なんでもありな人間も問題児と共に異世界にくるそうですよ?   作:ゆっくりキリト

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第三話だそうですよ?

「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

「いいからさっさと進めろ」

 

 

 

いきなり空に放り出された事に対する仕返しだと言わんばかりに十六夜達に弄られ続けた黒ウサギ。さすがにこれ以上は話が進まんと思った死鬼が彼等を止め、十六夜が説明を促す。

 

 

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ“箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられたものたちだが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召還いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

 

 

両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。飛鳥は質問するために挙手した。

 

 

 

「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者”(ホスト)が提示した商品をゲットできると言うとってもシンプルな構造となっております」

 

 

 

今度は、耀が控えめに挙手した。

 

 

 

「………“主催者”って誰?」

 

「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏名だけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵”(ギフト)を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらは全て”主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」

 

「後者はかなり俗物ね………チップには何を?」

 

「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間………そして、ギフトも賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えればより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然―――ご自身の才能も失われるのであしからず。」

 

 

 

愛嬌たっぷりの笑顔だが、明らかに挑発的。そんな笑顔に同じく挑発的な声色で飛鳥が問いかける。

 

 

 

「なら最後にもう1つだけ、ゲームそのものはどうやったら始められるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!商店街でも商店が小規模のゲームを開催しているのでよかったら参加していってくださいな」

 

 

 

死鬼は黒ウサギの発言に関心した様に言った。

 

 

 

「………ほう?じゃあつまり『ギフトゲーム』ってのはこの世界の法そのもの、っつー認識で良いのか?」

 

「おや?中々鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します―――が、しかし!『ギフトゲーム』の本質はまったく逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」

 

「へえ、そりゃ中々、野蛮なこった」

 

「ごもっとも。しかし“主催者”は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければ良いだけの話でございます」

 

 

 

一通りの説明を終えたらしい黒ウサギは一枚の封書を取り出した。

 

 

 

「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには、箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんをいつまでも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我等のコミュニティでお話させていただきたいのですが………よろしいですか?」

 

「待てよ。まだ俺が質問して無いだろ」

 

 

 

静聴していた十六夜が威圧的な声を上げて立つ。ずっと刻まれていた軽薄な笑顔が無くなっている事に気づいた黒ウサギは、構えるように聞き返した。

 

 

 

「………どういった質問です?ルールですか?ゲームそのものですか?」

 

「そんなものは『どうでもいい』。腹の底からどうでもいいぜ、黒ウサギ。此処でオマエに向かってルールを問いただしたところで何かが変わるわけじゃねえんだ。世界のルールを変えようとするのは革命家の仕事であって、プレイヤーの仕事じゃねえ。俺が聞きたいのは………たった一つ、手紙に書いてあったことだけだ」

 

 

 

十六夜は視線を黒ウサギから外し、他の四人を見まわし、巨大な天幕によって覆われた都市に向ける。そして、何もかもを見下すような視線で言い放った。

 

 

 

「この世界は………『面白い』か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保障いたします♪」


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