笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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さて今年最後の投稿です。
比較的結構長めです。

どうでもいいけど最近、2日に1回のペースで自転車のチェーンが外れるようになってきた…(泣)

本編どうぞ。
※サブタイトルにヤマト、とありますが、艦娘の大和さんは出てきません。
また、わかる人はわかると思いますが、矢的猛さんやウルトラマン80も出てきません。
ご了承ください。


走れ榛名!勇気のフォーメーション・ヤマト!

 ーーー洋上

「霧島さん、大丈夫なのです!?」

「え、ええ。でも、推進装置部分を集中的にやられてしまったわ…」

「掴まって、今曳航の準備するわ!」

 突如として混乱に陥る艦隊。出撃中に空母棲姫率いる強力な敵艦隊に遭遇してしまっていた。

 空を埋め尽くす何機もの敵艦載機。さらにそれらからは魚雷や爆雷の雨が降り注ぐ。推進艤装を集中攻撃された霧島は大破。砲撃はまだ可能なものの、自力航行が不可能になってしまった。

「敵艦隊を目視で確認したわ!相手は空母棲姫に、タ級2隻、リ級1隻よ…!」

「潜水ヨ級2隻分の反応もあるのです!はわゎ!」

「雷、電、報告ありがとう。今、司令官に救難信号を送ったから!」

「ナイスよ響!とにかく、早くここから逃げないと!」

 曳航の準備が整った。だが…

「榛名さん、退避するのです!…榛名さん?榛名さん…!?」

 電の目には、海上に立ち尽くす榛名の姿が映っていたーーー

 

 ーーー第35鎮守府

「大淀!救援艦隊をすぐに霧島たちの救助へ向かわせるぞ!」

「はい!」

「それと、スカイマスケッティの出撃準備も頼む!」

 俺はスカイマスケッティを起動すべく駐車場へ、大淀は執務棟へ走る。

 まもなくして、指名した艦娘たちが港へと集まった。金剛、比叡、島風、鳳翔、天龍、龍田の6名を今回抜擢した。俺はジオアトスでそこに合流する。

「榛名…今、おねーちゃんが助けに行きマース!」

「霧島、すぐに行くからね!」

 やはり、妹が危機に陥っている中の金剛型姉妹の使命感はすごい。すると、鳳翔が手を挙げた。

「あの、提督…敵に空母棲姫がいると聞いたのですが…私だけでは、不十分なのでは?」

「大丈夫だ、鳳翔。」

 ちゃんとした根拠のもと、俺は返す。

「俺のスカイマスケッティもあるし、それにお前が鍛えてくれた赤城の使う、基地航空隊の新兵器があるからな。もちろん、慢心はしていないが」

「そ、そうですか…分かりました。」

「おう。よし、全員出撃準備は出来たか?」

「「「「「「はい!!」」」」」」

「よし、分かった!救援艦隊、出撃!」

 6人は一斉に海上を走り始めた。俺も、ジオマスケッティにジオアトスを合体させる。

「ジオアトス・ジョイン・トゥ・ジオマスケッティ!」

 スカイマスケッティが完成、艦隊とともに救援に向かったーーー

 

 ーーー「あ…あぁ……」

 榛名は、これまでとは桁違いの敵に、かなりの恐怖心を覚えていた。そしてその恐怖心は、虐待された時の辛い記憶をフラッシュバックさせてくる。襲いかかる記憶の波は、彼女の心を蝕み、心を再び深い闇の底へと誘おうとする。その時ーーー

「榛名さん!」

 突然、自分の手を強く引っ張る存在。響だった。

「…響ちゃん!?」

 引っ張られて強制的に移動させられる榛名。すると、今さっきまでいた場所に、艦載機の機雷が落ち、高く水柱を上げる。

「響ちゃん…ありがとう…」

「大丈夫かい、榛名さん」

「ええ…ごめんなさい…なんかね、すごく怖くなっちゃって…足でまといになっちゃって…ごめんね」

「そんなことないよ!」

 響は力強く榛名に言い放つ。ハッとする榛名。

「確かに誰だって、怖いと感じる時はある。でも、誰だって、それを乗り越える力を持ってるんだ!榛名さん、あなたも!」

「私…!?でも、私なんて…」

「その私なんてっていう言葉、前に僕があなたに禁止令を出したはずだよ。それにその時僕は言ったじゃないか。榛名さんは本当に強い人だって。」

「響ちゃん…ありがとう…」

「いいんだ。とにかく、早く撤退をーーー」

 その時。

「響ちゃん、危ないっ!!」

 榛名はとっさに響を自分の身に抱き寄せ、そして上空へ砲撃。飛んできた敵艦載機は炎上しつつ海へと墜落した。

「榛名さん…すごいじゃないか…!」

「あ…わ、私…できた…!」

「ありがとう榛名さん、助かったよ!」

「お礼は後よ響ちゃん!急ぎましょう!」

 なんとか霧島たちに合流し、撤退を始めるが…

「こっちよ…!?」

「し、しまったわ!」

 既に周りは、空母棲姫によって出された敵艦載機に囲まれていた。

「どうしよう…!!」

 敵艦載機はこちらに機銃を構える。さらに向こうから、タ級をはじめとする他の深海棲艦も近づいていた。と、その時ーーー

 

 ドカーーーン!!

