遊戯王GX 超融合 次元を超える教諭   作:スマート

3 / 4
003『古代の機械猟犬』

 

『デュエル!!』

 

決闘の火ぶたは今切って落とされた。

 

謎の男 

4000P 手札5枚

 

オベリスクフォース 

4000P 手札5枚

オベリスクフォース

4000P 手札5枚

オベリスクフォース

4000P 手札5枚

 

「寄ってたかって弱者をいたぶる決闘など私は認めません〜の。それをこのデュエルで教えてあげるノーネ」

「ふん、まさか卑怯とは言わないよな、餓鬼をおとなしく渡せばよかったものを図々しく横槍を入れてきたのはお前なんだからな」

「どうぞナノーネ、それくらいしないと私にーはとても及ばないノーネ」

 

「へっ、俺達を敵に回した事を後悔しない事だな!!」

「一瞬で葬ってやる!」

「その次は餓鬼ぃ…お前の番だ!」

 

 立て続けに述べられる挑発じみた言葉、3人の気迫に押されもう戦う気力の残っていない少年は、助けを求めるように目の前に立つ彼の背を見る。

 

「安心すると良いノーネ、この私アカ…いや今はただのクロノス・デ・メディチ…ナノーネ。この程度の事、歯牙にもかけていないーノ」

「クロノス……さん」

「ノンノーン、私のこと―は、クロノス先生と呼ぶがいいノーネ」

 

 余裕の笑みを崩さない彼はだが、良い手札だと嘲り笑うオベリスクフォースの対応を一挙一動を見逃さず観察していた。決闘において必要なのは、その場に即したカードを引き込むドロー力、だがそれ以上に自身のプレイングにその全てが左右される。相手のデッキが分からない以上、それがどういう動きをするのか、どういう風に勝利をつかむのか(勝ち筋)を推測するのは当然の事だった。

 

 今わかっている情報は少ないようで実は多い。

今、オベリスクフォースは迷いなく先行を取った。相手より早くフィールドを自分好みに作り替えることが先行の強み、だからこそ先行はデュエルにおいて多くの決闘者に好まれる。だがそれが必ずしも、勝利につながるとは限らない。『相手モンスターがフィールド上に存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合』などという後攻有利の効果発動条件を持つカードも確かに存在している以上、かのオベリスクフォースの狙いはそういった種類のデッキではないと推測できた。

 

 後攻で動くデッキではないと予想を立てた彼は、次に敵の戦力の割り出しにかかる。この場合の戦力とはつまり、プレイング(回し方)だ。1枚のカードに存在しているメリットとデメリット、それを如何に釣り合わせるかが決闘におけるプレイングの基本。

 

 先行ターンを好むデッキの主な特徴と言えば、妨害札に弱いか、妨害札が多いかという簡単な二択が一般的である。例外をあげるならば先行ワンキルと呼ばれる『特殊勝利』カードを基盤としたデッキもあるにはあるが、グールズでもない限りその手のカードの手札にそろわなければ意味がないデメリットを(複製コピー)等で克服することは出来ないだろう。

 

そして、そこまでの予想を立てたところで、彼は後攻、自分のターンが回ってきた時の動き方を3通りは考え始める。相手ターン中は暇?それは素人の考え方だ、本当の決闘者は相手ターン中相手のデッキに採用されているカードを相手のプレイングから知識と照らし合わせて分析し、まるで未来予知に匹敵するかのような最善のプレイングを披露して見せる。

 

相手ターンが長引けば長引くほど、自分は考える時間が与えられていると思えばいい。

 

「さぁ絶望すると良い、この俺のモンスターによってなぁ!俺は古代の機械猟犬(アンティーク・ギア・ハウンドドック)を攻撃表示で召喚!さらに!!効果を発動しお前に600のダメージを与える!!」

 

