笑顔は太陽のごとく…《艦娘療養編 完結済》   作:バスクランサー

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山歩きでの足の痛みはなくなりましたが、腰の痛みはまだ治りません…

人間用の高速修復剤が欲しいです(切実)

何はともあれ本編どうぞーーー


雨の中の奇跡 後編

「明石、見えるか?」

「いえ、全く見つかりません。」

 俺と明石は、スペースマスケッティでの上空からの広範囲捜索をしている。が…

「雨による視界不良がかなり…風も強くなってきましたね…」

「ああ…。長門は艤装もないから、レーダーが使えないしなぁ…どこだ?」

 

「長門、長門ー!どこなの!?」

 提督からもらったレインコートを着た陸奥の声が、無人の商店街に響く。しかし、探している、大切な姉の姿はどこにも見つからない。

「ここにはいないのかしら…どこにいるの…?妖精さんは、どう?」

 陸奥は、陸奥についたウルトラホーク3号の妖精さんを見る。しかし、彼女も残念そうに首をふるだけだったーーー

 

「ここにもいない…ここにも…」

 広い商店街で、陸奥とは別のエリアを、瑞鶴は捜索していた。随伴のガッツウイング1号も収穫なしだ。

「急がないと…間に合わない…!」

 瑞鶴の脳内には、解散の時に陸奥から聞いた言葉がエンドレスリピートされていた。

『それぞれの艦載機に、長門の薬を搭載してあるわ。でも、この薬が効くのは、発作が発生してから約1時間…もし商店街に入って長門に発作が出たら…少しでも発見が遅れたら助からなくなってしまう…お願い、できるだけ急いで…!』

 あとどれ位と、確認している程の時間さえ惜しみ、瑞鶴は商店街を探し続けた…

 

「長門さーん!長門さーん!?お願いです、返事してくださーい!!」

 吹雪も他の2人と同じく、土砂降りの中で長門を捜索していた。着ているレインコートなど無駄とでも言わんばかりの勢いで、雨が体を容赦なく叩きつけ、中にまで入ってくる。しかし、今は透けなど気にしている場合ではない。風もだんだん強くなり、随伴して捜索をしている、安定性能が持ち味のシーガルフローターも時折煽られるほどだ。すると、

「おい!」

 後ろから、突然怒鳴られる。びっくりして振り向くと、雨合羽に身を包んだ2人の青年が走ってきている。いかにも柄が悪そうだ。

「オメー、こんな所で何してんだよ!」

 こんな時に絡まれるなんて…と焦る吹雪。しかし…

「驚かせてすまん、俺、街の消防団やってるんだ。今被害状況の確認で回ってる最中なんだよ」

「今はもう、嵐がピークを迎えてる!急いでどっかの建物の中に入れ!」

 彼らが消防団ということに、とりあえず安堵。しかし同時に、この人たちならもしかしたら長門さんを見かけているかもしれない、ということが頭に浮かぶ。

「あの、この辺りで、割烹着着て、頭にバンダナを着た女の人、見ませんでしたか!?」

「は!?そんなのいるわけねえだろ、この嵐だぞ!いても俺らが見つけて避難させてるしなぁ、おい…」

 青年がもう1人に同意を振るが、振られた当の本人は、振った側の予想とは異なる反応をした。

「いや…もしかしたら…でも…」

「見たんですか!?」

「オメー、知ってるのか!?」

「ああ…俺らの学校も、今日嵐で早く解散したろ?その帰り道で…嬢ちゃんが言ってたような服の女の人、見かけた…」

「本当ですか!?」

「ああ。ただ、目の片隅に入っただけで、もう一回戻って通り見回しても、いなかったけどよ…」

 そう言いつつ青年は、ある通りーーー吹雪の探索担当エリアの中の1つを指さした。

「…そいつもしかしたら、路地裏にでも入ったんじゃねえか…!?」

「…確かに!」

 望みが繋がった吹雪は、青年達にそこまでの案内及び同行を頼んだーーー

 

 長門の意識はもう、保っているのがやっと、という状態になっていた。全身の力が抜け、そして体感のすべてが沈む船のごとく重くなっていく。発作の痛みは収まっているというより、溢れんばかりのそれを体が感じきれていないという感覚だった。