 

 ーーー「…え…?」

 突如として敵艦載機が、飛んできたミサイルによって爆発した。思わずミサイルが来た方角に振り向く6人。そこには…

「あの大きな船…何!?」

「翼があるわ…!!」

 銀色の機体、広がる大きな翼。見たことのないメカが、空を飛び、敵艦載機を次々と撃ち落としていく。

「はわゎ!あれは何なのです!?」

 ここの6人の中、響だけがその答えを知っていた。

「司令官が明石さんたちと作っていた、基地航空隊用の空中母艦だよ。資料の中で見たことがある…!UGMのスペースマミーだ!!」

「スペースマミー…!?」

「提督…こんなすごいもの、作っていたの…!?」

「ああ、そうだよ!!」

「いつの間に…って、提督!?」

 榛名の言葉に、なんと提督本人の声が返ってきた。そして、声が飛んできた方向からーーー

「遅れてすまん!皆、大丈夫か!?」

 提督の乗ったスカイマスケッティが駆けつけた。

「司令官ー!」

 響が叫ぶ。

「救援艦隊がもうすぐ到着する!戦闘はそっちに任せて、早く撤退しろ!」

「待ってください!!」

 提督に待ったをかけたのはーーー他でもない、榛名だった。

「私も戦わせてください!」

「榛名お姉様、無理はしないでください!」

 制止をかける霧島。しかし、

「お願いです!今なら、私、できる気がするんです!」

「お姉様…」

 すっかり頼もしくなった榛名を見つめる霧島。その袖を引く者がいた。

「霧島さん…榛名さんを、信じてあげようよ。きっと大丈夫だから」

「響ちゃん…そうね、今のお姉様には、きっと何を言っても無駄でしょうね…」

 過去の恐怖を乗り越えた姉に、成長を感じる霧島。

「榛名お姉様、しっかりね!司令も、榛名のことをよろしくお願いします!」

「はい!」

「任せろ!」

 曳航を始め、母港へと撤退する霧島と第六駆逐隊。やってきた救援艦隊とすれ違う。

「霧島、good jobネー!」

「後は任せて!」

「金剛お姉様、比叡お姉様…よろしくお願いします!」

「了解ネー!皆サーン、ついてきてくだサーイ!follow me!!」

 救援艦隊、そして榛名、提督のスカイマスケッティに基地航空隊のスペースマミーが、敵艦隊と向かい合う。

「全員、攻撃開始!!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」」ーーー

 

 ーーーまず襲いかかるのは、空母棲姫の飛ばした艦載機。だがこちらには、とっておきの武器がある。俺は母港の赤城に通信を送る。

「赤城!スペースマミーの全搭載機を発艦させろ!」

「はい!全搭載機、発艦準備!」

 スペースマミーはミサイルやレーザーで応戦しつつ、前部を変形。リフトに乗って、妖精さんたちの乗った多くの戦闘機がそこに上がってくる。

「発艦!!」

 赤城の命令に合わせ、UGMの何機もの主力戦闘機ーーースカイハイヤー、シルバーガル、エースフライヤーが発艦していく。

「全機、ファイヤーストリーム発射!!」

 さらに命じる赤城。一斉に大量の戦闘機から強力なレーザー・ファイヤーストリームの弾幕が形成される。喪失していた制空権は、逆に一気にこっちに傾いたーーー

 

 ーーー一方の海側では、海中からそっと忍び寄ってくるかのごとく、潜水ヨ級が近づく。

「潜水艦は任せろ!行くぜ、龍田、鳳翔さん!」

「分かりました!」

「ふふ、了解よー」

 龍田は頭部の艤装で、片方のヨ級の位置を探る。

「…死にたい艦は…そこね。」

 そして、サディストの笑みを浮かべつつ、長い薙刀型の艤装を、思い切り海面に突き刺す。

「クリーンヒット〜」

 その薙刀は、モリを突く漁師のように、ヨ級を正確に突き刺していた。

「天龍ちゃ〜ん、行くわよ〜」

「おう!」

 龍田は薙刀をジャイアントスイングの要領で振り回す。そしてスポーンと、ヨ級を上空高くへ投げ飛ばした。

「おっしゃー!」

 天龍はタイミングを見計らって飛び上がり、

 落ちてくるヨ級の首を自身の剣の艤装で斬り落とした。ウルトラマンレオと出会って以来その強さに憧れた天龍は、ウルトラ戦士たちの必殺技(近接格闘技)を学びまくった。今の技(天龍曰く、天龍空斬剣というらしい)も、ウルトラマンジャックのスライスハンドを参考にした…らしい。