『古代の機械猟犬』効果モンスター

星3/地属性/機械族/攻 1000/守 1000

①:このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

②:1ターンに1度、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。

相手に600ダメージを与える。

③:自分フィールドにこのカード以外の「古代の機械」モンスターが存在する場合に発動できる。

融合モンスターカードによって決められた、

このカードを含む融合素材モンスターを自分の手札・フィールドから墓地へ送り、

その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する

 

 嘲笑を受け流し笑みを浮かべていた彼は、オベリスクフォースが招喚したモンスターを見て驚愕する。何という偶然、なんという運命のいたずらだろうか。それは。それは自身が持っているカードたちにあまりにも似すぎていた。いや……それは姿こそ違えど同じカテゴリーに属するカードだった。

 

「マンマミーア、ゴルゴンゾォーラ!?」

「あぁ……クロノス先生!!」

 

謎の男 −600 3400p

 

 古代の機械猟犬と呼ばれる緑褐色の金属で覆われた機械で出来た犬のモンスターから放たれた衝撃波は、他に彼の身体に何ともしがたい痛みを与えてきた。だが彼は、たかが600ほどのバーンダメージ程度でひざを折る軟弱な決闘者では断じてない。地に足付いた決闘者としての彼の身体は、4000超過のダメージでさえビクともしない。

 

「どうした、余りの恐ろしさに声も出せないか、所詮スタンダードの決闘者、粋がるだけの実力が伴わない屑だったみたいだな!この俺が全力を出すまでもない!カードを一枚伏せてターンエンドだ!」

「そして俺のターン!俺も古代の機械猟犬(アンティーク・ギア・ハウンドドック)を攻撃表示で招喚!さらに!!効果を発動しお前に600のダメージを与える!!」

 

「カルボナーラッ、モッツアレーラ!?」

 

「さらに俺のターン!俺も古代の機械猟犬(アンティーク・ギア・ハウンドドック)を攻撃表示で招喚!同じく!!効果を発動しお前に600のダメージを与える。どうだ、これが俺たちの実力だ、個の圧倒的な差が低能な頭で理解できたなら、さっさとサレンダーするんだな」

「その油断が命取りーになることを、思い知ると良いノーネ」

「ふんっ、負け惜しみもそこまでくると見苦しいな」

 

 再び召喚された機械猟犬によって、彼へと衝撃波が射出される。3対1の不利な状況で与えられる先行のバーンダメージ、それは例え600未満のものであろうとも3回連続で続けられれば4000というライフポイントにとってかなりの痛手になってしまう。だが彼は、たかが1800ほどのバーンダメージ程度でひざを折る軟弱な決闘者では断じてない。地に足付いた決闘者としての彼の身体は、3000超過のダメージでさえビクともしない。

 

(この程度のダメージ、私の相棒に押しつぶされーる痛みに比べれば、どうってことないノーネ)

 

 先行で繰り出される立て続けのバーン攻撃、連続して発射されるそれは確かに傍から見れば脅威だろう。だが、事この男の前では、ただ無様を晒しているだけでしかなった。

 

(召喚時バーンモンスターは珍しいけーど、攻撃力の低いモンスターを棒立ちさせておくなんーて、手札事故にして―も、所詮底が知れているノーネ。同じ古代の機械を使う決闘者として情けない限りですーノ)

 

 迷いなく先行を取ったにしては、あまりにもお粗末で幼稚なプレイング。一人目だけが伏せたカードもたった1枚だけ、これが彼の教え子だったドロップアウトなボーイだったならば、彼は何かがあると勘繰っただろう。相手の度肝を抜くトリッキーな戦術はあの生徒の得意とするものだった。だが……彼の勘はオベリスクフォース面々を前にして何も脅威を感じなかったのだ。

 

 衝撃の余波で巻き上げられた砂ぼこりをコートから叩き落とした彼は、オベリスクフォースもかくやというくらいのあざける様な嘲笑を浮かべる。

 

「所詮、井戸の中のフロッグナノーネ、ゲロゲーロォ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。