なんでもありな人間も問題児と共に異世界にくるそうですよ? 作:ゆっくりキリト
「きゃーきゃーきゃー♪見てください!こんなに大きな水樹の苗を貰いました!コレがあればもう他所のコミュニティから水を買う必要もなくなります!みんな大助かりです!」
ウッキャー♪なんて奇声を上げながら水樹と呼ばれる苗を抱きしめてクルクルと跳び回る。十六夜にコミュニティや箱庭の事情は分からないが、彼女にはとても重要な物らしい。すると、今まで何処に行っていたのか先程から姿を消していた死鬼が戻って来た。『一人の女性』を連れて。
「喜んで貰えて何よりだ、黒ウサギ。それよりも一つ聞いていいか?」
「どうぞどうぞ!―――って、死鬼さんは今までどちらに?そしてその方はいったい?」
「あ、こいつ?さっきの蛇神」
「ほぇ?」
「挑んだのは俺達二人だろ?で、十六夜の報酬はその水樹?だっけ?その苗だろ?それじゃあ俺もって事でこいつに隷属してもらった」
「この度、ご主人に隷属する事になった『白雪姫』という。白雪と呼んでくれ」
「ほ、ほぇ~~~………。あ、黒ウサギです。よろしくお願いします」
「ヤハハハハハ!やっぱお前って面白いな死鬼!」
「そうか?それよりも、さっきも言ったが、一つ聞いてもいいか?」
「あ、はい。勿論いいのですヨ!今なら一つと言わず三つでも四つでもお答えしますよ♪」
「そうか………。じゃ、遠慮無く聞かせて貰うぞ?――――――――――
――――――――――黒ウサギ、お前俺達にすっげぇ重要な事隠してない?」
「………何のことです?箱庭の話ならお答えしますと約束しましたし、ゲームの事m「違うね。俺が………いや、『俺達』が聞いているのは君達の事―――ふむ、ここは核心を突いたほうがいいか………。黒ウサギ、君達はどうして『俺達を態々異世界から呼び出す必要』があったんだ?」………ッ!」
かろうじて表情には出さなかったものの、黒ウサギの動揺は激しかった。なぜなら、死鬼が質問した内容は黒ウサギが意図的に隠していたものだからだ。
「それは………言ったとおりです。死鬼さん達にオモシロオカシク過ごしてもらおうt「ああ、そうだな。俺も初めは純粋な好意か、もしくは与り知らない誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。十六夜はどうせ暇だったんだろうし、ほかの二人も異論が上がらなかったって事は、箱庭に来るだけの理由はあったんだろうさ。だから君達の事情はとりあえず後回しにして置いたんだが―――なんだかな。俺達、少なくとも俺には、黒ウサギは必死に見えるな」………………」
その時、初めて黒ウサギは動揺を表情に出した。瞳は揺らぎ、死鬼の事を虚を衝かれたように見つめ返した。とここで、黒ウサギの横にいた十六夜からも追撃が入る。
「俺も疑問に思ってた。これは俺の勘だが。黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねえのか?だから俺達はその組織を強化する為に呼び出された。そう考えれば今の行動や、俺等がコミュニティに入るのを拒否した時に本気で怒った事も合点がいく―――どうよ?一〇〇点満点だろ?」
「っ………!」
黒ウサギは内心で痛烈に舌打ちした。この時点でそれを知られてしまうのは余りにも手痛かった。苦労の末に呼び出した五人もの超戦力、手放すような事は絶対に避けたかった。
「んで、この事実を隠していたって事はだ。俺達にはまだ他のコミュニティを選ぶ権利があると判断出来るんだが、その辺どうよ?」
「………………」
「沈黙は是也、だよ黒ウサギ。この状況で唯黙り込んでも状況は悪化するだけだ。俺と十六夜が他のコミュニティに行ってもいいのか?」
「や、だ、駄目です!いえ、待って下さい!」
「だから待ってるだろ。ホラ、いいから包み隠さず話せ」
十六夜は川辺にあった手ごろな岩に腰を下ろし、死鬼は傍にあった木に寄り掛かり、聞く姿勢をとった。しかし黒ウサギにとって今のコミュニティの状態を話すのは余りにもリスクが大きかった。
「ま、話さないなら話さないでいいぜ?俺はさっさと他のコミュニティへ行くだけだ」
「………話せば協力して頂けますか?」
「ああ。『面白ければ』な」
「………分かりました。それではこの黒ウサギもお腹を括って、せいぜいオモシロオカシク、我々のコミュニティの惨状を語らせて頂こうじゃないですか」
コホン、と咳払い。黒ウサギはポツリポツリと語りだした。