 ともあれ、斬られたヨ級は力なく海の底へ沈んでいった。

「へっ!ざまぁみろ!」ーーー

 

 ーーー「軽空母だと、甘く見られては困りますね」

 鳳翔は静かにそう呟き、2機の戦闘機を発艦させる。チームDASHのダッシュバード3号と、GUYSオーシャンのシーウィンガーだ。搭載機数で軽空母は、正規空母には到底敵わないが、対潜攻撃ができるのはその大きな利点だ。それを見込んだ提督が装備させたのが、今の2機の戦闘機。そう、これらは追加装備なしで、なんと水中潜航ができるのだ。これが、ウルトラ艦載機流の対潜攻撃なのである。

「敵潜水艦発見、攻撃開始!」

 鳳翔の命令に合わせ、ダッシュバード3号からはミサイル、さらにシーウィンガーからはスペシウムトライデントが放たれる。これにはさすがのヨ級も耐えられるはずもなく、一瞬で海の藻屑となった。

「潜水艦は仕留めました!」

「みんな、ありがとう!」ーーー

 

 ーーー彼女たちの間を抜け、提督たちは敵陣に切り込んでいく。

「榛名は大丈夫…ひとりじゃない!」

 榛名はそれを改めて感じ、力強く進む。一方、空母棲姫の艦隊から、まずはリ級が向かってくる。

「ここは私に任せて!」

 島風はそう叫び、リ級を外側へと誘う。すかさずリ級の砲弾が飛んでくるが、それを余裕でかわす島風。そして一気に距離を詰めてからの、

「遅いっ!」

 文字通りの一蹴ーーーそう、島風はリ級に思い切り両足飛び蹴りを食らわせた。なす術なくそのパワーに吹っ飛ばされるリ級。島風は蹴ったモーションの後にすぐさま魚雷を水中に打ち込む。そして…

「連装砲ちゃん!そこよ!」

 連装砲ちゃんから砲弾が発射され、空中を吹っ飛び続けているリ級に命中。海面に打ち付けられたリ級にとどめを刺すのは、着水点にちょうどやってきた、先程発射された魚雷だった。

 目にも止まらぬ連続攻撃に、あっけなくリ級は完敗したーーー

 

 ーーー「司令!残りはタ級2隻と空母棲姫のみです!」

「テートク、あの3隻は撤退体制に入ろうとしてるデース!どうするネー?」

 もちろん俺の答えは一択だ。

「ここで仕留めよう。な、榛名。」

「はい!もちろんです!」

「榛名…私も嬉しいデース。あなたがこんなに成長シテ」

「私も、姉としてこんなに嬉しいことはないです、榛名」

「金剛お姉様、比叡お姉様…」

 金剛型の長女、次女と三女、四女はそれぞれ別の鎮守府の出身だ。しかし、まるで初めからずっと繋がっていたかのように、絆は深まっている。そのことは今この場の3人、そして曳航されている霧島が一番わかっているようだ。胸が熱くなる。と、

