笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》 作:バスクランサー
多分どっかで一気に更新頻度おちると思いますが…
とりあえず頑張ります。
落ち着きを取り戻した明石が、もう大丈夫です、と手でジェスチャーする。その顔には、さっき響に見せた、仮面の微笑みではなく、本当の安らかな笑顔があった。
「…その事件以来、私は、能力的にも精神的にも、開発が難しくなってしまって…。能力的にはなんとか慣れてはきたけど、どうしても手が開発に向かないというか…もし取り組めたとしても、精神力を使い果たしてしまって、その後しばらくはできない、みたいなことがほとんどで…今はほぼ、作業の方は夕張ちゃんに任せちゃっててさ…いつもありがとうね、夕張ちゃん」
「いえ、明石さん…」
「でもね、そういう自分も嫌で。いつか変わりたい、前の提督としていたみたいに、楽しく開発したいって、そうなりたいってずっと思ってた。
そんな時、提督と響ちゃんが来てくれた。夕張ちゃんや大淀さんも、私のことを、いつも気遣ってくれることも、改めて感じた。…今なら、できる気がする。」
「明石さん…!」
大淀の顔が明るくなる。
「あの…明石さん、」
「何、夕張ちゃん?」
「…私、明石さんがまたそう言ってくれて、本当に嬉しい。こんな時のために、ずっと内緒で用意してきたものがあるの。」
「…え?」
「ちょっと待ってて、すぐにとってくる!」
夕張はそういって、工廠の奥へと入って行った。
「これだよ、開けてみて。」
夕張が明石に差し出したのは、弁当箱くらいの大きさの箱だった。明石は夕張に言われるがままに、箱を開ける、そこには…
「……!夕張ちゃん…!」
そこに入っていたのはーーー金属製の、義手だった。
「…ごめんなさい、私は明石さんより腕悪いし、これだって全然肌の色じゃないし、金属感丸出しだし…でも、また明石さんと、前みたいに楽しく、開発を、私も、その…やりたくて…」
「夕張ちゃん…ありがとう…!!」
明石は満面の笑顔で感謝を夕張に伝える。
「明石さん…!」
「早速、はめてみるね!」
明石は夕張に教えてもらいつつ、義手を左手につけた。専用のアタッチメントとケーブルを手につなげ、固定する。
「あとは、どうするの?」
「明石さん、あとは左手を、動かしたいように頭の中で思ってみて。」
「え?」
すると、ウィィィン、という小さなモーター音とともに、義手が動いたのだ。
「…!すごい夕張ちゃん、これってどうなってるの!?」
「さっきつないだケーブルが、脳波をキャッチして、左手の動きに対応する仕組みになっているの。」
「すごいよ!これで、また簡単に開発できるよ!
本当に、…本当にありがとう!」
抱き合う2人。以前港での、悲しい涙ではなく、嬉し涙が、2人の目から溢れてきた。
「明石さん、ただこれ、ケッコンカッコカリの指輪は、伸縮性がなくて、はめられなくて…」
「いいのよ、夕張ちゃん…これを作ってくれただけでも、私は十分嬉し」
「明石さん、夕張ちゃん、決してそんな事はないよ。」
響だった。
「明石さんは知ってるかな。結婚指輪を左手にはめる風習は、決して万国共通って訳ではないのさ」
「つ、つまり?」
「僕が艦時代に晩年を過ごした、ロシアとか。それを含めた一部の国では、結婚指輪は右手にはめる風習が一般的なんだよ。」
「さすが、響だな」
俺は響の頭をなでる。ニコニコと微笑む響。
「そっか!じゃあ、私もケッコンカッコカリできるのね!」
「…明石、すごい燃えてるな。」
「もう最高練度は達してるし、提督に申し込んじゃおうかなー、なんて」
「!?」
「冗談ですよ、もー」
「ははは、まあ俺も昨日来たばっかだからな。」
工廠の五人全員が、笑顔と温かい雰囲気に包まれた。
「とりあえず、この手使って、また開発ができる気がする。提督さん、資材資材!」
「いや、まず何作るんだ」
「あ…どうしましょう」
「そうだ明石さん、何か鎮守府の迎撃設備を作ってみてはどうでしょう。」
「それいいね、大淀さん。確かにここの鎮守府も時々、敵が攻め込んでくるからね…」
大淀のアイデアに夕張が賛成する。
「迎撃の砲台か…でも、どういうのがいいんだろう…」
考え中の明石。その時、俺の脳内に思い当たる、ある一つのものがあった。
「そうだ明石、いいものがある!すぐに設計図をとってくるよ!」
「ちょ、ちょっと提督!?」
俺は猛ダッシュで執務室へ向かった。部屋の大型金庫の鍵を開けて、中から大きめのアタッシュケースを取り出す。そしてさらにそのロックを開ける。中に入っている大量の紙の中から、一枚のある設計図を取り出した。
「じーさん、使わせてもらうぜ…」
再び猛ダッシュで工廠へ行って、明石にその設計図を渡す。
「提督、これは…なんですか?
シルバー…シャーク…G?」
「じーさんの遺品の一つだ。迎撃用の熱線ビーム砲台だよ。」
「え…!?すごい、ていうか提督のお祖父さんって、何者!?」
驚く明石と夕張。対して驚かない響と大淀。
「大淀さん、響ちゃん、なんか知ってるの?」
聞き返す明石と夕張に、俺は言う。
「響とは長い付き合いだし、大淀にはここに着任する際に説明してある。2人にも今度話すから。」
「ぶーぶー、提督のいじわるー」
「まあまあ夕張ちゃん、でも確かに、この砲台は強力そうね。」
「だろ?明石、夕張、お前達の力を借りたい」
「もちろんです!」
「頑張ります!」
笑顔で了承する2人。
早速作業が始まった。明石も、先程までと全く違う、生き生きとした姿で、義手の左手と右手で組み立てていく。
「…想像以上だな…」
「明石さん、すごいでしょ」
自慢気に言う夕張。大淀や響も、部品や差し入れの軽食を持ってきてくれたりと、色々手伝ってくれた。そのおかげで、はっきり言って数日かかると思っていた作業は、その日の夜7時過ぎには、設置も含めて終わっていた。
「すげえ…」
「いえいえ、これくらい大したことないです!
それと、肝心のビーム砲部分には、私が前の船に載せた、熱線砲の技術を少し取り入れてみました。…前まで辛かった開発も、不思議と、すごく楽しく出来ました!
みなさん、本当にありがとうございました!これからも、頑張ります!よろしくお願いします!」
お礼を言う明石に、俺もみんなも盛大に拍手した。しばらく話をした後、俺達は工廠を後にして、食堂で夕食をとり、部屋に戻った。そしてその夜ーーー
「今日はさすがだったね司令官、ハラショー」
「そっちこそ、だよ。ありがとな、響。」
響は今、俺の肩をマッサージしてくれている。…ガチで気持ちいい。
窓の外を見る。月が綺麗に輝き、波も静かそうだ。
「響、これから少し夜釣りに行って来ようかな。まあ、すぐにもどると思うけど。」
「わかった、司令官。寝る用意整えて待ってるね」
「おう」
俺は棚から釣り道具一式を取り出し、夜の港へ向かった。ここら辺ではどんな獲物が捕れるか、少し楽しみである。
「ふう、やはりというか、この時間だと誰もいないな…もうフタマルサンゴだしな…ん?」
俺の目に、一つの人影が映った。
「あれは……?」
明石さんはこんな感じで。
なんとか書けてよかったです…ふぃー。
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ここまで読んでくれてありがとうございました!
これからも頑張ります!