笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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遅くなりました、すみません!

注意:おおとりゲンの一人称は、提督目線だとおおとりさん、第三者視点だとゲン、とします。ご了承ください。

もう一つ注意:この章の各話サブタイトルは、ウルトラマンレオのそれをもじったものとすることにしました。これまたご了承ください。

本編どうぞー!


凄まじい男の過去

「おおとりゲンさん、ですか…」

 そう名乗った男。その左手には、黄金の獅子をかたどった指輪がついている。それに気づき、今までの言動を辿って…ピンときた。

「まあ今だから言えることだが…今言ったのは、あくまでも仮の名なのだがな。」

「…ですよね」

 俺はまあ察したからそう答えたが、

「ええっ!?まじかよ」

「あら?つまり、偽名ですか?」

 …天龍と龍田がそう聞く。まあこの反応の方が、本来は正しいのであろう。

「じゃあ、あなたの本当の名は…?」

 そう尋ねる響。男は左手を、というよりその手の指輪を俺達に見せるように顔の横へ移動させ、静かに、しかし強く言い放った。

「…ウルトラマン、レオだ。」

 

「ウ、ウウウルトラマンレオ!?」

「こら天龍ちゃん、声が大きいわよ〜?」

 龍田の威圧じみたその言葉と笑みに、慌てて口を封じる天龍。

「…黒潮島は、ウルトラマンレオの出現が地球上で初めて確認された場所。双子怪獣の襲来で亡くなった方々への追悼という意で来たという理由から、なんとなく思っていました。決めてはその指輪ですけど。MACに勤めていて、マッキーの存在を知っているなら、配属は宇宙ステーション基地の方でしたよね。」

「ああ。」

「あそこはかつて敵の奇襲で全滅したと聞いてます。唯一の生き残りが、あなたですよね?おおとりさん。」

「ふふ…君は何もかもお見通しだな。お祖父さんにそっくりだ。」

「それはどうも、光栄です。」

 2人の会話の光景ーーーというか、普段はなかなか見られない鋭い提督に、若干驚く響、天龍、龍田。

「…まあ、ここ地球は、もう私の第2の故郷だからな…追悼のために来たつもりだったが、ここで、かつてメカニックだったお祖父さんの孫である、君と出会えたのも何かの縁だ。

 さっきこちらの方々が言っていた、島風という艦娘の修行…手伝わせてもらえないかな?」

「おおとりさん…。そうですね、よろしくお願いします。」

「ええっ!?二つ返事って…すげえあっさり…」

「天龍、そう思うかもしれないが、実は島風とおおとりさんは、境遇がとてもよく似ているんだ。」

「まじかよ…」

「気になるわね〜」

 そう言ったのは龍田。響も、興味津々という顔だ。

「そうだな。島風の修行を手伝う前に、私の話を少ししようか」

「じゃあ、映像をご用意します」

「おお、気が利くな。」

「いえ…」

「では僕はお茶菓子を」

「はは、どうも。」

 おおとりさんは笑顔でそう言った後、1つ、と俺たちに付け加えた。

「これから話すことは、時が来るまで、島風とやらには話さないでおいてくれ。頼む」

「はい、わかりました。」

「お、おう」

「はーい」

「うむ、ありがとう。ではまず、私の地球にやってきた経緯から話そうか。

 私の真の故郷は、獅子座にあるL77星だった。しかしそこは、凶悪な宇宙人・マグマ星人によって滅ぼされてしまったのだ。弟のアストラとも生き別れになって、私は単身、L77星と環境がよく似ている地球へと逃げ延びてきた。

 その頃地球は、M78星雲のウルトラセブンが守っていた。しかし、マグマ星人は地球に侵攻し、双子怪獣のブラックギラスとレッドギラスを操り、セブンを倒してしまった」

 映像には、怪獣たちの大津波によって被害を受ける黒潮島の様子がわかる。あまりの衝撃的光景に、言葉が出ない響たち。

「私はマグマ星人、双子怪獣へと挑んだ。しかし、その頃の私はまだまだ未熟で、しかも心は故郷を滅ぼされた憎しみで満ちていた。島のことなど全く、その時は頭になかった。双子怪獣をなんとか退けた後に、ウルトラセブンの人間体…MAC隊長でもあったモロボシ・ダンさんに、物凄く怒られた。」