「おっ!?みんな、護衛のタ級1隻が針路を変更、こっちに向かってくるぞ!」

「榛名!向かってくるやつは、私たちに任せるネー!ヒエー!」

「はい!気合い、入れて!援護します!」

「お願いします、お姉様!!」

「頼んだ!」

 向かってくるタ級をひきつける金剛と比叡。俺と榛名はさらに空母棲姫たちを追う。

「くらえっ!ファントン光子砲、発射!」

「主砲、砲撃開始!」

 スカイマスケッティの主力装備のファントン光子砲、そして榛名の砲撃によって護衛の方のタ級が沈む。もう一方も、金剛と比叡によって撃沈された。

「金剛と比叡は、残存する敵艦載機を、こちらの戦闘機とともに撃墜せよ!」

「了解ネー!」

「はい、司令!」

 俺と榛名は、いよいよ空母棲姫との決戦に挑む。

  「オノレ…!シズンデ…シマエ…!!」

 その重く、禍々しい声に一瞬怯む榛名。俺はすかさず彼女を鼓舞した。

「榛名!大丈夫だ、俺がついてる!今のお前は、そいつなんかに負けはしねぇ!!」

「は、はい!提督!!」

 よかった。なんとか持ち直してくれた。しかし。

「ファントン光子砲、発…おわっ!?」

「勝手は榛名が、許し…きゃあっ!」

 空母棲姫が突如として艦載機を発艦させてきたのだ。

「畜生、艦載機がまだ護衛についているのか!!」

「どうしましょう提督!これでは近づけません!なんとか、空母棲姫の気をそらさないと…」

「気をそらすって言っても…ん…!?」

 その時、俺の脳内に閃光が走った。

「…そうだ、あれをすればいいんだ!榛名、一旦距離を置くぞ!」

「えっ!?あ、はい!」

 空母棲姫の護衛艦載機から距離をとる。

「提督、どうなさるおつもりですか…?」

「榛名。

 フォーメーション・ヤマトで行くぞ。」

「え…?提督…鎮守府に大和さんは着任してませんが…?」

「いや、その大和じゃなくてな…」

 

 ーーーフォーメーション・ヤマト。UGM隊員の矢的猛が考案したフォーメーションである。かつて出現した再生怪獣サラマンドラの、唯一の弱点である喉を攻撃するためにとられた。2機の戦闘機を使うその作戦の内容は、先行した1機が怪獣の頭すれすれを飛行し、怪獣が頭をあげて喉が顕になったところを、後続のもう1機がそこを叩く、というものーーーというのを、俺は榛名に説明する。

「この作戦はタイミングが命だ。榛名、出来るか?」

「…はい!榛名、頑張ります!」

「よし、その意気だ!」

 俺と榛名は再び針路を空母棲姫へと変更する。敵艦載機の迎撃も、金剛と比叡が全力で阻止していく。

「榛名!fightデース!」

「私も、頑張るから!」

「はい!お姉様!」

 距離はそろそろだ。俺は榛名の前に出て、ありったけのミサイルで敵艦載機を撃墜させ、空母棲姫の目の前の水上にファントン光子砲を叩き込む。立ち上る水柱、飛び散る水しぶき。俺はハンドルを思い切り回し、空母棲姫の頭すれすれで急旋回、そのまま斜め上へと急上昇する。

「よし、空母棲姫の注意はこっちに引けた!

 今だ、榛名!!」

「はい!」

 おそらく、空母棲姫がやつの艦載機とともに上空のスカイマスケッティに気を取られたのは、ほんの少しの間だっただろう。しかし、榛名にとっては、それはもう充分だった。

「榛名!!全力で!!」

 その叫びを耳にし、空母棲姫が前を向き直した、そこにはーーー水しぶきの中をくぐり抜けて現れた、榛名。

「参ります!!!」

 榛名はそのままゼロ距離に詰め、ありったけの力を込めて砲撃。その体を砲撃で撃ち抜かれた空母棲姫は、目覚めた榛名の力、そして勇気の前に敗れたのであったーーー

 

 ーーー「やった…やりました、提督!!空母棲姫、撃沈を確認!」

「よくやったぞ榛名!よし、今度はこっちの番だ!」

 俺と金剛、比叡、さらに上空のスペースマミーなどは、敵の置き土産である艦載機を狙う。母艦を失って混乱している敵を落とすのはたやすくーーーものの一瞬で、それらは空から姿を消した。

「よし!!勝ったぞ!!」

「Yeah!」

「榛名!おめでとう!!」

「はい!お姉様、提督…!!本当にありがとうございます!榛名、本当に…!!」

 榛名は海上で思い切り金剛と比叡に抱きついた。

「よかったですぅ…ぐすっ…お姉様ぁ…!」

「ふふ、榛名は甘えん坊サンネー」

「可愛いですね…自慢の妹は」

 俺も本当によかったと心から思った。さて、鎮守府に帰投するとしようかーーー

 

 ーーー翌日 ヒトゴマルマル

「ヘーイ、テートク!そろそろティータイムにするネー!」

「時間的にもそうだな。行くか、響。」

「ハラショー!」

 そして、金剛型の団体部屋まで行くと、既にそこには比叡、そして榛名と霧島がいた。

「久しぶりのティータイム…榛名、感激です!」

「心から楽しめるようになって、本当に妹として嬉しいです。響ちゃん、本当に榛名を立ち直らせてくれてありがとう」

「ううん、こっちこそ。」

「モー、話ばっかりじゃ、せっかくの紅茶が冷めちゃってノー、なんだからネー!」

 今日もまた、緩やかな時が過ぎていくーーー




というわけで、今年も読んでくれてありがとうございました!

来年もまだまだ続くので、ぜひともよろしくお願いします!

感想、評価もお待ちしております!
それでは皆様良いお年を!また次回、また来年です!

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