なんでもありな人間も問題児と共に異世界にくるそうですよ?   作:ゆっくりキリト

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第八話だそうですよ?

「な、何であの短時間に“フォレス・ガロ”のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?「しかもゲームの日取りは明日!?「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!「準備している時間もお金もありません!「一体どういう心算があっての事です!」

 

 

 

日が暮れた頃に噴水広場で合流し、話を聞いた黒ウサギは案の定ウサ耳を逆立てて怒っていた。突然の展開に嵐の様な説教と質問が飛び交う。

 

 

 

「「「ムシャクシャしてやった。反省はしているが、後悔はしていない」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 

 

誰が言い出したのか、まるで口裏を合わせていたかのような言い訳に激怒する黒ウサギ。

 

 

 

「すみませんシキ。止めようとはしたのですが………」

 

「ああ、まあ仕方ないね。セイバーはそういうの許せない性格だし」

 

「すみません………」

 

 

 

その横では、自分のした事に責任を感じているらしいアルトリアを、死鬼が必死で励ましていた。すると、今まで暴れている黒ウサギをニヤニヤと笑って見ていた十六夜が止めに入った。

 

 

 

「別にいいじゃねえか。見境無く選んで喧嘩売った訳じゃないんだから許してやれよ」

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかも知れませんけど、このゲームで得られる物は自己満足だけなんですよ?この“契約書類”を見てください」

 

 

 

黒ウサギの見せた“契約書類”は“主催者権限”を持たない物達が “主催者”となってゲームを開催する為に必要なギフトである。そこにはゲームの内容・ルール・チップ・商品が書かれており“主催者”のコミュニティのリーダーが署名する事で成立する。黒ウサギが指す商品の内容はこうだ。

 

 

 

「“参加者が勝利した場合、主催者は参加者の言及する全ての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する”か―――ま、確かに自己満足だな。時間をかければ立証できる物を、態々取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」

 

 

 

ちなみに飛鳥達のチップは“罪を黙認する”という物だ。それは今回に限った事ではなく、これ以降もずっと口を閉ざし続けるという意味である。

 

 

 

「でも時間さえかければ、彼等の罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は………その………」

 

 

 

黒ウサギが言い淀む。彼女も“フォレス・ガロ”の悪評は聞いていたが、そこまで酷い状況になっているとは思っていなかったのだろう。

 

 

 

「そう。人質は既にこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけどそれには少々時間がかかるのも事実。あの外道を裁くのにそんな時間をかけたくないの」

 

 

 

箱庭の法はあくまで箱庭都市内でのみ有効な物だ。外は無法地帯になっており、様々な種族のコミュニティがそれぞれの法とルールの下で生活している。そこに逃げ込まれては、箱庭の法で裁く事はもう不可能だろう。しかし“契約書類”による強制執行ならばどれだけ逃げようとも、強力な“契約”でガルドを追い詰められる。

 

 

 

「それにね、黒ウサギ。私達は道徳云々よりも、あの外道が私の活動範囲内で野放しにされる事も許せないの。ここで逃せば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」

 

「ま、ま………逃せば厄介かもしれませんけれど」

 

「僕もガルドを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 

 

 

ジンも同調する姿勢を見せ、黒ウサギは諦めた様に頷いた。

 

 

 

「はぁ~………。仕方が無い人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。“フォレス・ガロ”程度なら十六夜さんと死鬼さんがいれば楽勝でしょう」

 

 

 

それは黒ウサギの正当な評価のつもりだった。しかし十六夜と飛鳥は怪訝な顔をして、

 

 

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ?」

 

「当たり前よ。貴方達は参加なんてさせないわ」

 

 

 

フン、と鼻を鳴らす二人。黒ウサギは慌てて二人に食って掛かった。

 

 

 

「だ、駄目ですよ!御二人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「そういう事じゃないんだよ黒ウサギ」

 

「死鬼さん?」

 

「いいかい黒ウサギ?この喧嘩は飛鳥ちゃん達が売って、それを相手が買ったんだ。なのにそれに俺達が加入するのは無粋だって事だよ」

 

「あら、分かっているじゃない」

 

「それに、セイバーが出るなら俺は出る幕無いしね」

 

「?それってもしかしてセイバーさんだけで十分で、私達は戦力外だと?」

 

「そうなのか?ご主人?」

 

「うんにゃ。別にそこまでじゃないけれど、セイバーと飛鳥ちゃん達の実力が離れ過ぎているのは事実かな。多分だけど、最低でも十六夜の十倍は強い」

 

「へえ。俺の方が弱いと?」

 

「まあ、結果的に?」

 

 

 

と、死鬼が放った十六夜弱い発言に案の定ピクッと反応した十六夜が額に青筋を立てた。

 

 

 

「シキ。私はそこまで強くありません。私はまだ未熟だ。まだまだもっと腕を磨かなければならない。それにイザヨイにも失礼だ」

 

「ああ、うん。そりゃそうか。悪い十六夜。それとセイバー。お前アレで未熟っておかしいから。間違い無く達人級だから」

 

「いや、問題は無えよ。逆にセイバー。お前に興味が出てきた」

 

「………。ああ、もう好きにして下さい」

 

 

 

丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギは会話に入り込む気力も言い返す気力も残っていなかった。どうせ失う物は無いゲーム、もうどうにでもなればいいと呟いて肩を落とすのだった。


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