「そんなことが…」

 真剣に聞き入り、そう呟く響。

「その後、双子怪獣を倒すために隊長は私に特訓をさずけてくれた。そのおかげで私は双子怪獣を完全に撃破できた。そして、変身不可能となった隊長に代わって、私は地球を守る決心をした。」

「それからは、何があったのかしら…?」

 そう言ったのは龍田だ。

「あの後も、続々と地球を狙う宇宙人が来た。双子怪獣を倒したといえ、まだ私は未熟で、何度も敗北を喫した。しかし、その度に、隊長やMACの仲間、そして地球でできた大切な家族同然の人たちに助けてもらって、心身共に成長することが出来たのだよ。」

「…特訓か…どんなものが?」

「気になるそうだな。とても厳しいものばかりだった。真冬の滝でその流れを断ち切るというものや、次々と投げられるブーメランを蹴落とすもの、果ては隊長の乗ったジープを全力で正面から受け止めることもあった。本当に死ぬかと思ったよ。」

 天龍は唖然とした。その特訓の内容にもそうだが、それを彼は今笑顔で語っている。数々の困難を乗り越えた彼だからこそ出来るのだろう。天龍はそう感じた。

「こうして私は強くなり、地球で再開した弟のアストラと共に、栄えあるウルトラ兄弟の一員として認められた。」

「ハラショー…!」

 目をキラキラさせている響。こう見えて彼女は結構スポコン漫画が好きで、大本営在籍時代もよく読んでいた。地味に彼女の一人称が「僕」という理由でもあったりする。しかし、そこまで話したおおとりさんの顔が、暗くなっていた。

「…どうしたんですか、おおとりさん」

「ああ…。そんな矢先だったんだよ。」

 その顔を変えず、一呼吸置いた彼は続けた。

「…MACが円盤生物の奇襲で、全滅したのは」

「全滅…!?」

 島風も味わった全滅の辛さを、彼も味わっていたんだと感じた全員の顔が驚愕に包まれる。俺は映像を進め、響たちに説明を始める。

「今から見せる映像は、襲撃の瞬間を、たまたま近くの気象観測用人工衛星が捉えたものだ。かなり衝撃が強いことは了承して欲しい。」

「うん…」

 おおとりさんのその顔から悟ったのだろう。響たちは緊張した表情となる。

 映像が流れ始めた。宇宙ステーションに突如、透明な風鈴のような円盤生物ーーーシルバーブルーメが衝突し、同時に長い触手で包み込んでしまった。あちこちから火花が飛び、ベタベタとまとわりつくその溶解液。そして数分後、シルバーブルーメは自身の大きさの何倍もあるMACステーションをーーーまるごと飲み込んだ。

「ステーションの中では、仲間の誕生日会が開かれていた。そんな時にいきなり襲われてしまった。隊長は行方不明になり、仲間たちは戦闘機マッキーで脱出を図るも…間に合わず捕食された。

 シルバーブルーメは、変身した私を振り切って地球へと侵入。そして新宿のあるデパートを襲った。そしてちょうどそこには…私が、家族同然に接していた大切な人たちが、ちょうどなーーー」

 そう言って、おおとりさんは少し黙ってしまった。みんなも彼の気持ちを悟ったのだろう、静かに彼を見つめていた。

 自分を成長させてくれた、厳しくも憧れだった隊長。

 自分のピンチを何度も何度も救ってくれた、MACの仲間たち。

 そして、家族同然に過ごして笑いあえた、愛する人々たち。その全てを一度に失ったのだ。

「私はこの新たな円盤生物という敵に、立ち向かうことにした。隊長が行方不明になる直前、脱出を促した私にこう言った。

『バカヤロー!いうことを聞けーっ!

