ、平気で無茶をするのはもはや性根としか言いようがない。

 

 「とりあえず、今回は大事にならないで良かったからいいけど。もう一回言っとくわ。『当事者じゃない限りは必要以上に関わらない』、『命に関わる無茶はしない』、『自分の事を蔑ろにしない』。分かってるわよね、悠。」

 

 「そこまで釘刺さないでも分かってるっての。あんな必死な顔で言われたんだから、流石にもう前みたいな無茶はしないって。」

 

 それは、悠がシルヴィアと実里と、新たに交わした約束事だった。

 半年ほど前に起き、悠やシルヴィアを含めたアスタリスクの有志学生達の手によって鎮圧された、現在では『六花動乱』という名称で歴史に記されている大規模テロ。星脈世代(ジェネステラ)ーーー特に魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)といった、その中でも特殊な者達が抑圧され、迫害されてきた怒りを爆発させたと言っても良い、あの事件。いずれ忘れ去られてしまうはずだったあの事件は、その発生を機として世界中で星脈世代(ジェネステラ)の人権が考えられるようになったという事もあり、一種のターニングポイントとして歴史に載る事となった。聞いた話によれば、どうやら外の学園の教科書にも載っているらしい。

 

 その動乱の折、悠はその渦中にいた。といってもテロに荷担していたわけではなく、勿論有志学生側としてテロリスト達を討伐していた訳だが。

 テロを首謀したのは、魔術師(ダンテ)魔女(ストレガ)至上主義者と呼ばれる集団。双月流道場に通っていた優秀な子供を自分達の仲間にしようとし、その過程で悠の両親を奪い去った者達でありーーー同時にその力のせいで居場所を奪われ、謂われのない迫害を受け、どうしようもなくなった末に力に頼るしかなかった、哀しき者達。

 悠はその事情も考えて、彼らに情状酌量をしてくれるよう叔母を通して銀河に、さらにそれを通じて統合企業財体や行政府に働きかけた。関係者当人からの申し出だったからか、当時の世論が星脈世代(ジェネステラ)の不利な現在の社会に疑念を持ち始めていたからかーーーどちらにせよ、統合企業財体と六花行政府は彼らに情状酌量の余地があると判断したらしく、余り酷い処遇にはしなかったらしい。実際、あの後悠に会いに来たというテロ参加者当人から謝罪と、自分達の現状について話を聞いた際にそういう話があった。

 

 あの動乱の際、悠が酷い無茶をした事もあってシルヴィアと実里は今まで以上に彼の行動に対して神経質になった。より具体的には、悠が何か物騒な事に首を突っ込んだり巻き込まれそうになると姉に負けず劣らずの過保護を発揮するようになった。その事もあって、悠自身ある程度は自制するようにしていたのである。そんな折に交わしたのが、先程の3つの約束だった。何かとトラブルに巻き込まれやすく、かつ首を突っ込みがちな悠を制御するためにシルヴィアと実里がユリスや夜吹も交えて考え出したものだと言っていた。

 幸いにして悠自身もある程度自制が利くようになったからか、自分をそっちのけにするような事は無くなった。そして3つの約束事もあり、悠が本当に無茶をする事は無くなったのだ。とはいえ、そんな矢先にこの事態。いくら悠が無茶をしなくなったとはいえ、二人が不安になるのも無理はない。

 

 「悠君がそこまで言うならいいけどね。本当に気を付けてよ?」

 

 「心配性だな・・・本当に大丈夫だって。ちゃんと自制するから問題ないよ。」

 

 とまぁ・・・そんな感じでその日は何事もなく過ぎていくのだった。

 

 

 

ー■■■ー

 

 

 

 「おーっす、悠!朝からつまんなそうな顔してんなぁ、おい!」

 

 「朝からうるせぇ・・・少し音量下げろバカ夜吹。頭に響くんだよ。」

 

 翌日。悠が1人で登校すると、耳障りな大音量で夜吹が声をかけてくる。悠がしかめっ面で返すと、夜吹はすまなそうに頭をかいた。

 

 「今日は高原もリューネハイムも一緒じゃないんだな。いつも一緒だと思ってたが。」

 

 「あぁ、二人は今日休みだよ。仕事の再開にあたって会社側と打ち合わせだ。引き継ぎも兼ねてペトラさんがついてくれてるし、任せても大丈夫だろ。」

 