「ふふ…この…ビッグ、セブンが…こんな、辺鄙な、ところで…最期を迎え、る、とは、な…」

 全てを投げ出したかのように呟く長門。段々と視界が濁り、体温は下がっていく。今まさに意識が途切れてもおかしくないというその時ーーー濡れた路面を、複数の足音、聞き覚えのある声がが自分に向かって迫ってきた。

「長門さん…!いました!!」

「まじか!?」

「おい!大丈夫か!?」

 長門の濁った視界は、吹雪、そして消防団の青年2人を、濁りながらも確かに認識した。

「長門さん、もう大丈夫ですよ!口を開けてください!」

 吹雪に言われるがまま、精一杯口を開く。すると目の前にシーガルフローターが移動し、搭載していた薬を長門の口の中へ正確に発射した。発作が起きてここまでーーー約56分。ギリギリ間に合った。

 すかさず消防団の青年2人が、簡易ブランケットで長門を包む。即効性の薬によって、今度こそ痛みがひき、感覚が戻っていく。

「吹雪…吹雪、なのか?」

「はい…!長門さん!よかった…!」

 思い切り長門に抱きつく吹雪。その後長門は青年たちによって支えられ、路地裏から通りへと誘導される。そして発見の一報を受けた陸奥、瑞鶴、そして提督のスペースマスケッティが降りてきたーーー

 

 全員から青年たちに礼を言い、そして彼らが去ったあと、スペースマスケッティの中で改めて、明石による長門の検査が行われた。

「大丈夫です、体温は低めですが、命に別状はありません。」

「そうか、明石…」

 と、

「何やってたの長門!あたし達がどれだけ心配したと思ってたの!?」

 陸奥の全力ビンタが長門の頬を叩き、そしてハグが体全体を包んだ。

「もう、本当に心配したんだから…!」

 号泣しつつ陸奥は言った。温かいその光景に、その場の俺を含めた誰もが胸を打たれた。

「さあ、鎮守府に、戻ろう」

 俺はスペースマスケッティを、鎮守府に向けて離陸させたーーー

 

 ーーーその後、鎮守府の空母勢や大淀、響たちに改めて報告し、そして響特製のボルシチを食した後…長門は吹雪を自室に招いた。

「失礼します」

「ふふ、そうかしこまるな」

 長門は吹雪を座らせ、そしていきなり彼女に土下座した。

「先程の件といい、昼の件といい…お前には本当に迷惑をかけた…謝罪しても許されないことは分かっているが、それでもこうしないと気が済まない…!本当に、本当に申し訳ないことをした…!」

「いいんですよ長門さん、顔を上げてください。」

 吹雪は、そう優しく言った。

「吹雪…?」

「長門さんのことをわかりきっていなかった私にも、責任はありますし…」

「でも私は、お前の優しさを裏切る行為を何度もしたんだぞ…?先程の捜索も、手伝わなくてよかったのに…どうして私を、こんなにお前に酷いことをしたこの私を、助けてくれたんだ…?」

 その長門の問に、吹雪は一呼吸置いて、こう答えた。

「長門さん、今から私の言う言葉は、かつて地球を守った戦士の1人、ウルトラマンエースが、地球を去る時に遺した言葉、そして今の私の心の支えの言葉です。ご存知ですか?」ーーー

 

 ーーー執務室

「本当に、いい言葉だよな」

「ふふ、司令官がそこまで言うなら、僕にも聞かせてもらおうじゃないか」

「おう、響」

 俺は吹雪にしたのと同じ映像を、響に見せた。

 ジャンボキングを倒し、子供たちとTACの隊員達を見下ろして、エースは彼らへとラストメッセージを伝える。

 

『ーーー優しさを失わないでくれ。

 弱いものをいたわり、互いに助け合い、

 どこの国の人とも友達になろうとする気持ちを

 忘れないでくれ。

 

 例えその気持ちが、

 何百回裏切られようと。

 

 ーーーそれが私の最後の願いだ。』

 

 そして、ウルトラマンエースは、夕日が映える真っ赤な空へと、飛び立って行ったーーー。

「ふふ、本当にいい言葉だね、司令官。」

「ああ。この言葉を胸に刻み、これからも頑張ろうな、響」

「うん!ハラショー!」

 響は笑顔で返したのであった。

 




というわけで今回もここまで読んでくれてありがとうございました!

これからも頑張ります!
評価感想など、是非よろしくお願いします!

それではまた次回!

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