 お前はレオだ!不滅の命を持った、ウルトラマンレオだ!!お前の命は、お前1人のものでないことを忘れるな!!』とな。

 円盤生物は、これまでの侵略者よりも残虐な行為を繰り返した。何も知らない子供を使ったり、自身の分身をばらまいて人々を混乱に陥れ、都市部で大規模な破壊や虐殺、そして子供を洗脳…」

「…ひどいわ…」

 龍田が真顔で言う。

「でも私は、隊長が遺した言葉、そして残された少年の気もちを原動力に、円盤生物に打ち勝て、そして地球を去った。長くなってしまったが、以上が私の地球での話だ。」

「ありがとうございます、おおとりさん…」

 俺も自然とその話を聞きいっていた。響たちもだった。

「…私と同じような経緯を経た島風という娘を、よければ私の手で助けたい。私のわがままを、無理に聞けとは言わんがな…」

 俺は立ち上がり、自然とおおとりさんに頭を下げていた。

「どうかよろしくお願いします」

 

 こうして、おおとりさんが島風の特訓の指導に当たることとなった。鳳翔にこの事を伝えると、『ふふ、なら私は料理でサポートしますね』と笑顔でかえしてくれた。ありがたい。その手にはどこで手に入れたか、スポーツ栄養学の料理本があったが。

 そして、天龍、龍田もおおとりさんと、島風の特訓に同行することとした。もちろん本人達も大賛成だった。俺達に出来ることならなんでもする、と意気込む天龍に頼もしさを感じた。そして島風も、ほんの少し戸惑いながらも応じてくれた。

「これから…よろしくお願いします」

「うむ、ありがとう。…厳しく行くつもりだ、覚悟してくれ」

「…はい!」

 その時の島風の目はーーー約一割の不安と、残りの九割は、やる気に満ちていたと、おおとりさんが言っていた。

 

 そして翌日。おおとりさんは今朝早くに俺にある島へ、自分を連れていくことと、キャンプ用具などを持って行ってほしいと頼んできた。俺はその要望を聞き、ジオマスケッティにジオアトスを合体させた戦闘機形態のスカイマスケッティで、とある島まで運んだ。特訓の準備らしい。そして、おおとりさんを島でおろすと、彼はこう伝えてくれといった。

「ヒトフタマルマルに鎮守府を出てここに向かうように、と島風、天龍、龍田に伝えてくれ。それから昨日、工作艦の明石という方にある物を作ってもらった。島風には出発前に、工廠にそれを取りに来るようにも頼む。」

「了解しました、おおとりさん」

 そして、ヒトヒトサンマル。工廠を訪れた島風が受け取ったのは…

「おぉ…」

 彼女のサイズに合わせて作られた、新品の道着だった。

「なんか少しやる気が増した気がする…」

「すごいな、よかったじゃねーか!」

「ふふ、似合ってるわよ〜」

 2人にも褒められ結構嬉しい島風。そしておおとりさんが指示したヒトフタマルマルに、3人は見送りの俺と響に敬礼をして、鎮守府を旅立ったーーー

 

 ーーーヒトサンマルマル 某島

「来たか」

「はい!島風、ただいま到着しました。」

「うむ。これからこの島で、お前は泊まり込みで修行を行ってもらう。提督の許しもある。覚悟は出来ているな」

 昨日とは全く異なる、威厳溢れるゲンの目。

「はい!」

 それに物怖じすることなく、島風は声を張り上げ返事をした。

「よかろう。

 では、ついてくるがいい」

 それだけ言うと、ゲンは島に広がる森の中へと入っていった。追う3人。そして…

「到着だ。ここが修行の場だ。」

 森の一部分が開け、土に混じって大岩も転がる地面に、何本もの太い木の幹が地面に立てられている。その上には、1から30までの数字の書かれたフラッグ。そしてーーーゲンは3人の前で駆け出し、そして次々とフラッグの番号通りに、薪を次々と手刀や蹴りで破壊して行った。その動きに一切の無駄がなく、まさに華麗と言う表現が適切なのだろう。その様子に、島風はおろか天龍、龍田までもが絶句した。そしてゲンは、傾斜の1番上へと到達し、島風に言う。

「…今俺がやったことがお前への修行内容だ。この番号通りに、薪を手刀か蹴りで破壊し、最終地点のあの旗まで、三十秒で到達しろ」




というわけでゲンさんと島風が修行を始めるようです。
果てさてどうなるでしょうか…

今回も読んでくれてありがとうございました!
評価感想などなどお待ちしております!
それではまた次回!

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