 通学路を歩きながら、そんな風に話をする。すると、不意に背後から聞き慣れた話し声がした。

 

 「しかし、転入して早々トラブルに巻き込まれるとはお前も大分ついていないな。いや、まぁ、お前以上についていない奴がいるんだが。」

 

 「そ、そうなんだ・・・ていうか、そこまで言われる程かな、俺?」

 

 ユリスと転入生ーーー天霧綾斗だった。昨日あんな事があったばかりだというのに、呑気に話しながら歩いてくる。

 

 「人の事なんだと思ってんだよユリス。あと綾斗、お前はお前が思ってる以上にトラブル体質だ。」

 

 「む・・・何だ、悠か。聞こえていたとは、失言だったな。聞かなかった事にしてくれ。」

 

 「ならねぇよ。てか謝る気皆無かお前。酷すぎるぞおい。」

 

 深い溜め息を1つついてから、ユリスの隣でポカーンと呆けた面をしている綾斗に向き直る。

 

 「で、お前はなんでそんなアホ面してるんだっての。昨日も顔合わせただろうが。」

 

 「あ、いや・・・何て言うか、久しぶりだからさ。にしても大分変わったね、悠。特にその眼帯とか。」

 

 綾斗が指差したのは、悠の左目を覆う黒の眼帯だった。例の動乱の際、広範囲に渡ってついてしまった疵を隠すために日常生活の中ではいつも付けておくようにしていたものだ。

 

 「まぁ、色々あってな。事情は追々話すよ。てか、逆にお前は昔と全然変わらないよな。顔つきとか正にそのまんまだろ。」

 

 「それを言われると痛いなぁ・・・ちょっと気にしてるんだけど。」

 

 お互い遠慮なく、思った事を言い合う。昔馴染みという事もあるのか、堅苦しさは全くない。

 

 「何だ、知り合いだったのか?」

 

 ユリスが驚いた反応をし、夜吹は面白いものを見たとでも言いたげにこちらを見る。

 

 「まぁな。といっても、実家の道場が交流があって何度も手合わせした事がある位だ。ただまぁ、まさかアスタリスクに来てるとは思わなかったな。何だっけ、特待転入生だったか?」

 

 「まぁ、そうみたいだね。正直書類が届いた時は驚いたよ。俺が何で特待転入生なんだろうってさ。でも、姉さんの事もあって受ける事にしたんだ。何となく、ここなら姉さんを見つけられる気がしたからね。」

 

 「姉さん」ーーーその言葉に、悠は古い記憶の中の、眼鏡をかけた女性を思い出す。

 

 「あー、遥さんか。よく姉さんと手合わせして互角の勝負してたよなぁ。大分懐かしい。てか、遥さんがどうかしたのか?『姉さんの事もあって』って言ってたが。」

 

 「うん・・・まぁ、色々あってさ。細かい話は長くなるから、時間がある時にでもゆっくり話すよ。とりあえず、今は俺も自分の事で精一杯だしね。」

 

 そう言うと、綾斗はどこか曖昧に笑う。そこに微かに見えた陰りに、悠は気付いていた。

 

 

 





皆様、おはこんばんにちは。Aikeです。
はい、ようやく書き上がりました・・・いや本当にモチベーション維持するの辛かった。ほぼ毎日バイトバイトバイト・・・あああ今思い出しても嫌だわぁ・・・。
休みだからってシフト入り多すぎんよ~、流石に6連勤は辛いって・・・。お陰で毎日ヘロヘロで何もやる気起きなかったじゃんかぁ。

・・・うん、とりあえず愚痴はここまでにしましょう、うん。えーまぁ、プロローグ的な話ですがある程度補足しておきましょう。
悠は幼少期・・・より具体的に言うと第1章にて語られている事件で両親が亡くなる以前に、道場同士での交流を通して綾斗や遥とは顔見知りであり、それは光も同様です。双月流は「星脈世代(ジェネステラ)かどうかに関わらず来る者は拒まず、去る者は止めず」というスタイルなので、天霧辰明流と似た部分があるんですよね。そんな訳で、流派同士交流が多かった、という設定ですね。
今回は大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。4月からはまたいつも通り大学生活なので多少モチベーションも回復して更新ペースを早めに出来るかと思いますので、今後ともお付き合い下さい。

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