なんでもありな人間も問題児と共に異世界にくるそうですよ? 作:ゆっくりキリト
第一話だそうですよ?
青年―――『四季咲 死鬼』が転生して数ヶ月が経った。転生してからの数ヶ月は、特にこれといったイベントも何も起きず、毎日修行や、アルトリアとの組み手ばかりしていた。まあ、死鬼自身、そんな毎日が楽しいと思っていたので、これはこれで満足していた。
今日も日課の朝の鍛錬(弓と剣術、槍術と八極拳)を終え、アルトリアと軽く組み手をし、朝食を摂っていた。
「シキ、おかわりを所望します」
「はいはい、ちょっと待ってな。っつーか、これで丼五杯目だぞ。よく食えるな、太らねぇの?」
「ええ。私は太らない体質ですので。それよりもシキ、早くおかわりを」
「分かったよ、待ってろセイバー……ほい」
「ありがとうございます。シキ」
「どういたしまして。それよりセイバー」
「どうしました?」
「いや、この世界に来てからまだ何も起きてないからこの世界がどうゆう所なのか分かって無くてさ。セイバーは何か知らない?」
「いえ、私にもよく……。お役に立てず、申し訳ありません」
「ああいや、いいよ。時が来ればあちら側から接触してくるだろうし」
と、暢気に自分のサーヴァントと会話していると、目の前のテーブルに突如として、二つの封筒が出現した。
「…これは?」
「シキ。下がってください。何か違和感を感じます」
「ああ、この手紙からだな。これは……転移術式か?これを開けたら強制的に転移するようになっているのか」
「差出人は不明。どうしましょう、シキ」
「……開けてみよう。何か引っかかる」
前世の知識に何か引っかかる。そう感じた死鬼は、アルトリアの問いに開けようと言い、二人は同時に封筒を開けた。
そこにはこう記されていた。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能を試すことを望むならば、己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの〝箱庭〟に来られたし。』
それを呼んだ死鬼はこの世界が何処なのかようやく分かった。
「…ああ。此処って問題児の…。セイバー、手を繋ごう。離れないように」
「?はい、わかりました」
(この後は多分…。『アレ』の準備をするか。)
手紙を読み終えた二人が(正確にはアルトリアが)何が起こるのか身構えていると、一瞬で二人はその世界から姿を消し―――――
――――――――――完全無欠の異世界のはるか上空4,000mに放り出されていた。
「「「『何処だ此処!?』」」」
「シキ!」
「セイバー!手ぇ放すなよ!」
アルトリアが周囲を見ると、自分達の他にも同じ境遇であろう者達が三人と一匹いた。
「シキ、あの人達を!」
「ああ分かってる!―――行け!リオレウス!リオレイア!あの三人と一匹を頼む!」
アルトリアに言われた死鬼は、あらかじめ準備しておいた二つの『モンスターボール』から、『火竜 リオレウス』と『雌火竜 リオレイア』を出し、指示を飛ばした。
そして『創世』の能力を使い、『ドラグーン』を創り、アルトリアを乗せ、それぞれが地表に着陸した。
「信じられないわ! 問答無用で引きずり込んだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだ、クソッタレ。石の中にでも呼び出された方がまだマシだ」
「………。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
軽口を叩いているヘッドホンの少年と気丈そうな少女。そして最後に無口なショートカットの少女は猫を抱き抱えながら無言で竜達の背中から降りてきた。
「此処………どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
(へぇ、よく見てるな、あいつ)
「まあそんな事は置いといて、まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ?もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは"オマエ"って呼び方を訂正してちょうだい。―――――私は久遠飛鳥よ。以後は気を付けて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「………春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。それじゃあ、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
「そして最後に、赤いジャージを着た貴方は?」
「俺か?俺は四季咲死鬼。そんでこいつが」
「セイバーです。よろしくお願いします」
「ええ。よろしく死鬼さん、セイバーさん」
死鬼は、各々思い思いの自己紹介をする三人を見ながら、これから始まる事に思いを馳せ、ゆっくりと静かに笑った。